コラム

2016年9月14日

【佐藤健志】FINE ON THE OUTSIDE(うわべだけは元気そうに)

From 佐藤健志

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「日韓通貨スワップの再開」
「韓国国会議員らの竹島上陸」
「オーストラリアでの慰安婦像設置」

自国の利益のためにすり寄りながらも、
執拗に嫌がらせを続けてくる韓国。

私たちはこのような隣国とどのように付き合っていけばいいのだろうか?
三橋貴明が、韓国という国の正体、さらには日本がなすべきことなどについて解説する。

月刊三橋最新号
「韓国の研究〜なぜ、日本は翻弄され続けるのか?」
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今週も、2014年にスタジオジブリが発表したアニメ映画『思い出のマーニー』(米林宏昌監督)を取り上げます。

先週の記事「スタジオジブリの女性化と非日本化」でも触れたように、同スタジオのアニメ作品には、以下に挙げる2つの傾向が見られる。

1)1990年代以後、女性の原作に基づく作品が、男性の原作に基づく作品よりも圧倒的に多くなった。
2)さらに2000年代半ば以後は、外国人女性の原作に基づく作品が主流となった。

2004年から2014年までに公開された8本の作品を、(a)原作の有無、および(b)原作者の性別と国籍という基準で分類すれば、本数の多い順に
外国人女性原作 4本
オリジナル   2本
原作者不詳   1本
日本人女性原作 1/2本
日本人男性原作 1/2本
となりますからね。

「1/2本」というのは、2011年の『コクリコ坂から』の原作漫画が、佐山哲郎と高橋千鶴の男女共作になっているからです。

しかるに。
『思い出のマーニー』には、関連して興味深い特徴が見られます。

この映画の原作は、イギリスの作家ジョーン・G・ロビンソンによる児童文学。
当然、物語の舞台も同国です。
イングランド東部、ノーフォークという地方での出来事になっている。

他方、映画では舞台が北海道に置き換えられているんですね。
したがって、登場人物もほとんど日本人に。
ヒロインの「アンナ」は「杏奈」、その養母の「ナンシー・プレストン」は「頼子」、ナンシーの親戚「ペグ夫妻」は「大岩夫妻」という具合です。

米林監督は前作『借りぐらしのアリエッティ』(2010年)でも、イギリスの作家メアリー・ノートンの児童文学を原作に選びつつ、物語の舞台を日本に移しました。
ただし『借りぐらしのアリエッティ』の場合、人間の家庭に寄生して暮らす小人の一家の物語ということもあってか、登場人物の「日本化」はあまり行われていません。

寄生される側の人間たちこそ、「翔」「貞子」「ハル」などとなっていたものの、小人の家族は、タイトルに出てくる「アリエッティ」をはじめ、「ホミリー」「ポッド」「スピラー」と、原作通りの英語名。

つまり『思い出のマーニー』では、『借りぐらしのアリエッティ』と比べても、作品世界の日本化が進められています。
施光恒さんの表現にならえば、「翻訳と土着化」。
そのかぎりでは、外国人女性の原作に基づいていようと、ジブリ作品は必ずしも「非日本化」していないという見方が成立しそうなところですが・・・

映画のタイトルを、もう一度ご覧ください。
そうです。
杏奈の親友となる謎めいた少女だけは、原作通り「マーニー」という英語名になっている。
容貌も完全に白人です。
目の色は青く、髪はブロンド。

どうして米林監督は、彼女についても(たとえば)「真理子」という日本人少女にしなかったのでしょう?
北海道が舞台なんですよ。
『思い出の真理子』でいいじゃないですか。

先週紹介したイギリスの新聞「ガーディアン」の紹介記事も、マーニーの設定を不思議に思ったようで、次のように書いていました。

『思い出のマーニー』は、イギリスの児童文学を原作とする。物語の舞台は、原作のノーフォークから札幌に移され、登場人物も日本人となった。しかし、ここが肝心な点なのだが、マーニーは西洋人のままになっている。
https://www.theguardian.com/film/2016/jun/06/studio-ghibli-yonebayashi-interview-miyazaki

かつて黒澤明監督は、シェイクスピアの『マクベス』と『リア王』を、わが国の時代劇に置き換える形で映画化しました。
ご存じのとおり、前者が『蜘蛛巣城』(1957年)で、後者が『乱』(1985年)。
黒澤監督、『白痴』や『どん底』といったロシア文学も取り上げましたが、やはり作品世界を完全に日本化しています。

『借りぐらしのアリエッティ』はむろん、『思い出のマーニー』にしても、これに比べれば中途半端で不徹底と言わざるをえません。

「翻訳と土着化」をやるのは大いに結構。
原作のままでやるのも大いに結構。
しかし、どちらにするかはちゃんと決めるべきじゃないでしょうか。
なぜ、どっちつかずの仕上がりになるのか?

この点については、『表現者』(MXエンターテインメント)68号に発表した評論「少女と戦後の精神構造」をご覧いただきたいのですが、じつは『思い出のマーニー』、もう一つ興味深い特徴を持っている。
同作品の主題歌は、韓国系アメリカ人のシンガーソングライター、プリシラ・アーンによる「FINE ON THE OUTSIDE」という曲。
歌詞は英語で書かれています。

北海道が舞台で、日本人の少女がヒロインなんだから、日本語の歌詞にすべきなんじゃないかと思うものの、それは脇に置きましょう。
問題は、パンフレットに掲載された歌詞の訳がモロに間違っていることなのです!

「FINE ON THE OUTSIDE」は、歌詞のカギとなるフレーズ
AND I’LL BE FINE ON THE OUTSIDE
を縮めたもの。

このフレーズを日本語に訳せば
「そして、うわべだけは元気そうに振る舞うの」です。

ところがパンフレットでは、
「これからも外側にいたっていいの」になっている!

解釈の違い?
そんな甘っちょろい話ではありません。

「外側にいたっていいの」だったら、
元のフレーズは少なくとも
I’LL BE FINE BEING ON THE OUTSIDE
でなければならない。

本当は
I WON’T MIND BEING AN OUTSIDER
とすべきでしょう。

のみならず、
AND I’LL BE FINE ON THE OUTSIDE のどこに
「これからも」に該当する語句があるのか。

ずばり言い切りますが、このフレーズを
「これからも外側にいたっていいの」などと訳すことはできないのです!

だいたい歌詞には
AND I SOUND FINE ON THE OUTSIDE
(そして、うわべだけは元気そうに話すの)
というフレーズも出てくる。

AND I’LL BE FINE ON THE OUTSIDE が
「これからも外側にいたっていいの」だったら、
こちらは
「これからも外側で話したっていいの」としなければならない。

ところが、ここの訳はなんと
「だから外側にいても大丈夫な気がする」!!

大丈夫な気がする?!
元の歌詞には、そんなことはまったく書かれていません。
ツジツマが合わなくなって、適当にごまかしたんじゃないでしょうな。

しかも。
致命的なことに、パンフレットの同じページにプリシラ・アーン本人のコメントが掲載されている。
そこには、映画のヒロインに深く共感したとして、理由がこう書いてあるのです。

私は表向き活発な子だったけど、内面ではいつも孤独だったからです。
(中略)
表向きは自信満々に見えるように取りつくろっていたんですけれど、ほかの子たちはみんな何の問題もなくて、幸せで “ふつう” に見えて、どうして私はそうなれないんだろうって、いつも思っていました。
(表記を一部変更)

そんな少女時代を思い出して書いたのが「FINE ON THE OUTSIDE」だというのですが・・・
本人がここまで明快に語っているんですぞ。
どこをどう勘違いすると、「外側にいたっていいの」なんて訳を思いつくんですかね?!

『思い出のマーニー』は、中途半端な「翻訳と土着化」に終始しているばかりでなく、日本を舞台にしながら英語の曲を主題歌に選び、おまけにその歌詞をデタラメに訳しているのです。

これが偶然ではないのは明らかでしょう。
原作者の非日本化といい、スタジオジブリの文化的アイデンティティには、深刻な破綻が生じているのですよ。

まさしくFINE ON THE OUTSIDE ですね。
ではでは♪

<佐藤健志からのお知らせ>
1)8月に開催され、大好評だった「表現者シンポジウム」の様子が、TOKYO MX 『西部邁ゼミナール』で放送されます!
・放送日時
9月17日 7:05〜7:30
9月18日 8:30〜8:55(TOKYO MX2での再放送)

・番組ホームページ
http://s.mxtv.jp/nishibe/

これは全3回の3回目です。9月3日に放送された1回目、および10日に放送された2回目については、こちらのアーカイブをどうぞ。
1回目 http://s.mxtv.jp/nishibe/archive_detail.php?show_date=20160903
2回目 http://s.mxtv.jp/nishibe/archive_detail.php?show_date=20160910

2)戦後から抜けだそうとする試みが、日本を「FINE ON THE OUTSIDE」状態にする危険についてはこちらを。

『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』(徳間書店)
http://www.amazon.co.jp//dp/4198640637/(紙版)
http://qq4q.biz/uaui(電子版)

3)それによって、保守派も「FINE ON THE OUTSIDE」状態に陥ることについてはこちらを。

『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は終わった』(アスペクト)
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4)戦後史がそもそも「FINE ON THE OUTSIDE」でしかなかった可能性についてはこちらを。

『僕たちは戦後史を知らない 日本の「敗戦」は4回繰り返された』(祥伝社)
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5)「真面目な話、倫理的価値観の何たるかを知るうえでは、劇場のほうが教会よりもふさわしい。芝居は興奮や感動を売り物とするからだ」(115ページ)
日本を代表するアニメスタジオが、文化的アイデンティティに関して破綻をきたしていることは何を意味するのでしょうか?

『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)
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6)「アメリカは巨大な劇場である。世界を変えるドラマが、もうすぐそこで演じられる」(280ページ)
独立を勝ちとるとは、自分たちのドラマを持つことなのかも知れません。ならば文化的アイデンティティの破綻こそ、まさしく植民地の証ということに・・・

『コモン・センス完全版 アメリカを生んだ「過激な聖書」』(PHP研究所)
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7)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
ブログ http://kenjisato1966.com
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ーーー発行者よりーーー

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