From 藤井聡@京都大学大学院教授
こんにちは、表現者クライテリオン、京都大学の藤井聡です。
本日は、先日の日曜日(18日)に配信しました、当方の個人メルマガ
「藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~」
https://foomii.com/00178/
にて配信した下記記事を、コチラにてご紹介いたします。
この記事は、幅広くご理解頂きたい内容を配信したものですので、限定記事の一般公開という主旨にて(一部調整の上)配信いたします。是非、ご一読ください!
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祝・西九州新幹線(長崎新幹線)完成! ~武雄温泉・長崎間の23分の試乗体験をご報告します~ 京都大学大学院 藤井聡
【長崎・武雄温泉間の新幹線開通で、約1時間30分が23分に】
みなさん、こんにちは、表現者クライテリオン、京都大学の藤井聡です。
来週9月23日に行って参りました開業予定の西九州新幹線(長崎新幹線)の試乗会に行って参りました。
試乗会では、「武雄温泉」から「長崎」までを23分で一気に走行。その後、長崎駅で折り返し再び武雄温泉に戻ってくるという往復行程でした。
「武雄温泉」と「長崎」の間の距離は約66キロ(両駅の位置は下記を御参照下さい)。
https://foimg.com/00178/x5yoYa
現在、両駅の間には直通電車がなく(肥前山口で)一旦乗り換える必要があり、今は一時間半もかかってしまいます。が、この新幹線では約三分の一以下で一気に走行するのですから、改めて新幹線の素晴らしさが実感できる試乗となりました。
【31個のトンネルと168個の橋梁を含む、14年をかけた難工事】
この66キロの区間の工事を進めた主体は、鉄道・運輸機構。
2008年から14年の時間をかけて、この度完成したわけです。
ちなみにその工事は決して生やさしいものではありませんでした。
欧米ならその大地の大半が平地なので、トンネル・橋等は殆ど必要無く、その区間の大半が地上への「直接設置」となりますが、この長崎新幹線の今回の施工区間の約9割が「トンネル」か「橋」(トンネル6割、橋3割)。地上に直接設置されている区間はわずか1割以下でした。
その31個のトンネルと168個の橋梁を作り上げるのに14年もの歳月がかかったにも拘わらず、今はそれを23分で一気に走り抜ける事ができる―――というよりもむしろ、関係者がひとつひとつのトンネルと橋梁を14年にも及ぶ努力によって丁寧に作り上げたお陰で、たった23分で一気に走り抜くことができるわけです。
試乗中そんなことを思っていますと建設に関わった方々への感謝の念は元より、祝意の念が自ずと湧いて参ります。建設に関わられたあらゆる方々に深謝とお喜びの意を心より表したいと思います。
【長崎では数百年に一度の大規模再開発】
そんな関係者の方々から、長崎駅にて解説頂いたのですが、終点の長崎はこの新幹線の整備に伴って、非常に大規模な再開発が行われたとのこと。
在来線の駅を含めて駅舎は完全にリニューアルされ、様々な商業施設、ビジネス施設、そして行政施設が新たに建設されています。
長崎クラスの地方都市でこれだけの大規模な投資が行われることは滅多にありません。事実、地元では「数百年に一度の大開発」と言われているとのこと。こうした大規模投資を喚起したということもまた、新幹線の巨大な整備効果です。
つまり、「交通の利便性の向上」は、ただ、行きやすくなるということを意味しているだけでなく、土地の意味を変え、都市を大きく飛躍させる効果を持つわけです。
ただし……大きな飛躍の契機をつかんだのは、長崎市だけではありません。
沿線の武雄温泉や嬉野温泉等の観光地、長崎空港の最寄りとなる新大村駅、さらには交通の要所である諫早駅もまた、それぞれに大きな飛躍のチャンスをつかんだわけです。
【新鳥栖・武雄温泉区間は、佐賀県知事の反対で未整備のまま】
しかも、こうした沿線の街々の発展は、未来に向けてさらに大きく加速していくことが期待されています。
この西九州新幹線は完全開通ではなく、「未完成区間」が残されているからです。
改めて再掲載しますが、こちらの地図にも示したように、武雄温泉と新鳥栖の間の約50キロ区間が未完成なのです。
https://foimg.com/00178/x5yoYa
残念ながらこの区間は、佐賀県知事の同意が得られず、事業化は未だ決定していない状況にあります。
「佐賀県知事の主張は、佐賀市は新幹線の新鳥栖駅までスグなのだから、整備費用をわざわざ支払ってまで新幹線を繋げる必要性なんて無い」という理由なんだそうです。
【全線完成すれば、長崎のみならず佐賀に大きなメリットがもたらされる】
ですが、もしこの区間が開通すれば、長崎、佐賀に東海道・山陽方面から移動する場合、新鳥栖や武雄温泉でわざわざ電車を「乗り換え」なくても済むようになります。そして所要時間がさらに30分ほど短縮し、福岡・長崎間が、現状の1時間50分でなく、その半分以下の約50分で行き来出来るようになるのです。
そうなれば、長崎のみならず佐賀の沿線の人々に巨大な利益をもたらすと同時に、さらなる民間投資拡大が生ずることは火を見るよりも明らか。
しかも、新幹線整備の効果は、単なる時間短縮とそれに伴う投資拡大効果だけではありません。
【全線完成すれば、長崎・佐賀の公的イメージが一変し、長崎も佐賀も飛躍的に発展する】
京阪神をはじめとした東海道・山陽の人々にとっての佐賀、長崎のイメージが一変する、という極めて重大なインパクトをもたらすのです。
現在では、佐賀、長崎といえば、「遠くて行きにくい場所」でしかありませんが、この新幹線が全線開通すれば、佐賀、長崎が「電車一本でいける生きやすい場所」となるのです。
当方、20代の頃にこうした「メンタルマップ」(主観地図)における「心理距離」の研究を重ねていたのですが、「乗り換え」があるということが、心理距離を飛躍的に長くさせる効果があることは、我々研究者の間では常識中の常識なのです。
実証分析では、一回の乗り換えは、所要時間にしておおよそ30分ほどの心的抵抗を拡大させてしまうということが示されています。
結果、たった一回や二回の乗り換えがあるだけで、人々の流動は大きく阻害され、その結果、民間投資が激しく抑圧される事になるのです。
そして何と言っても、長崎までの新幹線が全線開通し、新大阪から長崎、佐賀までノンストップでいける様になれば、新大阪の駅の構内のあらゆる場所に、「長崎・佐賀」と書いた掲示板やサインが表示され、ホームからは、「長崎・佐賀行き」と書いた新幹線が発着するようになります。
その結果、大阪、関西の人々が「長崎・佐賀」という文字を目にする機会、「長崎・佐賀」のことを意識し、考える機会や頻度が、何倍もの水準に一気に増大するのです。
そうなれば長崎・佐賀の関西を中心とした全国の社会的イメージが一変し、全国各地との観光、さらにはビジネスについての交流が飛躍的に活性化され、それを通して中長期的に投資拡大を導くことは確実なのです。
事実、新幹線が開通した北陸の金沢や富山でも、九州南部の鹿児島、熊本でもそうした効果が生まれ、それぞれの都市・地域が大きく発展しつつあることは周知の事実。
こうした事実を様々に研究してきた当方としては、一日も早い新鳥栖・武雄温泉区間の整備決定を、心より強く祈念いたします。
【“未整備”の状態は、それを解消するという“希望”を与える源でもある】
……そんな事を考えながら武雄温泉に戻ってきた時に、関係者に紹介してもらったのが、コチラの場所。
https://foimg.com/00178/3YoOZ1
これは武雄温泉駅の新鳥栖方面のホームの先端。写真左上に見えるように「車止め」が線路上におかれ、長崎からやってきた線路が「終わり」となっているのです。
この線路がさらに伸び、新鳥栖にまで繋がれば、長崎に、そして佐賀に、どれだけ巨大な活性化効果がもたらされるのか―――新幹線の整備効果について長年研究してきた当方としては、そんな複雑な気持ちで、この「車止め」をひとしきり眺めていた次第です。
ですが、逆に言うならこの「車止め」は、これを取っ払い、そんなモヤモヤした気持ちの全てを晴らす大きな「希望」がある事を意味するものでもあります。
この度の西九州新幹線の部分開業について、関係各位、長崎、佐賀の県民の皆さんは元より、この地に訪れやすくなった九州、関西、さらには日本全国の皆さんに、心からのお喜びを申し上げます。そしてこの「車止め」によってせき止められた長崎、佐賀をはじめとしたあらゆる日本人の更なる飛躍を目指した「願い」がいつの日か必ず成就せんことを、心から祈念申し上げたいと思います。
【開業は9月23日。是非、一度ご体験下さい!】
いずれにしても……武雄温泉・長崎間の西九州新幹線の開業は、ホントにもうすぐ。
9月23日に開業した暁には読者の皆さんも是非、この新たな文明の利器の素晴らしさを佐賀、長崎の地にてご体感いただきたいと思います。そして、その折りには是非、長崎の街や、武雄や嬉野の素晴らしい温泉をゆっくりと楽しんでみてください。
追伸:
先日ご紹介した「藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~」では、この一週間で、上記記事以外に、以下の記事を配信致しています。ご関心の方は是非、コチラ(https://foomii.com/00178/)にてご登録、ご一読ください。
「英国エリザベス女王の国葬」によって浮き彫りとなる、“岸田文雄”に象徴される令和日本の無残な姿
https://foomii.com/00178/2022092017031699661
岸田総理は今、「嫌われて辞めさせられた菅元総理レベル」で嫌われ始めたようです。ここでは、岸田文雄の人物像から、その理由を考察しました。
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現総理は政治を舐めきっているご様子です 『内閣支持率32%で10月解散が現実味 「今なら野党は戦えない」』
https://foomii.com/00178/2022091712501699541
「腐敗政権を作った政治家」に「期待」する事はできるのか? ~「安倍晋三」から政治の本質を考える~
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