コラム

2020年11月28日

【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」第七十二話:『国民を救うことに集中せよ。』

10月2日から放送開始したTVアニメ『呪術廻戦』の追い込みで、メルマガを2回分お休みいただきました。

やや落ち着いてきまして、個人ブログのほうもぼちぼちと更新できるようになりました。

さて、経済状況は完全にCOVID-19新型コロナウイルスに支配されている有様です。政府の政策はどれも裏目に出る結果になり、しかも春以来ずっと似たような失敗を繰り返しています。

なぜこうなってしまうのか、を考えることは、なぜデフレ不況に陥って脱却できずにいるのか、を考えるのとほとんど違いがないことに気が付きます。箇条書きしていきましょう。

1:起こり得ない「財政破綻」やありもしない「財政問題」に固執して緊縮財政を継続。

2:緊縮財政を前提に政府(と政府に癒着したビジネスマン)が権力を行使できる構造改革を構築。

3:緊縮財政を前提とした「緊縮政府に好都合な経済」が「経済」と呼ばれるようになった。

4:1~3を強固にするために都合が良い「権力の座にしか興味がない からっぽな総理」の登場。

5:4を中心として「緊縮政府に好都合な経済」政策しか実行しない政治体制の完成。

6:高支持率な安倍長期政権によって1~5は意識されなくなり、問題の本質(現実)が見えなくなった。

20年間でここまできたわけです。
「財政破綻」など空想の産物を基礎にした政治ですので、「空想政治シリーズ」とでも呼びましょうか。
外的要因もありはしますが、この「空想政治シリーズ」に合致するものだけがおこなわれる。無意識的空想に埋没した状態ですから、何が問題なのか認識されず、緊縮財政や改革・グローバル化を批判しても政治家はポカーンとする人がほとんどで、国民にも伝わりません。

空想特撮世界に入って主人公たちに「ウルトラマンも怪獣も本当はいないんだよ」と言っても信じてもらえないのと同じです。

いくら「打倒安倍」「打倒菅」と言ったところで「空想政治シリーズ」が見えてなければ「緊縮政府に好都合な経済」を変えることはできないわけです。

いま世間で「経済」と言っても、もはや経世済民とはかけ離れた「今だけカネだけ自分だけ」の、カッコ付きの「経済」を示すのが現実です。「経済を回そう」とは「緊縮政府に好都合な経済を回そう」と同意になってしまうのです。典型的なのが「Go to」キャンペーンだ。インバウンドができないので「経済を回さねば」と煽り立て、国民を駆り立てている。政府支出を抑えて格好をつけているだけです。

新型コロナウイルスが中国の武漢市で拡大していた1月後半を思い出してみましょう。安倍前総理は1月23日付で中国の日本大使館に、中国から更に多くの訪日客を招き入れる春節祝辞を贈りました。インバウンド政策は「緊縮政府に好都合な経済」世界の必勝アイテムです。「空想政治シリーズ」の優等生キャラが揃う政府には現実世界で起きていることがわかりませんでした。

批判を浴びて1月31日にようやく取り下げますが、「緊縮政府に好都合な経済」世界はゆるがない。その後第一波が起き、国民が先行して自主的な自粛を開始、オリンピックの延期が決まると政府もやっと動き出して休校休業イベント中止の要請、緊急事態宣言の発令などおこなったが、その時には人出が減って感染拡大期のピークは過ぎていた。「緊急事態宣言は無意味だった」と主張した論者は「空想政治シリーズ」のキャラクターに加わる結果となりました。

デフレに転落して以降、現在までを概観すると「緊縮政府に好都合な経済」に埋没した言説が実に多いことに気が付かざるを得ません。特に現在は非常に観察しやすい状況にあります。新型コロナウイルスを軽視する考え方、PCR検査を忌避しようとする考え方、これらは「経済を回す」ことに固執する考え方と同一線上にありますが、もはやまっとうな論者であっても「経済」と言えば「緊縮政府に好都合な経済」世界の何かになることに気づいていないと考えざるを得ない。

残念ながら、消費を増やす(人出を増やす)ための消費減税も悪手になってしまう状況です。軽減税率対象の物品(生命維持に不可欠な物品、新聞除く)に限ってゼロ%にするのはありだと思いますが。。。

要するに、現実の非常事態を考えない(主流派経済学や新自由主義者たちに特徴的な)平常時の感覚で出来上がっているのが「空想政治シリーズ」であり、「緊縮政府に好都合な経済」世界なのです。

経済を回せば回すほど感染症が拡大して、肝心の経済状態が悪化する本末転倒を繰り返しているのは、現実世界が見えていないからだと断定できます。

したがって、デフレ脱却、国土強靭化、コロナ恐慌からの脱却を訴えるのなら、「空想政治シリーズ」の外に出て、「緊縮政府に好都合な経済」を否定しなければならない。

大げさなようですが、三橋先生はじめこのメルマガ投稿者の諸先生方が繰り返し言ってきたことです。

〈令和の政策ピボット〉は「反緊縮・反グローバリズム・反構造改革」を訴え、長期的財政拡大路線への転換を訴えてきたはずです。

大前提は、財政拡大で給付と補償を継続的におこなうことです。最優先ではなく、大前提です。

財政拡大は一度やったら次はこれ、というのではダメだとすでに結果が出ています。大前提にしなければならない。財政拡大は何よりも優先して大前提にしなければならない。くどくどと書くのは、「空想政治シリーズ」に埋没しないためです。「緊縮政府に好都合な経済」に取り込まれないためです。

「いや、そうは言っても経済を回さないと倒産が増えるし自殺者も増えるのでは?」
はい。これが「空想政治シリーズ」に埋没し、「緊縮政府に好都合な経済」に取り込まれたキャラのセリフなのですよ。もう三度目の失敗をしているんです。現実を見ましょう。

11月23日の三橋貴明 新世紀のビッグブラザーへ
Go toビジネスと自己責任論
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12639691708.html
《事態が悪化していっている以上、政府は「言い出しっぺ」として、GoToビジネスを全て中止し、補償をしなければなりません。当然、政治家は責任を問われ、財政支出が必要になります。》

「経済を回せ」策は自己責任論に行き着く、と繰り返してきたボクとしては僭越ながら我が意を得たりです。

夏前から繰り返し、感染状況や感染防止策の規模にかかわらず、長期的財政拡大が必要だ、と言いつづけてきました。大前提にせよ、と。

長期的な財政拡大こそ、「空想政治シリーズ」に現実の一石を投じ「緊縮政府に好都合な経済」を終わらせる必殺技です。いや、普通の政策ですけどね。ひとつじゃ足りません。投げつづけてようやく政策ピボットが実現できるのだと考えます。

給付と補償を継続的におこなって生活と企業を守りながら、状況に先んじた感染防止策をおこない、感染症を6月前半の全国で50人未満に抑えておけば、民間経済を休止させていたとしても余力を確保しておくことができ、ワクチン等の普及によって素早く立ち直ることができます。国産ワクチンの開発にも財政拡大で人に投資して普及を早めるべきだ。それが「強靭化」というものでしょう。

コロナが十分に収束するまで、誰も解雇させない、どこも倒産させない、だれも身を捨てなくて済む、非常事態に特化した財政拡大が大前提で必要なのです。

1日あたりの新規感染者数は、非常事態宣言を解除した頃の40倍以上ですよ。バカか!?と言いたくもなります。

平常時の感覚かつ緊縮財政を前提にした「緊縮政府に好都合な経済」を回した結果、コロナ禍は人災になりました。非常時の姿勢に転換して直接国民を救う財政拡大が必要です。

第三次補正は1月までないそうです。遅すぎるとしても……安倍前総理辞任と菅政権発足で生じた政治空白によって第三次補正要求は見事に潰されましたが……なんとしても、最低でも国債発行30兆円を実現させ、来年度も政府支出を増やしつづけさせる世論が必要です。

25日、内閣府の経済白書から「25年度にプライマリーバランス黒字化を目指す」記述が消えたそうです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4c4ceecde5867c75817670790112f66ba77b73d1

良い兆しです。ただ、政策転換したわけじゃなく、一旦取り下げたに過ぎないでしょう。この兆しを政策転換に推し進めるために、言論は長期的な財政拡大路線への転換に集中し、言い訳できない実績を積み上げさせましょう。財政拡大しても日本は財政破綻しない。政府の赤字は国民の黒字である。国民が困窮している非常事態には、給付と補償が大前提である、と。

再び非常事態宣言が視野に入ってきた現在、「このままでは年を越せない」と深刻な不安にさいなまれる事業主が増えています。政治家および言論人は、1月の補正を云々するだけでなく、12月の早い段階で給付と補償を引き出す努力をしてほしい。非常事態ですから、非常時の手段をひねり出してほしい。それができるのがプロフェッショナルのはずです。

まとめましょう。

・デフレ脱却編
緊縮財政・グローバリズム・構造改革が日本経済をデフレ不況に突き落とし、国民貧困化・格差拡大化・国土脆弱化・文化破壊をもたらした。「緊縮政府に好都合な経済」思考による人災である。
改善策は、「緊縮政府に好都合な経済」世界から脱出し、長期的財政拡大路線へ転換。緊縮財政をやめてグローバル化・構造改革を可能な限り抑制するとともに中間層を分厚くして経済成長させる。

・コロナ禍脱却編
緊縮財政・グローバリズム・構造改革がコロナ禍を悪化長期化させ、国民貧困化・格差拡大化・国土脆弱化・文化破壊を一層推し進めている。感染症拡大含め、「緊縮政府に好都合な経済」思考による人災である。

改善策は、「緊縮政府に好都合な経済」世界から脱却し、長期的財政拡大路線へ転換。緊縮財政をやめて、緊縮前提の「経済を回せ」策を可能な限り抑制して感染症を抑えるとともに、生活と企業を守る。

基本は同じです。デフレ状況だって非常事態でしたが、新型コロナウイルスは直接人の命を絶ち、人生を狂わせ、企業の生命を絶つ。自然災害が全国で毎日起きているのと同じなのです。生活と企業を直接救うことが最優先でなければならない。

政治家には、財政拡大を最優先で言わないと次の総選挙で落選すると恐怖させ、「空想政治シリーズ」から引っ張り出さねばならない。特に財政拡大派の自民党政治家には「自民党から出るべし」と思わせるくらいに。

長期的財政拡大路線への転換。ここに集中して粘り強く呼びかけて参りましょう。

○コマーシャル
2020年10月放送予定、TVアニメ『呪術廻戦』にキャラクターデザインなどで参加しております。
第1弾PV  演出を担当いたしました。
https://youtu.be/dZPxN_2IyAI

ボクのブログです
https://ameblo.jp/tadashi-hiramatz/

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【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」第七十二話:『国民を救うことに集中せよ。』への7件のコメント

  1. F-NAK より

    過剰な自粛を批判する派は、データと目の前の現実を中心に述べているのに対し
    過剰な自粛は存在しない派は、理想論と個人攻撃が中心の言論。

    これでは交わることはないですね。
    以前の財政拡大派とリフレ派の争いを思い出します。

    あとは、読み手がどちらに説得力を感じるかです。

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      1. 名護幹太 より

        それって真逆ですよね。

        過剰な自粛を批判する派が主張している公衆免疫論こそ、非現実的な理想論です。公衆免疫とやらを獲得する過程で、高齢者や妊婦等にリスクを背負わせることになりますよね。

        ワクチンができていない上に、臨床データの蓄積期間が1年にも満たない現状では、コロナのリスクを高く見積もるのは当然のことです。
        むしろ、リスクを無視したり軽視したりするのは、保守的な態度ではありません。

        西浦教授に対する個人攻撃もありましたが、コロナのリスクを軽視して理想論を掲げながら批判しても、説得力ありませんし、論客の評価を下げるだけです。

        給付金や休業補償を増額・継続化すれば、コロナ対策である行動制限とも両立可能ですから、常識的な感覚ならそこで折り合えると思うのですけどね。

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        1. 伊藤 より

          横からですが、F-NAKさんの仰る通りかと思いますよ。

          「過剰な自粛は存在しない派」の方は、以下の疑問に対してどの様にお考えか、聞いてみたいです。
          意図的に無視しているのだと思いますが、だとしたらその理由を知りたい。

          ①データを見る限り、毒性:インフルエンザ > 新型コロナウイルスなのに、対策(?)新型コロナウィルス >>>インフルエンザであることをおかしいと思わないのか?

          およそ1年間のCOVID-19による死者数は2,000人前後、しかも死者平均年齢は約80歳と平均寿命に近い。
          さらに、別稿で小浜先生も仰っているように、死者がPCR陽性だった場合は、死因をCOVID-19にしろと厚労省が通達を出しているため、2,000人ですら過剰に見積もっている疑義が濃厚

          一方でインフルエンザは毎年少なくとも3,000人、関連死含めると10,000人以上亡くなっています。さらに、インフルエンザは高齢者のみならず子供を殺します。(COVID-19では子供は亡くなっていません。最も若くて20代で、わずか2名)
          これだけでも、インフルエンザの方が余程高リスクだと思いますが、我々はインフルエンザで緊急事態宣言発令おろか自粛さえしてきませんでした。そしてそのことについて大多数の人が抗議などしたことはなかった。

          ② PCR検査の運用に疑義があるため、そもそも感染が拡大しているかどうかさえ疑問

          我が国におけるPCR検査ではCt値という値が各国と比較して高いです。この値が高ければ高いほど陽性反応が出やすいのですが、日本のCt血の場合は、体にごく僅かなウイルスが付着していただけでも陽性反応が出るレベルだそうです。
          「クラスター発生!でも大多数が無症状者」という報道が多数あったのも、この運用のせいである疑義が濃厚です。

          感染者拡大!とテレビで祭りをしていますが、そもそも本当に拡大しているか怪しい。死者数や重症者数の劇的な増加は相変わらずありません。

          ③ワクチン(薬)ができれば全て終わりと思っている感がある
          普通の風邪にしろ、インフルエンザにしろ、完全に治す薬は存在しません。なんで新型コロナウィルスについてもワクチンができたとしても、感染者をゼロにすることは無理だと思います。
          むしろ突貫で作ったワクチンによって薬害が生じるのではないかと懸念しています。個人的には絶対に摂取しないですね。

          それにしても今回のコロナ狂想曲で、日本国民の分断は一層深刻になりましたね。
          特に、藤井先生に対して、中野/佐藤/適菜3氏が本人のいないところ(yahooニュース)で散々こき下ろしていたことは大ショックでした。当然のように、上記のような疑問は完全無視ですし。

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          1. 平松さんと正気に返りましょう より

            平松禎史さんのつぶやきより。

            「『政府は財政拡大をやりそうにない』と言ってしまった自分に緊縮されている(略)」

            「『政府は財政拡大をやりそうにない』と言ってしまった自分に緊縮されている(略)」

            徒歩で砂洲を超え泳いで護衛艦の後を追おうとしている上のふたりならまだ間に合いそうかなと思って呼びかけてみた。

            西浦氏が北大から京大大学院医学研究科教授になられたというのは面白い。西浦は非科学的でトンデモ野郎だと一緒になって騒いでいた人たちはこの事実をどう思っているんだろう。

            いまならまだ間に合うから、沖で流されて口がきけなくなる前に、体力のあるうちに戻りましょう。

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        1. F-NAK より

          > 過剰な自粛を批判する派が主張している公衆免疫論こそ、非現実的な理想論です。

          集団免疫と公衆免疫を混同していないでしょうか?
          公衆免疫とは、生活習慣や医療体制なども含めた社会制度により、疫病のリスクを抑えることです。

          高齢者や基礎疾患者のリスクは、寧ろ下がるはずです。

          > リスクを無視したり軽視したりするのは、保守的な態度ではありません。

          リスク対応には「回避」「軽減」「移転」「分散」「受容」があります。
          無計画に「回避」を取るのは、寧ろリスクに対して無頓着な人が取る行動です。
          なぜならリスク回避は損失も大きく、他の対応策が取れない場合に選択するものだからです。

          リスクマネジメントを一度勉強することをお勧めします。
          不勉強なまま疫病対策を語ってしまうのは、経済の勉強をせずに財政政策を語ってしまうくらい危険なことです。

          > 給付金や休業補償を増額・継続化すれば、コロナ対策である行動制限とも両立可能

          はい、一時的に、そして部分的には可能です。
          けれど年単位では不可能です。そしてウイルスの根絶やワクチン開発は年単位でかかります。(不可能なケースさえあります。)

          また、経済とはお金の話ではないので、それで全ての人を救うことはできません。
          「お金はあってもお店は継続できない」という理由での閉店や廃業もあります。
          就業の機会や学習の機会を失っている若者もいます。
          社会から隔絶されてしまった障害者や社会的弱者もいます。

          過剰な自粛は存在するわけです。

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  2. たかゆき より

    解は 簡単

    財政拡大 という
    補助線を 一本ひくだけ、、

    あとは センスの 問題

    小生が 一目で解ける
    7手詰めの 詰将棋を

    プロのA級8段が 一ヶ月考えても
    解けななかった とか、、

    いくら プロでも 初手を間違える

    財政拡大を 筋悪のダメ手という
    バイアスに 囚われているかぎり

    何十万年 思考しようと
    正解は 得られない のだ ♪

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