日本経済

2016年6月11日

【青木泰樹】出口戦略の正しい考え方

From 青木泰樹@京都大学レジリエンス実践ユニット・特任教授

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「日本が国債破綻しない24の理由 ~国の借金問題という<嘘>はなぜ生まれたか?」
http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag1.php

p.1 日本は「国の借金」でなぜ破綻しないのか?
p.13 ”国民1人当たり817万円の借金”を広める財務省の記者クラブ
p.20 日本国民は債務者ではない、「債権者」である
p.36 かつて、本格的なインフレーションが日本を襲った時代があった
p.42 “日本は公共投資のやり過ぎで国の借金が膨らんだ”は全くの嘘
p.55 グローバリストから財務省まで、消費税増税を訴える人々の思惑

http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag1.php

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消費増税の先送りが決まり、日本経済はデフレ不況への逆戻りが避けられたという意味で、ひとまず虎口を脱した感があります。
もちろん、「増税ができないのなら、歳出削減を。財政出動などもっての外だ」といった財政均衡主義者たちの怨嗟(えんさ)の声は今後も続くでしょう。
緊縮財政(経済を委縮させる財政運営)を唱えることは彼等の仕事のようなものですから。

今回、増税凍結にまで至らなかったのは残念でしたが、再増税まで三年あります。
それまでの間、景気動向に関わらず緊縮財政を主張することの誤りを正すとともに、景気状況ならびに経済成長と整合的な適切なる財政運営について政治家、マスコミ人、国民一般へ周知させる猶予が与えられたと前向きに捉え、一言論人として責任を果たすべき期間であると考えています。

振り返れば2014年11月に安倍総理が消費増税の延期を表明した直前の状況は、経済学者、エコノミスト、財界人、マスコミ人、政治家のほとんどが2015年10月からの消費増税を予定通り実施すべきとの大合唱でありました。
黒田東彦日銀総裁などは、「消費税増税を先送りした場合、財政再建への疑念から国債価格が大きく下がったりすると、財政・金融政策では対応できない」と脅しまがいの発言をしておりました。

しかし、今回、先送り反対の声は前回同様上がっておりましたが、かなりトーンダウンしていたように感じました。
「財務省は嘘をついている」までの認識には至っておりませんが、「財務省の言うとおりにしたら、(理由はよくわからないが)大変なことになるかもしれない」という疑念が各界各層に芽生え始めたのかもしれません。

本日は、そうした「財務省への疑念の芽」を大きく育むために、日本の財政問題について分かり易くお話しします。
結論から言えば、現状の量的緩和政策の下で、政府と日銀の協調による適切な出口戦略をとれば財政問題は解決しますが(すなわち「日本に財政問題は存在しない」)、主流派学者の主張するような一般に考えられている出口戦略をとれば、経済的混乱を伴いながら財政問題は永遠に解決しないということです。
また、それに関連して著名な主流派経済学者の詭弁についても解説します。

財政問題とは国債残高の累増に起因する悪影響を指します。
具体的には、「利払いが増え続ける」、「借金が多過ぎて返せなくなる」、またそれに関連して「(政府の信用が低下して)金利が上昇する」といったことです。
現在の国債残高は800兆円余りですから、それをどう解消するかが問題なのです。
決してプライマリー赤字(平成28年度予算で11兆円弱)が問題ではありません。
もしも800兆円の国債残高が解消するなら、名目GOPの2%程度のプライマリー赤字など気にする必要もありません。

財政問題が正しく認識されれば、問題が解決された状況も明らかです。
それは「利払費が増えない(もしくは減少する)」、「国債償還が円滑に行われる」、「金利が上がらない(もしくは低下する)」状況です。
それが実現したとき、財政問題は解決したことになります(まさに現状はそうですが、より完全な解を今日は考えます)。

具体論に入る前に、マクロ経済の基本画面を確認しておきましょう。
経済学の想定では、主流派もケインズ経済学も、単純に政府部門と民間部門を対置させて考えますが、それが間違いのもとです。
現実的には、私が以前から指摘しているように、政府ムラは「政府」と「中銀(日銀)」から構成され、民間ムラは個人や企業から成る「民間非金融部門」と金融機関から成る「民間金融部門」から構成されていると捉えることが肝要です。
今、政府ムラを「統合政府」と呼称しておきます(政府と日銀の連結形)。

ベースマネー(現金)は、非金融部門の保有している現金(C1)と金融部門の保有している現金(C2)の合計です(C2は日銀当座預金に超過準備として積まれています)。
マネーストックは、非金融部門(実体経済)の保有する現金(C1)と預金(D)の合計です。マネーストックの増加、特に最終財の購入に向かうカネの量(活動貨幣量)の増加が、名目GDPや物価に直接影響するのです。

さて、財政問題解決の手段に進みましょう。先ず、入り口から。
国債問題は、残高水準が問題ではなく、保有主体が問題であると常々論じてきました。
国債を民間が保有していれば、利払いも必要ですし、償還もしなければなりません。
それゆえ国債残高が増えると困ったことになるわけです。

しかし、日銀が国債を保有している場合、日銀への利払いは経費を除いた分が国庫納付金としてブーメランのように政府に戻ってきますし、償還に際しても後に述べるように現行法の枠内で工夫をすれば政府に負担は生じなくなります。
したがって、民間保有の国債を日銀へ移し替えることによって財政問題は解決することになります(もちろん、国債は民間金融機関の重要な運用手段ですから全てを取り上げるのではなく、国民が財政問題を気にしなくなる程度の量を買い取れば充分です)。

国債は政府のバランスシートでは負債に計上され、日銀保有分は日銀のバランスシートの資産に計上されますから、両者を連結した統合政府を考えれば、日銀保有分の国債は統合政府のバランスシートから消えてしまうのです(日銀が国債を全部買ったら全て消え去る)。

図らずも日銀が現在実施している量的緩和政策(年間80兆円の国債を買い取る政策)は、国債を民間から日銀へ移し替える政策ですから、私は財政問題の解決策として適切な手段であると考えております。

もちろん、私はリフレ派の意図する「量的緩和とコミットメントによって期待インフレ率を2%にする」という政策効果に関しては疑念を呈してまいりました。
先程の基本画面を用いれば、量的緩和政策は金融部門の保有する現金(C2)を増やすだけの政策ですから、マネーストック(C1+D)を直接増やすことはできないのです。

出口に向かいましょう。仕上げが肝心です。
量的緩和によって日銀が保有している国債残高は、平成28年5月末時点で370兆円余りになりました。
3月末時点での普通国債発行残高は805兆円ですから、約45%強を保有していることになります(財投債を含めた内国債は900兆円ですから、それに対しては40%強)。

量的緩和は継続中ですので、日銀保有の国債は今後さらに増え続けます。
さて、これをどう処理すればよいのでしょう。
答えは簡単です。
日銀保有国債のうち償還期限が到来した国債を、その都度、政府の新たな長期の無利子国債(ゼロクーポン債)と交換していけばよいのです。

ここでの交換とは、「政府の借換債(長期の無利子国債)を日銀が引き受けること」を意味します。形式上、日銀引き受けで得たカネを政府は償還資金に充てるという構図です。
それによって日銀のバランスシートの資産側では、償還期限のきた国債が無利子国債に置き換わるのです。
他方、政府のバランスシートの負債側では普通国債が減り、無利子国債が増えていきます。
ここで無利子国債(ゼロクーポン債)を使うことが重要です(ゼロクーポン債とは利息がゼロの債券で割引債のこと)。

このプロセスを継続していけば日銀のバランスシートの資産側(普通国債プラス無利子国債)において、徐々に無利子国債の比率が増してゆきます。
それによってマネーストックは増えませんからインフレにもなりません。
もちろん日銀保有の全ての国債を無利子国債に置き換える必要はありません。
日銀は、景気過熱時に引き締めのために使う(売却する)普通国債を保有しておく必要があるからです。
腰だめの数字ですが、日銀保有国債のうち6〜7割を無利子国債に置き換えれば十分だと思います。

こうした状況に至れば、日銀は金利上昇におびえる必要はなくなります。
巷間言われている「金利が上昇すると(国債価格の下落)、日銀のバランスシートが毀損するから(国債資産の評価損の発生)、日銀の信認は低下し(インフレを招き)、経済は大混乱する」という懸念は、無利子国債には当てはまらないからです。
無論、政府の利払い費も減りますから良いことずくめです。

私の主張する出口戦略は、荒唐無稽な提案ではなく、現行法内で実現可能なものです。
財政法第5条の但し書きの規定により、現在も「日銀保有国債の中で償還期限が到来したものについては、借換えのための国債を日銀は引き受けることができる(日銀乗換)」ことになっています。
現在、日銀が引き受けている借換債は1年物割引短期国債で、その償還期限には現金償還が行なわれています。
それを運用上の工夫によって、長期の無利子国債に置き換えればよいだけの話です。
それによって日本経済を長年苦しめてきた財政問題(正確には誤解)と決別できるのです。

反対に、主流派経済学者の言うとおりの出口戦略をとれば大変なことになります。
彼らは「経済理論上、国債は民間が保有するもの」と頑固に考えているからです。
理論通りに、「入口(日銀の国債買い取り)から出ろ(民間への売り戻し)」というのです。
量的緩和を止め、日銀保有の国債を少しずつ債券市場で売るとどうなるか。
すぐさま金利が上昇し、経済は大混乱に陥ります。
その混乱を横目で見ながら、主流派学者は「うん、うん、理論通りになった」と笑みを浮かべるのでしょうか。

主流派学者は「日銀の買い取った国債は統合政府のバランスシートから消滅する」という当たり前の事実にも難癖をつけています。
政策研究大学院大学教授の井堀利宏氏は、「日銀が国債を買えば統合政府で見ると国債は減っているが、代わりに負債として日銀当座預金が増えているのだから国の債務が消えたわけではない」と論じています。
http://diamond.jp/articles/-/91162?page=4

経済学では「貨幣は政府の負債(日銀券は日銀の負債)」と定義されますから、統合政府と民間を対置させた場合、民間保有の国債が減ったとしても同額の貨幣が増えているのだから民間への負債額は変わらないと言っているのです。
しかし、これは詭弁ですね。
民間が国債を保有していれば、政府は利払いも、償還もしなければなりません。
他方、銀行券の場合は、利払いをすることもなく、償還の必要もないのです。
定義上、どちらも統合政府の負債ではありますが、国債は「政府の負担になる負債」であり、現金(銀行券)は「政府の負担にならない負債」です。意味合いが異なるのです。
井堀氏は、意図的に(?)、両者を同一視しています。
「利払いと返済の必要のある住宅ローン」と、「利払いも返済も必要のない住宅ローン」があるとして、借り手にとって両者は同じ負担だと考える人は、滅多にいないでしょう。主流派財政学者を除いては。

〈青木泰樹からのお知らせ〉
4月のコラムで労働生産性についてお話ししました。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2016/04/09/aoki-25/
そこでの議論をもう少し分かり易くした論考「労働生産性をめぐる合成の誤謬」を書きましたので、関心のある方は参考になさってください。
http://asread.info/archives/3235 

ーーー発行者よりーーー

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日本が途上国支援を続けられる訳
消費増税、高齢化、千兆円の政府債務
借金大国の日本が世界貢献できる訳とは・・・
http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag1.php

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【青木泰樹】出口戦略の正しい考え方への4件のコメント

  1. たかゆき より

    ist ♪マルキスト テロリスト ニヒリストの資質を有するのが 彼等です彼等とは、、 推して知るべしそして 彼等の教祖様がフリードマンやルーカスたちなんたって ノーベル賞を頂いてますから、、、これで ノーベル経済学賞が いかほどのものか推察可能 かとたしか スウェーデンなんたら銀行賞のはずそれを ノーベル賞とは 見事な虚構!!ちなみに教祖様たちの 狙いは 何か??>全人類の経済の営みに、あえて、甚大な打撃を加えようとしているわけである。これは、まさに、アンヒューマンなニヒリズムの極致という 丹羽春喜の意見に 激しく同意するもので ありますテロリストに ノーベル賞ですか 、、やるもんですねこれが ありなら ISの戦士たちには 十分に ノーベル平和賞の受賞資格が あるのだ ♪

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  2. 學天測 より

    すいません。経済学だのなんだの金科玉条或は免罪符の呪文の様に唱えるが、仮説は実証されてです。言いたいことは経済学以前の人間形成に問題があるとしか思えない。学者であると言う事は全て物事の正邪を計る天秤をどうあるべきかを計る事に帰結する訳で、それは現実と対話する為である。そこがおかしい、現実を無視し捻じ曲げ、人を騙す技術に特化した連中が学者などと言うのは詐欺師を学者と言うの等しい。学者である以上はその学問領域で御託を並べる前にまずそういう学問の目的とする前提を大事にするはず。それは教育基本法の目的レベルの話。義務教育レベルで法律でうたわれている内容を教授だなんだのが無視していては教育の足腰さえ成り立たない。オッペンハイマーが原爆が投下されて、自らの研究を悔いたように優れた学者程、自分の学術領域より、その前提を大事にするものだ。私が政治家に成る事があれば日本の公的な職にある経済学者は嘘つきとして全て弾圧します。これから政治家に成る若い世代にはそういう人も多いのではと思う。それが、この国を救う方法だ。

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  3. 學天測 より

    経済学だの金科玉条或は免罪符などと唱えるが、仮説実証されて初めて意味がある。不況が続くと言う事は実証的に主流派と言われる連中は現実に否定されている。そして主流派がおかしいからといってそうでない連中が肯定される事もない。学問はやはりなんらかのできうるかぎりの実証的な証明が必要だからだ。それでも主流だからとか、そうでないから正しいというのなら、むしろ、そんなデマゴーグの事実さえ捻じ曲げて嘘をついて自己を正当化できる連中が幼いころから、どのような環境で育ち、どの様な人間形成をしてきたか調べるほうがよっぽど人類の役に立つ学問になるのは確かですね。歴史を見れば大抵、問題を引き起こしているのは事実を見ようとしない、嘘つきが権力を持ったときです。まあ、事実を見ないで空想で動けば失敗に繋がるのであたりまえですがね。

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