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2015年9月15日

【藤井聡】維新・改革は、緊縮を通して「災い」をもたらします。

From 藤井聡@京都大学大学院教授

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●月刊三橋最新号のテーマは、「農協改革」。
マスコミや国会議員も語ることができない「亡国」への道とは?

http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv2.php

もし、あなたが、子供や孫たちに安全で豊かな日本を引き継ぎたいなら、、、
この恐ろしい現実を知ってください。

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台風18号は、凄まじい被害をもたらしました。

その直接的原因は、二つの台風と秋雨前線の相互作用で生じた、(昨年の広島の土砂災害をもたらしたものと同様の)「線状降水帯」による凄まじい集中豪雨でした。

しかし、今回生じた堤防決壊や越水などの「災害」を見れば、過去の政治家たちが空疎な改革や維新といった言葉を叫ばずに、まっとうな政治さえ行っていれば、防げたのではないか──としか思えないものが見られます。

中でもその典型が、鬼怒川での堤防決壊でした。

この堤防決壊は、甚大な被害をもたらしましたが、ここが危険な地点であることは、政府・国土交通省もあらかじめ認識していたのです。だから、ここでは既に、この地点を「強靱化」するための河川改修事業が進められていました。堤防の位置を付け替え、河川断面を広げてより多くの水が流れるようにする事業が始められていたのです。

だから、この事業さえ終了していれば、今回の惨事は起こらなかった可能性は十二分以上に考えられるのですが、残念なことにその事業のただ中に、この不幸な災害が起こってしまったのです。

ではなぜ、事業が終わっていなかったといえば……「治水事業のための予算」が足らなかったから、という背景が濃密に存在しています。

こちらのグラフをご覧ください。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=697495253684754&set=a.236228089811475.38834.100002728571669&type=1

我が国の治水事業費は(昨今、民主党政権下よりも若干回復しているものの)、ピークの「4割以下」にまで激減しています。

洪水に対する強靭化を果たすには(ソフト対策の充実が必要であることは論をまちませんが)、この治水についての「緊縮」問題は、最大の課題であると当方は考えます。

なぜならここまで過激な緊縮路線がなければ、とおの昔に、今回の決壊地点での河川事業は終わっていたことは、火を見るよりも明らかだからです。

そして、これを誰が削減したのかと言えば──最も大きく削減されたのは、「平成22年」に政権を担っていた、あの「コンクリートから人へ」のスローガンと共に政権の座についた民主党政権です。

なお、それ以後、安倍政権下で少しずつ回復しつつありますが、民主党政権が断行した大きな削減を取り戻すまでには至っていません。

いわば、少なくとも数字の上から見るなら、「コンクリートから人へ路線」は幾分緩和しつつあるものの、未だ、継続していると言われても仕方ない状況にあるわけです(グラフをご覧頂けば、いわゆる「L字回復」の状況にあることをおわかりいただけると思います)。

一方、民主党政権だけが、この治水事業費の「削減」に加担してきたのかと言えは、決してそうではありません。グラフからも明らかなとおり、(民主党よりも削減ペースは遅いとはいえ)、自民党政権下でも、一貫して、治水事業費は削減され続けたのです。

この今回の堤防決壊によって引き起された惨事を目の前にして、そして、その惨事によって失われた国民の生命と財産を目の当たりにしてもなお、この事業費削減は「合理的」だったのだと我々は言えるのでしょうか───?

歴史に「たられば」は無い、と言いますが、これからの政治の差配を考えるには、政策を考える者は皆、その「たられば」に思いを馳せ、反省すべきを反省し、これからの政策のあり方を考えるべきであると思います。

・・・

いずれにせよ、こうした事業費削減の考え方は、広く言うならば「緊縮財政」そのものです。

したがって今回の災害の教訓は、「過激な緊縮財政は、災いをもたらす」という一点です。

思い起こせば、この水害のみならず、ギリシャの財政破綻も緊縮財政がもたらしたものであり、失われた20年におけるわが国のデフレ不況もまた緊縮財政がもたらしたものです。

そして、地方行政に目を転ずるならば、「大阪経済の凋落」もまた、緊縮財政がもたらしたです。

まず、大阪では、橋下維新が政治の実権を握ってから、過激な緊縮路線が推し進められました。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/wp-content/uploads/2015/09/osakajitsujo/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%893.JPG

そして、その緊縮路線は、下記データに示されている通り、景気の低迷をもたらしているのです。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/wp-content/uploads/2015/09/osakajitsujo/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%894.JPG

ただし、この「緊縮路線」は、今回の堤防決壊と同様に、大阪という街を、深刻な災害リスクに晒してしまっています。

日本の防災学の第一人者、河田恵昭・京都大学名誉教授は、言います。

「防災・減災は選挙の票につながらないと素人政治家は判断し、今回の大阪都構想における大阪市の区割りや大阪府との役割分担において、防災・減災は全く考慮されていない。
しかし、南海トラフ巨大地震は今にも起きかねないほど危険である。・・・・市民の安全・安心を守るのは大阪市行政の最重要課題であるにもかかわらず、票につながらないから大阪都構想では全く触れられていない。
地震と津波で大阪市営地下鉄や水道が壊滅すれば、大阪市の繁栄どころか、津波や火災で多くの市民が犠牲となり、復旧・復興もままならず、これが致命傷となり大阪市はさらに没落する。民営化の前にもっと地下鉄と水道をはじめ、社会インフラの防災対策を進めなければならない。」
(_http://satoshi-fujii.com/scholarviews/ にて 「河田」で検索ください)

緊縮路線は、ひとたび自然災害が生ずれば、極めて深刻な被害をもたらすのです。

私たちの住むこの世界は、決して一切の危険が存在しない安全な世界ではないのです。

その事実を念頭に置いたとき、何が

「合理的」

な財政方針、予算配分なのかは、自ずと定まってくるはずです。

思考を停止しながら維新だ改革だと叫ぶ緊縮路線ほど、危険なものはないのです。

PS
当方のホームページ、サトシフジイドットコム、11/22のダブル選を見据え、
「大阪都構想」を考える 〜適正な有権者判断に資するために〜
にリニューアルしております! 是非、ご覧ください。  http://satoshi-fujii.com/

PS2
9月23日の午後、『豊かな大阪をつくる』の第三回シンポジウムを大阪でおこないます。今回は題して、「橋下維新大阪市政を検証する」です。是非、ご参集ください!
http://satoshi-fujii.com/symposium3/

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【藤井聡】維新・改革は、緊縮を通して「災い」をもたらします。への12件のコメント

  1. docholiday より

    全くの私見です。いろいろな考え方があるとおもいますが、私はこう考えます。彼らの目的は何かを作りあげることではなく、単にそれらしい雰囲気を作り出し大衆を誘導することです。都構想が正にそれでした。協定書をさっと目を通しただけでも分かります。スカスカの中身です。大阪を良くすることなど書かれていません。行政組織とか仕事の所管がどことかそんなことだけです。では、どこへ導いてゆくのか。訳の分らぬ世界です。そう都構想です。中身など何でもいいのです。世の中を混乱させればそれで目的が達せます。大阪でそれが達成できれば次は日本全体をターゲットにするでしょう。詰まり亡国が最終の目的です。

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  2. docholiday より

    大阪の人たちも、目を覚まして欲しいですね。メディアなど一部の勢力に集団催眠にかけられているみたいです。

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  3. 尊皇攘夷2653 より

    >たった一人殺しただけでもこれなのに、たくさんの人を殺せば許されるなんて今の社会は狂っています。 「一人の死は悲劇だが100万人の死は統計学的数字でしかない」とは確かスターリンの言葉でしたか。 平和ボケした日本人(在日日本人)も同じなのでしょう。新自由主義や多文化共生の名の下で(グローバリズムと外国人・左翼に)抑圧・搾取されている日本人など「統計学的」に扱うべき存在でしかないのかもしれません。思えば彼らは日本人拉致・領土問題にずいぶんと冷淡だったように思われます。

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  4. きらきら より

    藤井先生の大大阪構想は素晴らしいと思います。しかし、また維新とか言っている大阪の方々に、関西圏のもっといえば国の中核となる資質はあるのでしょうか?私は、他の県を中核にした方が良いように思えてきました。

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  5. 學天測 より

    大阪都構想も合併ですが、避難勧告が水害後に出たという地域のある常総市も10年ほど前に合併で出来た自治体だそうです。合併で肥大化し、住民から行政が遠くなった弊害がでたもかもしれませんね。

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  6. トキ より

    藤井さんや三橋さんの大阪都構想のご指摘、とても鋭く納得させられました。そこで教えていただきたいのですが、橋下市長と松井知事の狙いはなんなのでしょう?単に、権力を振るいたいだけの阿呆なのでしょうか?この疑問が、なかなか解けないでいます。

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  7. 拓三 より

    防災をコストベネフィットで考える学者さん(高橋洋O)を観ると、いつもながら『ずるい奴』と思う今日この頃で御座います。結論から言えば、国民意識を変えなければアカンという事やねんけど今それ言うか?、緊縮、消費増税など今しか見ない国家、未来の成長を諦めかけてる国民、がコストベネフィットで考えたら間違った答えしか出て来んやろ。それもみんな国民が支持した事やから最後は自己責任と言いたいんやろうけど、国家も国民も精神的異常をきたしている現状で裏的論理を言わないで頂きたい。

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  8. docholiday より

    松井、橋下の極悪コンビが知事、市長になってから、大阪の元気が全く感じられません。グランフロント大阪やあべのハルカスの開業で大阪の活力が出なければならないのに、彼奴らはそんなことを売り込まずに自分たちの宣伝ばかりしている愚か者です。大阪なんぞ愛していません。自分の利益だけかんがえています。維新政治は、終わりしましょう。大阪の為にも、日本の為にも。

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  9. ねこ より

    民主党にしばしば触れられていますが、彼らには土木事業への軽視、の体質があるのでしょうか?それは経験のなさから来るのでしょうか?土木事業には、自然地形との調和や災害予測したうえでの合理性、美感など、経験の蓄積や科学的思考に基づく、高度なセンスがいるのでしょうね。本来、賢人の仕事なのでしょうね。(猫の額的庭造りの経験しかありませんが)

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  10. 學天測 より

    ワタミの渡辺さんが、従業員に過労死者を出して厳しい社会的制裁を今でも受けています。たった一人殺しただけでもこれなのに、たくさんの人を殺せば許されるなんて今の社会は狂っています。一人殺るのも、十人やるのも同じではないのです。嘘つきには嘘つき、人殺しには人殺し、やったお前も支持したお前もその手は血塗られているぞと愚か者が権力を奪い座に就くことを戒めるためにシェイクスピアのマクベスでも読ませて、はっきり言ってやらんと駄目なのですが、もはや国民はいず、何が善いか悪いか悩む能力さえ失った、愚民というマゾの様に虐待を受け入れ、ぶって!ぶって!死ぬまでぶって!と泣き叫ぶ、変態がそこにいるだけであった。言論も人の趣味趣向までは変えられない。最近、私も悟ってまいりました。人事を尽くして天命を待つの境地であります。明るく楽しく、個々人の出来る事を日々、さわやかに頑張りぬきましょう!先生!

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  11. ねこ より

    情報を読み取る能力さえ、かなり個人差があるのですね。。行政や集団では、能力の優れている人の意見が尊重されることがよいのでしょうね。

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  12. ねこ より

    鬼怒川、恐ろしい。昼だったのが幸いしましたね!人命被害は最小であったのは、幸運な偶然だったと思います。河田教授のお話はたいへん面白く、恐ろしかったです。防災的には最低の建物が大阪市沿岸にある、とのこと、予算は、賢い人の意見を聞いて、賢く!使っていただきたい!と、切に望みます。

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