政治

日本経済

2018年11月23日

【施 光恒】移民推進派のフェイク報道と『西洋の自死』

From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学

おっはようございまーす(^_^)/

外国人労働者の大規模受け入れ(入管法改正)の議論がどんどん進められていますね。
日本の事実上の「移民国家化」が進められているといってもよいでしょう。

受け入れ人数を、5年間でおよそ最大34万人に設定するとの数値が現在のところ上がっています。

一度、外国人労働者を大規模に受け入れてしまえば、西欧の例をみればわかるように簡単に後戻りはできません。

西欧諸国はどの国も移民国家化するなどと明確に決めたわけではないのに、外国人労働者受け入れを1950年代から進めた挙句、結果的に移民国家化してしまいました。

当メールマガジンや『表現者クライテリオン』のメールマガジンなどで、私はたびたび参照していますが、いま英国でベストセラーとなっているダグラス・マレーというジャーナリストが昨年(2017年)著したThe Strange Death of Europeという本があります。

この本では、英国など西欧諸国が「人手不足」などの安易な理由から外国人単純労働者を受け入れた結果、後戻りできなくなり、「国のかたち」が変わってしまい、移民国家化していく様子が多様な角度から描かれています。

この本、もうすぐ邦訳が出ます。東洋経済新報社から『西洋の自死――移民・アイデンティティ・イスラム』(町田敦夫訳)というタイトルで12月14日に発売予定です。解説は、中野剛志さんが書いています。
https://www.amazon.co.jp/dp/4492444505

アマゾンのサイトの「内容紹介」にあるように、この本では、「欧州各国がどのように外国人労働者や移民を受け入れ始め、そこから抜け出せなくなったのか」、「マスコミや評論家、政治家などのエリートの世界で、移民受け入れへの懸念の表明がどのようにしてタブー視されるように至ったのか」、「エリートたちは、どのような論法で、一般庶民から生じる大規模な移民政策への疑問や懸念を脇にそらしてきたのか」といった点について、詳細に論じられ、明らかにされています。

例えば、「エリートたちは、どのような論法で、一般庶民から生じる大規模な移民政策への疑問や懸念を脇にそらしてきたのか」という論点について少し内容に触れてみましょう。

この本の第三章では、「移民大量受け入れ正当化の「言い訳」」というタイトルで、移民受け入れ推進派の主張がいくつか紹介され、著者はひとつひとつそのインチキ臭さを暴露していきます。

「移民受け入れは、経済成長に寄与する。だから必要だ」というような主張です。

著者は、英国の推進派がこのような主張を裏付けようと都合のいい数値だけを取り上げてきた様子を示します。

一例をあげると、2013年にユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)が公表した「英国に対する移民の財政的影響」という調査結果を、BBCなどの英国のマスコミは広範に報道しました。推進派に都合が良かったからです。

「近年の移民は英国にたくさん税金を納めており、財政改善に大いに貢献した」と報じたのです。調査報告書では、「移民の治める税金は、彼らが受け取る社会保障などの給付金を34%上回っている。他方、移民以外の人々(英国生まれの人々)の治める税金は、受け取る給付金を11%下回っている」ということが強調されました。

つまり、移民は、社会保障などで受け取るよりもはるかに多くの税金を納めており、英国経済に貢献しているというのです。

もちろん、この数値は推進派に都合のいいところだけをつまみ食いしたものでした。
ここで「移民」とは、高学歴の移民であり、とりわけ「欧州経済圏」(EEA:EU、およびアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェイ)からやってきた人々だけを指していました。

この人たちだけを「移民」として取り上げれば、「2001~11年にEEAからやって来た移民は、英国経済に約220億ポンド(約3.2兆円)の貢献を果たした」と推定することができます。

しかし、これはあくまで、「EEA諸国」からの「最近の」移民だけを考慮した場合です。大多数である途上国からの移民を含め、全移民について見てみると、数値は大きく変わります。

UCL自体が、翌2014年に公表した調査結果によると、全移民について見た場合、1995年から2011年にかけての移民は、実際には英国に約1140億ポンド(約16.5兆円)ほどのコストを負わせていました。つまり、治めた税金よりも、受け取る社会保障などの給付金のほうが、1140億ポンドも多かったのです。

マスコミは、こちらの数値については、ほとんど報じませんでした。「移民が英国に1000億ポンド以上の負担を背負わせていた」というような事実は報じられず、多くの人が知ることはなかったのです。

英国のマスコミは、ほとんどがリベラルな政治信条のためか、あるいは財界と結託しているためか、移民受け入れ推進派です。ですので、推進派に都合いい数字だけを、つまみ食い的に報じたのです。

日本でも、同様のことが生じないか私は懸念します。

例えば、下記のリンク先の記事で報じられている法相の答弁をみると、そういう懸念が増します。

「日本人雇用への影響否定 外国人受け入れ拡大で法相見解」(『東京新聞』2018年11月13日 夕刊)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201811/CK2018111302000285.html

山下貴司法相が、外国人労働者受け入れの日本人の雇用に対する影響を否定したという記事です。

この答弁、臭いものにはフタ、とういか、事実を見つめず都合の悪い事実からは目を逸らすものですよね。

外国人労働者を大量に受け入れようとしているのは、どう考えても、人手不足から生じる賃金上昇や正社員化の流れに歯止めをかけたいからです。そして、グローバルな企業や投資家に有利な条件を整えたいからでしょう。外国人労働者受け入れが、日本人の雇用に影響を及ぼさないなんてことはあり得ません。影響を与えたいからこそ、受け入れようとしているのです。

政治家が、自らに不利になるような事実からは目を逸らし、ぬけぬけとこのような答弁をし、また多くのマスコミもあまり厳しく突っ込まない。すでにそういう状況を日本でもちらほら目にします。

英国など西欧諸国と同じように、日本でも、このままでは外国人労働者や移民の受け入れの負の側面をきちんと検討することなく、ずるずると後戻りできない地点に至ってしまうのではないでしょうか。まったく困ったことです。どうにかしなくてはいけませんね。
(´・ω・`)

長々と失礼しますた
<(_ _)>

追伸1
マレーの本で言及されている「少子高齢化が進むので移民を受け入れざるを得ない」という移民推進派の別の主張に対する反論については、以下の拙メルマガで触れています。ご参照ください。

施 光恒「少子化をめぐる議論の盲点」(『表現者クライテリオン メールマガジン』2018年8月31日付)
https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20180831/

追伸2
福岡で「学ぶカフェ」という勉強会の講師を務めます。以下の主催者からのお知らせをご覧ください。

【第27回 学ぶカフェ】
日時:2018年12月1日  16:00-17:30

場所 :千鳥饅頭総本舗呉服町本店一階会議室(福岡市博多区上呉服町10-1
博多三井ビル1F)

テーマ :「保守派の人権論――日常感覚に合う語り方」

概要: 「人権」は大切ですが、すぐ「人権」を振りかざす「人権屋」は正直なところちょっと怖い。多くの人がそのように感じているのではないでしょうか。「次の「学ぶカフェ」は「人権」がテーマか~。頭でっかちな話をするのかなぁ」と思う方もいるかもしれません。
心配ご無用です。次回の「学ぶカフェ」では、日本人の常識的立場から「人権」を語ろうと思います。西洋で生まれた「人権」という考え方を、日本人は、日本の昔からの道徳のなかに半ば無意識に位置づけて巧みに受容してきました。頭でっかちな「人権屋」ではなく、普通の日本人の日常感覚にかなう「人権」の捉え方とはどのようなものなのか。それを考えてみたいと思います。

講師プロフィール:施 光恒(せ てるひさ) 九州大学大学院 准教授

会費:一般 2500円(お茶、お菓子代含む)、 学生 無料(筒井学生奨学金のため)

申し込み
manabucafe@gmail.com
お名前、連絡先、学生であるかどうか、を書いてお申し込み下さい。
fbイベントページからのお申し込みも可。

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【施 光恒】移民推進派のフェイク報道と『西洋の自死』への5件のコメント

  1. komiyet より

    反日国家からの移民は後で、内戦になるぞ!

    喧嘩上等っていう日本人もたくさんいるからな。

    返信

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  2. たかゆき より

    >ずるずると後戻りできない

    どうし ば せう で 一句

    この道や 行く人もなく 秋の暮

    あるいは

    この道を また辿るらむ 秋の暮れ (敬基)

    それとも

    この道を ともに究めむ 秋夜長   (阿奉)

    ばせう とは 月とスッポン やせ かえる (失礼)♪

    返信

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  3. 日本晴れ より

    施先生の言われる通り移民に関して移民推進側に都合の良いデータや移民側に都合のよい意見や論調が増えるんでしょうねこれからも逆に移民の弊害はちょっとしか報道されないか過小評価されるのは目に見えてます。そして移民反対派のネガティブキャンペーンをメディアがするのも目に見えてます。
    しかし移民の負の側面を一番迷惑こうむるのは庶民や一般人なんですエリートの自己勝手に振りまわされるそういう人達の暮らしや権利は無視するのがグローバリズムの本質だと思います。

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  4. ゆう より

    西洋の自死をちらっと読みました。前半の部分(特に第3章の所)を読んで背筋が凍る想いがしました。数年後に日本でも同じような事が起きる危険性が現実に高くなってるし。。
    自分より少し年齢が上の著者の洞察力に感銘を受けました。年配の人達が頑固なのは万国共通なんだというのも実感します。タイムリーな本が出たなと。この人を日本に招待して講演会開いて頂きたいです。

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