日本経済

2019年1月16日

【藤井聡】政府の消費増税対策は、残念ながら「全く不十分」である。

From 藤井聡@京都大学大学院教授

 

2019年最大の政治的争点である、消費増税。

これについて政府は、

「経済にダメージが及ばないようにするために、
徹底的な対策を図る、
だから、増税しても大丈夫」

というスタンスを取っています。

その「対策」については、
昨年末(12月20日)の経済財政諮問会議にて、
公表されています。
(下記の「資料2」をご参照ください)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2018/1220/shiryo_02.pdf

当該資料で政府は、
消費増税で「家計負担」が6.3兆円増えるが、
それをさらに上回る
6.6兆円規模の「対策」を行う
から、
大丈夫だ、と解説しています。

その内訳は下記表の通りです。

―――――――――――――――――――
(負担増)
・消費増税による負担増   5.7兆円
・たばこ税・所得税の増税  0.6兆円

(対策規模)
・軽減税率の実施      1.1兆円
・幼児教育無償化      2.8兆円
・診療報酬等による補填等  0.4兆円
・臨時特別の予算措置(※) 2.0兆円
・税制上の支援       0.3兆円
―――――――――――――――――――
(※) ポイント還元、商品券、強靱化対策等

6.3兆円の増税に対して、
6.6兆円規模の対策をするんだから、
大丈夫だ―――という話ですが、
学術的に言って、
この話は全く正当化できません。

この6.6兆円の対策を行ってもなお、
増税ショックを全然、払拭できないのです。

結論から申し上げると、
筆者の試算によれば、
4~6兆円程度のGDPの下落(※)、
が予期されるのです。

(※ この試算の詳細については、
下記資料をご参照ください
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=1644196669014603&set=a.236228089811475&type=3&theater

なぜ、そう言えるのか?

理由は二つ。

第一に、
政府の対策のうち、
幼児教育無償化・補填・ポイント還元等の
3.5兆円分は、
政府が、各家計に直接「支給」するものですが、
家計は必ずしもこの3.5兆円を全て、
使うとは限りません。

各世帯は当然、
政府からもらったオカネの一定割合を貯金
(あるいは、ポイント等の保存)
に回すことになります。

仮に半分が貯金に回ると考えるなら、
3.5兆円の政府支出は、
1.75兆円の経済効果しか生まない、

ということになります。

(ちなみに、
政府の「乗数効果の想定」から言えば、
貯蓄率は7割や8割以上です!)

だからもうこれだけで、
「対策するから消費増税しても大丈夫」
とは、全く言えません。

そして第二の理由は、
増税で税率が「10%」という、
至ってキリの良い数字になる、
という点。

これによって、消費者は皆、
「簡単に計算」
できるようになり、その結果、
消費がさらに大きく縮小するのです。

一般に、消費者についての心理学では、
「税の顕著性」(税の分かりやすさ)が高いほど、
判断や決定へのインパクトが
拡大することが知られています。

そして、筆者が行った心理実験からも、
10%になった途端、
消費は激しく低迷することが
実証的に示されています。
https://38news.jp/economy/11318

この点を加味すると、
政府想定よりもさらに、
1兆円から2兆円程度、
消費が縮退する可能性が
考えられます。

以上の二つの理由を考慮すれば、
消費増税によるインパクトは、
対策を全て実施しても
GDPが「4~6兆円」程度、
つまり「マイナス1%」程度、下落

することが予期されるのです。

以上から、政府の増税対策は、
「十分な対策」とは全く言えないのですが、
残念なことに―――
さらにさらに大きな問題があります。

それは、
「対策は一時的」だが、
「増税は恒久的」だと言う点です。

(専門的に言うなら、増税の
「所得効果」は永続的なのです)

だから、
対策が終わるまでの間に
デフレが脱却できなければ、
対策終了「後」に
増税インパクトが
生じてしまうのです。

つまり、期間限定の増税対策は、
ただ単に増税インパクトを
「後ろ倒し」にするに過ぎず、
本質的効果などない訳です。

つまり、今の政府の対策は、
「小さすぎる」
のみならず、
「短すぎる」
わけです。

もし、「本気」で、
消費増税を行いつつ、
デフレ脱却したい
なら、
もっと大規模に、
もっと長期間の対策を
講ずる他ありません。

その規模と期間については、
既に拙著にて詳らかにした通り、

「10~15兆円規模の対策を
5~6年程度」

だと筆者は考えていますが、
それは決して根拠無きものなので無く、
以上の様な合理的な検討を経て
提案したものなのです。

もし、それだけの規模感の対策が
できないなら、
消費税は「凍結」する他ありません。

さもなければ、
消費増税そのものが、
リーマンショック級の被害を
もたらす
ことになるのです。

だとするなら、
「リーマンショック級の事がない限り、
消費増税をする」

というスタンスを公言している政府は、
以上の理由だけで、
もはや論理的に、
消費増税の凍結を宣言できる筈
なのです。

政府における理性的判断を、
心から祈念したいと思います。

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【藤井聡】政府の消費増税対策は、残念ながら「全く不十分」である。への3件のコメント

  1. たかゆき より

    そもそも 彼等が

    消費増税に固執するのは なぜ か?

    「国民」を偽称する

    政治家 官僚 大企業の 財布を 重くするため。。

    今だけ オレだけ オカネだけ

    後は野となれ 山となれ が 信条の小生には

    彼等の気持ちが よく解る ♪

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  3. 日本晴れ より

    というかむしろ減税すべきだと思います
    減税して内需を活性化するのが正しい政策だと思います
    増税なんてもってのほかで
    今は景気が良いとか増税しても景気は悪くならないとか結論ありきで増税するのは止めてほしいです。むしろ減税すべきです

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