From 藤井聡@京都大学大学院教授
みなさんこんにちは、
内閣官房参与、京都大学大学院の藤井聡です。
この度、「骨太の方針」の原案が、
政府から公表されました。
https://www.kahoku.co.jp/
今年の「骨太の方針」は、
日本の「命運」を決定づける極めて重大な意味を持つもの。
そんな視点で、この骨太の方針(原案)を
本日は考えてみたいと思います。
(1)今回の「骨太の方針」が日本を滅ぼすリスク
今回の「骨太」についてまず指摘すべきは、
2025年に、
「プライマリーバランス」(PB:基礎的財政収支)を
黒字化する「目標」が「明記」された、という点です。
しかも、「2021年にPB赤字を、対GDP比で1.5%
というのをメルクマール(目印)にする、
ということも「明記」されました。
そして何より、「10%への消費増税」
すなわち,今回の「骨太」では、
消費増税とPB赤字縮小
が宣言されたわけです。
これは当然ながら、
日本がデフレ不況から脱却できないどころか、
むしろデフレ不況を悪化させるリスクがあることを意味しています
これは日本にとって極めて深刻なリスクです。
(2)今回の「骨太の方針」の下でも「デフレ脱却」
ただし今回の「骨太」には、
「デフレ脱却の余地」が幾分残されていると言う点に、
一縷の望みを託すことが―――できなくもありません。
まず、これまで明確に記述されていた
「毎年の当初予算の増分の上限値」についての記述見当たらない、
と言う点を指摘できます。
そもそも過去三カ年は、
当初予算の増分は5300億円以下、
ということが明記されていたのですが、
その記述通りに、実際の当初予算の毎年の増分は、
「5300億円」に調整されていました。
だからこうした予算増分額が明記されていれば、
デフレ脱却が絶望的になっていたわけですが、
少なくともそれはギリギリ回避されたわけです。
確かに2021年にPB赤字を対GDP比で1.5%まで
縮減することが目指されてはいますが、
19年度、20年度に徹底的な財政政策が展開され、
デフレが脱却できれば、
無理をして歳出をカットせずとも、
PBは自ずと、その程度の水準に到達することは十分あり得ます。
しかも、今年の「骨太」原案の中には、
「効果的な財政政策→デフレ脱却」のシナリオを促し得る、
次のような記述があります。
http://www5.cao.go.jp/keizai-
「
「中長期の視点に立ち、
この文章を字義通り受け止めるなら、
「政府は消費税増税をするが、
そのために確実に生ずる景気低迷をはじめとした、
実際の経済状況を踏まえた経済対策として、
財政政策を推進する。」
「財政政策を図るにあたっては、
効果的に成長を促す投資プロジェクトを計画的に進める」
という二つが謳われた事を意味します。
以上を踏まえますと、今年の「骨太」は、
第一に、当面の財政支出を
直接「抑制」する数値目標は記載されていない、
第二に、デフレを脱却させ、
成長と財政健全化のための合理的投資を奨励する記述
が記載されている、
という二つの特徴があると言うことができます。
(3)具体的に、どういう未来投資を行うのか。
以上より、今回の「骨太」には、デフレ脱却ができる可能性が
「幾ばくか」は残されている・・・・と言えそうです。
だとするなら今、効果的に成長を導き、
税収を拡大する「投資」とは一体何であり、
そのために、我々は一体何を成すべきかについて、
徹底的に考え、実践していくことが求められています。
例えば、「骨太」の中にも、
そうした投資の具体的な中身について、
以下の様なことが記述されています。
・政府研究開発投資について……対GDP比1%にするこ
・これからの時代にふさわしい国土の均衡ある発展(p. 36)
・中長期的な視点に立ち、
経済成長や豊かな暮らしの礎となる政策・プロジェクトを
全国各地域で戦略的に展開(p.46)
・広域的な高速交通ネットワーク
(高規格幹線道路、整備新幹線、リニア中央新幹線等を含む)
の早期整備(p.29)
・ストック効果の高い国際競争力の強化や国土強靱化、防災・減災
・新大阪駅について、
乗り換え利便性の観点から結節機能強化を図る。(p.29)
・・・・これらの他にももちろん、
エネルギー、科学技術イノベーション、教育、
農林水産業、観光、文化芸術、スポーツ立国などについての、
様々な「投資案件」も明記されています。
こうした個々の分野のミクロで「精緻」な議論を
具体的に検討し、一つ一つ予算化していく作業を、
可及的速やかに推進していくことが今、求められています。
そして、未だに2014年の増税のインパクトが残存している――
等の、今日の「経済状況」(p. 67)を見据えつつ、
現政権の誕生当初から掲げている
「実質2%程度、名目3% 程度を上回る成長を実現する」(p. 47)
ために必要な、財政政策を進めていく必要があります。
そもそも筆者は、消費増税やオリンピック特需の終焉、
働き方改革による賃金減少といった、
「トリプルパンチ」
を乗り越えるためには、毎年10~15兆円程度の
財政支出を「純増」させることが不可欠だと考えています。
それが実現してはじめて、財政が健全化するわけですから、
こうした投資は「財政健全化投資」に他なりません。
そして、今回の「骨太」の原案は、
そうした投資を「許容」するものであり、
かつ、それを「推奨」するものですが、
残念ながらそれを「確約」するものではありません。
だからこそ、デフレ脱却に向けた投資を実現させる戦いは、
これからますます激しく求められているわけです。
そしてその「戦い」は、今や、
「デフレ脱却を導く財政規模の確保」に加えて、
「具体的な投資案件の検討と徹底推進」ということが
具体的に求められるフェーズに入ったと言えます。
厳しい状況であることには変わり在りませんが、
まだ、絶望するには―――早すぎます。
これからも是非、
デフレ脱却、財政政策の拡充の方針に対する
国民的ご支援を、お願い致したいと思います。
追伸1:
デフレ脱却の鍵を握る「政府投資」の中でもとりわけ重要なのが「
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4819113380/
追伸2:
本日お話した「財政」の件、週刊ラジオ表現者でも『
https://youtu.be/r0W00ZfUzHk
【藤井聡】「骨太の方針2018」で、デフレ脱却は出来るのか?への10件のコメント
2018年6月7日 6:50 PM
明記されたPB及び消費増税と、あやふやな表現に終わった政府支出要件。どちらが優先なんでしょうかね。
「効率的な投資なら考えてやってもいいぞ」というニュアンスには聞こえます。しかし藤井先生がいくら投資の必要性を訴えても響かない連中が相手です。投資案件なんぞはく
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2018年6月7日 6:59 PM
投資案件なんぞ掃いて捨てるほどあるのに、見向きもしない連中ですよ。
方針に明記された投資要件にはPBを無視して必ず投資するのを決定したとか、
具体的に何兆円、明記されたいずれかの投資に使う事を決定したとか、
そんな事も望めないのですか?
これが財政拡大派の総理の意向?耳を疑うね。
文句は言いますけど諦めていませんよ。
日本の為に頑張ってください。私も目の前の仕事を頑張ります。
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2018年6月7日 7:53 PM
まぁ誠に微妙な表現ですね。かなり絶望的な気分になってましたがいくぶん希望も持てるのでしょうか?それにしても技能実習制度の緩和など壊国項目も満載で憂鬱な気持ちに陥ってしまいます。安倍さんがどこまで財出のエンジン噴かせるかこれまでの経緯見てると誠に怪しくも思えます。ともあれ先生の尽力のお陰でかすかな希望も残ったと。…益々のご活躍をお祈り申し上げます。
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2018年6月8日 12:13 AM
デフレ脱却を掲げて誕生した安倍政権。
本当にインフレにする気があるんでしょうか。
不祥事続きで弱体化の財務省に抗することのできない総理大臣では存在の意味ないでしょうに。
藤井先生のご苦労がしのばれます。
希望がわずかすぎて心が折れそうになりますわ。
移民も大推進のようですし。
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2018年6月8日 10:47 AM
いくら藤井氏が弁護しても安倍晋三は信用できない
外国勢力と手を握り、日本を解体する国賊だ。
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2018年6月8日 11:30 AM
死を経験しなければ
永遠の生命は得られない とか、、、
このままでは 蛇の生殺し 蛙の茹殺し
南海トラフ巨大地震の被害額は1410兆円
首都直下地震では247兆円 と 土木学会が試算
はたして 恙がなく再生できるか 金がなく 永遠の死を享受するか。。。
ちなみに 安倍某とかの大嘘吐き 彼には不覚にも 二度も騙されましたので
三度も騙されるほど
小生はアホでは ございません(たぶん) ♪
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2018年6月8日 1:46 PM
訂正
首都直下地震では778兆円の経済的損害が生じ
15年以内に有効な対策を進めたならば
247兆円の損害を防ぐことができる
ちなみに南海トラフ巨大地震では509兆円の損害を防げる
そうで ございます
お赦し あれ ♪
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2018年6月16日 10:44 PM
恥ずかしながら最近きずいたのですが、藤井さんって御用学者?
(笑)
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2018年6月20日 3:46 PM
現在の日本の金融制度においては、お金とは、もともと誰かの借金です。したがって、世の中のお金の量が増えるためには、誰かがどんどん借金をしなければなりません。
日本は戦後、ものすごい勢いで経済成長し、国内総生産(GDP)は約70倍に増えました。そして、生産量が増えた以上、お金の量も、ものすごい勢いで増えなければなりませんでしたが、誰かがものすごい勢いでお金を借りた(銀行から)から増えたのです。
高度経済成長期からバブル期までは、民間企業が、多額の借金をしたので、お金が増えました。
しかし、バブル崩壊以降、民間企業はどんどん借金を銀行に返し始めました。返してしまうと、世の中のお金の量は減る一方になり、貨幣経済は成り立たなくなります。
そこで、どうしたのか? 政府が国債を発行して、銀行に買ってもらい、お金の量が減らないようにしたのです。その上、なおかつ、国債発行によって得たお金を公共事業や、社会保障に当て、国政としてのサービスを行いました。
政府は、貨幣経済を成り立たせるために、お金を借りたのです。むしろ、借りなければならなかったのです。
最初にあるものは何でしょうか?
経済が発展し、生産が増大したということです。だから、どんな形であれ、お金を増やさなければならなかったのです。
もし、生産の増大が全くなかったのに、国債を発行してお金を借り、公共事業などを行っていたなら、確実に悪性インフレになっていたでしょう。しかし、生産の増大があったのです。
要するに、生産の増大、経済の発展の度合いだけ政府の借金が積み上がったのです。
以上のことを、どう考えれば良いのでしょうか? 端的にいましょう。国債は政府(国)の借金ではなく、貨幣の供給であったと言うことです。
ameblo : tcsailのブログを参照ください。
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