From 柴山桂太@滋賀大学准教授
中国の成長率が鈍化していると報道されています。第三四半期の成長率は7.3%と、リーマンショック直後に記録した6.6%以来の低水準となった、とのこと。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0SG1HP20141021
上の記事によると、雇用維持に必要な成長率(7.2%)をかろうじて上回っているようですが、これはあくまで政府統計が信用できたとしての話。発電量で見ると、2013年半ばから伸びが鈍化しています。
http://members3.jcom.home.ne.jp/tanakayuzo/chinaelect/newpage10.html
上の記事に示されたグラフを見ると、2014年の発電量の伸びは3%がせいぜいで、鉄道の輸送貨物量も前年比でマイナスが続いているようです。これらはあくまで参考資料ですが、それでも中国経済の実態はかなり思わしくないと想像せざるを得ません。
中国の不動産バブルは、私の記憶では、もう一〇年くらい前から言われています。そのわりに弾けないので不思議がられているわけですが、最近のレポートだと、バブルが本格化したのは2009年から。つまりリーマンショック以後であることが分かっています。
http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/today/rt130709.pdf
上の図表によると、中国の銀行貸出残高が、実体経済(ここでは発電量で示されれています)の成長率を大幅に超えたのは、リーマンショック後のこと。4兆元の経済対策と金融緩和で、内需刺激策をとった結果、(不動産を中心に)過剰投資に拍車が掛かったと見られています。
これはちょうど、日本のバブル期とよく似た構図です。85年のプラザ合意による円高不況で、輸出産業が打撃を受けたため、日本は大胆な内需拡大策を採りました。これが、ただでさえ値上がり気味だった不動産市場に火を付け、86年から91年まで日本の不動産価格は急激な値上がりを見せることになりました。同じような構図が、リーマンショック後の中国でも繰り返されているわけです。
日本のバブルは5〜6年で終息しました。リーマンショックで弾けたアメリカの住宅バブルも、せいぜいが5〜6年(2002〜07、08)です。経験則で言うと、バブルはそのくらいしか続かないということになります。中国のバブルが2009年に始まったとすると、終息を迎えるのは2014年か2015年。つまりもう終わりを迎えているか、もうすぐ本格的な終わりを迎えるということになりそうです。2000年代の世界的なバブルの中で、残された「最後のバブル」が弾けようとしているのです。
先に挙げたレポートによると、2013年の段階で、不良債権予備軍と見られる過剰債務は30兆元(480兆円)。これはあくまで銀行を通じた貸出です。その他に、「影の銀行」を通じた貸出があり、IMFによるとGDPの35〜55%ということですから、やはり30兆元くらいありそうです。
http://www.theguardian.com/business/2014/oct/01/shadow-banking-system-risk-financial-stability-imf
合計すると1000兆円近いということになり、まさに天文学的数字です。これだけの過剰貸出が、なんの調整もなく解消するとは考えられません。近い将来、何らかのイベントが発生すると考えて不思議ではないわけです。
中国経済の減速は、周辺諸国にも影響を及ぼさずにはいないでしょう。特に注目すべきは朝鮮半島です。
北朝鮮が中国資本に深く依存しているという点については以前にも書きました。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/01/23/shibayama-23/
韓国も、中国と経済的に深い関係にありますので、中国経済減速の影響を被ることになるでしょう。
韓国は、輸出主導の成長ということで知られていますが、家計債務の比率も極めて高いという点に特徴があります。住宅購入にあてるための家計の銀行借入が拡大し、家計債務は増え続けています。
http://japanese.joins.com/article/346/189346.html
韓国の家計債務比率(対GDP比)は、92.2%とアジア諸国で最高、リーマンショック前のアメリカに匹敵する規模に膨れあがっています。
中国も韓国も、輸出と債務の拡大によって成長を続けてきました。しかし、このやり方が、次第に持続不可能な水準に近づいています。これが弾けると、いったい何が起きるのか。正直言って、誰も確かなことは言えません。ただ、東アジアが本格的な危機の時代に入るのは、そう遠い将来ではなさそうです。
<柴山桂太からのお知らせ>
表現者最新号、今号の特集は米露対決です。
http://www.amazon.co.jp/dp/B005QIROAK/
本日、滋賀大学で三橋貴明さんの講演会が開かれます。一般参加もOKです。
http://www.biwako.shiga-u.ac.jp/eml/kouenkai2014/20141030mitsuhashi.pdf
10月18日の浜崎洋介さんと私のトークショーの動画が公開されています。浜崎さんの文学論は必聴です。
https://www.youtube.com/watch?v=-ywgFxuop30
11月3日にラジオで『21世紀の資本論』の話をします。
http://www.nhk.or.jp/radiosp/jisedai/
PS
三橋貴明公式YouTubeチャンネルでは最新動画を続々公開中
https://www.youtube.com/user/mitsuhashipress/videos
【柴山桂太】最後のバブルへの3件のコメント
2014年10月31日 12:56 PM
先日の成長率の発表をうのみにしてまあまあ大丈夫かと思っていたのですが、深刻なようですね。日本にも津波のような影響(リーマンショック級?)があるのではないでしょうか?
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2014年11月1日 10:18 PM
中国の問題だけでないネオリベ経済視争に動かされる涌いては消える様々なバブルに踊らされる世界観、経済感を造ってしまってきた政財官メディア、エコノミストエリート等の頭の上に黒板消しを落としてやりたくなる。 弾けもしないなんとも儚い、詰まらないイタズラしか浮かばない自分なんだろうか(名付けて、弾かれたコメンテーターのアホなマイ頭)。 考えてみると、完全に戦後教育の自分の世代は、自由競争が善と思わされてきたけど、既に少しずつ競争の為の土台は壊されてきている中にいることに気づかず、自ら土台、均衡を破壊する人材としての手段の一部と化してしまったことに気づかずに、更に日本の根底である日常、仕事から破壊する存在になったのかもしれない。
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2014年11月3日 8:50 PM
>2000年代の世界的なバブルの中で、残された「最後のバブ>ル」が弾けようとしているのです。現時点で残存する「最後のバブル」という意味でしたか。資本主義の歴史の終末を飾る「最後のバブル」というわけではないのですね。何だか安堵と落胆の入りまじった読後感です。
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