日本経済

2016年6月28日

【藤井聡】英EU離脱「緊急経済対策」 〜景気対策20兆円とアベノミクス成果の全活用〜

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授、内閣官房参与

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日本が国連に2億ドル払える理由
財政赤字国のどこにそんな大金が?
TVが放送を自粛する意外な真実とは
http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag2.php

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6月24日(金)、英国のEU離脱(ブレグジット)が国民投票により決定されました。

多くの人々が残留を予期していた中の離脱決定を受け、日本では円高、株安が進行し、一時一ドル100円を割り、株価も一日で実に1200円以上も下落し、15000円を割り込みました。これは、リーマンショックを上回る水準です。
http://www.asahi.com/articles/ASJ6S5FQ3J6SULFA02T.html

しかも、同様の事態が世界各国で進行しました。その結果、

  東京と仏パリで約8%、
  独フランクフルトで約7%、
  英ロンドンと米ニューヨークで3%以上、
  スペイン・マドリードでは12.4%

も株価が下落し、結果として世界の株式市場から「215兆円」が失われてしまいました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160625-00000017-jij_afp-bus_all

しかもこの混乱は、まだまだ長引くことは間違いありません。

そもそも仮に「ブレグジット決定」のインパクトが一時収束したとしても、実際に英国が離脱するまでには「2年」もありますし、早速、英国のEU離脱決定を受けて、EUからの離脱を求める声の強いオランダをはじめとしたEU各国が、同じく離脱を模索する動きが加速しています。
http://jp.reuters.com/article/britain-eu-wilders-idJPKCN0ZA0L1

その上、UK(英国連邦)からの「離脱」を求める声もさらに拡大することも必死です。すでに、スコットランド自治政府首相は「住民投票に向けて必要な手続きを近く始める」と宣言し、
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000077864.html
北アイルランド自治政府副首相も、英国からの離脱とアイルランドとの併合を求める意向を表明しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160627/k10010573101000.html

つまり、英EU離脱によって世界的な金融市場の混乱が不可避となったわけで、しかも、その混乱は長期的に継続していくことが危惧されることとなりました。

これはまさに今、先の伊勢志摩サミットで各国首脳が議論した「リーマンショック級の危機」が、顕在化しかねぬ状況に至ったわけです。

この状況に対して日本政府が無作為であれば、日本経済は低迷し、失業率の上昇と賃金の下落を伴う完全なデフレ状況に立ち戻りかねません。

ついてはそうした認識から、政府でも早速「10兆円」超の景気対策が議論されはじめました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160625-00050130-yom-bus_all

ただし、ここで重要なのは、その対策で本当にこの危機が乗り越えられるのか──という一点です。

そもそもわが国では、今回の英EU離脱決定のはるか「以前」から、昨今の上海ショック、ユーロ危機の煽りを受け、8%増税の影響が長引く景気低迷に対して、最低でも10兆円規模の「経済対策」が市場からも求められていました。
http://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n201606020398
http://digital.asahi.com/articles/ASJ6R5FSGJ6RULFA023.html?rm=386

ところがこうした状況の上に、今回の英離脱ショックが覆い被さる格好となったわけですから、「10兆円」程度の水準では、株価対策はもちろんのこと、肝心の実体経済の需要不足が埋められるとは到底考えられません。

したがってこの状況では、「10兆円規模の景気対策を一発」行うというだけの規模では甚だ不十分であり、それを十分に上回る対策が求められていることは、理性的に考えて明白です。

こうした状況を鑑み、筆者は、以下の三提案からなる「緊急景気対策」を強く提案したいと思います。

<<英EU離脱「緊急経済対策」>>
  【対策1】 20兆円の景気刺激策(補正15兆円、財投5兆円)
  【対策2】 アベノミクスの成果(税収増分)の当初予算への全額活用
  【対策3】 長期経済対策の準備(投資プラン策定+ゼロ金利活用基金)

以下、これらの対策について解説したいと思います。

【対策1】 20兆円の景気刺激策(補正15兆円、財投5兆円)

「デフレギャップ」は、英EU離脱前から15兆円規模で存在していた(※)一方、今回の離脱ショックにより「さらに拡大」することは必至です。ついてはそのデフレギャップを埋めるためには、20兆円規模の景気刺激策が不可欠です。

(※ 今年度補正予算額3兆円 + 内閣府推計の「平均概念供給GDP」を想定したデフレギャップ8兆円 + 内閣府推計デフレギャップ過小推計分α = 約15兆円規模:参考文献『国民所得を80万円増やす経済政策』藤井聡 https://goo.gl/xkQukg

ついては、今後の景気動向を見据えつつ、この秋の臨時国会にて15兆円規模の補正予算を決定することが必須であると考えます。同時に、本年度の財政投融資を5兆円規模(5年で30兆円計画を今年から実施する)で実施していくことも必要です。

すなわち、両者を会わせて「20兆円規模の財政政策」が今、求められています。

【対策2】 アベノミクスの成果(税収増分)の当初予算への全額活用

上記の20兆円規模の財政政策を展開することでアベノミクスの成果としての「税収の自然増分」が数兆円規模で本年度も得られることが予期されますが、これを活用せずに政府の債務返済に回せば、それによって景気低迷効果をもたらされることは必至です。

これはいわば、財政政策で「アクセル」を踏みながら、債務返済にて「ブレーキ」を踏む行為で、財政政策の効果を相殺することになります。結果、英EU離脱による日本経済に及ぼすショック対策に失敗し、日本経済が完全デフレ状況に立ち戻るリスクを極大化させてしまいます。

こうした懸念を払拭するために、「アベノミクスの成果」を全額、政府の「当初予算」として活用していくことが、英国EU離脱ショック対策としては必要不可欠です。

この「当初予算への全額活用」ができれば、各省庁の各政策に関わる民間活動に「明るい将来見通し」がもたらされて「インフレ期待」が醸成され、その民間活動における消費・投資活動がより活性化していくという効果がもたらされることは確実です。

【対策3】 長期経済対策の準備(投資プラン策定+ゼロ金利活用基金)

先にも述べたように、実際の英国EU離脱は2年後であること、ならびに英国以外のEUからの離脱の動きや、UKからの北アイルランドやスコットランドの離脱などの、EU,UKの崩壊リスクがこれからも継続することを踏まえれば、当面の間、世界経済が不安定化することは必至です。

ついては、それぞれの危機の顕在化に対して迅速に対応が図れる「準備」を図ることが不可欠です。

第一に、中長期的な(地方創生回廊プラン含む)「アベノミクス投資プラン」を策定することが必要です。

例えば、6月1日の総理会見でも宣言されていた、新幹線や高速道路等の「地方創生回廊」に対する投資プランを、例えば、下記書籍で提案していたような恰好で「予算・期日」付きで策定することが求められています。

『スーパー新幹線が日本を救う』https://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E6%96%B0%E5%B9%B9%E7%B7%9A%E3%80%8D%E3%81%8C%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%82%92%E6%95%91%E3%81%86-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E8%97%A4%E4%BA%95-%E8%81%A1/dp/4166610775

第二に、上記プランの「原資」として、今日の「マイナス金利国債」を活用し、機動的な財出を可能とする「10〜20兆円規模の基金」を積み立てることが得策です。しかも、こうした基金は、機動的に次年度以降活用していくことも可能となり、将来顕在化していく危機への迅速な対応を可能としていきます。

・・・

このように、英EU離脱によって、世界の状況はさらに不透明感を増し、その混乱は度を深めています。が、上記のような対策をしっかりと的確に図るのなら、日本経済に対する被害を最小限に食い止めるのみならず、世界経済が混乱する中においても、我が国は着実に成長し、国力を高めていくことが、全くもって可能なのです。

我が国において理性的な政治決定が迅速に下されんことを、心から強く祈念したいと思います。

PS
英EU離脱が決定した「6月24日」のまさにその日に、『国民所得を80万円増やす経済政策』を出版しました。この混乱を乗り越えるためにも、一人でも多くの国民に本書をお読みいただきたいと思います。是非ともご一読ください。
https://goo.gl/xkQukg

ーーー発行者よりーーー

日本が国連に2億ドル払える理由
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http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag2.php

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【藤井聡】英EU離脱「緊急経済対策」 〜景気対策20兆円とアベノミクス成果の全活用〜への4件のコメント

  1. 吹田のおやじ より

    今回の英国のEU離脱は私の予想外の事でした。だがサミットで安倍総理が言ってた世界経済は先行き不透明で各国は財政出動をやりましょう。と意見統一を計ったが、そこまで経済は悪くないと言ってたキャメロン首相の英国が離脱になった時には笑ってしまった。そんな事より私の故郷の山陰の新幹線の件ですが、単線なんてありえないでしょう。もし鳥取選出の石破がそういう事を言ってたら許されません。そりゃ鳥取、島根併しても150万人もいない過疎県ですが、青山さんがいってるように良質なメタンハイドレートでエネルギー産業を興す事ができればこの山陰も人口が増えるかも知れません。それぐらいの絵を描く議員がほしいなあ。でも石破は貧乏神かもね

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  2. メイ より

     何度も失礼いたします。 エントリーの内容から少し外れてしまうかもしれませんが、今回のイギリスの国民投票後の様子を見ておりまして、政治課題を決定する手法として「国民投票」という手法は良かったのかしら?と。 昨年5月の、大阪住民投票でも、都構想の是非を巡って、人々の意見対立が起こって、大切な人との関係が崩れたり疎遠になったりという事がたくさんあったと見聞きし、心の痛む事でした・・・。今回のイギリスではスコットランドが独立するかもしれない騒動に発展しそうである、と。 どちらも、投票後に不満が残ったり、マスコミがどちらか片方に肩入れしたり、住民に直接傷跡が残るようなものなら、「投票」という手法は好ましくないのかもしれない、という事なのでしょうか・・。 意見が違う、というのは、感情が刺激されることがありますから、よほど感情コントロールできる人が多数派でなければ、火種になる可能性があるような気も致します。「意見」というのは、論理よりも、実は感情から発している事が多いように思うのですが、だとすれば感情をぶつけあってしまうことになるのでは・・。特に「小さな政府」の国では、政府の調整機能は大きくないでしょうから、なおのこと危険があるのかもしれません。 民主主義の国とはいえ、日本は間接民主制ですし、準備無しに急に政治課題に直面させられる住民には酷な事とも感じます。 どうしてもそうしなければいけないとなったら、投票までに十分時間を取り、説明を受け、ゆとりを持って話し合いを練る機会を頂きたいと思います。政策提案者が、手前味噌に良い点ばかりをPRして住民の目を曇らせるのではなく、住民も識者の方も、様々な角度から疑問を出し分析し話し合うのを許して頂き、何度もあちこちで考える機会を設けて、できれば役所の人?などに、説明役兼、冷静なコーディネーターとして入ってもらいヒートアップを避けるなど、手間暇かけなければ、納得に近い結果は得られないのではないでしょうか。 政治家が政策を決める時と違って、「住民投票」の場合は、思わしくない結果になった側が、意見の異なる仲間に対して「あいつのせいで・・」みたいな恨みになってしまうかもしれませんから。 大阪住民投票の時は、藤井先生が大変な思いをされながら、そのようにして下さったおかげで、より多くの人々に問題が見えたと思います。

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  3. メイ より

     EUから離脱するって大変な事だったんだな・・私、ちゃんと判っていなかったな、と思いました・・。 無理のあるシステムでも、長期間、共同体を形成していれば有機的な繋がりもできて、抜ける時には、やはり秩序が乱れたりする、という事なのかな。 それからマスコミなどの、イギリスに対する論調はとても批判的で、ドイツ首相は感情的とも思える言い方をされているのは、どうしてでしょう?「平和の体現であり人類の理想であるEU・グローバリズムを否定しようと言うの!?」みたいな「考え」によるものなのでしょうか。 そこはイギリスの判断を尊重するべきではないのかな、と思うのですが、やはり主権を制限されている現状があるように、感じます。イギリスに限らず。 グローバリズムの問題点が無視できないところまで来て、耐えきれなくなっていき、EUから離脱する国が出てくるというのは、自然の成り行きなのではないかと思いますが、これに伴う混乱は、避けられないのでしょうか・・。 世界全体が、グローバリズムにより国家意識が薄まって、国が分断されやすくなり、パズルのピースみたいにバラバラになってしまったり、外敵に弱くなったり、離合集散の試みを繰り返すなどで混乱が酷くなってしまうのでは、と心配を感じます。 どさくさ紛れに我が国の国土の一部なりを、どこかに持って行かれたりしないよう注意し、国民同士が協力してまとまらなくては、危険が増している気が致します。 藤井先生の、我が国は経済の混乱・激動に備えるべきというお考え、全く仰る通りであると思いますし、強く賛同致します。 安倍総理も、藤井先生のご著書に推薦文を書いて下さったのですから、藤井先生のお考えを実行に移して頂けるはずですね。そうでなければ「口先ばかり」という事になります。 もし「自国の利益だけ求めてはいけません」みたいなご意見を振りかざす方がいらっしゃったら、「そんな事を仰っている場合でしょうか」と思います。

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  4. 正田倶基 より

    全く賛成です。8%増税以降、いつの間にかアベノミクスが緊縮財政に舵を切ってしまったのを本来の積極財政に戻す絶好のチャンスですね。藤井先生の御本は何冊か読んでいますが、全く賛成です。官邸内」には色々な意見、圧力もあるかと思いますがここが正念場と思いますので頑張ってください。

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