From 平松禎史@アニメーター/演出家
◯アバンタイトル
《「戦後70年以上の長きにわたり、平和条約が締結されていないのは異常な状態だという思いにおいて私とプーチン大統領は一致している」》
《「大きくて自由で公正なルールに支配された平和と繁栄、ダイナミズムに満ちた地域」が登場すると述べた。》
https://toyokeizai.net/articles/-/238028
2018年9月16日、東洋経済オンラインの記事です。
去年9月、安倍首相とプーチン大統領が東方経済フォーラムでかわした会話の一部です。
この時から悪い予感をバリッバリに感じていました。
安倍政権下の6年間。悪い予感だけはしっかり的中してきましたが、今回はどうでしょうか?
第五十三話:「自国領土の名前を言えない総理大臣」
北方領土を巡るかつてのソ連とその後のロシアとの話し合いは、杳として進んでいませんでした。
問題は第二次世界大戦中にさかのぼり、カイロ宣言、ヤルタ密約、ポツダム宣言、サンフランシスコ講和条約…といった連合諸国の日本に対する姿勢が積み重なり、敗戦後はアメリカの意向と不可分に、1956年の日ソ共同宣言に至ります。
当メルマガ読者の皆さんはよくご存知かと思いますが、表に出ない交渉もあったそうです。
2012年6月27日、大前研一氏は、こんなコラムを書いています。
大前研一氏 北方4島は米国がソ連に“戦利品”として与えた(IRONNA)
https://ironna.jp/article/2758
《当時、日本政府は北方領土問題について歯舞、色丹の2島返還による妥結を模索していたが、アメリカとしては米ソ冷戦が深まる中で日本とソ連が接近すること、とくに平和条約を結んで国交を回復することは防がねばならなかった。そこでダレスはソ連が絶対に呑めない国後、択捉も含めた4島一括返還を要求するよう重光に迫り、2島返還で妥結するなら沖縄の返還はない、と指摘して日本政府に圧力をかけたのである。》
2017年1月14日、佐藤優氏も同様のことを書いていますが、その根拠は、当時日本側の全権代表を担当した松本俊一氏の記録をまとめた『日ソ国交回復秘録』にあるようです。(大前氏のコラムはこの本が出る少し前のようですが。)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/50688
つまり
日本はもともと歯舞・色丹の二島返還で考えていたが、アメリカの思惑に従って、ロシアが飲めない四島返還に変更した。
アメリカの思惑通り、北方領土問題は暗礁に乗り上げたまま、現在まで手を付けられずに来た、と。
ボクは、子供の頃から「北方領土」は「国後・択捉・歯舞・色丹」の四島のことだと思ってきましたが、実際にはそうとは言えず、アメリカの圧力で変更させられた方針を信じてきたわけです。
さて、その上で、去年の安倍・プーチン会談を読み直すと、安倍首相の「グローバリズム脳」の深刻さがはっきりわかります。
+ + +
あの悪い予感から4ヶ月。
さらに悪い予感が、私たちに襲いかかります。
今月22日の共同記者会見では、両首脳の国家観・国家(国民)主権・独立国としての挟持…の違いが一層くっきりと表れていました。
1ページに表示されて比較しやすい読売新聞の記事を御覧ください。
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20190123-OYT1T50069.html
プーチン大統領
《私たちは、南クリル諸島(北方領土)での共同経済活動について先に承認された5分野での努力を継続することで合意しました。》
安倍首相
《4島における共同経済活動については、2度の現地調査と、民間中心のビジネスミッションの派遣、そしてプロジェクト候補のロードマップにより、具体的道筋が明確になってきました。》
プーチン大統領「南クリル諸島」
安倍首相「4島」
おわかりですね?
プーチン大統領の発言は、文脈から切り離し「南クリル諸島」だけにしても、はっきりわかります。
ロシア領であると主張する意志が明確です。
ところが
安倍首相の発言では、文脈から切り離したら「4島」とはどこのことなのかわからない。
自国領土に対する意志のかけらも見えないじゃありませんか。
眼の前のグローバルビジネスしか考えてないのか。
ちなみに、産経新聞は両首脳の発言を別ページに分割して比較しにくくした上で、安倍首相の「四島」は段落を変えずに文字列の中に埋没させてわかりにくくしています。
話題を変えているのですから読売新聞のように段落を区切るのが正解ではないでしょうか?
プーチン大統領の発言は「南クリルの島々」とソフトな表現にしています。
どれだけ小細工をしても本質は変わりません。
プーチン大統領のページ https://www.sankei.com/politics/news/190123/plt1901230012-n1.html
安倍首相のページ https://www.sankei.com/politics/news/190123/plt1901230013-n1.html
はい。
安倍首相を擁護してやまない産経新聞は「ヤバイ…」とわかっているのでしょう。
推測ですが。
佐藤健志さんの言う、「爽快な末路」ってやつですね。
今のところ報道ベースでしか言えませんが、ANNのYouTubeチャンネルが、両首脳の発言映像をノーカットで配信しています。
プーチン大統領 https://youtu.be/mypSIcqc50M
安倍首相 https://youtu.be/UZdrlLQ71hM
映像では、二つの事実がわかります。
一つ、「南クリル諸島」ではなく「サハリン(州)」と発言した。
同時通訳者は、当該部分を「サハリン」と訳しています。
サハリン州には「南クリル管区」があり、北方四島を含んでいます。
プーチン大統領は、書き起し報道のように「南クリル諸島」に限定せず、「サハリン」という大きな地方の一部として表現していたわけです。
日本で言えば、「北海道」と表現するのと同じです。
ただし、北方領土が北海道の一部との認識あればこそ、そう言える。
安倍首相は、サハリン州に対応する北海道とも表現せず、どこの島ともわからない「四島」としか言えなかったのです。
このスケールの違い、まるで、ロシアと日本の陸上面積を人間に置き換えたようじゃありませんか。
情けないですね。
しかも、ことば通りに受け取れば、プーチン大統領は、日本と国境を接するサハリン州全域を共同経済活動の対象と考えている。
「いやいや、南クリル諸島と言ってしまうと軋轢を生むから、安倍首相の外交力で配慮させたんだ。」と解釈しても、サハリン州は南クリル諸島を含んでいるのですから、何の希望的観測にもなりません。
二つ、映像から、安倍首相が「四島」の前に明確に区切りをつけていることがわかるので、産経新聞の表現は明らかな間違いです。
改行し忘れたレベルではなく、目立たせない意図を疑わざるを得ません。
・・・なにやら、強烈な「認知的不協和」が巻き起こっているのではないでしょうか。
同時通訳者が、「南クリル諸島」と「サハリン」を間違えるとは考えられません。
読売にしろ産経にしろ、プーチン大統領の発言を意図的に矮小化している疑いがあります。
+ + +
いずれにしても、去年の悪い予感は軽々と越えそうです。
四島はおろか二島の主権も帰ってこず、経済協力はサハリン州全体の規模に拡大される。
プーチン大統領が述べている通り、LNGのパイプラインや海路、さらに日露を結ぶ道路鉄路の開発など、北方領土だけより、サハリン全体でこそ重要です。
(プーチン大統領 ロシア大陸とサハリンを結ぶ橋の建設を指示 https://jp.sputniknews.com/russia/201807255156824/
南クリル諸島(北方領土)含むサハリン全域…つまり外国…へのインフラ投資に日本が多額の出資をすることになるのでしょう。
プーチン大統領の発言は明確かつ整合性があり、長期的国益を得るのは、間違いなく、ロシアの方だと思える。
安倍首相の発言は曖昧模糊として、日本の国益が見えません。
日露首脳共同発表から3日になる25日午後4時30分現在、首相官邸ホームページは、首相がロシア訪問するニュースのあと、情報更新がありません。
今週は発表しないつもりでしょうか。遅すぎませんか?
平成28年の日露共同記者会見は即日発表していたのに、です。
質問を受けない形式にするとは聞いてましたが、首相官邸が発表しない、なんてことはありませんよね?
自国領土の名前を言えない総理大臣、その扱いに困っているんでしょうか。
日本は、サンフランシスコ講和条約から68年経ってもう一度、敗戦することになるのか。
そして、2019年は「戦後」の新たな起点になるのか。
2020年の東京オリンピックは「戦後はじめてのオリンピック」になるのか。
◯コマーシャル
テレビシリーズ『ユーリ!!! on ICE』全国40館にて一挙上映!
2019年、1月18日よりはじまっています。
https://yurionice.com/series-marathon/
今週からPart2、5話から8話までの上映です。
最後には、『ICE ADOLESCENCE ユーリ!!! ON ICE劇場版』の最新特報を上映。
『平松禎史 アニメーション画集』発売中。
『エヴァンゲリオン』シリーズや『彼氏彼女の事情』などカラーイラストを多数収載。
http://amzn.asia/hetpEPD
画集第二弾『平松禎史 Sketch Book』発売中。
キャラクターデザインのラフや楽描き、国民の祝日の絵「ハタビちゃん」シリーズなど収載。
http://amzn.asia/hUQoCkv
ボクのブログです。
http://ameblo.jp/tadashi-hiramatz/
—発行者より—
総理「政権中にこれを破棄できなければ、日本はオシマイ」
三橋貴明と総理との会談時で明かされた真実。
●総理が、三橋との会食をオープンに
(世に公開)してまで国民に伝えたかった事とは…?
●この会食で明らかになった、
私たちの邪魔をする”3つの敵の正体”とは?
●2020年に訪れるかもしれない
日本の危機的状況とは一体何なのか?
日本が発端となり、
2008年のリーマンショックが再来する?
などなどメディアが決して報道しない
「安倍総理の告白」と「日本経済2020年危機」
について解説した書籍を出版致しました。
こちらから詳しい内容をご覧ください。
https://keieikagakupub.com/38JPEC/1980/
【平松禎史】霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第五十三話への2件のコメント
2019年1月26日 3:38 PM
勘違い
安倍某は 日本が 主権国家とでも、、
外交の安倍とかって 気は確か か??
主権など有しない 「地域」が
火遊びをなさると この ザマ
ちなみに 領土問題が 机上で
解決などしないことは
歴史が 証明しております。。。
外交モドキを なさるまえに
まずは
歴史の お勉強を なさっては
いかが かな♪
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2019年1月26日 4:11 PM
北方4島返還要求も日本の意志でなかった
かもしれないという話は
重要かつ日本が誰のものかを分かりやすく現わしています。
ロシアがこのタイミングで日本植民地に近づいてきた理由は
シナの日本割譲が近づいてきたことを察しているから
ということもあるかもしれません。
特にロシアの草刈場にしたかった北海道で
我が物顔をしているのがシナですからね。
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