日本経済

2017年11月8日

【三橋貴明】なぜ実質賃金が低迷しているのか?

From 三橋貴明@ブログ

さて、9月の実質賃金速報値が発表になりました。

現金給与総額が対前年比▲0.1%、
きまって支給する給与が▲0.3%。

相変わらず落ち続けています。

『9月の実質賃金0.1%減、4カ月連続マイナス
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23178360X01C17A1EAF000/

厚生労働省が7日発表した9月の毎月勤労統計調査
(速報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を
除いた実質賃金は前年同月比で0.1%減少した。
4カ月連続でマイナスだった。
賃金の増加が物価上昇になお追いつかない現状を映す。(後略)』

というわけで、実質賃金の対前年比のグラフ化です。

【日本の実質賃金の推移(対前年比%)】

http://mtdata.jp/data_57.html#JCAep17

詳細は間もなく刊行となる徳間書店
「2018年」で解説していますが、
現在の日本の実質賃金の低迷は、ミクロ的には、
「フルタイム雇用から、短期労働
(パートタイム・アルバイト)への雇用の切り替え」
によりもたらされています。

フルタイム雇用が消え、短期労働の「数」が増えているため、
実質賃金の低迷と就業者数の増加が同時に起きているのです。

びっくりされるでしょうが、安倍政権が発足した
2012年12月と比較すると、
「高齢者の雇用」が217万人、
「女性の雇用」が224万人の増加。

そして、生産年齢人口の「男性」の
雇用が45万人「減」なのです。

生産年齢人口の「男性」の雇用減は、
雇用の「喪失」(失業)ではなく、定年でしょう。

つまりは、フルタイム雇用の中心である
生産年齢人口の男性が高齢化し、定年退職。

その後、退職した高齢者及び女性が
「パートタイム・アルバイト」という短時間労働で
雇われていっているわけです。

結果的に、我が国では就業者数の増加、
失業率の減少、そして実質賃金の低迷が
同時に起きているのでございます。

この辺りの事情は、先日、弊社に「ご説明」に来られた
厚生労働省の官僚の皆さんも承知しているようです。

とはいえ、なぜかメディアでは全く語られません。
(理由は分かりません。
あまりにもマニアックすぎ、国民に興味がないためなのでしょうか)

もっとも、さすがに生産年齢人口比率の低下
という「人口圧力」はすさまじく、
フルタイムの正規雇用も増え始めています。

この段階で政府が「長期的、安定的な需要」創出
のための財政拡大に乗り出せば、実質賃金が
上昇する形でデフレ脱却が果たせるはずです。

というわけで、結局、問題は
「財務省が日本を滅ぼす 」に行き着いてしまいます。
http://amzn.asia/inoQnjR

何しろ、財務省のPB目標は日本の
繁栄を阻む「二つの壁」の一つです。

あらゆる問題は、財務省&PB目標という
壁に妨害され、解決に至ることはできません。

ともあれ、政府には、実質消費や実質賃金の低迷
という「結果」を真摯に受け止め、
企業がフルタイム正規雇用を「高く雇う」ことが
可能な環境創出のための財政出動を、
一日本国民として心から要請します。

そのためにも、まずはとりもなおさず
「PB黒字化目標」という毒針を
抜き取らなければならないのです。

日本に必要なのは、PB目標などではなく
「実質賃金を長期的に上昇させる」という目標なのですよ。

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【三橋貴明】なぜ実質賃金が低迷しているのか?への2件のコメント

  1. 神奈川県skatou より

    三橋先生のご活躍を、いつも熱く熱く応援しております。
    就業者数増加・失業率減少・実質賃金低迷が成立する不思議さを話す公的空間が乏しいのは残念ですね。底辺に合わせるテレビはともかく、経済を売りにする新聞、雑誌で語られないのは、
    「矛盾して見える事実に対する不感症」なのでしょうか。
    これが失われた20年の正体だったり?

    財務省が存在として日本の未来を阻むのならば、その組織がガンということで、政治が省庁再編を議論するのが処方箋なのでしょうか。
    そのほうが財務省で頑張ったおられる俊才の方々も報われるのではないでしょうか。

    これら論点が国会で与野党が話し合う未来を、
    空想したいものです。

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  2. 紅川 より

    主婦も定年後も働かなければならない社会が日本の輝く未来なのか。
    近い将来(団塊の世代の平均寿命から更に5〜10年後、つまり、今から30年後)、日本の必要労働者割合は、近代化と高齢者割合の減少から、75%から30%に削減されることが予想される。
    共働きでやっと家計を遣り繰りしている現状で、必要な労働者が減少してしまえば、生活が成り立たなくなる。
    女性やお年寄りを働かせる社会を目指すのではなく、世帯主の収入で家計が賄える社会の構築を目指していかなければならない。
    労働人口の男性が30、主婦が30、結婚前の男女10%、老人と子供で30%の社会。その30%の男性と結婚前の男女10%が働く社会が未来の日本の姿にしなければならない。

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