日本経済

2018年3月26日

【三橋貴明】悪循環の罠(後編)

From 三橋貴明

【今週のNewsピックアップ】
人が大切にされる社会
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12361961367.html
高齢化は経済成長のチャンス
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12362246215.html

メルマガ 週刊三橋貴明の
「Vol461 労働投入量と経済成長」
http://www.mag2.com/m/P0007991.html
で詳しく解説したのですが、
その国の供給能力である
「潜在GDP」の成長率、
いわゆる潜在成長率は、
「労働投入量」「資本投入量」
「全要素生産性」の三つで決まります。

内閣府は、潜在成長率や
GDPギャップ計算の際に、
「トレンドの供給力を示す潜在GDP」
つまりは平均概念の潜在GDP
を使っており、大変問題なのですが、
今日はこの話は置きます。

「労働投入量」「資本投入量」
「全要素生産性」のうち、
観測が楽なのは
「労働投入量」のみです。

過去の資本蓄積が、
どれだけ生産に寄与しうるのか、
厳密な測定は不可能です。

さらに、全要素生産性に至っては、
観測が全く不可能であるため、
現実のGDPから逆算して
算出しています。

つまりは、「本来の供給能力」の
構成要素として、観測による
把握が容易なのは
「労働投入量」だけなのです。

資本投入量の経済成長への
貢献については、
「多分、こんな感じでは?」
程度の推測しかできず、
全要素生産性の伸びに至っては、
後になってみなければ
分からないのでございます。

要するに、経済が
「なぜ、成長したのか?」あるいは
「なぜ、成長するのか?」について、
数値データを用いた論理的な
説明や予測はできないのです。

多くの経済学者は、
把握が不可能な資本蓄積(投資)や
生産性向上が経済成長に与える
影響を「無視」しようとします。

理由は、「よく分からない」ためです。

というわけで、経済学者は
「人口(特に生産年齢人口)」と
「経済成長」を結び付けようとします。

実際には、人口動態が
どうであろうとも、
資本投入量や
全要素生産性の変化により、
経済はプラス成長し、
あるいはマイナス成長になります。

厄介なのは、経済学者らが、

「日本は生産年齢人口が
減っていくので、経済成長しない」

と、資本や生産性について
無視した主張をすると、
多くの国民は納得してしまう
という点です。

何しろ、普通の人は
潜在成長率が三つの要素から
構成されているなどという
話は知りません。

経済学者が語る

「生産年齢人口の低下
=経済成長は不可能」

というレトリックを信じ込んで
しまった日本国民は、普通は
投資を減らすでしょう。

投資とはリスクがあります。

将来、豊かにならない
(経済が成長しない)ことが
明らかな状況で、
リスクをとってまで
投資しようとは思いません。

というわけで、国民が
「人口減=成長不可能」の
レトリックに騙され、投資を
控えるようになると、実際に
日本経済は成長しなく
なってしまうのです。

日本経済が「投資抑制」
により成長しなくなると、国民は、

「ああ、やはり人口が減っていく
日本は経済成長しないのだ。
それでは、投資を減らそう」

と、

「投資縮小
⇒マイナス成長
⇒投資縮小」

の悪循環の罠に突っ込んで
いってしまうわけでございます。

「国の借金が1000兆円! 財政破綻する!」
「人口が減っているため、経済成長しない」

この手の分かりやすく、
かつ間違っているレトリックにより、
日本は小国化していっており、
将来的には中国の属国という、
おぞましい未来が待っています。

日本国を亡ぼすのは、
たかがレトリック、つまりは
文章の「表現技法」なのです。

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