コラム

2017年2月25日

【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第丗一話

From 平松禎史@アニメーター/演出家

◯オープニング

東京武蔵野は、日中はポカポカ暖かい日が増えてきました。
梅の花があちこちに咲いていて気分も華やぎます。
まだドカッと雪が降る可能性もありますが春が近づいているんですね。

今回は、いつものような一つのテーマでなく、つれづれに最近の出来事を書いていきます。

第丗一話:動いている世界

・アニメのこと

去年はテレビシリーズ『ユーリ!!! on ICE』のキャラクターデザインと総作画監督を務めていたためとても忙しかったんですが、放送が終了して二ヶ月経った今も何かと忙しい日々が続いています。
シリーズ全話をBlu-ray/DVDソフトで販売するにあたって、放送時に至らなかったところを補修する「リテイク作業」というものがあること。
放送開始後に人気が上がったため、雑誌などのイラスト発注が増えていて、ボクに指名で来る仕事以外にも様々なアニメーターに描いてもらったラフ原画を「監修」する仕事があります。

これまで経験にないような物量で制作会社もボクも嬉しい悲鳴を上げております。

前回のメルマガでも書きましたが、『ユーリ!!!』という民間投資によって需要が喚起されています。
主人公の地元に設定されていた佐賀県唐津市では、モデルになったお店のかつ丼の売上が数十倍に跳ね上がり、作品の舞台を旅する「聖地巡礼」で唐津を訪れる観光客も増えているそう。
作品にも登場した福岡・佐賀で展開するうどんチェーン店「牧のうどん」とのコラボ展開。
『ユーリ!!!』を取り上げてくださる雑誌はアニメ誌のみならず、フィギュアスケート雑誌やファッション誌にまで及んでいます。
ユーリイベントが佐賀と東京で開催されます。

ソフトの売上も好調で、5万本以上の販売数は「大ヒット」になります。

ツイッターやインスタグラムを見ると世界中に『ユーリ!!!』ファンがいることがわかります。
世界的なスポーツであるフィギュアスケートを真正面からアニメ化したのは初めてでしたから、久保ミツロウさんのキャラクター人気も合わせてインパクトが大きかったものと思われます。

『ユーリ!!!』によって創出された需要は国内を満たしあふれ出るように海外に広がっていると見ることができます。

文化の世界発信とはこうでないといけないと思う。
最初から海外受けを狙って国内の需要を後回ししたものは失敗します。
まずは国内の需要(お客様=国民)を満足させた上で、海外にも通用するモノ作りが必要なのです。

ボク個人の取組みは、外国選手の出身国のみなさんに応援してもらえるよう意識はしましたが、ウケは狙いませんでした。

こういったことは、国民経済…政治の分野にも当てはまる。
政府の取組みは、はたして国民の満足度を優先しているだろうか?
国内の民間投資が拡大する政策を積極的に行っているだろうか?
いまだに緊縮財政にとらわれ支出を減らし、海外投資家が作り出す株価を気にし、事実上の移民政策を言い方を取り繕って進めようとしているのは、国内需要を疎かにした海外ウケ狙いそのものです。
その結果、デフレは脱却できず、消費は落ち込んだまま。
安倍政権は日本をしぼませています。

ひとつのアニメ作品が示した需要創出の事実は小さなことではありますが、やればできるのです。

× × ×

・トランプ大統領とアメリカのこと

トランプ氏が大統領に選ばれた要因を様々な知識人が分析しています。
その中で説得力を感じたのは国際政治アナリスト伊藤貫さんの指摘でした。
ひとつはヒラリー・クリントン氏があまりにも政治的に醜悪だったため国民だけでなく政界からも嫌われたこと。
選挙戦中からサンダース氏やトランプ氏の人気が高かったのは、白人の人口比率が減っていて、アメリカ建国以来のエスタブリッシュメント白人が危機感を覚えていたこと。
トランプ氏の言動を嫌う層にすらこの危機感は無意識レベルで存在し、口外したくないがトランプを支持…というアメリカ国民が少なからずいた。
その集積としてのトランプ大統領誕生だったのだ、と。

移民制限にしても「自由の国アメリカ」としてはやりたくない。
しかし、白人が少数派になってしまうことは、かつて大陸に移民してきた白人たちが先住民に行ったことを思い出せば恐怖でしょう。
アメリカのアンビバレントです。

× × ×

・北朝鮮のこと

金正男氏がマレーシアのクアラルンプールで暗殺されました。
でている情報をザッと読んでみると、すんなりと「北朝鮮の仕業」と納得できないものがあります。

手口がお粗末であること。
なにしろ見つかった犯人が自殺もせず捕まってしまっています。

国交のあったマレーシアで犯行に及んだのも不可解で、マレーシア政府は断交やむなしと怒っています。
そもそも、犯行がバレバレになってしまう空港内での暗殺など、北朝鮮がそれとわかるよう恣意的に選んだにしてもお粗末に過ぎます。
正男氏がいなくなって得をするのは正恩氏ですが、暗殺するにしても自殺や病死に見せかけることは可能だったはずですし、民主化の望む良識派に脅しをかけるにも十分なはずなのに、見え見えな手法を行ったのは不可解です。

さらに北朝鮮は「北朝鮮市民の死亡」と表現し、正男氏の死を認めていないのも不可解です。

この問題が関係国の圧力を増加させ、北朝鮮国内の反乱に発展すると金王朝崩壊につながるかもしれない。そうなれば、北朝鮮が「アジアのシリア」になりかねません。
難民と難民に偽装したテロリストが日本にも押し寄せるでしょう。

× × ×

「安倍晋三小学校」のこと

忙しくてニュースを詳しく追えていませんが…
国有地の売却に不透明な経緯があること。
安倍首相と昭恵夫人が学園創設に関わっている、または個人的に支援していたらしいこと。

安倍首相は関わりを否定し、学校に自分の名前が使われることは「存命中はない」と言い寄付金の名義になっていることも知らなかったと述べていましたが、昭恵夫人は「任期中はない」と話したと言っていて食い違いがある。
夫婦で学園のことを話し合っていた、または昭恵夫人の独断だったにせよ、首相の証言はウソになり、首相の座を降りなければいけなくなります。

辞めろとは言いませんが、支持率が落ちて「決める政治」ができなくなるのは、ある意味望ましいと思います。

そんなことより気になるのは、この学園が神道や皇国的な教えを行っていたことに対し、マスメディアが攻勢を仕掛けていること。
教育勅語を読み、国旗掲揚、国歌斉唱をしっかり行うとしているそう。
これが問題だと言うなら、何が問題なのか明確にしてもらいたいものです。
「戦前復古」みたいな使い古された、日本文化を戦前と戦後に分断しひとまとめにする浅薄な歴史観…「戦勝国の視点」で印象操作しないでほしいものです。

明治から戦中までを批判するにしても、江戸から八世紀ころまでさかのぼった広い意味での「日本の視点」で行うことは可能なんですから。

× × ×

「アニメ オブ ザ イヤー」のこと

三橋さんが昨日のブログで紹介してくださったのでご存じの方も多いと思います。

一般社団法人日本動画協会の主催により東京都が共催する国際アニメーション映画祭、東京アニメアワードフェスティバルが行う「アニメ オブ ザ イヤー部門」の発表がありました。
http://animefestival.jp/ja/post/5967/

作品賞グランプリに『ユーリ!!! on ICE』
個人賞アニメーター賞に『平松禎史』

『ユーリ!!!』として、また、わたくし平松としてもW受賞、二冠です。

めでたい!
そして
ありがたい!

ボクなどはコツコツ仕事するしか能のない人間ですが、こうやって認めていただけるのは嬉しいことです。

やればできるんですね。

◯エンディング

欧米を中心とした「世界」は停滞が著しく、途上国が脅かす状況になっています。
旧覇権国はその権勢を保つため躍起になっている、というのがここ数年の動きでしょう。

世界は常に動いていて、人の営みは予測不可能です。

来月から新しい仕事へ(ほぼ)完全移行します。
最初は今年からと言ってたんですが最初に書いた通り、現在も『ユーリ!!!』の仕事がシリーズ作業中のような忙しさで後ろにズレてしまいました。

次の仕事は演出面が主になります。
こちらも楽しみです。

◯後CM

『平松禎史 アニメーション画集』2月27日から一般販売開始。
http://amzn.asia/hetpEPD

『ユーリ!!! on ICE』でキャラクターデザイン・総作画監督を担当しました。
公式サイト
http://yurionice.com/

ボクのブログです。
次回作、画集などの情報も適時お知らせいたします。
http://ameblo.jp/tadashi-hiramatz/

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【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第丗一話への1件のコメント

  1. あまき より

    W受賞・二冠の快挙、心よりご祝意申し上げます。

    トリニティにたとえるなら平松さんは精霊。原作に命を吹き込んだ精霊です。

    返信

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