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2019年4月10日

【藤井聡】維新はW選で勝ったが「クアドラプル選」で負けた。 ~市議会選挙を通して『都構想』を否定した大阪市民~

From 藤井聡(京都大学大学院教授)

大阪の市長・知事のいわゆる
大阪ダブル選は「維新の勝利」で終わりました。

知事選に至っては100万票もの大差がついたことから、
一部の人々は既に、この結果は、
「大阪都構想」
に大阪の人々が信認を与えたものだ、
と解釈し始めているようです。

が、それはまったく、違います。

なぜなら、「維新」は今回、
市議会選挙で過半数を取れなかったからであり、
その意味において、
反維新勢力のみならず彼らとて、
「敗れた」わけです。

以下、その仔細を解説しましょう。

そもそも、
「大阪都構想=大阪市解体」を進めるためには、
知事・市長が賛成するだけでなく、
府民、市民の代表である議会の賛成が必要です

だから、都構想を進めるためには、

大阪知事選挙、の勝利
大阪市長選挙、の勝利
大阪府議会選挙、の過半数獲得
大阪市議会選挙、の過半数獲得

四つを同時に達成しなければなりません。

現実的にそれは極めて困難ですが、
出ればほぼ100パー勝てるであろう、
(実質上の)「現職」の市長・知事が、
市議会選、府議会選で一緒に戦えば、

ひょっとすると、この四つの勝利
全てもぎ取れるかもしれない・・・
と「維新」が考えたが故に
一か八かの大博打で打って出たのが、
今回の「ダブル選挙」だったのです

(※ 詳細は、一か月前に公表した下記記事を参照ください。
https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20190305/ )

だから、今回、大阪で行われたのは
二重選挙の意味の「ダブル選」だったのではなく、
四重選挙の意味の「クアドラプル選」だったわけです。

(※ 耳慣れない言葉かもしれませんが、
ダブル、トリプルの次は、クアドラプルです)。

実際、維新は府議会選・市議会選の双方で、
単独過半数が取れる候補者を擁立しています。

しかし、府議会選挙では単独過半数を達成しますが、
市議会選挙において単独過半数獲得に失敗したのです。
https://www.asahi.com/articles/ASM4764ZBM47PTIL01F.html

つまり、今回の大阪クアドラプル選において、
「維新は三勝し、一敗を喫した」わけです。

さらに言うなら、そもそも維新は、クアドラプル選で
「全勝」を目指していたわけですから、
維新はその意味で「敗北」し、
反維新側はその意味で「勝利」した

とも言えるわけです。

さらに重要なのが、
維新が敗北を喫したその一敗は、
「大阪市議会選挙だった」という点。

これはつまり、大阪市民は、
(知事現職の松井さんは支持するけど)
「都構想は進めてほしくない、と判断した」
ということを意味しています。

ちなみに、現職首長は「圧倒的に強い」という点は、
例えば、こちらをご参照ください。
http://u0u1.net/UAxk

つまり現職は、よほどのことが無い限り負けはしないのです。

だから、今回のW選で(如何にスワップと言えど)
維新側が勝つのも、半ば当たり前なわけです。

「維新」はそれを十二分に理解しているからこそ、
クアドラプル選挙での勝利を目指して、
ダブル選挙を「仕掛け」たのです。

しかし、その「仕掛け」は、
今回、大阪市民の反発により、失敗に終わりました。

つまり、
「維新」は、
大阪都構想を一気に実現することに失敗した

のであり、
「大阪市民」は、
大阪都構想を「首の皮一枚」で阻止することに成功した

のです。

そもそも、大阪都構想は、
大阪市民の自治を廃止し、
大阪市民の財源と権限が大阪府に「むしり取らせる」構想。

だから、そんなことを
大阪市民に認めさせるのは、
並大抵のことではないわけで、そう考えれば、
今回の市議会選での維新敗北も、半ば当たり前、
とも言えるわけです。

以上、まとめると、今回の結果は、次のようになります。

『大阪市民は、当たり前のように、
大阪市議会選を通して大阪都構想を否定した。
だから、「維新」は
「ダブル選」で当たり前のように勝つには勝ったけど
「クアドラプル選」では、負けてしまった。』

・・・・

もちろん、今回の選挙を通して、
推進派の勢力が拡大したのは事実。

例えば、都構想の「法定協」の過半数を
維新が占めることになりました。

ですが未だなお、
大阪市民の代表である大阪市議会が、
都構想に対して毅然と「NO」を言えば、
都構想は「絶対に実現しない」

という状況には、変化はないのです。

より具体的に言うなら、
例えば、下記の方の選挙後の解説の通り、
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63991
都構想反対を明確に表明している「公明党・大阪市議団」が、
「自らの信条と大阪市民を裏切る」ことさえなければ、
都構想が実現することは、「絶対にない」
のです。

・・・

なお、この「公明党・大阪市議団」を巡る情勢については、
既に二年以上前に、下記記事で指摘した通りでもあります。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63991

つまり、今回の大阪のダブル選、
あるいはクアドラプル選を経てもなお、
都構想を巡る大局的な構図は、
何も変わってはいない
のです。

大きく変わったことがあるとすればそれは、
「死に体だった『都構想』議論が延命できた」
という一点でしょうか。

「窮鼠猫を噛む」の諺言うなら、
「維新」は決して「猫」ではなく「鼠」なのです。

・・・いずれにせよ・・・

「戦い」は何も終わっていません。

だから今こそ、
大阪を守ろうと考える人たちは
今、決してうろたえてはならないのです。

全ては、大局的な視座から、
冷静に状況分析するところから始まるもの。

本稿がそんな、分析として貢献できれば、
大変有難く思います。

追伸1:

ただし、今回「反維新側」が「W選」で負けたのは、
「情報戦略が悪かった」という一点こそが、最大の原因。
そもそも市長選では当初、維新候補は負けていたのに、
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/250123
逆転されたわけですから。
つまり「情報戦争」において維新側が「完勝」したわけです。
ですから、次につなげるためには、
この点についての猛省が必要不可欠です。

追伸2:

今回の「W選」における維新勝利の、最大の「背景的要因」は、
未だ世間が、改革や緊縮を是とする
「平成の空気」に覆われていること。
したがって、日本を守ろうとする勢力は、
この改革/緊縮路線の「平成の空気」を
反改革/反緊縮路線の新しき「令和の空気」へと、
大きく転換(ピボット)させることが必要不可欠です。
そのためにも是非、
「令和ピボット」運動にご協力いただきたいと思います。
https://reiwapivot.jp/

追伸3:
令和ピボット運動における、筆者にとっての最大の「武器」は、
言論誌「表現者クライテリオン」です。
是非とも、定期購読お願いします。
https://the-criterion.jp/subscription/
そして最新号は、まさに令和ピボットのための「令和八策」
是非、ご一読ください。
https://the-criterion.jp/

—発行者より—
総理「政権中にこれを破棄できなければ、日本はオシマイ」

三橋貴明と総理との会談時で明かされた真実。

●総理が、三橋との会食をオープンに
(世に公開)してまで国民に伝えたかった事とは…?

●この会食で明らかになった、
私たちの邪魔をする[3つの敵の正体]とは?

●2020年に訪れるかもしれない
日本の危機的状況とは一体何なのか?

日本が発端となり、
2008年のリーマンショックが再来する?

などなどメディアが決して報道しない
「安倍総理の告白」と「日本経済2020年危機」
について解説した書籍を出版致しました。

こちらから詳しい内容をご覧ください。
https://keieikagakupub.com/38JPEC/1980/

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【藤井聡】維新はW選で勝ったが「クアドラプル選」で負けた。 ~市議会選挙を通して『都構想』を否定した大阪市民~への8件のコメント

  1. 拓三 より

    なんで高橋洋一は維新にのめり込んでるの ?

    過去の己の見通しの甘さを隠すための維新 ?w
    失業率を下げてからの公共事業頼みってw
    このお人の論理なら移民政策賛成やろな。って言うか間違いを埋めるにはこの方法しか無いしw 維新も賛成しとるしネw
    あっ、それでタイミング良く、一般労働者の移民の受け入れ数も拡大するんやw

    所詮、バカインテリ共のしわ寄せが一般国民に回ってくるんやね。

    高橋洋一は過去「金融と財政でデフレ脱却は当たり前で学者からすれば面白くない」と言っていました。そして日本において金融政策だけでもデフレ脱却は出来ると。

    ところで失業率なん%なったら上向くのw
    (この論理は消費税がいくら上がろうとまったく無関係である論理構成です)

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  2.  「大阪市議会は選挙制度が中選挙区制だから、一つの政党が過半数獲得するのは何回選挙やっても無理」って辛坊治郎さんが仰ってましたよ。

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  3. F-NAK より

    得票数だけで見た場合

    ・大阪市長選で松井氏に投票した人のうち、約16万人が市議会選で維新以外に投票
    ・大阪知事選で吉村氏に投票した人のうち、約73万人が府議会選で維新以外に投票

    特に大阪市民の多くは、「都構想に賛成だから松井氏に投票」というわけではなさそうです。

    仏大統領選挙のときと似ていて、いわゆる左右共闘を忌避している人が多いのかな、と感じました。

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  4. はっちゃん より

    今回の選挙をめぐる維新寄りの報道や親しい維新支持者を見ていて思ったことがいくつかあります。
    まず一つ目、彼らの頭の中では、自民、公明、共産、立憲などを「反維新」と呼び、まるでみんなで寄ってたかって「維新をいじめるワルイやつ」「維新のことを必要以上に、異常に嫌っている人たち」のように位置づけています。その上で自分は「そういった維新を応援する判官びいきな人」「冷静でバランスの取れた人」だと思っているのではないかと。
    もうこうなったら、維新がやっていることが良いことなのか悪いことなのか論理的に考えることなどできやしないように見えます。だからこちらがいくら「大阪都構想とはこういうことですよ」と言おうが「維新は成果を上げてもいないし、たくさんウソもつくので信用できないですよ」と言おうが耳に入らないのではないか。
    何しろこちらのことを「何かの動機があって維新のことを異常に嫌う、維新をいじめるワルイやつ」だと思っていますから何を言っても信用しません。
    「あんたになんでそんなことわかるん?自分がちょっとカシコイ思て。」「相手が私やからそんな知った風な事言ってんねんやろ?松井さんの前でも同じこといえるん?」などと言ってきます。
    聞きかじりの知識を書いて恐縮ですが、上記のような物語にはまってしまうといくら論理的に説明しても全く入らないようです。どのようにツッコミを入れてどのようにオルタナティブストーリーを用意するか、考えどころなのかもしれません。
    二つ目、「もしあんたが言うように都構想が穴だらけの悪いものだったら、なんで大阪でこんなに支持されてマスコミもあんなに支持してるの?」などと言われます。私はこの質問には次のように答えます。
    「それはあなたの方がよくわかると思うよ。みんなあなたと同じ理由で支持しているのではないかと思いますよ。」
    この質問に象徴されているのは、都構想を支持している人は「カラッポ」なんだと思います。(頭が悪いと言いているわけではありません)。つまり、どいつもこいつも「みんなが良いと言っているんだから良いんだ」と、そう考えていて自分の考えはカラッポなんですね。ではなぜ、こんなにカラッポなのか。その大きな原因の一つが認知的不協和に耐えられないこと。「大阪都構想とはつまり大阪市の廃止解体で、やってしまうとロクなことにならない」という計算や、そこから導き出される「そんな政策を進めようとする維新は相当悪い人ではないか」という考えは到底受け入れられないことではないでしょうか?それほどまでに「大阪都構想」はエグイものを象徴しているのではないかと思います。

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      1. リグス より

        なるほど、確かに反維新でまとめて巧みに利用した感じですね。橋下さんは今回は表には出ませんでしたが、彼は名アジテーターで大衆心理を操る事が非常に上手いある種の天才です。

        佐藤建志さんも指摘していました(少し意味は違いますが応用して)が、橋下さんの頃はブームで熱狂的支持されました。現在維新は大阪に根を下ろししっかり定着した。大阪の与党であり、反維新は反対だけ唱える烏合の衆。スローガンは「大阪の成長を止めるな」

        これだけ成長させた俺たちの大阪維新に敵対するのはケシカラン。あと公明を上手く悪者にして攻撃した、自民支持層には公明嫌いもそこそこいるでしょう。

        何時もそうですが、よく考えて判断してもらうより、上手く流れを作ってそこに乗せた勢力がだいたい勝利します。ここは政策集団なのであくまで理性的にやる必要がありますが、実現するためには、時局を見るのに敏感で巧みに訴える事が出来る人材を発掘する必要がある感じもします。

        維新は関西は勝利でしが、他は全敗です。大阪には定着しましたが、全国まで広がるかは未だ不明です。

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  5. 日本晴れ より

    維新の会も消費税減税や財政出動を考えでの
    大阪都構想ならまだ分かりますが
    結局の所緊縮財政主義の発想から大阪都構想は来てるんですよね

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  6. 日ノ本の男 より

    都構想反対派のデカい失点はやはり共産党との協調でしょう。

    民衆は「何を」ではなく「誰が」と考えてしまいがちです。
    都構想の問題よりも「自民が共産党と組んだ=悪」と思ってしまいがちです。

    いや、官房長官ですら増税反対と言う藤井先生の「政策」よりも「赤旗に協力した」と言う点で問題視したとの報道を見ました。
    こんな程度なモノなのは藤井先生もご存じだとは思いますが…。

    「改革」の美名と「共産党=悪=敵対する維新は正義」(私も支持はしていませんが)と言う分かりやすい劇場型の舞台に自民党自ら出演してしまった事は大いに反省すべきかと。
    孫子の兵法ではありませんが相手の土俵に乗ってはいけません。

    ましてや「2万%」だの「都構想は一回限り」だの「いや、何度やってもいい」だの平然とやる連中ですから。

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  7. 大阪人 より

    ×そもそも、大阪都構想は、
    大阪市民の自治を廃止し、
    大阪市民の財源と権限が大阪府に「むしり取らせる」構想。

    ○~財源と権限を大阪府に「むしり取らせる」構想。

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