アメリカ

2017年1月18日

【佐藤健志】ドナルド・トランプと「柔らかい官能」

From 佐藤健志

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財政赤字国のどこにそんな大金が?
TVが放送を自粛する意外な真実とは
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20世紀イギリスが生んだ偉大な作家の一人であるJ・G・バラードは、
「セックスにテクノロジーを掛け合わせると未来になる」
という名言を残しました。

等式の形で表現すれば
〈セックス×テクノロジー=未来〉。

バーチャルリアリティを使ったセックス処理の可能性が
昨今取りざたされていることを思えば、じつに予言的な言葉です。

類似の等式で
〈セックス×欧米コンプレックス=戦後日本〉
というのがありますが、
これを提唱したのはJ・G・バラードではなく私でした。

2001年の本『未来喪失』に出てきますので、興味のわいた方はどうぞ。
全650ページという、『富国と強兵』に匹敵する大作でございますよ。
版元も『富国と強兵』と同じ東洋経済新報社。
偶然ですけどね。

しかるに2017年、新たな等式が生まれる気配が!

ご存じの通り、きたる1月20日には
第45代アメリカ大統領に当選したドナルド・トランプの就任式が行われます。

エルトン・ジョン、セリーヌ・ディオン、
シャルロット・チャーチ、レベッカ・ファーガソンなど
さまざまなアーティストが出演を拒否したり、
議員の中にも欠席を表明する者が現れたり、
就任式の前後まで含めると数十万人の抗議デモが予想されたりと、
例によって波乱含みの展開。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170103-00000526-san-n_ame
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170115/k10010840251000.html
http://jp.reuters.com/article/charlotte-church-trump-idJPKBN14V097

ちなみにニュージャージー州同友会が、ワシントンDCにある「ワシントン・コート・ホテル」で
1月19日の晩に主催する大統領就任式記念パーティには、
同州出身のスーパースター、ブルース・スプリングスティーン・・・
ではなく、
スプリングスティーンの元祖カバー・バンドとして知られる
Bストリート・バンドが出演します。

バンド名まで、彼のバンド
「Eストリート・バンド」のもじりになっているのですが、
今回、スプリングスティーンはトランプ不支持を明確に主張!

Eストリート・バンドのベーシストであるギャリー・タレントも、Bストリート・バンドのパーティ出演について
「頼むぜ、偽ニュースだろ? 事実だというなら、少なくともジョークであってほしいね」
とツイートするなど、物議をかもしました。

ただしBストリート・バンドの出演は、トランプ当選以前から決まっていたとのこと。
ニュージャージー州同友会は、大統領就任式のたびに記念パーティを開いているので、これには説得力があります。
トランプが嫌いだとしても、彼らを批判するのは酷かも知れません。
https://www.theguardian.com/music/2017/jan/13/bruce-springsteen-tribute-band-trump-inauguration-gala-b-street

けれども当の就任式、いったいどんな感じになるのか?

就任式運営委員会の委員長を務めるトム・バラックという人物は、
さる1月10日、この点をめぐって以下のように述べました。
どうぞ。

「幸いなことに、新大統領は世界最高の有名人だ。
その隣には現大統領がいる。
(注:トランプ夫妻はオバマ夫妻と一緒に、
式典が行われる議会議事堂へと向かうことになっています)
だから国際的セレブと見なされている人々を呼び集めたりはしない。
新大統領を取り囲んでもらう必要はないんだよ。
かわりに、あの場所(注:ワシントンDC)が持つ柔らかい官能で
彼を包み込もうと思っている」

ヾ(℃゜)々\(◎o◎)/?!?柔らかい官能?!?\(◎o◎)/(?_?)エ?

バラック委員長、つづけていわく。

「戴冠式と言えば、サーカスみたいなお祝い騒ぎがつきものだが
もっとずっと、詩的な律動が効いたものにする。
それが新大統領の望みなんだ。
貢献的なものになると思う(注:何に貢献するのかは不明)。
美しい仕上がりになるだろう。
律動の本質は『さあ、仕事に戻るぞ』というものさ」

ヾ(℃゜)々\(◎o◎)/?!?詩的な律動?!?\(◎o◎)/(?_?)エ?
ついでに
ヾ(℃゜)々\(◎o◎)/?!?戴冠式?!?\(◎o◎)/(?_?)エ?

目が点になった方のために、いろいろURLをご用意しました。
イギリスBBCの関連動画(英語版)。
http://www.bbc.com/news/world-us-canada-38578885

その日本語吹き替え版。
http://www.bbc.com/japanese/video-38592021

アメリカABCニュースの関連記事。
http://abcnews.go.com/Politics/trump-inauguration-soft-sensuality-committee-chairman/story?id=44690268

イギリスNME(ニュー・ミュージカル・エクスプレス)の関連記事。

Donald Trump’s inauguration to have ‘soft sensuality’ instead of A-list musicians

BBCなどすっかり面白がって
字幕でこんなツッコミを入れています。

「柔らかい官能」というフレーズを聞いて何を連想する?
ひょっとして大統領就任式かな?
ワシントンDCが官能的だって言われたのは前代未聞だよね?
新大統領はこのことを知っているの?
もうしばらくすれば、就任式がどれくらい「詩的」で「官能的」か分かるってものだよ。

まあ、アメリカ(およびフランス)をコケにするのは
イギリスの国民的娯楽ですので、
その点は割り引いたほうがいいのですが
だとしても、柔らかい官能なんだそうです。

さて。
J・G・バラードにならえば、ここには
〈柔らかい官能×詩的な律動=トランプ就任式〉
という等式が見られる。

他方、柔らかい官能はワシントンDCの特徴らしいので
〈柔らかい官能(=ワシントンDC)×ドナルド・トランプ=アメリカ再生〉
という等式も成立するでしょう。

となるとドナルド・トランプは
〈アメリカ再生/柔らかい官能〉
すなわち
アメリカ再生を柔らかい官能で割ったもの、ということに。

かつてトランプは、スターの役得の一つに
「女の股間をわしづかみしても構わないこと」
を挙げましたから、
この等式にも相応の根拠があるはずです。
http://theconcourse.deadspin.com/donald-trump-on-getting-women-grab-them-by-the-pussy-1787545407

となるとトランプを理解するには、
アメリカ再生のみならず、柔らかい官能をめぐる知識も必要なのではないか?

関連して思い出されるのが、1960年代後半に人気を博したアメリカのロックバンド
ザ・ドアーズのリードシンガーだったジム・モリスン。

1971年、27歳の若さで世を去った人ですが
デビュー当時、モリスンは
「僕たちのことを、エロティックな政治家と考えてほしい」
という名台詞を吐いたのです。

トランプがドアーズのファンかどうかは知りません。
とはいえ、大統領就任式をめぐるトム・バラックのコメントには
明らかにドアーズ的なものが感じられます。

実際、ドアーズの最年長メンバーで、バンドのまとめ役だったレイ・マンザレクは
いつかモリスンが大統領になると本気で信じていました。

マンザレクも2013年になくなっていますので
今回の「柔らかい官能」発言をどう思ったか、
反応を聞くことはできないのですが
2017年、政治とセックスの距離はかつてなく縮まっているのではないでしょうか。

しかし真面目な話、どういう就任式になるのかなあ、これは・・・

なお今後の日米関係のポイントは
〈セックスに欧米コンプレックスを掛け合わせたもの〉と
〈アメリカ再生を柔らかい官能で割ったもの〉との間に
どのような接点をつくってゆくかになると思われます。
ではでは♪

<佐藤健志からのお知らせ>
1)「右傾化」や属国化こそ、戦後脱却にひそむ「柔らかい官能」なのかも知れません。

『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』(徳間書店)
http://www.amazon.co.jp//dp/4198640637/(紙版)
http://qq4q.biz/uaui(電子版)

2)「詩的な律動」のもと、保守が左翼に化けてしまう可能性をめぐる体系的分析です。

『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は終わった』(アスペクト)
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3)バブル経済が崩壊した直後、日本ではヘアヌード写真集がバブルのごとく流行しました(260ページ)。戦後史を見ても、政治とセックスは微妙にからみあっています。

『僕たちは戦後史を知らない 日本の「敗戦」は4回繰り返された』(祥伝社)
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4)「間一髪、ほとんど裸で逃げだした王妃(マリー・アントワネット)は、暴徒の裏をかいて、夫である王のもとに逃げ込む」(106ページ)
エドマンド・バークは、革命をレイプになぞらえています。

『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)
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5)「おお、苦難の旅を続ける乙女を受け入れよ! そして人類を救うべく、すみやかに自由の神殿を築くのだ」(169ページ)
トマス・ペインも、「自由」を美少女になぞらえました。

『コモン・センス完全版 アメリカを生んだ「過激な聖書」』(PHP研究所)
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6)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
ブログ http://kenjisato1966.com
ツイッター http://twitter.com/kenjisato1966

—発行者より—

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