アーカイブス

2015年7月20日

【三橋貴明】ユーロの犠牲者

FROM 三橋貴明 http://keieikagakupub.com/38news/

——————————————————-

●●長崎の「軍艦島」は「日本のアウシュビッツ」にされてしまうのか?
月刊三橋の今月号のテーマは、「歴史認識問題」です。
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv3.php

——————————————————-

【今週のNewsピックアップ】
●亡国のチプラス
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12050258778.html

●緊縮のクーデター
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12050608788.html

JPモルガン・チェースのエコノミスト、グレッグ・フゼジー、マルコ・プロトパパの両氏は、7月13日のリポートで、今年のギリシャの1−6月(上半期)の景気縮小は、年率で10%となるペースだとの概算を発表しました。すでに、ギリシャのGDPは対08年比で26%減少しています。この上、さらに年率10%で経済規模が縮小しているところに、「緊縮財政」が強行される。

恐らく、ギリシャの今後の貧困化と国民経済の崩壊は、将来的には経済の教科書(経済学、ではなく)に載るレベルになると思います。

すでにして、ギリシャの失業率は25%を上回っているわけですが、今後、ギリシャで緊縮財政が推進されることで、失業率は当然の話として上昇。30%に接近していくでしょう。

しかも、現在のギリシャ国民は「誰」のせいで緊縮財政を強要され、自分たちが貧しくなっていくかを理解しているわけです。もちろん、ドイツである、ユーロであり、EU(欧州連合)です。

日本のような普通の独自通貨国は、GDPが二割超も減少するようなデフレ期には、長期金利は下がります。何しろ、デフレ期には、
「企業が設備投資をしない」
わけで、銀行からおカネを借りる必要がなくなります。反対側で国民は預金を増やすため、銀行は「貸出先がない自国通貨建ての預金」を政府に貸し出すことになります。すなわち、自国通貨建て国債を買うのです。

結果、長期金利は下がっていき、企業は設備投資が容易になります。もっとも、デフレ期には需要が乏しく、企業が銀行から借り入れた資金を投じる先が少なくなります。政府が率先して需要を拡大するまで、銀行融資と設備投資は不十分な状況が続き、金利は低迷します。

デフレから脱却し、需要拡大でインフレ率が安定的に推移するようになれば、企業が「儲かる」ということになり、銀行融資や設備投資が増えます。すると、国債金利は上昇します。もっとも、独自通貨国は中央銀行が国債を買い取ることで、金利を調整することは可能です。

いずれにせよ、インフレ率と長期金利は、ある程度はトレードオフの関係にあるはずなのです。インフレ率がマイナス(デフレ)のときは、金利が低下し設備投資が促されます。逆に、需要が拡大するインフレ期には、金利が企業の設備投資のボトルネックになりえます。

日本のバブル期の長期金利は、6%を超えていました。当時と今(長期金利0.4%)と、どちらが「金利面」で設備投資が容易でしょうか。もちろん「今」の日本です。

要するに、国民経済には「需要拡大(インフレ期)」」あるいは「金利低迷(デフレ期)」と、企業の設備投資を誘引するスタビライザー(安定化装置)が埋め込まれているのです。そして、インフレ期に企業が設備投資を拡大し、生産性を高めることで「経済成長」が達成されます。

ところが、現在のギリシャは、
「需要が縮小するデフレ期」
であるにも関わらず、
「長期金利が10%を上回っている」
状況にあります。これでは、二重の意味でギリシャの設備投資は増えず、根本的な問題である生産性向上は起きません。

生産性が向上せず、さらに統一通貨ユーロに参加し続ける限り、ギリシャは永久に「ドイツ製品の市場」であり続け、所得が貿易赤字(ドイツの黒字)としてドイツに渡り続けることになります。

産業革命後のイギリスが、インドに「自由貿易」を強要し、綿製品を売り続け、インドの綿産業を壊滅させたのと何が違うのでしょうか。

というわけで、次なる三橋の著作は「ドイツ第四帝国の興亡」でございます。

PS
強制徴用で騒ぐ韓国が仕掛けた罠とは?
月刊三橋の今月号のテーマは、「歴史認識問題」です。
https://www.youtube.com/watch?v=vGLmma-WA14&feature=youtu.be

関連記事

アーカイブス

【柴山桂太】FTAの本質

アーカイブス

【藤井聡】与党内部からも、「消費増税凍結」「PB目標撤回」を求める声が出始めたようです。

アーカイブス

【藤井聡】維新・改革は、緊縮を通して「災い」をもたらします。

アーカイブス

【藤井聡】 【警告】東京にとって、「大阪維新」現象は対岸の火事ではない。

アーカイブス

【島倉原】景気循環と第二の敗戦

【三橋貴明】ユーロの犠牲者への1件のコメント

  1. 吉川豊志 より

    「産業革命後のイギリスが、インドに「自由貿易」を強要し、綿製品を売り続け、インドの綿産業を壊滅させたのと何が違うのでしょうか。」三橋さんは言いました。状況と環境は違いますが、日本がアメリカから離れられないことを良いことに,TPPを太平洋地域に強要に近いことを或いは受けざるを得ないようなことをしているのは、自由貿易は双方に利益があると言いつつも、表面的にきれいごとを並べてアメリカの国益を優先していることからして同じでしょう。アメリカが損することを言いますか?どこの国も同じですが、日本はいとも簡単に信じすぎますね。日本は簡単には屈しないと信じてはいますが。(だからと言って、国内の農業を改善しないと言うことではありません。TPPに加入することとは別の問題です))

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です

名前

メールアドレス

ウェブサイト

コメント

メルマガ会員登録はこちら

週間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】大阪北部地震が導く「巨大地震」 〜速やかな対策に向...

  2. 2

    2

    【施光恒】園芸からみえる日本

  3. 3

    3

    【藤井聡】なぜ、南海トラフ地震の被害が1400兆円を超えるの...

  4. 4

    4

    【三橋貴明】どうでもいい目標が亡国をもたらす

  5. 5

    5

    【三橋貴明】歴史上最大の危機

  6. 6

    6

    【三橋貴明】有事に備える

  7. 7

    7

    【三橋貴明】日本国民は「想像力」を取り戻さなければならない

  8. 8

    8

    【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第四十六...

  9. 9

    9

    【藤井聡】「骨太の方針2018」で、デフレ脱却は出来るのか?

  10. 10

    10

    【三橋貴明】経済用語に対する無知を利用したプロパガンダ

MORE

月間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】「骨太の方針2018」で、デフレ脱却は出来るのか?

  2. 2

    2

    【藤井聡】なぜ、南海トラフ地震の被害が1400兆円を超えるの...

  3. 3

    3

    【藤井聡】大阪北部地震が導く「巨大地震」 〜速やかな対策に向...

  4. 4

    4

    【施光恒】園芸からみえる日本

  5. 5

    5

    【藤井聡】「『歴史の謎はインフラで解ける』 〜政府投資こそが...

MORE

最新記事

  1. 日本経済

    【三橋貴明】経済用語に対する無知を利用したプロパガンダ

  2. 日本経済

    【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第...

  3. コラム

    【施光恒】園芸からみえる日本

  4. 日本経済

    【三橋貴明】有事に備える

  5. 政治

    【藤井聡】大阪北部地震が導く「巨大地震」 〜速やかな対...

  6. 日本経済

    【三橋貴明】日本国民は「想像力」を取り戻さなければなら...

  7. 日本経済

    【三橋貴明】どうでもいい目標が亡国をもたらす

  8. 日本経済

    【三橋貴明】歴史上最大の危機

  9. 日本経済

    【三橋貴明】凋落する科学技術力を食い止める

  10. 欧州

    【三橋貴明】イタリアの転舵と日本の「最悪の世代」

MORE

タグクラウド