From 藤井聡@京都大学大学院教授&内閣官房参与
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この週末、東日本大震災で最も激甚な被害を受けた地域の一つである石巻に二日間、行って参りました。
滞在中、現在の復興の状況を視察させていただきつつ、様々な状況についてお伺いしました。
現時点で、仮設住宅にお住まいの方は1万3千人以上。その方々の内、復興公営住宅に入居希望をしておられる3千戸以上の方々の住宅は、平成28年までに整備完了予定とのことですが、実際に入居が完了している戸数が未だたった「4.5%」という状況です。
集団移転を希望しておられる地区の方々の、集団移転が完了するのが、平成32年、すなわち、今から6年後、とのことでした。
https://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10181000/8235/06-2.torikumi.pdf
津波被害を受けた地域には、津波被害を受けた家屋が、未だにいくつかそのまま残されていました。
つまり、「復興」の道のりはまだまだ、遙か遠いのが実態です──。
一方、津波被害を免れた石巻では、人々は、既に「普通の暮らし」をしておられるように、見受けられました。そして郊外には、超巨大なショッピングモールがあり、そこは、繁盛している様子でした。
しかし、街中の商店街はいわゆる「シャッター街」。つまり、街中の商店には、ほとんどお客さんは集まっていないようです。
つまり、郊外の超大型ショッピングモールに、街中の商店街は顧客を完全に奪われ、その結果として、商店街は、壊滅的な打撃を受けている、という次第です。
いわば、沿岸部は自然災害による「天災」を、都心部は、規制緩和によって誕生した大資本による自由なショッピングモール投資による人為的激甚被害という「人災」を受けている、という次第です。
ただし、石巻の疲弊は、さらなる打撃を受けています。
前政権時代、「コンクリートから人へ」というスローガンの下、政府の公共事業関係費は7.1兆円から5兆円にまで、実に30%以上もカットされてしまいました。
一方で、石巻周辺の市民総生産に占める公共事業関係費の割合はおおよそ10%(一般に地方都市においては、その割合は都市部よりも格段に高くなります)。ただし、乗数効果(つまり、公共事業を受注した業者が、そこで得た利益/所得を使って消費・投資をする分まで考えた場合の、経済拡大効果)まで考えれば、おおよそ公共事業が支えている石巻経済の割合は、おおよそ15〜20%となります。
。。。。ということは、当時の安住財務元大臣(ちなみに、彼は石巻出身です)を中心とした方々のご判断で、公共事業を大幅に削減したことで、石巻経済は約4.5〜6%(=15〜20%_30%)、つまり、大まかにいって5%程度も低迷してしまった、という事になります。
この事はつまり、建設関係者のみならず、全ての石巻市民の所得が「5%」も、前党政権下での公共事業関係費の削減によって冷え込んでしまった事を意味しています。
この5%の市民総生産低迷は、労働者年収の金額ベースで言うと、年、約20万円程度、ということになります(宮城県の県民年収は約420万円です)。
ただでさえ、98年以降、日本全国はデフレで苦しい状況にあったところ、さらに「追加」的に、石巻の人々は毎年20万円以上もの所得を奪われ続けてしまった訳ですから、そのダメージは、相当に大きなものであることは論を待ちません。
しかも、公共投資が経済に占める割合は、地方において特に高いわけですから、この「コンクリートから人へ不況」は、地方においてより重く、東京等の都市部においては軽微であるという事になります。したがってそれは、都市と地方の格差を拡大させ続けているものでもあります。
なお、その後、現政権下で、公共事業関係費の「当初予算」は幾分回復しましたが、その回復額は、前政権によって削減された30%のごく一部にしか過ぎません──。
この様に考えますと、石巻は、
<1>1998年からの「デフレ不況」という「人災」
<2>「コンクリートから人へ」不況という「人災」
<3>大型ショッピングセンターに関する規制緩和という「人災」
<4>大津波という「天災」
という四つの災難に苛まれており、それらはいずれもまだ、「復興への道は遙か遠し」、というものばかりであり、かつ、それらの中には「現実的な解決の糸口さえ見え出せていない」ものもある状況です。
しかし、もしも本当に、
「震災復興」
を遂げねばならぬと言うのならば、<4>のみならず、<1>、<2>、<3>の全てに対処すべきではないかと筆者は考えます。
そしてもしも本当に、
「地方の再生」
を果たそうとするのならば、同じく、これら<1>〜<4>まで全てに対処せねばならないのではないかと思います。
そしてさらには、
「地域の強靱化」
を遂げんとするのならば、やはり、これら<1>〜<4>の全てに対処することが不可欠だと言うことができるのではないかと思います。
今回の総選挙後にどのような政治が展開されていくようになるのかは、選挙結果に依存するところでありますが、少なくとも筆者は、石巻をはじめとした東北の被災地を苛み続けている四つの災いの一つ一つの問題構造とその構造を論理的に理解できる「知力」を持ち、かつ、それらの一つ一つを全力で解消してみせんとする「胆力」を持つ人物こそが、国権の最高機関たる国会で議論するにふさわしい人物なのではないかと、考えます。
一般の有権者は、そういう理想の候補者がおられる選挙区においては、全力でそういう候補者を応援することが必要なのではないかと思います。
しかし….そうでないケースおいては、少しでもそういう理想に近い政策が選択される可能性を最大化出来る候補者を選択していくことが、次善の策となるのだろうと….思います。
最悪の状況の中でも、可能な限り最善の結果に結びつきうる「賢明」なる国民の審判が下されますこと、心から祈念したいと思います。
PS
政治は、本当に難しいですね。でもどんな状況であろうと、その基本は永遠に変わりません。
http://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784792604950
PPS
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【藤井聡】真面目な政治を、心から、祈念いたします…..への4件のコメント
2014年12月9日 10:50 AM
「石巻をはじめとした東北の被災地を苛み続けている四つの災いの一つ一つの問題構造とその構造を論理的に理解できる「知力」を持ち、かつ、それらの一つ一つを全力で解消してみせんとする「胆力」を持つ人物こそが、国権の最高機関たる国会で議論するにふさわしい人物なのではないかと、考えます。」まさにその通りなのですが、幕末の志士達 そして明治の元勲たちが自分の生命を賭けて活躍した時期をのぞいて、開国後150年余りのキャッチアップ経済成長の道程では自分で批判精神をもって考え抜くというよりは、前例をみてそのHow to を鵜呑みにして真似ることのみで日本はやってきました。 またそれがキャッチアアップには一番効率の良いやり方であったから、短時間に驚異的成長をとげられたのです。 そしてそれは教育体制からそうなっており、ロボットとして迅速に一定の刺激に一定の反応をする練習が学校教育の内容になっているし、さらにそのブ−スターとして塾が産業化しているわけです。 選ばれる側も選ぶ側も同じ教育を受けていますから 選ばれる側に問題の構造を論理的に理解できる「知力」を持っている人は少ないし、選ばれる側と同質な選ぶ側も候補者が問題構造を論理的に理解できる「知力」を持っているかどうか見抜けない。自民党の全部載せマニフェストを見れば選ばれる側が党組織として問題の構造を論理的に理解できるようにはなっていないことは明らかです。同マニフェストは有権者の政治への期待をそのまま全部取りしたものとも言えますから、有権者の問題意識もまったく論理的構造を呈していないことを示しているともいえます。最早真似するお手本のないところに到達して20年過ぎた日本ですが、自分で考え創造する力が付いていない。 教育の課程でロボットに改造されていない生存者はどのくらいいるのでしょうか。もしかしたら ロボットとしては不良品なので現代社会のエリ−トコ−スから外れた人たちの中にこそこれからの時代を担える人が生き残っているのかも知れません。
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2014年12月9日 4:08 PM
選挙戦も中盤を折り返し、色々な予測が報道などでよく耳にするが、その予測が当たっているのであれば、面白い解釈が出来るんとちゃうかな。今回の選挙はアベノミクスの是非を問うもんや。アベノミクスとはあらゆる政策の寄せ鍋みたいなもんやろ。(闇鍋かも)と言う事は野党の政策もアベノミクスの何処かに引っ掛ってくるはず。例えば、アベノミクスを全否定する政党(政策無し)が議席を減らすと言う事は民意はアベノミクス賛成。(当たり前)緊縮財政を推進し、構造改革を旗印にしている政党が議席を減らすと言う事は、民意は緊縮財政反対、構造改革反対。アベノミクスを問わず、憲法、安全保障などで戦う政党は、経済からは論外。つまり、もし自民が議席を伸ばしたとするならば、おのずと道は開かれるのであり、民意は第1の矢、第2の矢を推進し、なおかつ第2の矢、財政政策を望んでいると解釈出来るのではないのでしょうか。
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2014年12月11日 3:21 AM
>最悪の状況の中でも、可能な限り最善の結果に結びつきうる「賢明」なる国民の審判が下されますこと、心から祈念したいと思います。可能な限り最善の・・・、馬鹿に権力を与えてはいけない、という理由で投票活動をいたします。
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2014年12月12日 12:55 PM
投票は、本当に難しい。。。先の選挙では安倍さんに張りましたが、、見事に裏目誰に賭けるかは博打のようでございます。今度の選挙戦では真田幸村よろしく「赤」備え。実家が応援する自民党大物政治家の正室から「若い頃の鳩山由起夫先生にそっくりですわね」とお褒め頂いた時は軽い目眩を覚えたしだいでございます。「定めなき浮世にて候へば、一日先は知らざる事に候」(ゆきむら)戦は何が起こるかわかりませぬ。
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