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2015年3月30日

【三橋貴明】無知か確信犯か

From 三橋貴明 http://keieikagakupub.com/38news/

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【今週のNewsピックアップ】
●鰐の口が閉じていく
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12005785006.html

●ゼロ
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12006801106.html

さて、日本銀行の「2年で2%」のインフレ目標達成の期限が近づいて参りました。もはや、日銀がインフレ目標の「コミットメント」を達成できる可能性はありません。

3月27日に、総務省が15年2月の消費者物価指数を発表しました。消費税増税分(2%)を除くと、CPIが0.2%、コアCPIとコアコアCPIが共に「ゼロ」と、物価は失速しつつあります。消費税増税分が剥がれる4月には、コアCPIとコアコアCPIが共にマイナスに陥っている蓋然性は高いでしょう。

また、同日に家計消費支出(二人以上の世帯)が発表されました。実質消費が、対前年比で▲2.9%。相変わらず、日本国民は消費を「実質的に」減らしているということになります。

そもそも、日本政府(及び日本銀行)の「デフレ脱却」の定義や指標は奇妙で、かつ混乱しておりますので、整理しておきます。

97年の橋本緊縮財政以降、我が国は、
「インフレ率がマイナスで推移し、それ以上のペースで賃金水準が落ち込み、実質賃金が下がり続ける」
という状態に陥りました。実質賃金の下落とは、国民の貧困化です。デフレは、国民が貧困化することが問題なのです。貧困化した国民は消費や投資を減らすため、更なる物価下落を引き起こし、それ以上のペースで賃金が低下します(=実質賃金下落)。

すなわち、デフレ脱却のゴールは、
「インフレ率がプラスで推移し、それ以上のペースで賃金水準が上昇し、実質賃金が高まっていく」
ことなのです。国民が「豊かになっていく」環境を取り戻すことこそが、デフレ対策のゴールなのでございます。

当たり前ですが、
「消費者物価指数が上昇に転じたにも関わらず、賃金水準の上昇が不十分で、実質賃金が下落する」
も、
「消費者物価指数が下落に転じた結果、実質賃金がプラス化する」
も、共にデフレ脱却のゴールではないのです。と言いますか、「消費者物価指数下落により、実質賃金がプラス化」した場合、97年・98年の例に倣うと、再び、
「インフレ率がマイナスで推移し、それ以上のペースで賃金水準が落ち込み、実質賃金が下がり続ける」
の状況に戻る可能性が出てくるわけです。すなわち、再デフレ化です。

しかも、安倍政権は大企業に「賃上げ」を依頼しつつ、同時に労働規制の緩和、外国人労働者の受入と、賃金水準を引き下げる政策を実施しているため、なおのこと「再デフレ化」の確率は高まってしまいます。

政府が真剣に「デフレ対策」を実施したいならば、目標を、
「インフレ率がプラスで推移し、それ以上のペースで賃金水準が上昇し、実質賃金が高まっていくこと」
に置き、インフレ率の目標はコアCPIではなく「コアコアCPI(食料、エネルギーを除く総合消費者物価指数)に設定し、賃金水準を引き下げる各種労働規制の緩和は実施せず、外国人労働者の受入はせずに「需要」を拡大することで、「人手不足」を各産業に伝播させていかなければなりません。
人手不足を外国人労働者受け入れではなく、「生産性向上」により解決しようとしたとき、我が国はようやく「国民が豊かになる経済」を取り戻すことが可能になります。

ところが、安倍政権はデフレ対策を日銀に丸投げし、緊縮財政と労働規制の緩和、外国人労働者受入という、「デフレ対策」としては明らかに間違った政策を推進していっているわけです。

これは、無知によるものなのでしょうか。あるいは、全てを理解した上で、「デフレ期のデフレ促進策」を推し進めているのか。果たして、どちらなのでしょうか。

PS
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【三橋貴明】フィリップス曲線

【三橋貴明】無知か確信犯かへの7件のコメント

  1. メイ より

     先日、ある空港のデジタル広告(?)で、「フォーリン・ベビーシッターを利用しませんか?」みたいな内容があって、「もう!?」と驚きました。「お子さんに英語を教えられないお母様、バイリンガルのベビーシッターを利用する事で英語に慣れさせる事ができます」といった謳い文句だったと思います。デジタル画面が次々変わっていくので、しっかり見る事ができませんでしたが。 「そういう手で来たか・・」と、唸りました。

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  2. k_yuriya より

    「確信犯」って、B層の形成を目的として、B層を扇動する利得者(政治家、マスコミ、教育者、工作員)であると考えます。「連合国史観」利得者と言ってもいいのでは。 2675.4.1

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  3. きらきら より

    住所を小刻みに動かして、脱税をする竹中平蔵やブラック企業の社長にシンパシーを感じる、今の首相は、国民経済なんて、なんとも思っていないと思います。株価をあげておけば、韓国に強行な振りをしておけば、売国政策しても、大きな反対の声はあがらないだろう。そう思って、せっせと国の解体作業に勤しんでいるのでは?と思ってしまいます。

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  4. ドブサラダ より

    >政府が真剣に「デフレ対策」を実施したいならば もう、真剣ではない・・・・としか見えないし、聴こえません。現内閣、自民党の頭は、竹光・・・なんですよ。 この世界に生きているのが嫌なのに自分で息の根を断てない情け無い自分。

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  5. ぬこ より

    ミッツ大老などの識者による詳細な脱デフレの解説がここまで国民に認知されつつある中の、「お番犬さま」の汚番犬アメ政権のやり方。確信犯としか考えられませんのん。

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  6. 匿各希望 より

    表題の「確信犯」という表現だが、「確信犯」の本来の意味は調べればすぐわかるけど、元々は法律用語で、いわゆる義賊やテロリズムがその代表例。本日のコラムの内容は、安倍政権は確信犯か?というふうに読み取れ、つまり、安倍政権はテロか?といった意味が本来的(正しい日本語)な解釈になりえます。まあ、三橋氏がそのつもりで「確信犯」と表現しているのか否かは不明ですが・・・私なら、日本語の意味をそのまま額面通り受け取りますけど。

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  7. k_yuriya より

    これが、屈米(親米・従米では生ぬるい)している姿なのではないでしょうか。我が政府が主体性を失っている悲しい姿です。◆どこからどう手を回したら目標(日本が主体性を取り戻す)にたどりつくのでしょうか。◆「粘菌マップ」というのがあって、主要都市に餌を置いて地形を与えると、粘菌が「合理的交通網」をたどるそうです。◆そのような「日本独立マップ」を考えないと。 2675.3.30

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