From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家
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「日本が国債破綻しない24の理由 ~国の借金問題という<嘘>はなぜ生まれたか?」
http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag2.php
p.1_ _日本は「国の借金」でなぜ破綻しないのか?
p.13 ”国民1人当たり817万円の借金”を広める財務省の記者クラブ
p.20 日本国民は債務者ではない、「債権者」である
p.36 かつて、本格的なインフレーションが日本を襲った時代があった
p.42 “日本は公共投資のやり過ぎで国の借金が膨らんだ”は全くの嘘
p.55 グローバリストから財務省まで、消費税増税を訴える人々の思惑
http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag2.php
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先週は、アメリカの利上げによる金融環境の逼迫を懸念するニューヨーク連銀総裁の発言をきっかけにドル安が進みました。
結果として、海外要因とはいえ、黒田日銀総裁が「中央銀行の歴史の中でおそらく最も強力な枠組みだ」と豪語したまさしくその当日に、マイナス金利導入の効果が一晩で吹き飛び、今週に入っても円高が続いているというわけです。
http://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPKCN0VC2PK
http://www.nikkei.com/article/DGKKASGF03H09_T00C16A2MM0000/
今回のマイナス金利政策についてはいろいろと論点もあることですし、改めて話題にしたいと思います。
理論的なことを1つだけ言うならば、「マネタリーベースを増やせば貸出が増えて、経済は活性化するはずだ」と言って、岩田規久男・現日銀副総裁が『日銀理論』なるものを批判した20数年前に逆戻りした・・・といった感じでしょうか。
だとすれば、その顛末がどういうことになるかは、こちらをお読みいただければ大体予想がつくのではないかと思います。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-49.html
そもそも、「金利にせよ、マネタリーベースにせよ、積極財政なき金融緩和をいくら繰り返したところで大した効果がない」ことは、既にこちらのデータから明らかだと思うのですが・・・。
https://twitter.com/sima9ra/status/669165227120824320
http://on.fb.me/1LxuFJ6
まあ、金融政策の話はこの辺にして、本日のお題「グローバリゼーションの再定義」に移りましょう。
このところ原油価格や海運レートの暴落が著しいですが、世界貿易の拡大すなわちグローバリゼーションのペースが急激に落ち込んでいることが、その背景にあると指摘されています。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO96151490V10C16A1000000/
そもそも、「グローバリゼーション」とは何でしょう?
例えばこちらのWebサイトでは、「人、カネ、モノが国民国家の枠組みを超えて活発に移動し、各国経済の開放と、世界の産業、文化、経済市場の統合が進む現象をいう。文化的、商業的、経済的活動の分野において特に用いられることが多い」と述べられています。
http://bit.ly/1Qm9HzQ
上記サイトにもあるように、特に経済的な視点から、「自国産業が脅かされたり、貧富の格差が拡大するといったデメリットもあるかもしれないけど、世界がつながるのは間違いなくメリットだよね。自由貿易をすれば全体の利益が最大化するって、経済学者も言ってるし」というのが、「グローバリゼーション」という言葉に対する一般的なイメージであり、議論の前提にもなっているのではないかと思います。
ですが、世界がつながるのは果たして「間違いなくメリット」なのでしょうか?
以前、本メルマガでもご紹介した『「貿易依存度」から見た世界史』という拙稿では、以下のように述べています。
『第一次世界大戦は言うまでもなく、敗戦国ドイツへの法外な賠償金の賦課など、第一次世界大戦の戦後処理を帝国主義の発想で行ったことを背景に生じた第二次世界大戦もまた、帝国主義という名のグローバリズムがもたらした出来事、すなわちグローバル化時代の産物と言うべきです。
(中略)
こうした構図は、「各国あるいは個々の経済主体が国外に経済成長の機会を求めてグローバル化を推進すれば、経済的な利害が衝突して国際的な摩擦が生じる機会が増える」と考えれば理解できます。』
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-126.html
外交の一手段でもあり、(通常は国同士が)正面から衝突する戦争は、間違いなく「世界がつながる行為」の1つです。
これもまたグローバリゼーションの一環だとすれば、「世界がつながるのは間違いなくメリット」とは言えないはずです。
こう書くと、「でも、19世紀後半からの第1次グローバル化時代は第1次世界大戦で途切れたというくらいだから、経済的な交流(貿易の拡大)と戦争とは、そもそも別物でしょう?」と反論されるかもしれません。
しかるに歴史的な現実のもとでは、貿易の拡大は、2つの世界大戦をはじめとした大規模な紛争とむしろ一体となって、リズミカルに繰り返されているのです。
それも、従前から紹介しているクズネッツ循環(不動産バブルなどのサイクル)よりもさらに周期の長い、「商品相場のスーパーサイクル」とも呼ばれる景気循環のもとで。
直近で言えば、1バレル140ドルを超えた原油高、BRICsブーム、イラク=アフガン戦争の2000年代がその上昇局面にあたります。
そうした分析を19世紀、あるいはそれ以前までさかのぼって行ったのが、今週発行した拙稿『商品相場の歴史的サイクルとグローバリゼーション』です。
裏づけとなる分析データやスーパーサイクルのメカニズム、あるいは分析結果から想定される今後の金融市場の見通しなどについてはそちらをご覧いただくとして、ここではグローバリゼーションに関して考察した部分を、一部改定の上引用しておきたいと思います。
『1960年代以前のスーパーサイクルのピークは、それぞれ2つの世界大戦が終了した直後の時期に当たる。
前回も示した1960年以降の世界全体の貿易依存度の推移は下記の通りである。
それより前の動向については、(少なくとも現時点の筆者にとって)必ずしも明らかではない。
https://twitter.com/sima9ra/status/659023272797802496
http://on.fb.me/1Gvkd9q
さはさりながら、イギリスをはじめとしたヨーロッパ主要国の統計を見る限り、2つの世界大戦が終焉した直後のそれぞれの時期において、商品価格と共に世界全体の貿易依存度もその当時のピークに達していたと想定される。
これは、戦争によって貿易が一時的に途絶えると共に膨大な消費によって物資が不足していたところに、失われた各国の生産力の回復とそれを支える貿易が、終戦と共に急激に復活したことで生じたと考えられる。
https://twitter.com/sima9ra/status/669174796727377921
http://on.fb.me/1PM6WN1
このように、「グローバリゼーション=世界全体の貿易依存度の拡大」と考えれば、戦争とグローバリゼーションとは、一見すると対極的な現象である。
「グローバリゼーションによって国際交流が深まれば、戦争のリスクは軽減する」というありがちな議論も、そうした事実を反映したものであろう。
しかしながら、戦争もまた、ある意味では国際交流の究極の形である。
国際紛争の原因となるのは国境をまたがる何らかの利害の対立だが、そうした対立は国際交流が無ければ生まれるはずもない。
それを踏まえて、グローバリゼーションという概念を貿易の拡大などの狭い意味だけにとどめるのではなく、「国際紛争の拡大も含めた広い意味での国際交流の拡大」と定義し直すべきではないだろうか。
そうすれば、「商品のスーパーサイクル=グローバリゼーションのサイクル」という、より一貫性のある新たな視座を獲得することができる。
新たな視座のもとでは、1970年代や2000年代の2つのスーパーサイクルにおいて、中東を中心とした長期的な紛争が発生した事実とも整合性の取れた分析や解釈が可能になる。
そこからはむしろ、「グローバリゼーションとは国際紛争をエスカレートさせるメカニズムである」という命題が、ある種の論理的な結論として導き出される。
だとすれば、単に商品相場の動向のみならず、経済全体あるいは世界史を分析する上でも、広義の「グローバリゼーション」という概念こそが、むしろ用いられるべきではないだろうか。』
http://foomii.com/00092/2016020709485831385
グローバリゼーションの1つのサイクルが既にピークアウトしているにもかかわらず、日本の貿易依存度は未だに上昇を続けています。
そして、TPPに代表されるさらなるグローバリズム的な政策が、時の政権によって推進されようとしています。
これを景気循環論的に見れば、第1次世界大戦を経て第1次グローバル化時代が終焉した後もグローバリズム路線を突き進んだ戦前日本の姿とだぶることは、『「貿易依存度」から見た世界史』でも指摘したとおりです。
その顛末が中国への戦線拡大、そして第2次世界大戦での敗北であったことは、言うまでもありません。
ひょっとすると、数十年後の日本が国際紛争の渦中にいることを阻止するためには、これ以上のグローバリズム路線に歯止めをかけるべく、既に何らかの行動が必要なタイミングなのかもしれないのです。
〈島倉原からのお知らせ〉
原油価格や海運レートについて個別に取り上げたこちらの記事も併せてご覧いただくことで、グローバリゼーションのみならず、ひょっとすると今週の尋常ならぬ株安に対する理解がより深まる・・・かもしれません。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-140.html
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-142.html
ドル円相場の行方が気になる方には、ひょっとしたらこちらが参考になる・・・かもしれません。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-139.html
リフレ派の言説を徹底的に論破しつつ、景気循環という現象が実在する世界における経済政策のあり方を論じた書籍としては、世の中でも稀有な一冊ではないかと思います。
http://amzn.to/1HF6UyO
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ーーー発行者よりーーー
「国の借金が1000兆円を超えた」「一人当たり817万円」
「次世代にツケを払わせるのか」「このままだと日本は破綻する」
きっとあなたはこんなニュースを見たことがあるはずです。一人の日本国民として、あなたは罪悪感と不安感を植え付けられてきました。そうしているうちに、痛みに耐える消費税増税が推し進められ、国民は豊かにはならず、不景気のムードが漂い続けています。本当に増税は必要だったのか? そもそも「国の借金」とは何なのか?
その正体とは、、、
http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag2.php
『三橋さんは過激な発言をする人だと思っていましたが…』
By 服部
“私は今年退職をして、世間から離れて行く様に感じていました。
そんな時、月刊三橋をインターネットで見つけ、三橋先生の
ご意見を聞くようになり、世の流れに戻る感じがしました。
月刊三橋を聞き始めて3か月になります。
最初は過激な発言をする人だなあと思って聞いていましたが、
今回の国債破綻しない24の理由を聞いて、
今まで何回も聞いていた内容が、私のように頭の悪い者でも
やっと理解出来るようになりました。有り難うございます。
これからの日本の為にも益々頑張って頂きたいと思います。”
服部さんが、国の借金問題について
理解できた秘密とは・・・▼▼
http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag2.php
【島倉原】グローバリゼーションの再定義への4件のコメント
2016年2月11日 1:56 AM
国家間で利害関係を無くす手段は戦争で相手を滅ぼすか片方が譲歩(無条件降伏)して奴隷になるかの2択になるかな?戦争による価値観の統一(侵略)の他に市場原理による自然淘汰でお金収集能力に特化した潰しの利かない個体が生き残る?でも国家無しにお金の保証信用は誰がするのか、信用経済は成り立つのか。価値観の統一が世界市民の目的なら戦争でも同じことかな。幾度の戦争の果てに残った一国により世界平和は達成される。自由平等も元々奴隷の精神でこれを目的にしても我々は永遠に奴隷解放を目指す奴隷に終始するのかな。「同一賃金同一労働」は平等だから善であるので賃金が低下しても目的は果たされる。雇用の奪い合い、職が無ければ飢え死にに繋がるしグローバル経済は形を変えた代理戦争という面もあるかな。平和に飽きたら戦争をするのが人間か。自己意識の歴史経験とか基盤は何よりも捨てがたく、飽きない=呆けないためなら戦争も辞さないのが人間らしさか。
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2016年2月12日 9:57 AM
1ドル110円代でアベノミクソ大失敗で御同慶の至りです。この期に及んでは一刻も早く安倍晋三には退陣すべきです。
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2016年2月12日 12:12 PM
global soup ♪>そもそも、「グローバリゼーション」とは何でしょう?闇鍋 とぼくは 理解しております。しかも ルールは ひとつだけ箸でつかんだものは 必ず食べることそれ以外は何でもあり。。。具材は 美味しいものだけとはかぎりません貧困も 紛争も 戦争もあるでしょうが掴んだら 必ず食べねばなりません。ちなみに soup動詞では 〔人を〕困らせる、悲しませる名詞では 窮地、混乱状態二度あることは三度ある一次 二次 ときたら 三次全球的混乱状態 とならぬように 祈っております。
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2016年2月14日 10:31 AM
桂枝雀が「高津の富」の枕で、お金というものは寂しがり屋で仲間の多い所に集まるので、その流れのニア バイにいる人は良いがファーラウェイにいる人達には縁が薄いと言ってました。その指摘通り、お金というのは動的な「流れ」が本質で、量もさる事ながら回転のスピードが重要なので、消費が滞るデフレでは、政府が財政支出を積極的に推進せねばならぬ事くらい、政治家、高級官僚は熟知している筈。財政均衡という嘘をバラし、重要な主権の一部である政府通貨発行権を取り戻さねばなりません。第二次大戦は、主要各国から通貨発行権を取り上げ、ソ連、支那は埒外として経済圏から排除する事が目的だったものと思われますね。
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