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2014年10月13日

【三橋貴明】おぞましきレトリック

From 三橋貴明

【今週のNewsピックアップ】
●反・国債亡国論
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11936515031.html

●おぞましきレトリック
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11937441069.html

例えば、新幹線がない日本を想像してみてください。東京−大阪間は、鉄道で6時間以上かかる。日本の大動脈である太平洋ベルト地帯が、完全に「ボトルネック」と化してしまうわけです。

無論、その場合は「羽田−伊丹」間の航空便が重宝されることになるのでしょうが、滑走路の発着陸枠は無限に存在するわけではありません。しかも、飛行機は一機で500名程度の乗客しか運べません。最大乗客数1323人(東海道新幹線)、さらに10分おきに車両が東京駅を離れる新幹線とは、比較するのもバカバカしくなるほど、航空便は非効率なのです。

その上、飛行機に乗る際は、遅くても30分前に空港に到着し、チェックインをしなければなりません。既存の鉄道網から「ひょいっ!」とばかりに乗り換えが可能な新幹線とは、これまた比較にならないほど不便なのでございます。

無論、東京から福岡、千歳、あるいは沖縄など、距離が長くなれば、飛行機の優位性が際立ってきます。ここではあくまで、東海道新幹線が通っている東京−大阪間の話をしています。

高度成長期に建設された東海道新幹線、さらには東名自動車道に代表される高速道路は、日本国民の生産性向上に大いに貢献しました。新幹線などのインフラを整備すること自体が、高度成長(GDP拡大)に貢献したのですが、その後、整備されたインフラは更なる経済成長のための礎になったのです。

何度も繰り返していますが、日本の高度成長を実現した主役は、人口増でも輸出増でもなく、生産性の向上でした。そして、この生産性の向上をもたらしたものこそが、企業の設備投資、人材投資、そして公共投資によるインフラ整備だったのです。

インフラ整備という公共投資には、その時点でGDPを拡大する「フロー効果」(公的固定資本形成)に加え、将来的な生産性の向上をもたらし、経済成長を実現する基盤となる「ストック効果」が存在します。無論、国民の生命や財産を守る「安全保障」というストック効果もあります。

過去の日本は、デフレ状態が継続していました(今もですが)。デフレの主因は「総需要不足(=名目GDP不足)」であるため、公共投資は「デフレ脱却」のためにも拡大するべきなのです。と、三橋は主張し続けてきたわけですが、そろそろ公共投資の資産効果についても語っていきたいと思います。未だ日本はデフレから完全に脱却していませんが、すでに生産年齢人口対総人口比率が低下を始めている以上、将来の日本が「インフレギャップ」という問題を抱えるのは確実なのです。

将来のインフレギャップを解消するためには、生産性の向上が必須です。そして、生産性を向上させるためには、公共投資でインフラを整備しなければならない。

今、公共投資を拡大することで、
「現在の総需要不足(=デフレギャップ)を埋め、将来の供給能力不足(=インフレギャップ)を生産性向上により解決する」
ことが可能なのです。

ともあれ、日本政府は未だに「国債亡国論」に囚われ、財政均衡主義の呪いから自由になれず、我が国をデフレ化する消費税増税を推進しようとしています。我が国の問題は、他国の問題とは異なり、解決策が明確です。この解決策の実施を不可能とする「ボトルネック(制約条件)」こそが、財政均衡主義なのです。

消費税の再増税という愚行について、「判断」される時期が近づいています。これを機に財政均衡主義という魔物を退治できなければ、日本が正しい解決策を実施できる時期は大幅に遅れてしまいます。過去の日本国民の投資の上で、快適と暮らしている以上、我々現在の日本国民が諦めるわけにはいかないのです。

【三橋実況中継】

最近、講演でほとんど東京にいないのですが、台風や火山噴火など、自然災害のニュースばかりが耳に入ってきます。

三橋は講演で、
「日本は世界屈指の自然災害大国です。大地震があり、国土が台風の通り道に位置しており、雨季(梅雨)もあり、川の上流から河口までの距離が極めて短いため、水害、土砂災害が多発し、さらに豪雪、高潮、竜巻があり、そして火山も噴火する。日本は自然災害のデパートなのです」
というレトリックを必ず使用するのですが、長野県御嶽山の噴火では、山頂付近にいた登山客が巻き込まれ、雲仙普賢岳の火砕流(91年)を上回る犠牲者数を出してしまいました。

自然災害は、いつ、どこで起きるのか、誰も分かりません。起きるか否かすらわからない「X(エックス)イベント」に備えるために、お金を使うべきなのか。あるいは、幾ら使うべきなのか。
いわゆる「経済学」は、決して答えを示してはくれません。

◆一般参加可能な講演会のお知らせ。
2014年11月4日 『Voice』特別シンポジウム「2015年の安倍政権を占う」
小浜逸郎氏、藤井聡氏、三橋貴明氏、柴山桂太氏が安倍政権の経済政策を斬る!
http://voice.peatix.com/

◆KADOKAWA/中経出版「原発再稼働で日本は大復活する!」がAmazon予約開始になりました。
http://amzn.to/1qCFM9j

◆週刊実話 連載「三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』」 第96回「10月の嵐」
なお、週刊実話の連載は、以下で(二週遅れで)お読み頂くことが可能です。
http://wjn.jp/article/category/4/

◆Klug連載 三橋貴明の「経済ニュースにはもうだまされない 第275回 IMFとOECDが
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2014/10/07/022475.php

◆有料メルマガ 週刊三橋貴明 Vol281 「政」の法則
http://www.mag2.com/m/P0007991.html
実は、新古典派経済学が嫌悪する「政府」の機能を正しく使うと、セイの法則が成立するというお話。

◆メディア出演

10月17日(金) チャンネル桜「報道ワイド日本ウィークエンド」に出演します。
http://www.ch-sakura.jp/programs/program-info.html?id=1521

10月11日(土) チャンネル桜「日本よ、今…「闘論!倒論!討論!」 アベノミクスと消費税増税」に出演しました。
http://www.ch-sakura.jp/programs/program-info.html?id=1587

◆三橋経済塾
10月19日 三橋経済塾第三期第十回「経済学に欠けているもの」申込受付開始しました。
http://members.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=856
ゲスト講師は元「正論」編集長の上島嘉郎先生です。

◆チャンネルAJER 今週の更新はありません。

PS
このVideoには、一部の人にとって不快な情報が含まれています。
ご覧になる場合は、自己責任でお願いします。
http://www.keieikagakupub.com/lp/mitsuhashi/38NEWS_CN_mag.php

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【三橋貴明】おぞましきレトリックへの6件のコメント

  1. 一筆 より

    やる気があれば民草の目をそちらへ向けられるかも知れません。主が不可能というならば、反証をあげて論駁すべきです。IMFに届かぬものは、政府財務省にも届かぬでしょう。

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  2. リボン より

    IMFは確かに総本山ですが、三橋さん個人で何か変えられるわけがないではありませんか。

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  3. 大磯 より

    >消費税の再増税という愚行について、「判断」される時期が近づいています。追求されれば総辞職ものの顛末をどうやって言い繕うのか見ものですね。安部がどのような選択をしても切捨てに入ると思いますが、与党内も野党もうまい具合に選択肢の無い環境が作られていて本当に笑えません。政治上のボトルネックの解消はいつになるんでしょうか?

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  4. 神奈川県skatou より

    政府はイノベーションやらITとかおっしゃるようですが、IT、ICTの世界はつまるところ他社の設備投資で食っているわけで、他社、つまり製造業が元気にならなければその場限りというふうに感じてます。そんな寒い日々でも聞こえてくる声がありました。「地方創生」。最近はやってますね。お金のニオイに、仕事がないか頑張ってます。会社の後輩、夫が静岡市で働き、本人は都内育ちで神奈川が職場だがふたりの職場の中間点の静岡県の片田舎で暮している子に聞いてみました。「利便性とか、環境とか、いろいろ考えたよね? 住居はここでよいと考えたときの判断ポイントって何?」「今はいろいろ便利ですし、たしかに近くに スーパーとか、文化施設とか、それも考えましたが、 一番は、、」「一番は?」「歩道が広くて明るいことです」

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  5. 一筆 より

    出口の議論ばかりしていないで、BISやIMFを何故もっと叩かないのでしょうかね? 財務官僚が国民をないがしろにしてでも、忠誠を誓う組織がワシントンDCとバーゼルに存在しているのですが。

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  6. のりへい より

    インフラ整備、研究開発投資、重要だと思います。ところでエネルギーに関して核融合発電はどうでしょうか。まだまだ実用は先でしょうが、、、是非とも将来は原発と併用して安全保証を確立して欲しいと切に願っております。

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