日本経済

2017年8月1日

【藤井聡】ニッポンの経済記事は「天才バカボン」なのだ。

From 藤井聡@内閣官房参与(京都大学大学院教授)

突然ですが、健康診断や血液検査を受けた事はおありでしょうか?当方職場の規定上、もちろん毎年受けておりますが、当方がいつも気になってしまうのが、どこかに、異常を示す「※」がついてないか、という点。

血糖値だとかガンマGDPだとか中性脂肪だとか、そんなものにいくつか異常を示す「※」が付いていれば、「あっ、ヤバイ」となって、何らかの対策(場合によっては治療)が必要となります。

だから当方のみならず他の多くの方々も、この「※」については、いつも気にしておられるのではないかと思いますが───もし、次のような方がおられたら、どう思われますでしょうか?

「ワシの診断結果には、『※』がイッパイついてるけど、そんなのカンケーないのだ。だって、『※』が付いてないのもちょっとあるからなのだ。それは、ワシが健康だと医者がわざわざワシに言ってくれてるってことなのだ。だからワシは健康なのだ!!だから何もしなくてもいいのだ!!!」

これぞまさに、赤塚不二夫先生が生み出した「天才バカボン」(のパパ)状態。

ホント、こんな人がいたら「こりゃ、付ける薬はないなぁ……」となって口をきく気も失せてしまいますよね(もちろん、ホントの天才バカボンなら、優しいママがでてきてパパを叱りつけてきちんと「病院送り」にすると思いますがw)

・・・・が・・・・

誠に遺憾ながら、我が国の「経済」に関するメディアの論調は、まさにこういう「天才バカボン」状態なのです。

そもそも、景気が良いかどうかを判断するのは、人間の健康の判断とそっくり同じ。あらゆる尺度が好調であれば、まさに景気が良いと判断できますが、部分的に異常な数値があれば、もうそれだけで「景気が良い」という判断が怪しくなってしまいます。

例えば、実質成長率がプラスでも、投資や消費が冷え込み、物価が落ち込んでいるなら、景気が良いとは全く言えませんし、逆もまた然り。いろいろな尺度が一貫して全て「異常なし」となったときはじめて、景気が良い、と胸を張って判断可能となるわけです。

(もちろん、※がついた項目でも、それが問題ない理由をキチンと説明できるなら、その限りではありませんが。)

ところが、我が国のメディアでは、たかだか「実質成長率がプラス」というだけの事実を持ってして、物価や名目成長率など他の尺度には目もくれず、さながら「天才バカボン」の様に「景気が良い!」と触れ回っているのです。

日本経済新聞『1~3月期GDP、5期連続のプラス 11年ぶり、消費回復も寄与』
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL18HO7_Y7A510C1000000/

日本テレビ『GDP 11年ぶり5期連続のプラス成長』
http://www.news24.jp/articles/2017/05/18/06361809.html

毎日新聞『GDP:年2.2%増 5期連続プラス、11年ぶり』
https://mainichi.jp/articles/20170518/k00/00e/020/216000c

産経新聞『1~3月期GDP、年2・2%増 5四半期連続プラス成長』
http://www.sankei.com/economy/news/170518/ecn1705180014-n1.html

読売新聞『1~3月GDP、5期連続プラス…11年ぶり』
http://premium.yomiuri.co.jp/viewnews.jsp?appType=PC&id=20170518-OYT1T50031

日経新聞は言うに及ばず、森友・加計学園問題等を巡ってあれだけ論調の割れた朝日・毎日から産経・読売まで全て判で押したように全く同じ「11年ぶりの好景気だ!」という論調。

しかし、これはあくまでも「実質」GDPの成長率だけに基づく論調。しかもこのプラス成長は、このとき0.6%(年率で言えば実に2.4%!)も、「物価」(デフレータ)が下落した帰結として得られた「単なる見せかけだけ」の数字だったことは、これまでに何度も指摘してきた通りです。
(例えば、https://38news.jp/economy/10796

さらに言うなら、この時は物価のみならず名目成長率もマイナスだった、という極めてお寒い状況だったことも申し添えておきましょう。

さらにさらに申し上げるなら、GDPの最大構成要素である「消費」もまた、超絶に冷え込み続けているという点も、

さらには、世界成長率からは大幅に遅れをとっているという点も、ダメ押しで申し添えることもできます。

これでは、「とにかく一個※が付いてない指標があるんだから、俺は健康なのだ!」と触れて回る天才バカボンと何ら変わりませんね。

あるいは、本日(7月31日)の日経新聞には、「名目総雇用者所得がうなぎ登り!景気は堅調!」という論調の記事も配信されています。

日本経済新聞『手不足が経済動かす 堅調景気、生産性改革焦点に』
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS21H6S_U7A720C1MM8000/?n_cid=NMAIL001

しかし、この「堅調景気」という表現が根拠としているのは、「名目総雇用者所得」だけなのです。しかし、内閣府が講評している「実質値」に着目すれば、ここ数年、大幅に低下し続けているのです(下記で紹介されている図の「点線グラフ」に着目ください)。
http://blog.livedoor.jp/columnistseiji/archives/51621925.html

しかも、この「総雇用所得」というのは、国民全体の雇用所得の総計を意味しますが、一人あたりの所得に着目すれば、増税以後、低迷し続けていることは、周知の事実です。
(例えば、こちら 

日本人は皆、自分の健康の事なら、頭を使って診断結果をまじまじと眺め、あれこれ対策を考えるくせに、日本経済という国民全員の暮らしに直結する超重要課題については、何ともいい加減に「天才バカボン」のように振る舞い続けている──という次第です。

とはいえ、経済はかなり抽象的な問題ですから、一般の方々が適切に判断できないのも致し方無い──とも言えます。しかし我が国は「経済の専門家」達ですら、こうした「天才バカボン」状態にあるのです。

例えば、下記記事では上記のようなデータに基づいて「景気も良い状況。財政出動の理由付けが難しい」という専門的主張が掲載されています。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-07-12/OSYMMQ6KLVR501

──とはいえ、これはこの記事だけの話ではなく、こういう発言がいつも溢れかえっている、というのが現在の日本のメディア空間です。

ついてはご関心の方は是非、どういう方が「天才バカボン」状態にあるのか、一度、ネット上で探してみるのもおもしろいのではないかと思います。

かなり立派な偉い学者さんやエコノミストの皆さん、有名な政府の要人達が皆、「天才バカボン」状態にあることがすぐに見えてくると思います。

そう考えると、こういう風なモノゴトのミカタを教えて頂いた赤塚不二夫先生ってホンットに天才だったんだなぁ….としみじみと思わざるを得ませんね。

では、また来週!

PS 客観データの適切な判断に基づく経済財政運営にご関心の方は、是非、下記をご一読ください。
https://www.amazon.co.jp/dp/4594077323

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【藤井聡】ニッポンの経済記事は「天才バカボン」なのだ。への7件のコメント

  1. komiyet より

    無知な人が好きなものとしてNHK、宝くじ、占い、常識、ランキング、普通などがありますが、

    常識ってのは敗戦後は敗者の常識、貧乏人の常識だってのを知らない。

    普通は敗者の普通で、貧乏に慣れてしまっただけです。

    東スポも朝日新聞の同じ新聞です。新聞は嘘をついてもOKです。

    信じたあんたが最後のバカってことが貧乏人にはわからない。

    貧乏人が得する情報などテレビ新聞は絶対に流さない。

    洗脳、マーケティング、ってものを知らない。

    空気を作っているのはマーケティングなんですよ。

    無知な人間の常識はマーケテイングに利用されるだけだよ~。

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  2. 拓三 より

    『正義のミカタ』久々に時間があったから見たで。
    お金の正体の話は出来の悪い漫談として見てたけど、面白かったのは民主主義においてチャーチルの言葉をどう捉えるか?この差が今のファンタジー日本の現状を映し出している根本的な問題ではないかと思った次第で御座います。

    『*民主主義は最悪の政治とも言える。
     *これまで試みられてきた民主主義以外の全ての政治体制を除けばだが』

    この言葉の背景を描くと長くなるので控えますが、簡単に言えば民主主義の長所を絶賛し、なおかつ民主主義において敗者としての振る舞いの大切さを描いた言葉であります。私はこの言葉は日本の美徳である「潔さ」に通ずる言葉だと深く感銘する次第です。

    ……..で?そのあとは? 

    ここなんです! 確かに素晴らしい言葉です! 民主主義の長所はわかりました。ならば何故!チャーチルが言った前半部分の最悪の政治に目を瞑るのか! 何故もっと素晴らしい民主主義を考えないのか! いや?これは長所なのか? ただ上手くいった事例に過ぎないのではないか? 現にナチスは? 様々な疑問が出てくるはずです! 美談だけで済ませば未来はありません。

    物事に『完結』はないのです。全ての過去は『教材』なんです! 

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  3. robin より

    民間の公告営利企業から情報を受け取って選択の材料にしようというのが間違いか、それは情報や事実ではなく試供品のようなものだろう、事実なんて話したら皆が白けることに同意しているから事実はむしろ避けられる、欲しいのは話題であって尾ひれ羽ひれ付けて妄想に妄想を重ねて関心を引っ張り続けて記事を売ったり話題の中心で求心力を維持したいだけだろうか。横並びの記事で価値観の多様性とはお笑いだ、バラエティ番組でニュースを流すのは止めて欲しいと思う、せめてニュース番組で「この番組はフィクションです」とテロップを流してくれれば安心して楽しむことが出来るだろう。テレビ局は各放送局独自の一貫した価値観に基づいて、一定の角度でもって番組を作成してくれないだろうか。

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  4. momo より

    バカボンのパパは天然バカですから本気で言ってますが、学者はどうか。本気で言ってるのか嘘つきか。
    私より知識人達を数多く見てきた藤井先生が言うのだから天然バカなんでしょうね。ありえないほどの天然バカが無数にいるのが今の日本の現状なんでしょう。おぞましいです。
    おかしいなって思わないところが本当にバカだなあと思います。疑っていなければ学問も成り立たないでしょうに。学者先生方(特に経済学者)は何の研究をなさっているのでしょうか。知識も知力もなく解釈もできず、世論に流されて出てくる意見に、東大教授だのハーバード卒などの装飾を施すお仕事ですかね。楽に儲けててうらやましいです。これぞ努力が実を結ぶ、ですね!

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  5. dai より

    藤井先生へ

    第一の矢を2006年の確か安倍政権の時に抹殺されてしまった(私は意図的だと思いました。)、『ディマンドルート(日銀の公定歩合を始めとした名目インフレ前提の各種操作)が機能する状態への復活』というのに変えていったらどうでしょう。失政の責任をなすりつけられそうな日銀幹部さんも飛びつきたいような内容だと思います。

    今更遅い気もしますが、(もう12年も無視され続けた・・)少なくともマクロ的に財政出動なり予算の拡充、公務員給与の毎年の引き上げなど、デフレ対策がメニューに上がらざる得ない構造へと、引き戻す事が出来る気がします。少なくともマクロ指標の連動性を考えれば・・。

    またアチラの世界に行ってしまった官僚さんが正気に戻るキッカケになるような気がします。ココの前提が変われば、論理的に考えれば、そうならざるを得ないからです。

    まあ、それでも構造改革派は詭弁で誤魔化し続けるとは思いますが・・・。でも、今の流れにくさびを打つには有効なのでは?と思います。

    あと、GDPを一人当たりでも言うようにしないと、移民増で誤魔化されてしまいます。

    以上
    失礼します。

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  6. WAk2 より

    これでいいのだ 景気いいのだ
    財政再建 バカボンボン
    衰退国家だ バカボンボン♪

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  7. […] この点は既に何度か指摘したところですが(https://38news.jp/economy/10862)、「実質成長率」は、「デフレが加速してデフレータ(物価)が下落」すれば、上昇するものだからです。つまり、「実質成長率は、デフレの深刻さの尺度」ですらあるのです! […]

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