From 三橋貴明@ブログ
さて、移民問題をめぐる
EUの亀裂が決定的なものに
なろうとしています。
『「難民受け入れ拒否国には経済制裁を」
スペイン首相とフランス大統領
https://www.sankei.com/world/
今月初めに就任した
スペインのサンチェス首相は23日、
パリでフランスのマクロン大統領と
会談した。
両首脳は共同記者会見で、
移民・難民への対応を巡り
ブリュッセルで24日に開く
欧州連合(EU)の
緊急首脳会議を念頭に、
EU共通の収容センター創設や、
受け入れ拒否国への
経済制裁などを提唱した。
マクロン氏は、移民・難民が
到着した国で滞在資格の審査を
受けると定めた現行のEU規則に
不公平な面があることを認め
「収容センターをEUが連帯して運営し、
共通基準によって速やかに
審査結果を出すべきだ」
と述べた。
その上で
「一部加盟国が連帯を損なうならば、
経済的な制裁を科すことも
検討すべきだ」
と提案した。(後略)』
また、ドイツのメルケル首相は、
ゼーホーファー内相に
「月末まで」という猶予をもらい、
EUの移民対策を
まとめる必要があります。
月内にまとまらない場合、
ゼーホーファー内相は他国で審査中の
難民申請者の入国拒否を
強行する構えを示しています。
以前も書きましたが、
ゼーホーファー内相の移民対策は
「ダブリン協定」に則っており、
国際法違反でも何でもありません。
というわけで、メルケル首相は
28、29日に開催される
EU首脳会議の共同声明案に、
イタリアなど、EUへの「玄関口」
となっている国々に難民を送り返す
対策を盛り込もうとしているのです。
それに対し、イタリアの
コンテ首相は激怒(当たり前ですが)。
共同声明案をお蔵入りにし、
新しいイタリアの案を示す
と宣言しています。
とはいえ、共同声明案に
難民の送り返しが盛り込まれない場合、
ドイツではゼーホーファー内相が
独自の「送り返し政策」を強行
することになります。
すると、
メルケル首相が党首を務めるCDUと、
ゼーホーファー内相が党首のCSU
の亀裂は決定的にならざるを得ません。
とはいえ、そもそもなぜ
ゼーホーファー内相が
ここまでかたくななのかといえば、
CSUがバイエルンを地盤とした
政党であるためです。
バイエルンといえば、
オーストリアに対する玄関口
となっており、例のメルケル首相の、
「政治難民受け入れに上限はない」
以降、膨大な難民、移民が
流入した州になります。
バイエルンは今年の10月に
地方選挙を控えており、
このままではCSUは
AfD(ドイツのための選択肢)に
敗北しかねない状況なのです。
というわけで、
ゼーホーファー内相は移民・難民に対し、
強硬姿勢をとらざるを得ない。
それが、メルケル首相(及びEU)
の方針とは相いれないと、
結構、煮詰まった事態
になっているのです。
ところで、冒頭の
「難民受け入れ拒否国には経済制裁」
に対しては、もちろん
イタリアが猛反発しています。
サルビーニ内相はマクロン氏に対し
「傲慢だ」ともう批判。
サルビーニ内相によると、
過去四年間で65万人が
イタリアに到着。
43万件の難民・移民申請があり、
50億ユーロ(約6400億円)を
超えるコストが
発生しているとのことです。
「もし傲慢なマクロン氏には
これが問題でないのであれば、
侮辱することをやめ、
フランスの港を多く開き、
女性や子どもたちを送り返す
ことをやめることによって
寛容さを示すことをお勧めする」
と、サルビーニ内相は
マクロン大統領を皮肉っています。
改めて考えてみると、
難民・移民を多く抱えることには
コストが伴います。
具体的には「政府の消費」になりますが、
難民・移民の生活費を負担したところで、
当座の需要は増えますが、
将来的な生産性向上を
もたらすわけではありません。
それ以前に、難民・移民が
「低賃金労働者」として働き始めると、
実質賃金低下という形で国民に
「貧困化圧力」がかかります。
逆に、働かないなら働かないで、
国民は未来永劫、移民・難民の
生活費コストを負担
しなければなりません。
やがては社会保障にただ乗りされ、
かつ外国人犯罪は間違いなく増える。
さらに、移民・難民に
「味方」をする国民も現れ、
国家が二分化され、
ナショナリズムが破壊されていく。
その「コスト」たるや、
もはや金額で換算
することも不可能です。
例えば、我が国において、
このまま移民政策が推進され、
「中国人が激増し、外国人犯罪が増え、
国民の実質賃金が下がり続け、
国家が分断され、皇室が廃絶に至った」
ケースの「コスト」は、
おカネに換算できるのでしょうか。
できるはずがありません。
これだけ凄まじいリスクがある
移民受入について、
「受け入れないならば経済制裁」
と言われたのでは、
サルビーニ内相でなくても
怒り心頭に発するでしょう。
もちろん、政治的迫害を受けている人々、
天災からの避難者など、
「人道的」に受け入れなければならない
難民もいるでしょう。
とはいえ、現在のイタリアに
入っている人々の多くは、
人口爆発の圧力で発生した
「経済移民」なのです。
移民推進派は「寛容」「人権」といった、
人々が抗いにくい抽象表現で
移民を推進します。
結果的に、賃金低下、犯罪増加、
社会不安激増、街並みの変化、
社会保障へのフリーライド、
「他国の民」への生活費負担など、
様々な「具体的な被害」が発生。
結果的に「民主主義」が移民、難民
受け入れにノーを突き付けている
わけでございます。
そして、予想はしていましたが、
移民問題はついにEUに
「分裂」の危機を
もたらそうとしています。
少なくとも、ハンガリー、
ポーランド、オーストリア、
そしてイタリアなどの国々は、
マクロン式の「寛容政策」には
同意しないでしょう。
あるいは、メルケル首相が進める
「負担を玄関口の国に」も、
受け入れられることはありません。
グローバリストではない「国民」は、
結局は「国民国家」でしか生きられない。
わたくしたちがEUで
目にしているのは、
世界で最も進化した
グローバリズムの国際協定である
EUが崩れ、国民国家が復活する
過程なのだと思います。
欧州の惨状を見てもなお、
「移民受入」に賛成するのですか?
【三橋貴明】国民国家の復活への2件のコメント
2018年6月27日 10:27 PM
増税緊縮派「日本は少子高齢化だから外国から移民(実質奴隷との批判がでている)を連れてきて働かせるしかないのだ」
そういう事らしい。
あまり人間を増やすとか減らすとか、そういった表現をしたくはないのですが、労働力ウンヌンという事であれば、まずは日本人を増やす努力をするのが先だと思います。
では、どうしたら増えるのか。
産経新聞出版『歴史の謎はインフラで解ける』にそのヒントが書かれていました。
>今日の「水田稲作」が本格的に始まったのが弥生初期だった。
人口については弥生時代末期には約59万人、縄文時代ピーク時の2倍以上、縄文時代末期からは7倍以上の人口を見るに至った。この急激な人口増はもちろん、稲作がもたらしたものだ。
~
農は国の本であるが、その「本」を根底から支えたのは「土木の力」なのである>
人間は、他の動物とは違うとは言っても、衣食がなければ人として生きる事はかなわず、その衣食すら「住居」がなければ満足に得られはしない。
人を増やしたいのであれば十分に食料が得られる環境を作らねばならないが、日本の実質消費は、消費税増税が強行された14年以降、何と四年連続で対前年比マイナスになっている。
13年の実質消費を100とすると、17年は何と92.9。
日本国民は、
「13年にはパンを100個買えていたのが、17年には93個しか買えなくなってしまった」
という話。こんな事で人口が増えるわけがない。
逆に言えば、増えるに十分な環境(=景気が良い状況)であれば、誰に言われるまでもなく、人口は増えていくわけで、政治家は一般国民に人口増の努力を押し付けるのではなく、まず、自分達が景気をよくする努力をすべきなのではないでしょうか。
与党も野党も消費税増税には反対してくださいよ
さて、安定して人が生きる(=増える)ためには食料や飲料水の確保が重要である事は誰でも理解している事だが、そこから先に思いが及ばないのが現代日本の国民病ともいえる。
本格的に水田稲作が始まったのが弥生初期だが、弥生初期には石器と木器のみで、中期になってはじめて鉄器や青銅器がそれを補うようになった。
そのような状況で、水平が保たれた畦畔で区切られ、取・排水一貫の人口灌漑設備を持った田地を形成するにはそれなりの土木技術が必要であった事は言うまでもない。
また、都市国家ローマをローマ帝国へと押し上げ、その増加した人口の水需要を支えたローマ水道にしても、水源地と到達地点との標高差が最も小さいヴィルゴ水道の平均勾配が0.00019であった事を見れば、ローマの水が高度な測量精度、施工精度に支えられたものだとわかる。
食料も飲料も高度な土木技術があってはじめて得られる物なのだ。
国にとって農業が大切である事は理解できても、その農業は高度な土木技術がなければ行えないという事までは思いがおよばないのだ。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2018年6月27日 10:33 PM
国の本は農、その本を支えるのが土木。その本質は現代でも変わらない。
<高速道路までの所要時間別 商業年間販売額 過去25年間の平均増加率>
30分以上 8%
20~30分 34%
10~20分 82%
10分未満 92%
やはりインフラが整備された土地の方が、そうでない土地より豊かになりやすいのである。
人が安心して増える為には「豊」である必要があるが、豊かさは土木によってもたらされるのだ。
その「豊かさ」を増すのに重要な土木を蔑ろにしてきたのだから日本の人口が増えにくくなっているのは当然なのではないだろうか。
とりあえず、何はなくとも全ての政治家は緊縮政策を改めるべきだと思う。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
コメントを残す
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です