アーカイブス

2014年12月10日

【佐藤健志】資本主義 vs ロック

From 佐藤健志@評論家・作家

——————————————————-

●日本はなぜ、負ける戦いへと突き進むのか?
月刊三橋の最新号「消費増税特集」を聞けるのは12/10まで
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv2.php

※月刊三橋メンバー限定「三橋貴明の情報の読み方」を発売中。
政治家、御用学者、マスコミの「嘘」を見破る具体的なテクニックを公開。

——————————————————-

アメリカのロック・ミュージシャンに、イギー・ポップという人がいます。

1960年代後半、「ストゥージズ」というバンドのリーダーとしてデビュー。
広範な人気を得るにはいたりませんでしたが、パンク・ロックの先駆者として、カルト的な評価を受けます。

ストゥージズは1974年に解散しますが、イギーは数年後、デイヴィッド・ボウイの助力のもと、ソロでカムバック。
以後、着実な活動を続けてきました。

アルバムの代表作としては「ラスト・フォー・ライフ」「ブリック・バイ・ブリック」「アメリカン・シーザー」などがあります。
2010年には、ストゥージズとして「ロックの殿堂」入りを達成。
日本での公式サイトはこちらをどうぞ。
http://www.universal-music.co.jp/iggy-pop

さて。
イギーは1982年、アン・ウェーラーという人との共著で自伝を出しています。
題して「アイ・ニード・モア」(カーツ=コール社、米国)。
日本語にすれば「まだ足りない」。

「まだ足りぬ 踊り踊りて あの世まで」とは、歌舞伎の名優・六代目菊五郎の言葉ですが、どこか通じるものを感じます。
しかるに同書には、「資本主義 vs ロック」という箇所がある。
そこでイギーは、興味深いことを書いているんですね。
多少要約して、ご紹介しましょう。

音楽業界に強力な労働組合があったとする。で、その組合が、一定額の賃金とひきかえに、1日8時間、ギターを演奏する権利を保障してくれたとしよう。
賃金は安くてもいい。ただし演奏に関する注文は「ベストを尽くすこと」だけで、具体的なよしあしについては任せてくれるものとする。

そうしたらオレは、喜んで言われるままに演奏して歌うだろう。今の資本主義的な音楽業界より、ほとんどそちらの方がマシに思えるくらいだ。

1982年当時のイギーは、必ずしも絶好調ではなかったものの、ストゥージズ時代を含め、10枚以上のアルバムを発表していました。
ついでにこれは、「ネット配信に押されてCDが売れない」どころか、CDそのものがまだ出回っていなかった時代。

それがなぜ、いくらでも儲けられる(かも知れない)資本主義的なシステムより、「組合による一定額の賃金保障」という社会主義的なシステムを望むようなコメントをするのか?
続きをご紹介しましょう。

今の音楽業界じゃ、アーティストはトップに立っているか、でなければどん底を這い回るか、なんだ。
どん底の連中は必死にやっても注目されないし、トップに立てば立ったで、人々に弄(いじ)られる。
人形扱いされて、コケにされるんだよ。
もしアメリカの社会経済システムがつくりかえられて、ミュージシャンにたいしても「ベストを尽くすかぎり仕事を保障し、一定額の賃金を払う」制度ができあがったら、オレに不満はないぜ。

この本が出てから数年後、アメリカン・ロックの「ボス」として絶頂期にあったブルース・スプリングスティーンは、イギーとは逆の趣旨のコメントをしました。
いわく、ロックと商業主義は切り離せない。
社会主義国から楽しめるロックが出てこないのは、商業主義が存在しないからだろう・・・とまで言ったと記憶しています。

スプリングスティーンの発言にも、間違いなく一理ある。
イギーだって、もし社会主義国で活動していたら「社会主義 vs ロック」などと言い出したかも知れません。
だとしても「資本主義 vs ロック」で展開された主張には、今なお、いや今だからこそ注目すべきものがあると思います。

悪平等のもとでも文化は栄えませんが、競争原理があまりに徹底されても、やはり文化は栄えません。
そのような状況は、「負け組」はむろん、「勝ち組」にとっても居心地の悪いものとなりかねない。

事実、ブルース・スプリングスティーンやマイケル・ジャクソン、あるいはプリンス、マドンナといったスーパースターたちには、「絶頂期に売れすぎたことが、長期的にはマイナスとなった」側面があります。
最も目立つ例は、やはりマイケルでしょう。

そしてこれは文化に限らず、経済全体についてもあてはまること。
戦後日本のあり方を見直そうとする動きは、たいがい「自由主義的な競争原理の導入・徹底」をめざす主張とワンセットになっていました。
わが国は(さまざまな規制や因習による)平等志向が強すぎ、そのせいで社会の活力が阻害されているというわけです。

しかし戦後日本の絶頂期とも呼ぶべき1980年代とは、今、振り返ってみれば、競争原理と平等性がうまく調和した時期でした。
自由主義的な改革の気運は起こっていたものの、平等志向の風潮も残っており、結果としてバランスが取れたのです。
だとすれば「競争原理と平等性の間でどんなバランスを取ったら、社会のポテンシャルが最も発揮されるか」を、あらためて追求することこそ、今後の重要な課題となるでしょう。
詳細はこちらをご覧下さい。
http://amzn.to/1lXtYQM
http://amzn.to/1lXunmr

第二次安倍内閣が発足したころ、「瑞穂の国の資本主義」というフレーズが流行りました。
最近はあまり聞かれないものの、「日本社会のポテンシャルを最も発揮できるような形で、競争原理と平等性を調和させる」という意味に取るかぎり、このフレーズには大きな意義があったと思います。

今度の総選挙、最大の争点は経済。
「瑞穂の国の資本主義」にも、あらためてスポットが当たることを期待しましょう!

ではでは♪(^_^)♪

「踊る天下国家」最新記事(本日配信)はこちら!
今回のテーマは「日本再生のめまい」です。
http://chokumaga.com/author/152/
または
http://ch.nicovideo.jp/k-chokuron/blomaga/ar682207
(12/10、朝8:00より)

PS
日本はなぜ、負ける戦いへと突き進むのか?
月刊三橋の最新号「消費増税特集」を聞けるのは12/10まで
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv2.php

関連記事

アーカイブス

【東田剛】アメリカの論争

アーカイブス

【上島嘉郎】命より重い価値は存在しないのか

アーカイブス

【佐藤健志】日本は良くも悪くも戦前になど回帰しない

アーカイブス

【三橋貴明】農協改革のカラクリ

アーカイブス

【三橋貴明】2017年の実質賃金、対前年比▲0.2%

メルマガ会員登録はこちら

週間ランキング

  1. 1

    1

    【三橋貴明】手じまいに入った日本銀行

  2. 2

    2

    【藤井聡】表現者クライテリオン・シンポジウム『消費増税を凍結...

  3. 3

    3

    【三橋貴明】覚悟を決めなければならないとき

  4. 4

    4

    【上島嘉郎】「アジア太平洋戦争」などと造語する前に…

  5. 5

    5

    【三橋貴明】安倍デフレ

  6. 6

    6

    【小浜逸郎】安倍政権崩壊近し

  7. 7

    7

    【藤井聡】<拡散希望> 増税推進の学者やエコノミストは「ウソ...

  8. 8

    8

    【藤井聡】<拡散希望>Q&A「増税やむなし」と言われたら、こ...

  9. 9

    9

    【上島嘉郎】沖縄県民斯ク戦ヘリ

  10. 10

    10

    【三橋貴明】プロパガンダの非対称

MORE

月間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】<拡散希望>Q&A「増税やむなし」と言われたら、こ...

  2. 2

    2

    【藤井聡】<拡散希望>Q&A「増税やむなし」と言われたら、こ...

  3. 3

    3

    【saya】日本屈指のブラジルタウン大泉町の現状を見よ

  4. 4

    4

    【小浜逸郎】急激な格差社会化が進んだ平成時代

  5. 5

    5

    【藤井聡】<拡散希望> 増税推進の学者やエコノミストは「ウソ...

MORE

最新記事

  1. 日本経済

    【三橋貴明】安倍デフレ

  2. 日本経済

    未分類

    【三橋貴明】手じまいに入った日本銀行

  3. 日本経済

    【藤井聡】表現者クライテリオン・シンポジウム『消費増税...

  4. 政治

    日本経済

    【三橋貴明】覚悟を決めなければならないとき

  5. 日本経済

    【三橋貴明】プロパガンダの非対称

  6. 政治

    日本経済

    【上島嘉郎】「アジア太平洋戦争」などと造語する前に…

  7. 日本経済

    【小浜逸郎】安倍政権崩壊近し

  8. 日本経済

    【藤井聡】<拡散希望> 増税推進の学者やエコノミストは...

  9. 政治

    日本経済

    【三橋貴明】政府は平気で嘘をつく

  10. 政治

    日本経済

    【三橋貴明】厚生労働大臣は辞任するべき

MORE

タグクラウド