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2014年6月24日

【藤井聡】「政治のウソ」を暴くデータ・サイエンス

From 藤井聡@京都大学大学院教授————————————————————

●●中国大暴走。日本は国家存亡の危機を回避できるのか?
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これまで「リフレ派」の虚偽性を、様々な恰好でお話してまいりましたが、いまだかつて、明確に「反論」した例は、残念ながら見当たりません。

もちろん、つぶやきレベルの反論は散見されましたが、少なくとも当方が拝見した限りでは、それらはいずれも、当方から再反論を要する水準にないものばかりでした。

最も正式の反論が原田泰氏からなされましたが、それもまた、以前メルマガでご紹介したように、少なくとも当方が吟味した限りでは、リフレ派弁護に完全に失敗しておいででありました。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/05/13/fujii-89/

リフレ派の主張は、曲がりなりにも社会科学、アカデミズムの中で主張されてきたもので、しかも、現在の国政に巨大な影響を発揮しているものですから、以上に論じた当方の「論駁」が正当なものであるとすれば、これは、理系で言うSTAP細胞問題と同等、あるいは、それ以上の、大変、ゆゆしき事態です。

ついてはこの度、応用系の統計学の学会(日本行動計量学会第42回大会)に、<この問題>を取り扱った論文を寄稿・発表することとしました。

題して、

『統計的「裁判」としてのデータサイエンス』〜適切な公共政策判断のために〜
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/archives/1588

これは、木下 冨雄先生(京都大学名誉教授)のお声掛けで開催予定の『データサイエンスの現状』という特別セッションに寄稿した論文です。

少々学術的な記述となっておりますので、かいつまんで、その趣旨を解説いたしたいと思います。

まず、この論文の主旨は以下の通り。

『公共政策は、国民の安寧、国家の安泰に極めて甚大な影響を及ぼす以上、その判断は、質的あるいは量的な様々な側面に配慮しながら総合的に下されねばならない』

『しかし、経済学等の社会科学において、「計量経済学」も含めて必ずしも十二分にデータサイエンスが活用されているとは言い難い。結果、多くの現代研究者が、個々の研究者が属するパラダイムおよびそのパラダイムに定位される利権構造の「維持活動」に膨大な知的・時間的・人的投資を図るという著しく不条理な事態が展開されているという疑義が濃厚に存在している。』

要するに、メチャクチャな理屈が学術の名を借りて、好き放題主張されて、挙げ句に、国政にまで反映されている疑義がある、ということです。

で、どんな事例があるかというと。。。。

『とりわけ社会的重要性が高い被告仮説として挙げられるのが、今日アベノミクスと言われている政府の取組において採用されている各種の経済政策上の諸仮説である。
たとえば、トリクルダウン仮説、セイの法則、乗数効果の低減、低水準の税収弾性値、リカードの比較優位説等は、日本経済、日本社会の将来に甚大なる影響を及ぼし得る「アベノミクス第三の矢=成長戦略」の諸政策の重要な理論的根拠となっている。』

『しかし、これらの諸仮説は、数多くのその他の経済理論と不協和な関係を所持しているのみならず、数多くの実証データとも、巨大かつ深刻な不協和を抱えており、一般的な他分野の科学者からみれば、十分に「反証」されていると認識できる水準にある。』

つまり、今の「成長戦略」と言われてる政策の根拠にはいろんな仮説があるが、これが全部、胡散臭い怪しいウソ話である疑義がある….ということです。

で。。。

『本稿では、そうした危惧の具体的事例として、今日の財政金融政策に巨大な実際的影響を及ぼしている「リフレ派」と呼ばれる人々の「パラダイム維持活動」に着目。。。する』

要するに、そんな胡散臭い経済論の事例の一つとして「リフレ派」を取り上げて、それを「被告仮説」とみなし、統計的裁判を行います!ということで、

後は、おなじみの

・マネタリーベース(MB)と物価には逆相関がある!
→リフレ論は、今日データで却下されている

・国債発行額と為替、金利との間には、マンデルフレミングモデルが予測する方向の統計的関係が見られない!
→マンデル・フレミングモデルは現在の日本では却下。つまり、MFモデルに基づいて財政政策無効説、金融政策有効説は主張できない。

というお話をしております。

ここで、一つだけ、この論文の中で少し詳しく書いたお話がありますので、その点だけ、詳しくご紹介しておきたいと思います。

『[補論1] 原田氏は、その反論論文の中で、重要なのは実質GDPであって、物価や名目GDPではない、と主張し、金融緩和の程度(以下、マネタリーベース=MBと呼称)と実質GDPとの間にプラスの相関があることを主張し、金融政策の有効性を弁護している。

しかし、この弁護は、論理的な破綻をきたした弁護である。

そもそも、原田氏が準拠するリフレ論では、金融緩和が期待インフレ率にプラスの効果をもたらし、それを通してインフレ=物価上昇がもたらされ、それを通してGDPが名目値、実質値ともに増大していくことを主張している。

したがって、リフレ論の弁護を果たすなら、物価、名目GDP、実質GDPの全てが、MBとプラスの相関を持たねばならない。

しかし、実態は、MBとプラスの相関を持っている指標は実質GDPのみであり、物価と名目GDPについては理論を反証する実証データが得られているのである。

この時点で、原田氏の弁護は失敗していると結論付けることが可能である。
さらに言うなら、原田氏が準拠するリフレ論の根幹にある「インフレターゲット論」は、明確に物価の上昇を目標としているのであり、その原田氏が、「金融緩和で物価が下落していること」について問題がないと強弁することは、明確な論理破綻だということができよう。なお、原田氏が報告しているMBと実質GDPの間のプラス相関があるという事実と、筆者が報告したMBとデフレータ(物価)・名目GDPとの間にマイナス相関があるという事実とは、論理的に極めて整合的な結果である。

そもそもこれら三者には「実質GDP=名目GDP/デフレータ(物価)」という関係がある。

したがって、名目GDPの減少率よりもデフレータの減少率の方が大きい場合、必然的に実質GDPは増加していく。

そして実際、現在の日本では、「デフレが過激に進行している」が故に、名目GDPの減少率を上回る速度でデフレータ(物価)が過激に減少しているのであり、これによって、実質GDPがMBの増加に伴って増加しているように「見えて」いるのである。

つまり、原田氏が主張するMBの増加に伴う実質GDPの増加は、MBの増加に伴うデフレの深刻化によってもたらされているのである。

この点から考えても、原田氏の弁護は論理破綻しているという事は明白である。』

以上、いかがでしょうか?この点については、簡単にしかこれまで記載しておらず、誤解している方をしばしば拝見しましたので、是非、ご参照ください。

。。。。

などを通しまして、最終的に、筆者としては、

『リフレ論が「偽」であると申し立てた当方の「統計的裁判」において、もしも、データサイエンスを知悉した見識ある裁判長が存在するとすれば、少なくとも現状ではリフレ論の「有罪」は確定した状況にあるといって差支えない』

と確信している次第です。

今後は、(効果的な反論が供出されない限り)リフレ派についてはこれ以上論ずることも、論争する必要もございませんので、今後は、第三の矢=成長戦略にかかわる様々な

『被告仮説』

を被告とした、こうした

『統計的裁判』

を行っていくことが重要となろうかと思います。

いずれにしても、経済学の内部の腐敗はひどいものです。最近の流行で言うなら、こういう集団に対してこそ、

「外部評価」

を導入すべきであると思います。そして、そんな外部評価において、本稿で紹介した統計学、データサイエンスは、極めて枢要な役割を担い得るのです。

。。。。ということで、また来週!

PS
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PPS
中国がやばい本当の理由とは? 三橋貴明が解説中
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【藤井聡】「政治のウソ」を暴くデータ・サイエンスへの3件のコメント

  1. きらきら より

    心から応援します。(できれば、手伝いたいくらいです。)STAP細胞では、人は亡くなっていませんが、リフレ派は、今まで多くの人を困窮状態に追いやり、そのために、やむを得ず、自殺された方もいるかと思います。そう考えますと、影響力の面では、STAP細胞とは比較にならないです。ここまで影響力のある経済学に、企業やお金持ちの意思が入り込むと、非常に都合が悪いと思います。そのため、外部評価者は、お金持ちに影響されないような工夫は要りそうですね。

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  2. 拓三 より

    MBの増加より、それに伴う日銀のスタンスが重要だそうです…………。一部の短期的投資家だけやろ、反応するんわ。見せ金とおいしい誘惑だけで、筋金入りデフレ国を景気回復出来たら詐欺師もビックリや。藤井はんが言うように、第三の矢は、慎重に見ていかな近い将来、大変な事になるやろな。嘘「リフレ」に嘘「成長戦略」を重ねたらあかん。

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  3. 久しぶりの通りすがり より

    旧ソ連にも曲学阿世の似非科学者の政治権力者の代表者としてトロフィム・ルイセンコ(ウクライナ語: Трохи_м Дени_сович Ли_сенко、露: Трофим Денисович Лысенко、1898年9月29日 – 1976年11月20日)*がいましたが、竹中なる似非学者の政治闘争者もそれに比肩しますね。彼の似非経済学による似非成長戦略で、「成長」の果実を享受するのは、自らが会長を勤める配下の手配師会社だけ、という空恐ろしい状況はいつまで続くのでしょうか。*ミチューリン主義農法の創立および主要な指導者で、ソ連科学アカデミー、ウクライナ国立アカデミー、全ソ連農業アカデミーを歴任、社会主義労働者英雄勲章、レーニン勲章を8回受賞、スターリン賞を3度受賞した。共産党員であった。

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