日本経済

2017年6月26日

【三橋貴明】ザ・テンプレート

From 三橋貴明

【今週のNewsピックアップ】
ザ・テンプレート(前編)
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12285518502.html
ザ・テンプレート(後編)
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12285876505.html

民間企業の投資とは、そもそも生産能力を高めるために実施されます。そして、生産能力を高めることではない「支出」が消費になります。
当たり前ですが、十分な「消費」が存在しない状況で、生産能力を高める投資をひたすら蓄積していくと、過剰投資になります。
というわけで、国内全体で消費を最大化する必要があるのですが、そのためには消費性向が高く、かつ消費するための所得が十分にある「中間層」を増やさなければなりません。
もちろん、高所得者層が所得の多くを消費に回してくれれば、それでも構わないのですが、現実には多くが貯蓄に回ります。何しろ、人間はお腹が一杯になれば、それ以上は食べられません。
経済「学」的には、貯蓄は投資に回り、所得が国民全体にトリクルダウン(滴り落ちる)はずですが、実際にはそうなっていないのはご存知の通り。
日本は橋本政権の緊縮財政により、経済がデフレ化。民間最終消費支出(個人消費)は延々と停滞していますが、この期間、国内の所得格差を拡大する政策、すなわち「構造改革」に邁進してきました。
結果的に、日本は中間層が低所得者層へと没落していき、消費が増えにくい状況に至ったわけです。
無論、消費が停滞したとしても、投資が伸びれば経済は成長できますが、やがては過剰投資問題に突き当たります。
もっとも、日本の場合は消費が停滞する反対側で、投資はむしろ「激減」していきました。橋本政権期には年間140兆円だった総固定資本形成は、現在は100兆円前後に低迷しています。
とはいえ、橋本緊縮財政及び構造改革による中間層の没落で、過少消費に陥った日本国において、民間の設備投資が減るのは、これは当たり前です。何しろ、投資しても儲かりません。
逆に、97年以降も日本の設備投資が伸びていた場合、現在の我が国はとんでもない過剰投資状態になっていたことでしょう。
さて、現在の日本は中間層没落に加え、安倍政権の緊縮財政により、国民が実質消費を減らし続けています。
しかも、GDPデフレータを見る限り、2016年以降の日本は再デフレ化した可能性が高いのです。すなわち、企業はまたもや生産能力が過剰になっているのです。
というわけで、現在の日本に必要とされるのは、
「生産能力がなかなか高まらず、中間層を拡大するタイプの支出」
なのでございます。すなわち、政府の財政出動です。
例えば、介護報酬を拡大し、低所得者層と化してしまっている介護従事者の給料を引き上げるのです。
同時に、将来の生産能力の向上(=生産性向上)をもたらす投資、あるいは「生産能力の向上を直接的にはもたらさないかも知れない投資」を拡大する必要があります。
もちろん、交通インフラの整備や、自然災害対策のための防災、減災、耐震化等の公共投資です。
交通インフラの整備は、直近では生産能力の向上をもたらさないという点で、「消費」に近い性質を持ちます。交通インフラの整備の場合、実際に生産性が向上するのは「プロジェクト完了後」になります。短期では、生産能力を高めるわけではありません。
自然災害対策の場合は、防潮堤建設や護岸工事、直接的には生産能力を高めません(無論、民間の投資を誘因するでしょうが)。自然災害対策は、国民が「防災というサービスを消費する」ことが可能になる点からも、消費に近い性質を持ちます。
現在の日本にとって、政府の財政出動は、介護報酬の引き上げにせよ、交通インフラの整備にせよ、大規模自然災害対策にせよ、国内の「過少消費の解消」に貢献するのです。
さらに、介護分野の人件費引き上げや、公共事業における労務単価の上昇は、低所得者層を「最も消費する」中間層へと引っ張り上げる効果があります。
というわけで、現在の日本がやるべきことは明らかなのですが、財務省が主導する「財政破綻プロパガンダ」が正しい道を塞いでいます。
「ザ・テンプレート」に掲載された以下の映像では、各種の財政破綻論をデータに基づき、潰していっています。日本の明るい未来のためにも、是非ともご活用下さいませ。
【第6回「日本の未来を考える勉強会」ーデフレーションが国民経済を破壊するー 平成29年6月15日 講師:経済評論家・株式会社経世論研究所代表取締役社長 三橋 貴明氏 】
https://youtu.be/hkEaFevXWUc
http://www.nicovideo.jp/watch/sm31427954

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【三橋貴明】ザ・テンプレートへの5件のコメント

  1. 反孫・フォード より

    >財務省が主導する「財政破綻プロパガンダ」が正しい道を塞いで

     総理は更に輪をかけ加担する延々発言するばかり、
    「特区を全国に展開していきます」

    ギャグとしてなら赦せますが、ナンセンス極まりありません。

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  2. 通りすがり より

    「金を貸したら金利がついて戻ってくる」なんて誰が考え出したのでしょうか。
    まあユダヤ人なんでしょうけど。
    しかしそれは、インフレ状態だから成り立つのであって、デフレ状態では、金利をつけて返すのはより大変になるので、金貸しの方も金借りの方も、しぶるのは当たり前の話でしょう。

    言いたいことは別にユダヤ人けしからんということではありません。
    ユダヤ人が行っていた「金融業」が、あたかも「成長産業」であるとか「かっこいい職業」だと見なしている点です。
    だって取り立て屋でしょう?
    暴力団とつながっているようなことがあっても全然おかしくないじゃないですか。
    もっと地に足をつけた職業なんていくらでもあると思うんですけど。
    そう言えば、ユダヤ人は「地に足をつけていない」人種でした。

    ところで、第6回「日本の未来を考える勉強会」の動画はとてもおもしろかったです。
    昔の人はチューリップの球根を目の色を変えて買い漁っていたんですね。
    それで今は何を買い漁っているかと言うと「カブ」です。
    よく似ています。

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  3. robin より

    デフレ期は経済学の前提である供給<需要は成り立たなくなる、過剰投機熱、バブルの崩壊後はモノよりカネの方が価値が高くなり皆カネを所有したがる。レントシーカーはデフレでも儲け続けるために公共部門をビジネス化するために公共事業はやりたくないのだろう、介護分野も給与的に魅力的になれば人が戻ってきてしまう、そしたら移民で低賃金労働させて資本家の利益最大化の要求に答えることが出来ないし。

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  4. 神奈川県skatou より

    三橋先生のご活躍をいつも熱く熱く応援しております。

    中間層の没落を食い止め需要創出に効く政策ってどこらへんがターゲットなのかふと考えました。

    需要。すくなくとも子育て世帯はその気になればいくらでも消費できます。食事の向上、スポーツ、習い事、家族旅行、文化芸術、子供に「投資」は、いくらでもします。それは日本国民に対する人的投資でもあります。

    今ある児童手当は「給付型」ですが、これだと貧困家庭の救済には効きますが(無条件かつ少額)、中産階級?には、「このお金じゃ、もう一人は・・」というところでしょうか。

    そもそも、中間層、というものをどういうものとするのかも議論になりそうですね。

    価値観の多様化で標準世帯というものが無くなったのか、それとも20年の不況で「望めなくなった」のか。。。

    女性の社会進出?も一般的で、大卒女性が就職するのが普通な今、30代という人的投資の回収が始まる時期に出産だけでなく、子育てで仕事が出来ない、なにせ保育園は低所得者層優先ですから!、という事態もどうするのか。中産階級?は「預けられない、働けない、子供は一人しか無理」と言っている間に40歳を越えればもう経済的に余裕ができても・・・

    どんな中間層を描くのか。とても議論になりそうですね。

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      1. 神奈川県skatou より

        労働者単位で考えるのか、世帯単位で考えるか、というのも、どう「すべきか」かなと・・・

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