From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家
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TPPはアメリカの巨大グローバル企業に日本という市場を差し出すための条約だったことが明らかになったのだが、そのことには目を瞑り、「これでアメリカとの安全保障が強化された」などと意味不明な理解でTPP賛成を叫ぶ寝ぼけた人たちに、三橋貴明が目覚めの鉄槌を振り下ろす。
『月刊三橋』最新号
「TPP大検証〜日本を貧困化させる新たなる不平等条約なのか?」
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php
※このテーマを聞くには3/10までにお申込みください
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「金融機関叩きにご用心?」
From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家
おはようございます。
今週火曜日、2015年10−12月期のGDP統計 2次速報値が発表されました。
実質GDP成長率は、1次速報値の前期比年率マイナス1.4%からマイナス1.1%に「上方修正」されていますが、その大半は、民間在庫投資の拡大によるものです。
これが、経済全体の需要が活発な状況に対応した結果なら良いのですが、いかんせん、ただでさえ落ち込んでいる民間消費はさらに下方修正されています。
すなわち、「売れ残りの拡大」が今回のGDPマイナス幅の縮小要因という訳で、事実上「下方修正」というべき結果です。
3月8日発表のGDP統計2次速報値より。「上方修正」という報道とは裏腹に、消費低迷と売れ残り在庫拡大が一層顕著になった、むしろ「下方修正」というべき結果です。
↓参考記事はこちらhttps://t.co/qcQnryqKFy pic.twitter.com/CIsT81P7KD— 島倉 原 (@sima9ra) March 9, 2016
http://on.fb.me/1QBXJox
さて、今回も引き続き、マイナス金利政策についての話題です。
前回はどんな話だったっけ、という方は、前回の「マイナス金利政策の弊害」あるいはそちらで紹介した拙ブログ記事「リフレ派金融政策の破たん」をご確認下さい。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2016/02/25/shimakura-43/
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-146.html
「金融機関」というと、銀行や信用金庫、信用組合などの「預金取扱機関」が真っ先に思い浮かぶでしょうが、生命保険、損害保険といった保険会社もまた、金融機関に属します。
その生命保険会社の間で、保険商品販売停止や、保険料値上げの動きが広がっています。
原因はもちろん、マイナス金利政策による市場金利の低下です。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGC23H0P_T20C16A2EE8000/
保険会社は、預かった保険料を運用して増やし、事故が起きた時に契約者に分配することで成り立っています。
その保険料は、保険会社の収支に関わる、次の3つの要素で決まるとされています。
1つ目は、保険契約者が事故に遭う確率で、生命保険の場合、死亡確率が高いほど保険料は上昇します。
2つ目は、保険会社の運営に必要な経費で、経費がかかるほど保険料は上昇します。
3つ目は、事故に遭って保険金が下りるまでに、既に払い込まれた保険料を保険会社が運用して得る利回りで、利回りが低いほど保険料は上昇します(銀行に置き換えれば、預金金利の引き下げに相当します)。
長期で資金運用する生命保険会社や年金基金といった金融機関にとって、長期国債は重要な運用手段であり、黒田日銀による異次元金融緩和で利回りが一段と低下する状況においてすら、銀行セクターとは逆に保有高を増やし続けてきました。
そうした事業の前提がマイナス金利政策によって崩れた結果、保険商品の販売停止や保険料の値上げに追い込まれているという訳です。
今は違うのかもしれませんが、生命保険はかつて「住宅に次いで、人生で2番目に高い買い物」と言われていました。
よって、生命保険料の値上げは少なからず家計を圧迫し、さらなる消費の落ち込みをもたらしかねません。
もちろん、保険商品の販売停止が貯蓄や資産運用の選択肢を減らしている点も、家計にとってはデメリットです。
前回ご紹介した、マイナス金利政策下のスイスにおける住宅ローン金利の引き上げは、いわばその銀行バージョンと言えるでしょう。
日本でも、同様な動きが起こらないとも限りません。
http://jp.reuters.com/article/ecb-negative-column-idJPKBN0TL0A720151202?sp=true
家計の圧迫という意味では、「銀行従業員の賃上げ凍結」という、安倍首相の掛け声にも反する形で、既に直接的な影響が出ています。
https://twitter.com/sima9ra/status/703348791399714817
しかも、生命保険会社への影響はこれだけにとどまりません。
今よりも金利が高い時代にかわされた保険契約は、ある程度の余裕は持たせているとしても、その後の毎月の保険料が、基本的には当時の金利を基準とした利回りで運用されることを前提としています。
つまり、その後予想外に金利が低下すれば、市場実勢よりも安い保険料で契約を続けなければならない「逆ザヤ」と呼ばれる状態に陥り、保険会社の収支は圧迫されます。
生命保険や年金保険のように、長期間にわたる契約関係を前提とした商品ほど、その影響は大きくなります。
実際、1990年代後半から2000年代前半の日本で、多くの生命保険会社が経営破たんしたり、外資に買収されたりしたのは、個々の会社の経営の巧拙以前に、こうした逆ザヤの影響が大きかったのです。
金融機関の経営が不安定化すれば、お金の流れに支障をきたし、実体経済にも少なからず影響を与えることは言うまでもありません。
下記で引用したウォール・ストリート・ジャーナルの記事などは、マイナス金利政策で先行するヨーロッパの保険会社にこうした影響が及ぶリスクについて、警鐘を鳴らしたものと言えるでしょう。
https://twitter.com/sima9ra/status/706003823869849600
気になるのは、こうしたマイナス金利政策の影響が、歪んだ形で「金融機関叩き」を引き起こさないかということ。
1990年代後半にも似たようなことはありましたし、「公務員叩き」や「議員叩き」と並ぶ、経済政策の失敗により国民全体が豊かさを実感できない中でのルサンチマン(ねたみ)的な現象として、用心すべきではないかと思います。
まず考えられるのは、経営が悪化した金融機関に対して「経営努力が足りない」と批判し、あまつさえ経営不安を煽り立てるもの。
例えばこちらのツイートなどは、そうした動きを予感させなくもありません(ご本人がご満悦だったように、この手のツイートにしては驚くほど拡散されています)。
なお、こちらに限りましては、くれぐれもリツイートなどしてこれ以上拡散せぬよう、取扱いにはご注意願います(笑)。
https://twitter.com/YoichiTakahashi/status/694728069823594497
拡散されるなら、例えばこちらはいかがでしょう。
「盗人猛々しい」というリフレ派批評がなぜケッサクなのか・・・その答えは、あえて解説しないでおきましょう。
https://twitter.com/sima9ra/status/703465882576515072
他方で、厳しい事業環境に置かれた金融機関が、他の収益源を求める結果として、割高あるいは高リスクな金融商品を十分説明せずに販売しようとして社会問題化し、結果として金融機関叩きが強まることも考えられます。
こちらについては、国民として冷静な視点を保ちつつも、ご自身の家計にその火の粉が降りかからぬよう、別の意味のご用心もお忘れなく。
↓最後に、今回の記事が「参考になった」と思われた方におかれましては、下記サイトにアクセスの上、より多くの方への共有、拡散にご協力いただければ幸いです。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-151.html
〈『島倉原の経済分析室』より〉
30年ぶりの安値に転落し、経営不安もささやかれるドイツ銀行。
実はある世界史上の大事件を振り返ることで、その背後にあるメカニズムが見えてくるのではないか・・・経済や金融市場の分析にとどまらず、国際情勢にご関心の方にも参考になる論稿かもしれません。
↓「ドイツ銀行株急落をもたらした歴史的サイクル?」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-149.html
不安定な株式市場にマイナス金利政策も加わり、巷では投資対象として金(ゴールド)への関心が高まっているようです。
国内では子孫に残す資産として高齢者の購入が増え、海外でも一部の著名アナリストが大幅な値上がりを予想している模様。
果たして、現状において金を購入することは妥当な選択なのか・・・100年前までさかのぼって考察してみたのがこちらの論稿です。
↓「金(ゴールド)への投資は魅力的か」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-150.html
〈その他のお知らせ〉
今週の本紙は「前資本主義経済」「「ゼロ金利」活用戦略」「保守と新社会主義」といった論稿が相次ぎました。
その柱となるべき政策はもちろん「積極財政」です。
http://amzn.to/1HF6UyO
今週は思いがけず、佐藤健志さん、平松禎史さんのお二方と、しばしの猫談義を楽しみました。
「ちょっと気分転換を」という方には、こちらなどいかがでしょう(笑)。
https://twitter.com/sima9ra/status/706315534443237377
ブログ/ツイッター/フェイスブックページはこちらです。
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ーーー発行者よりーーー
「国の借金が1000兆円を超えた」「一人当たり817万円」
「次世代にツケを払わせるのか」「このままだと日本は破綻する」
きっとあなたはこんなニュースを見たことがあるはずです。
その正体とは、、、
http://www.keieikagakupub.com/
『三橋さんは過激な発言をする人だと思っていましたが…』
By 服部
“私は今年退職をして、世間から離れて行く様に感じていました。
そんな時、月刊三橋をインターネットで見つけ、三橋先生の
ご意見を聞くようになり、世の流れに戻る感じがしました。
月刊三橋を聞き始めて3か月になります。
最初は過激な発言をする人だなあと思って聞いていましたが、
今回の国債破綻しない24の理由を聞いて、
今まで何回も聞いていた内容が、私のように頭の悪い者でも
やっと理解出来るようになりました。有り難うございます。
これからの日本の為にも益々頑張って頂きたいと思います。”
服部さんが、国の借金問題について
理解できた秘密とは・・・▼▼
http://www.keieikagakupub.com/
【島倉原】金融機関叩きにご用心?への1件のコメント
2016年3月10日 3:04 PM
テレビでは「日銀にお金を預けておくと金利を取られるのだから、民間に貸し出すはず、という理由でマイナス金利を導入した」みたいな説明がされていますが、なぜそうなると思うのかな・・。 民間企業はリターンが見込めないから借りないと思うのですが・・銀行も困るでしょうね。 ひところは銀行の「貸し渋り」が問題になっていましたが「今はそういう事は無いんだから、貸せる・借りられるはずでしょう」と政府・日銀は言いたいのでしょうか?「これだけお膳立てしているのだから」とか? 需要が無いという現状を、本当は判っていてのアリバイ作り?外資にお金を流すための布石?などと様々な疑念が湧いてきてしまいます。 でも逆に、銀行はちゃんとお金を返してくれそうな会社にばかり貸して、経営の苦しい中小企業には貸さなくなる、という事は無いのでしょうか。そうしないと銀行も潰れかねないとしたら。どちらにしても、大きなお金を借りて投資する会社は多くはないですよね。 アフラックみたいな外資系の生命保険会社が、日本のマイナス金利にどのような影響を受けるのか受けないのか、詳しくは判らないのですが、外資参入で日本の生命保険会社がかなり減ってしまった、と聞いた事があります。少し残っているとしても、今回の件は大きなダメージになるという事でしょうか。判らない事がたくさんあります。
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