日本経済

2017年11月10日

【三橋貴明】続 財務省が日本を滅ぼす

From 三橋貴明@ブログ

時局 2017年12月号 に連載
「三橋貴明の経世論 経済成長の黄金循環(中編)」
が掲載されました。

本日はチャンネル桜「Front Japan 桜」に出演します。
http://www.ch-sakura.jp/programs/program-info.html?id=1651

先週、先々週と金曜日のFront Japan 桜に
出演しているため、何となく毎週レギュラー
みたいになっていますが、偶々です。

特に、先週の佐波さんとのFront Japanは、
わたくしは元々、出る予定はなかったのです。

連休ということもあり、他の方々の
スケジュールが付かず、わたくしが別件の前に
無理やりスケジューリングし、出演したのでございます。

本日は、Sayaさん。

さて、次期日本銀行総裁に、
本田悦朗氏が就任するのではないか
という報道が出ています。

『日銀総裁に就任すれば、全力でデフレ脱却実現する=本田・駐スイス大使
http://www.newsweekjapan.jp/headlines/business/2017/11/202886.php

安倍晋三首相の経済アドバイザーとして知られる
本田悦朗・駐スイス大使は8日、ロイターとのインタビューに応じ、
次期日銀総裁に指名され就任が決まれば、
2%の物価目標実現によるデフレ脱却を全力で
実現すると述べ、ポストに強い意欲を示した。

また、消費増税までに強じんな日本経済の実現が必要であり、
拡張的な財政政策が必要であるとの見解を示した。

<目標未達の黒田総裁、続投望ましくない>

本田氏は、2014年4月の消費増税によって
アベノミクスの効果が相殺されたとして、
金融緩和と拡張的な財政支出を同時に展開しなければ
デフレになじんだ人々の物価観を転換することはできないと強調。(中略)

本田氏は、税収拡大ペースと比較して歳出拡大が緩やかであるとし
現状の財政運営を「緊縮的」と表現。企業部門の貯蓄超過が
解消されることを目指し、必要であれば補正予算・当初予算の
編成を通じ、財政を「より拡張的」にすべきと論じた。

2019年に予定されている消費税率の引き上げについては
「理想的には凍結が望ましい」としつつ、自民党が衆院選で
「引き上げを公約とした事実は重い」と指摘。

現実的には「増税に耐えうる強じんな日本経済を作るしかない」
と述べた。

消費増税分は「全額社会保障に充当して欲しい」とも付け加えた。

デフレ脱却を確実にするため
「2013年に策定した政府・日銀の共同声明を書き改め、
名目600兆円のGDP(国内総生産)を共通目標に掲げるのが望ましい」
と指摘した。』

財政政策に理解がある方が、日銀総裁に就任することは、
現在の日本にとって望ましいとは思います。

もっとも、本田氏が日銀総裁に就任すれば、
すぐに財政拡大に転じることができる。

などといった甘い話はありません。

何しろ、PB黒字化目標は閣議決定として残っています。

日銀の国債買い入れを100兆円に増額したところで、
政府が緊縮財政を継続する以上、物価が上がるはずもありません。

すでに、2013年3月と比較し、日本銀行は340兆円以上も
マネタリーベースを拡大しました。

ところが、コアコアCPIは対前年比0%。
直近のGDPデフレータは、対前年比▲0.4%。

普通に、デフレに戻っている。これが現実です。

我々は、デフレが「総需要の不足」である以上、
政府が消費や投資(つまりは「需要」)を削減する
緊縮財政を強行している以上、
日本銀行がいくらおカネを発行したところで、
デフレ脱却ができるはずがないと主張し続けてきました。

なぜなら、デフレーションとは「総需要の不足」であり、
「貨幣現象」とやらではないためです。

それに対し、アベノミクスの理論的支柱である
「リフレ派理論」は、インフレ目標と量的緩和のコミットメントにより、

「期待インフレ率が上昇し、円安により輸出が増え、
設備投資や住宅投資、消費が増えることで、
デフレギャップが縮小し、デフレ脱却できる」

というものでした。いわゆるリフレ派の中心的な存在である、
岩田規久男日銀副総裁「量的・質的金融緩和の波及経路」に、
そう書かれています。

すなわち、

「インフレ率(あるいは期待インフレ率)の上昇
⇒消費・投資拡大⇒デフレ脱却⇒雇用増加」

という現象が起きているならば、日本の雇用改善はアベノミクス、
あるいはリフレーション政策の「おかげ」という話になりますね。

とはいえ、現実にはインフレ率は低迷し、デフレーションが継続。

それにも関わらず、雇用「だけ」が
改善していっているのが、現実の日本です。

フィリップス曲線という考え方があります。

フィリップス曲線は、インフレ率と失業率が
反比例の関係にあるという仮説です。

すなわち、インフレ率が高まれば、失業率は下がる。

逆に、インフレ率が下がり、
経済がデフレ化すると、失業率は上昇してしまう。

いわゆる「リフレ派理論」は、
フィリップス曲線が成立するという前提で、

「期待インフレ率(あるいはインフレ率)を引き上げれば、
需要が拡大し、雇用が改善する(=失業率が下がる)」

というデフレ脱却政策だったのです。

そして、インフレ率、期待インフレ率を引き上げるためにこそ、

「日本銀行がインフレ目標をコミットメントし、
量的緩和を継続し、マネタリーベースを拡大する」

という政策が提唱されました。

ところが、現実には日本銀行が340兆円もの
日本円を発行したにも関わらず、インフレ率は上昇していません。

岩田規久男教授、浜田紘一教授といった
「リフレ派」リフレ派理論によるデフレ脱却の最初の一歩、
すなわちインフレ率や期待インフレ率の上昇は、
全く起きていないのです。これが、現実です。

結局、岩田教授に代表される「デフレは貨幣現象」という
間違った考え方(経済学的には正しいのかも知れませんが)は、
財務省の緊縮財政派に見事に利用されたのです。

何しろ、岩田教授の理論が正しいならば、

「政府が消費税増税をしても、
財政支出を削減しても、デフレ脱却できる」

という話になってしまうのです。

何しろ、岩田教授の
「量的・質的金融緩和の波及経路」には、
「財政」という概念は全く登場しません。

本田氏は、名目GDP600兆円を目標に掲げ、
拡張的な財政を主張している点で、
黒田総裁よりは評価できます。

とはいえ、本田氏が日銀総裁に就任したとして、
拡張的な財政拡大を要求
(これ自体は正しいですが)したところで、
PB黒字化目標がある限り、どうにもなりません。

とりもなおさず、我が国はPB黒字化目標が存続する限り、
日本銀行総裁に誰を据えたところで、
状況は改善しないという現実を理解しなければなりません。

小学館「財務省が日本を滅ぼす 」が売れ続けています。
Amazon在庫が戻っていないにも関わらず、
総合で51位になったのは吃驚しました。
http://amzn.asia/afxuvob

日本国が「財務省が日本を滅ぼす 」に
書かれている「事実」を認識し、政治家を変え、
政治を変える努力をしない限り、
我が国の小国化は終わりません。

もちろん、「財務省が日本を滅ぼす 」の情報が
国民に共有されれば、全て解決、
などという簡単な話にはなりません。

とはいえ、最低限の「正しい知識」の共有なしでは、
問題解決の糸口すらつかめないという現実を、
我々は理解するべきなのです。

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【三橋貴明】続 財務省が日本を滅ぼすへの2件のコメント

  1. dai より

    いつも勉強になります。

    一度、2006年だか2007年に日銀のオペレーションが無効化宣言されてしまった件を取り上げてはいかがでしょうか?

    本来、逆路的な金融緩和はアナウンス効果とやらを除けば必要無いはずです。通常は資金循環の各指数や金利を見ながら、政策調整、買いオペすれば良い話で、財政政策×通常の金融政策だけで十分なはずです。(規制調整は必要です)つまり順路的な金融政策ですね。

    従って、『中央銀行の常態化』という目標を設定するよう働き掛けてはいかがでしょうか? つまり今は非常態化しているという認識を持つ必要があるのでは? PB黒字化(緊縮財政)の根拠を決定的に破壊する威力があると思うのですが・・・。

    以上
    失礼いたしました。

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  2. ざるそば より

    >我々は、デフレが「総需要の不足」である以上、
    政府が消費や投資(つまりは「需要」)を削減する
    緊縮財政を強行している以上、
    日本銀行がいくらおカネを発行したところで、
    デフレ脱却ができるはずがないと主張し続けてきました。

    なぜなら、デフレーションとは「総需要の不足」であり、
    「貨幣現象」とやらではないためです。

    「貨幣的現象」の意味について岩田副総裁は副総裁就任時の記者会見で「マネーストックの増加率と物価上昇率は長期的に見ると非常に強い相関があること(短期的には相関がない)」と説明しています(1)。なお、記者会見では長期、短期がどれくらいの期間を指すのか説明がありませんが、2001年に出版された「デフレの経済学」では、マネーストックの増加率と消費者物価の上昇率のデータを示したうえで、長期とは5年から10年、短期とは1年としています(2)。

    2013年10月18日の講演では、金融政策によって予想インフレ率が上昇する理由について、「金融政策が将来のマネーストックの予想に影響するから(3)」と説明しており、やはりマネーストックを増加させることがデフレ脱却のために重要であることを指摘しています。

    三橋さんの「デフレーションとは「総需要の不足」であり、「貨幣現象」とやらではないためです」という見解は、「貨幣現象」という用語の理解を誤っているために導き出されたものではないでしょうか。

    >すなわち、

    「インフレ率(あるいは期待インフレ率)の上昇
    ⇒消費・投資拡大⇒デフレ脱却⇒雇用増加」

    という現象が起きているならば、日本の雇用改善はアベノミクス、
    あるいはリフレーション政策の「おかげ」という話になりますね。

    とはいえ、現実にはインフレ率は低迷し、デフレーションが継続。

    それにも関わらず、雇用「だけ」が
    改善していっているのが、現実の日本です。

    現在の雇用増加は「インフレ率(あるいは期待インフレ率)の上昇⇒消費・投資拡大⇒デフレ脱却⇒雇用増加」というメカニズムによる面もあると思いますが、それだけではないと思います。

    (A)期待インフレ率
    ブレークイーブンインフレ率は直近では+0.5%程度であり、これは2012年後半の水準とほぼ同じです。しかし、内閣府による「企業行動に関するアンケート調査」の中の、名目成長率の見通しから実質成長率の見通しを差し引くことで予想インフレ率を求めると、企業の向こう5年間の予想インフレ率は2010年から2013年までの平均値が-0.3%、2014年から2017年の平均値が+0.5%となっています(4)。予想インフレ率を計測することは難しいといわれていますが、必ずしも上がっていないとは言えないのではないでしょうか。

    (B)消費、投資
    実質GDP成長率を四半期ごとの前年同期比で見ると2011年第一四半期から2012年第四四半期までの平均が+0.71%、2013年第一四半期から2017年第二四半期までの平均が+1.16%であり、やや上昇しているように見えます。

    (C)インフレ率
    インフレ率を消費者物価指数の食料とエネルギーを除いた指数で見ると、2015年9月の+0.9%をピークに低下傾向にありますが、2010年1月から2012年12月までの平均値が-0.9%、2013年1月から2017年9月までの平均値が+0.3%であり、アベノミクスの開始以降インフレ率の上昇は起きています。
    (消費税率引き上げの影響を除く。増税による押し上げ幅については日本銀行調査統計局による試算(2014年4月:+1.5 2014年5月から2015年3月:+1.7% 2015年4月:+0.2)を使用した(5))

    インフレ率が上昇した理由としてはGDPギャップの改善と予想インフレ率の上昇があるのではないかと考えています。

    内閣府が計算しているGDPギャップは2010年度から2012年度の平均が-1.3%、2013年度から2016年度の平均が-0.2%であり、少し改善しています(6)。

    さらに、岩田副総裁はインフレ予想の高まりは、総需要を拡大することで物価上昇率を引き上げることに加え、それとは別のルートで直接的に物価上昇率を引き上げる効果もあるとしています(7)。この考え方の出典はニューケインジアンフィリップス曲線ではないかと推察します。駒沢大学准教授の矢野浩一氏によれば、ニューケインジアンフィリップス曲線では、今期のインフレ率は来期のインフレ期待と今期のGDPギャップによって決まるとのことです(8)。

    要するに、インフレ率はGDPギャップが改善しなくても上昇する場合があるということです。

    (D)雇用
    雇用の改善についてはGDPギャップの改善に加え、予想インフレ率や実際のインフレ率の上昇による実質賃金の低下によって改善している面が大きいと思います。この「インフレ率の上昇による実質賃金の低下が雇用を増加させる」という説明に対して三橋さんは懐疑的のようですが(9)、この説明は経済学の教科書でフィリップス曲線を説明する際にも使われます(10)。

    雇用状況の改善について三橋さんは高齢化による医療福祉の就業者数の増加と少子高齢化による生産年齢人口比率の低下を挙げていますが(11)、それらは雇用状況の改善と関係ありません。

    医療福祉の就業者数は民主党政権期も安倍政権期と同じペースで増加していたにもかかわらず、民主党政権期には全体の就業者数が減少しています(12)。もし、安倍政権期に全体の就業者数を増加に転じさせた要因が医療福祉の就業者数であるとしたら、民主党政権期も全体の就業者数が増えているはずです。

    また、失業率の分母である労働力人口が2009年から2012年にかけて85万人減少していましたが、2012年から2016年にかけては108万人増加しているため、生産年齢人口比率の低下を失業率改善の要因として挙げることはできないように思います。

    >何しろ、岩田教授の理論が正しいならば、

    「政府が消費税増税をしても、
    財政支出を削減しても、デフレ脱却できる」

    という話になってしまうのです。

    上で指摘したように、岩田副総裁はマネーストックの増加率と物価上昇率の相関を指摘していることを考えると、マネーストックの増加を抑制する政策はデフレ脱却を妨げるということになります。緊縮財政は景気を悪化させることを通じてマネーストックの増加を抑制すると考えられます。したがって、「インフレやデフレは貨幣的現象である」と考えるのであれば、デフレからインフレに移行する局面において緊縮財政はすべきでないということになります。実際に岩田副総裁は歳出削減についてはデフレを脱却してから、増税については、デフレから脱却し経済が安定的に成長するようになってからにすべきとしています(13)。

    >何しろ、岩田教授の
    「量的・質的金融緩和の波及経路」には、
    「財政」という概念は全く登場しません。

    それはあくまで金融政策の波及経路だからではないでしょうか。講演の中では財政政策の必要性にもしばしば言及しています(14)(15)。

    *******************************
    出典と注釈

    (1)2013年3月21日 総裁、副総裁就任記者会見要旨 16~17ページ

    >つまり、インフレやデフレは貨幣的現象だという場合に、足許でのマネーストックと物価上昇率との関係があると言っているのではないのです。これは、市場が非常に長期の予想をして、貨幣供給の経路はどうなるだろうと予想して、そして、将来は貨幣供給がどこかで増えてくることを予想し、「ということは将来インフレになるのだから、例えば今のうちに買っておいた方が良い」という行動が出てくるのです。そのようにして、足許の物価下落が止まっていくということです。ですから、長期的にみると、貨幣供給の増加率と物価の上昇率は、非常に相関関係が高いのです。しかし、短期的にみると、例えば、今、マネーストックは全然増えていませんが、物価はだんだん下げ止まってくるということです。貨幣供給と物価の関係とは非常に長期の関係であって、短期的に、足許で貨幣と物価との関係があると言っているのではないのです。

    (2)岩田規久男「デフレの経済学」2001年 東洋経済新報社 113ページ

    >以上から、貨幣供給量(引用者注:M2のこと)の増加率が上昇(低下)すると、消費者物価の上昇率は大きく(小さく)なるという「貨幣数量説」は、1年といった短期では必ずしも成立しないが、5~10年程度の長期で見ると、ほぼ成立していることが分かる。

    (3)2013年10月18日 岩田副総裁講演

    >(3)なぜ予想インフレ率は上昇するのか
    さきほど、「量的・質的金融緩和」が市場参加者の予想インフレ率を引き上げる方向に働くと申し上げました。
    市場参加者の予想インフレ率が上昇するのは、日本銀行が2%の物価安定目標の達成を強く約束し、その目的達成のために民間に供給するお金(このお金は現金と金融機関が日銀に預けている当座預金の合計で、「マネタリーベース」と呼ばれます)の量を大幅に増やし続ければ、将来、銀行の貸出等が増え始め、その結果、世の中に多くの貨幣(貨幣とは現金と預金の合計です)が出回るようになる、と市場参加者が予想するようになるためです。将来、貨幣が増えれば、その貨幣の一部が物やサービスの購入に向けられるため、インフレ率は上昇するだろう、と予想されるわけです。

    (4)企業行動に関するアンケート調査から計算した向こう5年間の予想インフレ率の推移は以下の通りです。

    単位:%
    2010 -0.31
    2011 -0.31
    2012 -0.35
    2013 -0.07
    2014 0.29
    2015 0.44
    2016 0.51
    2017 0.62

    (5)日本銀行調査統計局「消費者物価の消費税調整済み値の試算方法」2016年11月

    (6)内閣府が計算しているGDPギャップについては、平均概念の潜在GDPが使われていることを三橋さんなどが問題視していますが、高橋洋一氏は内閣府によるGDPギャップとインフレ率の間に相関がみられることを指摘しています。
    (高橋洋一「日本を完全雇用・適度なインフレに導く、極めて効果的な方法があった」現代ビジネス 2017年8月21日)

    (7)2014年9月10日 岩田副総裁講演

    >(4)インフレ予想と物価

    (中略)

    インフレ予想の高まりは、先ほどご説明したような、「予想実質金利の低下による総需要の拡大」というルートとは別に、現実の物価上昇率を直接的に押し上げる効果も発揮します。人々が将来の物価上昇を予想すると、その予想を前提として価格や賃金の設定をするようになるからです。

    (8)矢野浩一「貨幣がなぜ実質変数を動かすのか」(岩田規久男 浜田宏一 原田泰編「リフレが日本経済を復活させる 経済を動かす貨幣の力」2013年 中央経済社 第3章 96~97ページ)

    >NKFC(引用者注:ニュー ケインジアン フィリップス カーブのこと)は今期の「インフレ率」と来期の「インフレ期待」、今期のGDPギャップ(実質GDPの潜在GDPからの乖離率)を用いて、

    インフレ率=主観的割引因子×インフレ期待+係数×GDPギャップ

    とあらわされる。つまり、今期のインフレ率は、来期のインフレ期待とGDPギャップによって決まることを意味している。

    (9)三橋貴明「『高度成長期を知ろう①』」AJER2016.3.15(7)
    4分43秒~4分57秒
    「よくわかんないんだけど、なんか、金融政策をやると実質賃金はいったん下がってそのうち上がりだすとかですね、よくわかんないこと言ってんだけど、実質賃金っていうのは基本的に上がるもんなの、経済成長している国というのは。」

    (10)岩田規久男 飯田泰之「ゼミナール 経済政策入門」2006年 日本経済新聞出版社 291ページ

    >ケインジアン的解釈

    (中略)

     インフレの発生は物価水準Pの上昇を意味しますが、そのとき、ケインジアンが想定するように、名目賃金(W)が硬直的であれば、実質賃金(W/P)は低下します。均衡水準よりも高止まりしていた実質賃金が低下する結果、企業の雇用需要が増加して、非自発的失業は減少します。逆に、デフレが生じたときには、名目賃金が下方に硬直的であれば、実質賃金が上昇するため、非自発的失業は増加するでしょう。これが、フィリップス曲線が右下がりになる原因であると考えられます。
    (引用者注:なお、ここで言うケインジアンの解釈とは、新しいケインズ経済学(New Keynesian Economics)の解釈のことだそうです(同291ページ注釈)。)

    (11)三橋貴明オフィシャルブログ2017年10月4日

    > 要するに、日本のデフレは継続しているわけですが、それにも関わらず人手不足が顕著になってきています。

     理由はもちろん、少子高齢化の影響で生産年齢人口比率が低下し、同時に高齢化の影響で医療・福祉(特に介護)の需要が拡大しているためです。

    (図略)

     図の通り、リーマンショック後の2009年1月と比較すると、直近の建設業の就業者数は▲25万人、製造業が▲89万人と低迷中。卸売・小売業が+10万人と辛うじて増加。

     それに対し、医療・福祉(介護など)は何と216万人の増加となっています。

     この医療・福祉分野における就業者数の増加を、アベノミクスというか「金融緩和」のおかげと主張する人が少なくなく、困惑してしまいます。別に、影響がゼロとは言いませんが、「金融緩和」から「介護における雇用拡大」に至る政策の波及経路を教えて欲しいものです。

    (12)就業者数の推移は以下のようになっています。安倍政権以降の全体の就業者数の増加が医療福祉の就業者数の増加によるものだとすれば、民主党政権期に全体の就業者数が減少していることを説明できません。したがって、安倍政権以降の全体の就業者数の増加は医療福祉を除く就業者数が減少から増加に転じたことが要因です。

    全体 医療福祉 医療福祉を除く全体
    2010 -16 33 -49
    2011 -5 22 -27
    2012 -13 30 -43
    2013 46 30 16
    2014 45 22 23
    2015 30 28 2
    2016 64 23 41
    出典 総務省 単位:万人

    (13)岩田規久男「デフレの経済学」2001年 東洋経済新報社 378ページ

    >8 政府の長期債務残高がGDPの130%程度にも達している現在、長期的に見て財政構造改革は不可欠である。しかし、デフレ経済では、財政構造改革は一挙に進めるべきではなく、まず、①歳出の中身を検討してむだなものを省いて、需要創出効果の大きな市首都を増やし、②デフレが解消した時点で歳出の削減に踏み切り、③さらに経済が安定的に成長する段階に入ったのを見極めて増税する、という三段階アプローチをとるべきである。

    (14)2013年8月28日 岩田副総裁講演

    >2.「三本の矢」

    (中略)

    次の「第二の矢」は、機動的な財政政策です。
    「第一の矢」である金融政策は、非常に強力な政策手段である一方、実体経済に好影響が浸透するまで、ある程度の時間がかかります。このため、特に政策発動の初期段階においては、政府が機動的な財政支出を実施することで需要面から景気を下支えすることが必要となります。

    (中略)

    4.「量的・質的金融緩和」の波及経路

    (中略)

    このように、「第一の矢」による予想実質金利の低下は、消費、投資、輸出の三つの需要を増加させます。「第二の矢」による財政支出の増加も加わって、モノやサービスに対する世の中全体の需要が徐々に増えていくことになります。チャート図の中では、経済全体の需要が供給能力に追いつくという意味で、「需給ギャップの縮小」と表現しています。

    (15)2014年2月6日 岩田副総裁講演

    >消費税率引き上げの影響

    内需面では、最初に、消費税率引き上げの影響についてです。この4月から、消費税率は、現在の5%から8%へと引き上げられます。消費税率の引き上げは、税率引き上げ前後の駆け込み需要の発生とその反動と、税率上昇による可処分所得の減少、という2つの経路を通じて経済に影響を及ぼすと考えられます。
    前者については、既に、住宅投資や自動車などの耐久財について駆け込み需要がみられていますが、個人消費を中心とするこうした駆け込み需要の影響から、2013年10〜12月、さらには2014年1〜3月の成長率はかなり高めとなる一方、2014年4〜6月の成長率はその反動から一旦落ち込むことが予想されます。もっとも、2014年7〜9月以降は、反動の影響が減衰していくうえ、公共投資が高水準を続け、輸出や設備投資が緩やかに増加していくと考えられるため、景気回復のモメンタムが失われることなく、次第に潜在成長率を上回る成長経路に復していくとみています。
    (引用者注:7-9月以降、次第に成長率が上昇する理由の一つとして公共投資を挙げています。)

    (中略)

    3.金融政策運営の考え方
    (1)「量的・質的金融緩和」の内容と波及経路

    (中略)

    こうした消費・投資・輸出・公共投資の各チャネルにおける需要の増加によって、経済全体における需要不足が解消されていけば、おのずとデフレからの脱却が見通せるようになるはずです。

    *****************************
    まとめ

    引用も含めかなりの長文になりましたが、要するに言いたいことは、財政出動には賛成ですが、三橋さんのリフレ派批判には違和感を覚える箇所が多々あるということです。今一度リフレ派の主張を確認してみてはいかがでしょうか。

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