From 柴山桂太@滋賀大学准教授
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●2015年の世界と日本はどうなる?
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv2.php
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実体経済が悪化している中国で、デフレリスクが出てきたと報じられています。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NGCF9S6K50YT01.html
中国はこの11月に利下げしたばかりですが、デフレリスクが出てきたとなると、さらなる追加緩和に向かうかもしれません。
来年はECBも量的緩和に踏み切ると見られています。ドイツ(ドイツ連銀)が強硬に反対しているため、どうなるか分かりませんが、ドラギ総裁がかなり強力にプッシュしているようです。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0JM0IR20141208
アメリカがQEを停止する一方で、日本、中国、EUがさらなる緩和に向かう。二〇一五年は世界的にマネーの流れが大きく変わる年となるでしょう。そしてしばらくは、投機資金があっちに行ったりこっちに行ったりと、不安定な状況が続くものと思われます。
欧州では、緩和マネーの流入で住宅市場に過熱感が出ています。
http://www.nikkei.com/article/DGXDASGM29H01_S4A810C1FF2000/
バブルがすでに弾けたスペインなど南欧諸国では不動産の値下がりが続いていますが、今度は緩和マネーがイギリスやスイスに流れ込んで、不動産価格を押し上げているようです。特にイギリス南東部(ロンドン)では、不動産価格の上昇が急で、カーニー中銀総裁がバブルを懸念しています。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0DZ01D20140519
イギリスは、リーマンショック後も経済は比較的好調でした。しかしそれは、緩和マネーの流入による不動産の値上がりや、高い家計債務比率に支えられた好景気と言えます。フィナンシャル・タイムズの記事によると、イギリスの実質賃金は低下傾向。同じく経済が(比較的)好調なドイツが実質賃金の上昇を伴っているのと好対照です。
http://blogs.ft.com/ftdata/2014/12/08/datawatch-real-wages-since-the-crisis/
今後の経済成長を考える時、イギリスは一つの典型だと思います。物価や賃金は伸び悩んでいるのに対して、不動産など資産価格は上昇し、高い家計債務に支えられて個人消費が伸びる。資産価格の上昇と家計債務の上昇によって主導された経済成長の典型的なパターンをここに見いだすことができます。これを「家計債務主導型」の成長と呼ぶことにしましょう。
もう一つのパターンはドイツです。ドイツの場合は、家計債務は増えていません。GDPに占める家計債務の比率は56%と、先進国でも別格に低い水準にあります。
https://research.stlouisfed.org/fred2/series/HDTGPDDEQ163N
ドイツも物価は伸びていませんが、輸出を伸ばして成長してきました(さすがに最近は頭打ちですが。)金融緩和には慎重で、国民は無理な消費をせず、外需を取り込んで成長する。これを「輸出主導型」の成長と呼ぶことにしましょう。
いま先進国の成長を見ていると、「家計主導型」と「輸出主導型」の二つのパターンがあるように見受けられます。最近、景気が上向いているアメリカは前者です。最近、家計債務が再び上昇に転じたと報じられています。
http://jp.reuters.com/article/economicIndicatorsAndComments/idJPL3N0TG1DJ20141126
この二つのパターンはどちらも善し悪しがあります。「家計債務型」の場合は、資産効果による個人消費の拡大が成長のエンジンですが、ある程度までいくと資産バブルの懸念が出てきます。金融当局は、資産市場が過熱しすぎないように市場の動向を見ながら、微妙な舵取りをしなければなりません。
他方、「輸出主導型」の場合は、輸出と設備投資の堅調な伸びを伴いますが、外需や為替の動向に大きく左右されます。ドイツの場合、ユーロ圏域内の貿易は為替リスクがありませんが、欧州経済の低迷で外需が不足し、成長見通しは下方修正されました。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPKCN0I31UN20141014
ロシアなどの資源国も、「輸出主導型」に分類できると思います。しかし最近の資源価格(特に原油価格)の低迷で、ロシアの先行きも厳しくなってきました。
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPKBN0JN0T120141209
グローバル化と金融緩和がミックスして進行する現在、「家計債務主導型」と「輸出主導型」の二つが、有力な経済成長のモデルとなっています。
では、日本はどちらの道を進むことになるのでしょうか。あるいはまったく別の成長モデルを生み出すことになるのでしょうか。二〇一五年に問われるのは、そのような問題だと思います。
<お知らせ>
ニュースサイト「ソクラ」に寄稿しました。
https://socra.net/?original=true
12月に関西と関東で講座をやります。二〇一五年の話、歴史の話、ピケティの話をする予定です。
芦屋:12/20(土)
http://www.asahiculture.com/LES/detail.asp?CNO=259103&userflg=0
横浜:12/27(土)
http://www.asahiculture.com/LES/detail.asp?CNO=260055&userflg=0
PS
なぜ、民間エコノミストの経済予測は信用できないのか?
経済学の「嘘」を見抜いて世界と日本の動きを正確に知りたいなら、、、、
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv2.php
【柴山桂太】日本はどの道を進むのか?への1件のコメント
2014年12月12日 3:00 AM
輸出は外需が乏しく外国との奪い合いで対外摩擦の発生、及びに国民貧困化の推進による内憂。債務重視は日本人に借金を勧めても実行するとは信じ難く、うまくいったとして不健全なバブル発生への道。いずれにせよ地獄に向かって一直線となりそうですわ。
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