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2015年5月4日

【三橋貴明】「カネ」の問題ではありません

From 三橋貴明 http://keieikagakupub.com/38news/

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●●憲法9条は日本の誇りなのか? 国家の危機の原因か?
月刊三橋最新号のテーマは「激論!憲法9条〜国家の危機に備えるために」

https://www.youtube.com/watch?v=4OQ4DnbgVS0&feature=youtu.be

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【今週のNewsピックアップ】
●国際リニアコライダー(前編)
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12018549006.html

●国際リニアコライダー(後編)
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12018980244.html

リニア中央新幹線は、すでに最難関工区といわれる「南アルプストンネル」の工事の発注依頼が大手ゼネコンに提出され、現在、ゼネコン各社が施工方法を検討し、工費を見積もった見積書を8月までにJR東海に提出する予定となっています。今世紀最大の国家的プロジェクトが、いよいよ具体的に動き出そうとしています。

もっとも、リニア中央新幹線は「今世紀最大の国家的プロジェクト」なのかも知れませんが、資金を出すのは国家ではなくJR東海です。
JR東海は私費でリニア新幹線を、まずは東京−名古屋間で開業し、そこから生まれるキャッシュフローで借入金を返済しつつ、名古屋−大阪間のリニア新幹線を建設するため、大阪までの開業予定が2045年と、吃驚するほど「未来」になってしまっています。
政府は無利子無担保のおカネをJR東海に貸し出してでも(同時に口を出さない)、何とか2027年までに大阪までの同時開業を目指すべきです。何しろ、リニア中央新幹線は間違いなく「固化的プロジェクト」なのですから。

ところで、リニア中央新幹線は、東京−名古屋間の8割以上がトンネルという、人類として前代未聞の大工事が必要になります。恐らく、様々な技術的困難が次々に噴出することになるでしょう。この手の「技術的困難」に現場の方々が立ち向かってこそ、技術的ブレイクスルーが実現できると信じます。

国際リニアコライダーも同様です。数十キロの直線のトンネルに、超伝導の磁力で電子や陽電子を加速する加速器をずらりと並べ、超伝導素材で作られた空洞「超伝導加速空洞」を構築します。その中を、高さ5ナノメートル(十億分の5メートル)の超平行ビームを飛ばし、電子、陽電子を両端から創出するわけです。測量技術一つとっても、途轍もなく高度な技術が要求されます。

また、超伝導加速器は一つ一つが精密機器です。何万、もしかしたら数十万にも達する数の超伝導加速器の一つにでも瑕疵があると、その時点で「リニア(直線)コライダー」としては役に立たなくなってしまいます。三橋が国際リニアコライダーについて「世界最大の超精密機器」と表現する理由が分かってもらえると思います。この種の「超精密機器」を製造、建設できる力こそが、間違いなく「経済力」なのです。

何しろ、おカネなど中央銀行がいくらでも発行できますが(※インフレを無視すれば)、超精密機器を製造するためには、膨大な数の企業が存在し、それぞれが高度な技術力を誇り、さらに各企業の技術を統合するインテグレーション能力、プロジェクト管理能力が求められるます。この手の「供給能力」は、おカネを出すだけでは身に付きません。

実際に、様々な製品を生産し、技術やノウハウ等を蓄積し、さらに日々、技術力に磨きをかける「仕事の現場」の人々の向上心がなければ、絶対に「存在」し得ないのでございます。現時点で、国際リニアコライダーを建設するために必要な「供給能力」を、日本が「まだ」保有しているという事実が、どれほど重要であるか。

デフレーションは、企業から仕事を奪うことで、各企業に蓄積された供給能力を毀損、喪失させていきます。すなわち、国家の経済力を縮小させてしまうのです。

一度、喪失してしまった供給能力を回復するためには、これは膨大な時間と蓄積を必要とします。大東亜戦争敗北後に航空技術の研究開発を禁じられた我が国は、未だに戦闘機製造技術で他国の遅れをとっています。

これ以上の「供給能力」「経済力」の喪失を食い止めるためにも、我が国は「企業の仕事」としての大規模プロジェクトを必要としているのです。しかも、現時点の技術開発投資、公共投資、設備投資は、デフレの主因たる需要不足の解消に役立ちます。

というわけで、リニア中央新幹線や国際リニアコライダーといった大規模プロジェクトを現実のものにできるか否かは、我が国の経済、将来に決定的な影響を与えるます。それにも関わらず、経済力の本質を理解していない政治家、官僚、学者たちは、「カネ」の問題にばかり重点を置き、将来のための投資を「ムダだ!」と否定しようとします。

そもそも、経済力とは「カネ」の話ではなく、「供給能力」であるという経済の真実を、日本国民は早急に共有する必要があると思うのです。

PS
5月3日は憲法記念日。憲法9条は日本の誇りなのか? 国家の危機の原因か?
月刊三橋最新号のテーマは「激論!憲法9条〜国家の危機に備えるために」
https://www.youtube.com/watch?v=4OQ4DnbgVS0&feature=youtu.be

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【三橋貴明】「カネ」の問題ではありませんへの4件のコメント

  1. ろんどなー より

    デフレ期にこそ国家が大掛かりなプロジェクトを推進すべきだと思います。それが世界初の新技術の開発なら尚更。国内企業が受注するプロジェクトなら、企業所得や雇用を増やし、GDPプラス効果がありますから。そして革新的な技術開発が進めば、それに伴う特許やら派生技術の別分野への応用等様々な効果も期待できます。こういった長期に渡るプロジェクトへの投資を考えるべき時期に、財務省が財政の「プライマリーバランス」に拘り過ぎるのは本当に問題。会計を単年度収支のみで考えると、将来に向けて長期に渡る投資はやりにくいですから。それでもプロジェクトを国内企業に発注すれば「税収は増えるはず」ですが。

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  2. 田井 牧夫 より

    今回の中身よりも、「・・・ございます。」がなかったのがよかった。

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  3. ぬこ より

    今日の内容、重いどすわね。説得力ある内容どす。奴さんは、金融マジックだけでは何ともできないから、TPP等の政治マジックを駆使して取り込もうとしているのでせうか?でも、何だかんだで最先端の科学技術は五角形が押さえているちうて言われておりマウスわよね。日本にも官民協調した上で、五角形に相当する様な組織が必要なのでせうか?小生、某理系総合大学(今話題のIPSなどのバイオ系)を出ましたが、学部卒で研究者になれた同期は100人中、5人ほどどしたのん(その内、2人はアメに留学してしまいましたのん)。かと言って、修士や博士で、必ずしも専門家になれるとは限らず、一生、教授の雑用をする人も居る世界。無駄に頭脳を流出させている日本って何なのん?

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  4. 高部 志朗 より

    「供給能力がデフレ解す消になる」というご意見に賛成いたします。かつて民主党政権時代に「コンクリートより人」とか言って、一番でなければダメなのですか?と「スーパーコンピューの開発は無駄」とばかりに開発予算を削除しようとしましたね。本当に経済の事が判っていない、バカな人たちでしたね。リニアコライダーだけではなく宇宙開発のためのロケット技術や国産戦闘機の開発も社会に与える経済的波及効果が大きいと思います。その他、水素社会の為の技術開発や放射能の影響が少ない新原子力発電方式など日本にはまだまだ経済的成長を可能にする技術開発分野はたくさんあると思います。アベノミクスの第3の矢(成長戦略)を成功させるには、このような巨大プロジェクトに補助金を出すことも必要だと思います。

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