日本経済

2016年11月22日

【藤井聡】最大のワイズ・スペンディングは「当初予算の拡充」である

FROM 藤井聡@内閣官房参与(京都大学大学院教授)

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安部総理&与党総裁は、「アベノミクスのエンジンを最大限に吹かし、デフレからの脱出速度を確保する」ことの必要性を主張しておられます。
https://www.jimin.jp/news/press/president/132402.html

そして、アベノミクスの指南役の中の最重鎮であられる浜田参与は、今求められているのは、金融政策のみでなく「財政政策」であると力強く主張しておられます。
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO09531030U6A111C1EE8000/
http://jp.reuters.com/article/koichi-hamada-interview-idJPKCN12Q1I5

つまり今、安倍内閣中枢では、

「デフレ完全脱却を果たすために、財政政策を拡充することが不可欠」

という認識がコンセンサスを形成する状況に至っていると考えられます。

そしてその認識に基づいて、現在、事業規模28兆円の財政政策がまさに閣議決定、補正予算国会決議を皮切りとして展開されようとしています。

そうなれば、これからその財政政策を如何にして展開すべきなのか、という議論が重要なテーマとなります。

この点について、筆者は次のように考えます。

―――――――――――――――
第一に拡充すべきは、補正予算でなく「当初予算」である。

その上で第二に、それだけで「脱出速度」が確保できないなら、その不足分を「補正予算」で「補正」することが必要である。
―――――――――――――――

こうした認識は既に、メディアインタビューの中でお話しているところなのですが、
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-16/OGQ1P76KLVR701
なぜ、その様に考えているのか…..については、紙面の都合上、上記記事では十分に記述頂けなかったので、ここでその理由を改めて論じてみたいと思います。

そもそも、財政政策を行う基本的理由は、

「デフレギャップを埋める=総需要不足を埋めるために、政府支出を拡充する」

ことが、総理が求める「デフレ完全脱却」を果たすための

  「必要条件」

です。

―――とはいえ、政府が財政を行う時に、しばしば言われるように「穴を掘って埋める」様な「無駄」としか言い様の無い事業ばかりに財政支出するのは、非効率極まり無いと言われたとしても仕方ありません。

したがって、現実の政治においては、ケインズが比喩として暗示した「穴を掘って埋める」ような項目に支出することは回避すべきであることは論を待ちません。

そこで重要、あるいは必須となるのが、

「ワイズ・スペンディング」

という「かしこく支出していく」という態度。

つまり、財政支出の拡大分は、国益を最大化するようなものに、効果的に充当していく態度が不可欠なわけです。

――――

ところで、財政政策を行うには、基本的には二つの方法があります。

一つが「当初予算」の拡充であり
もう一つが「補正予算」の拡大です。

もちろん、デフレギャップを埋める、という数字だけの話なら、どちらでも構わない、ということになりますが、「ワイズ・スペンディング」の立場にたつなら、両者においてより重要なのは、前者の

「当初予算の拡充」

です。

なぜなら、「補正予算」というのは、「ワンショットの一発限りの支出」となることが否定できない一方で、「当初予算」は、「毎年安定的に支出可能」となるからです。

ここで、「民間の反応」を考えたなら、補正予算の場合は、

「今年は支出されたが、来年はどうかわからない――」

と認識されても致し方なくなります。ところが当初予算の場合は、

「当初予算が拡充されたなら、今年だけでなく、来年も再来年も、当面の間は、その項目は支出されるのではないか――」

という

「期待」

が形成されることになります。

そして、浜田参与を中心としたいわゆる「リフレ派」の皆さんが主張しておられるように、

「期待」

が、民間投資においてきわめて重大な役割を担うことは論を待ちません。

したがって、当初予算で充当された項目は、当面支出されるだろうという期待が、補正予算の場合よりもより強力に形成されることになるのです。

したがって、「当初予算」で財政政策を行う方が、「補正予算」でそれを行うよりもより強力に「将来の政府投資期待」を醸成し、それを通して「民間投資」をより強力に喚起することができるのです!

例えば小さな一例を紹介するとするなら、(筆者はたまたま)本日、福井に訪れたのですが、いま「福井駅」では様々な投資が進められていることに、驚愕しました。

福井駅といえば、これから6年後に北陸新幹線が接続することが予定されているのですが、この予定が、福井駅前で商売をすれば儲かるのではないか、という「期待」を強力に造成しています。その結果、駅前では実に様々な投資が進められているのです!

繰り返しますが新幹線が来るのは今から6年も先のこと。なのに、様々な投資が進められているのは、新幹線が来るという「期待」が、人々の投資マインドに火をつけているのです(!)。

そして言うまでもなく、福井に新幹線が通るのは、毎年定常的に支出される「当初予算」が、福井の新幹線投資に充当されているからです。これが万一、補正予算しか無かったとするなら、福井に新幹線をつなげるという話はほとんど前に進んでいなかったでしょうし、その結果、それに付随した新たな投資が強力に進められることもあり得なかったのです。

つまり、今の福井における「期待」だけに基づく投資は「当初予算の拡充」によってもたらされたのです!

これこそ「ワイズ・スペンディング」の一つの具体の形であり、これは補正予算だけではなしえなかったことなのです。

したがって、より強力に総需要を増進させるのなら、補正予算よりも当初予算の拡充がまず求められるのです!

とはいえ、当初予算をいきなり、10兆円も20兆円も増やすことは、実務上きわめて困難。せいぜいできるとしても、数パーセント程度ずつの拡充しかできない、というのが実情です。

実際、筆者も、下記インタビューでお答えした通り、当初予算の次年度に向けての拡充額は(少なくとも)2.3兆円程度が適当ではないかと考えています。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-16/OGQ1P76KLVR701

なお、当方が2.3兆円が最低必要なのかといえば、次の論理によります。

第一に、政府は2020年ごろの600兆円経済実現をコミットしている、
第二に、その目標達成にはGDPが毎年3.1%の名目成長率が必要である、
第三に、そうだとするなら政府支出もまた毎年3.1%(金額にして2.3兆円)ずつ拡充させていくことが必須だ、ということになる。

―――という次第です。

ただし、2.3兆円の当初予算の拡充だけでは、「デフレ完全脱却のための脱出速度の確保」は困難です。なぜなら、ネットの資金需要から推計したデフレギャップが15兆円規模で存在するからです。

したがって、2.3兆円の当初予算の拡充では不十分である分については、当初予算の確保が必要となる、と考えている次第です。

―――

以上いかがでしょうか?

デフレギャップを埋める総需要喚起が必要である、というところまでいま、政府中枢のコンセンサスが取れていると考えるのなら、その次に求められているのは、より具体的なデフレ脱却戦略だ、ということになります。

そしてそのために今、何よりも重要なのは、上記の論理に基づいた「当初予算の拡充」を軸とし「補正予算による補正」を付加した財政政策なのです。

そもそも今、まさに政府において、次年度当初予算の議論が佳境を迎えている、と報道されています。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-21/OGZ27J6TTDSB01

その議論において、以上の論理が参照されることを、心から祈念いたしたいと思います。

追伸:真のワイズスペンディングを考えるためにも、是非、下記をご参照ください。
https://goo.gl/Jcqhm0

—発行者より—

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★★★★★:山本直美さまのレビュー

豊洲問題は、完全に小池百合子劇場に取り込まれていました。

解説を聞いてはっきり理解でき
月刊三橋の会員でよかったと心から思いました。

プロパガンダに騙されないつもりでいても、
見抜く知識や経験のなさで、簡単に
騙されるものだということがよくわかりました。

今回教えていただいた
1)恐怖プロパガンダ
2)ルサンチマン・プロパガンダ
3)木を見せ森を見せないプロパガンダ
をしっかり理解してこの3つのプロパガンダに
対しては騙されない人間になります。

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  1. 學天則 より

    わいずぺいんでぃんぐではなく、わいずすぺいんでぃんぐですがぬけておりました。愚痴ついでですが所詮、言葉は答えでマニュアルでありそれは賞味期限があり見えない実務能力ではありませんという考え方を誰も周囲は理解してくれません。精々、孫武が兵は詭道也と答え無しと慰めて下さる程度です。でもマクドナルドのマニュアルバイトはあまり地位が高くはないようです。その地位もマニュアルでそうしたのでしょうかw地球で生ているリアリティのある地球人がこの列島からはすっかり居なくなった様です。

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  2. 學天則 より

    一方、その頃、大阪市ではHGウェルズの宇宙戦争の様な火星人=維新と木星人=反維新の戦いが大阪市民=地球人の植民地支配権を巡って、繰り広げられているのであります。やってほしいのは実務であります。欲しいのはあくまで結果=生産性です。顧客の生産性向上を支援するサービスです。大阪市では、より素晴らしい「わいずぺいんでぃんぐ」とやらの仕組みづくりの議論の為に総合区がどうやら特別区がどうやらと建前で言っておりますが、その内実はなるべく、その「わいずぺいんでぃんぐ」を歪め自治によるチェックを逃れたい古参の木星からの中之島一家星人と新参の火星人からの維新星人どもが地球人である大阪市民を搾取し甘い汁を吸いたい側と吸い続けたい側の侵略の為に上から目線で自治制度を押し付け合い、もう無駄に醜い争いで数年も揉めており、戦場となっている大阪は荒廃の一方で有ります。顧客へのサービスを怠り揉める様な店は倒産するのであります。揉めるべき重要なのは顧客へのサービス内容についてであり、会議の設置方法など今更0から議論する必要もなくノウハウは過去に出尽くしているであろうし、そうでなきゃ国家も企業も統治機構がしっかり確立されこんなに、ほいほい、あちらこちらに存在しないのであります。何をしたらいいかわからないので会議のやり方で揉めて存在意義を誇張する異星人どもをチェックする方法はあるのでしょうか?彼らには現地の地球人で地球の組織を管理した事のある実務家さえ言語が通じないwどうすべきかと言う事は過去、数千年で明らかなのに無駄に揉める車輪の再発明をしたがるエイリアンどもとの戦いは地球人類の私には想定外であり、総長が非人類の研究をされている京大の方がまだ対処を詳しいのではないかと思います。人類のTPOから外れている連中をチェックする方法をご教授お願いします。彼らには地球の常識が通用しません。藤井先生wSOS!ここはあくまで地球上で有り、彼らの脳内で作り出した亜空間ではありません。

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  3. ぬこ より

    今日の産経一面に、水道管漏洩化と水道事業批判の記事があり、同時に水道事業民営化も検討すべきだとする論調で記載ありました。とうとう、来たか!(笑)、という感じですよね。麻生閣下も水道事業民営化を言ってましたよね。何処まで米国(の多国籍企業)に媚びるんでしょうかね。水や電気は民営化して良い分野では無いですよね。郵政だって日本は民営化ですが、米国は官営でしたっけ?郵貯の仕事をしている人に聞きましたけど、大株主はシティバンクなどの所謂国際金融家ですよね。別に、ジャパンハンドラーなどの政治圧力をかけなくても、民営化させて自由な市場で株式投資すれば、日本経済を間接的に操る事はできますもんね。金融機関だって派遣会社だってコンビニだって、その株主の多くは外国投資家になってますよね。内需主導で日本企業に仕事が増えても、果たして、それらが日本で働く日本人の富の増加になるんでしょうか?外資に比較的買われていない中小企業だって、そこに融資をするのは金融機関ですし、取引先は大企業で、いずれにしても外国人投資家の意向というものが働きますよね。政治は、構造改革・事業仕分け・アベノミクスと、いずれもそうした米投資家の為の政治をしてますから。プーチン閣下に新日米FTA交渉担当相をして頂きたい気分どす。

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  4. 反孫・フォード より

     かしこくはない貧脳民ですが失礼します。 藤井先生も非情に苦しい立場にいながらにしてこうまで優しい鞭撻をされていることに敬意を感じます。(私ごときが言えることでは全くありません。とは自認しているつもりですのでご了承ください) 共産党なんかは共産党であるにもかかわらず公共投資を嫌うのはいかがなものと思います。しかし、アイドルを誇る小泉Jr.はじめ、自民党もスピードとか加速とか効率ばかりのフレーズで国民を騙す安倍内閣や竹中会議や小池渡世の脳内世界では、じっくりとか吟味とか熟練とかの言葉は望むべきもない気がします。トップダウンで降ろすのが新自由主義嗜好有識者多数で創る会議なのはもうやめもらいたいです。明らかに日本のインフラは劣化しています。国際友好も大事でしょうが、国内インフラはボロクソです。日本中をブラックアウトさせたいのでしょうか?トップダウンで降ろす内容が真逆です。まるでSoftBankの孫社長です(私のアホなmy頭の中では)。

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  5. 拓三 より

    仰る通りだと思います。時期米国大統領トランプ氏が10年で110兆円規模の公共事業を歌っていますが、これはまさに今年G7で安倍総理が各国首脳に持ちかけた財出拡大を米国が受け入れたと理解するべきです。もし、ここで言い出しっぺの日本が何時もの様にウンコにウジ虫が蠢めくかごとくの「米国が景気対策を行えば輸出が期待出来るので財政を拡大する必要がないのではないか」と言う政策は事実上破綻したと同じで、米国と共に財出を拡大する以外、道はありません。と言う見方もできます。今、世界は需要縮小局面に入っている最中。まして米国も世界の需要を吸収する力が無いと宣言した中、TPPだの自由貿易など言っている場合では御座いません。「自由貿易は経済成長には欠かせない」と言う幻想はバブル前の「土地は下がらない」と同じ様なもの。今世界は各国が自力をつける局面であり、つまり内需拡大そして次の局面に備えての技術進歩であります。日本はそう言う意味ではアドバンテージを持っています。今こそそのアドバンテージを発揮し、わがままに使う時です! 日本に借金はございません!世界トップの金持ち国家です。先人が作り出した財産を外資に見す見す吸い取られるよりも、次の局面に向けた国力に使う事こそが『生きたカネ』の使い方であります。

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  6. はっちゃん より

    今週もありがたく読ませていただきました。以前ある本で「今はグローバリズムよりもインターナショナルを目指すべき」というのを読んだことがありますが、トランプ氏はどちらかとう言うと反グローバリズム、インターナショナルな考え方であるように見えます。イギリスのEU離脱もその流れにあるように見えます。グローバリズムの世界ではアメリカが日本などに圧力をかける場合、主に「公共投資にアメリカ企業も参入させろ」とか「アメリカ企業の参入の障壁を撤廃しろ」などとやりそうですが、インターナショナルな世界では「日本は内需を拡大してアメリカからの輸入を拡大しろ」とか「アメリカ軍が駐留するための負担を日本はもっと負え」などとやるのかもしれません。30年近く前、日本はアメリカの圧力で内需を拡大するに至ったということを聞いたことがあります。当時はデフレなどではないので、その帰結としてバブル経済が発生したのかもしれません。しかし、今はデフレです。それも20年近くも。よって、確かに補正予算で一時的に「経済対策」をしたところで民間がそんなに簡単に「これから需要が増える。投資しよう」と考えるとは考えにくいです。当初予算で公共投資がたくさん盛り込まれていると「少なくとも現政権では公共投資は拡大していく」と考え、投資に打って出る経営者は多いかもしれません。馬に水を飲ませるのに牛を連れてきていくら「この水は安全だよ」と言わせたところで、馬が水を飲むとは思えません。やはり牛に水を飲ませることが一番「この水は安全だ」というメッセージになると思います。

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