From 柴山桂太@滋賀大学准教授
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●三橋貴明の無料Video「韓国経済の悲惨な現状」
http://www.youtube.com/watch?v=cJ5ZkH04hwE
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先頃、2013年10-12月期のGDP改定値が発表されました。以前の速報値より、個人消費や設備投資の値が下方修正され、全体で+0.2%と、あまり良い数字ではなかったようです。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS10009_Q4A310C1MM0000/
安倍政権が本格始動したのが2013年1月からとすると、今回の発表で2013年全体の、つまりアベノミクス1年目の成果を判断する材料が揃ったわけです。
では内容はどうだったのか。内閣府が発表しているデータ(四半期別GDP速報 時系列表)を覗いてみましょう。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2013/qe134_2/pdf/jikei_1.pdf
この資料の「実質暦年(前年比)」を見ますと、2013年の成長率は+1.5%と、2012年の+1.4%に比べて上昇幅がわずかとはいえ、持ち上がったようです。
中味を見ると、「民間住宅」(前年比+8.9%)と、「公的固定資本形成」(+11.4%)などで上昇幅が大きいことが分かります。つまり2013年の景気回復は、もっぱら建設関連部門が主導していた、ということになります。
他方、民間の「設備投資」は減少(-1.6%)。「輸出」は若干伸びた(+1.6%)ものの、「輸入」がそれ以上に伸びている(-5.3%)ため、入超が続いています。
「個人消費」は伸びました(+1.9%)が、その前の年も消費は伸びていた(+2.0%)ことを考えると、アベノミクスのおかげとは言い切れません。「個人消費」は、民主党政権の最後の一年だった2012年から回復傾向にあったのです。
以上を次のようにまとめることができます。2013年は、消費は堅調で輸出も回復傾向にあるが、それ以上に住宅投資や公共事業の伸びが大きかった、と。つまり安倍政権の1年目に関しては、「第二の矢」がかなり効いていたわけです。
デフレ脱却に、金融と財政のどちらが重要かは、これまで様々に論じられてきました。結論から言えば、どちらも大事です。ただし、2013年の日本について言えば、財政出動の方が効果は大きかったと言わざるを得ません。
量的緩和の効果として期待されている、消費や投資の拡大や、円安による輸出の伸びが十分に現れていないのに対し、公共事業には明らかに効いていた、と確認できるからです。財政出動の額が少なければ、2013年の景気はもっと低調なものになっていたでしょう。
もちろん、金融緩和の効果はもう少し先まで見る必要があります。円安が続けば企業が国内生産の比重を増やすかもしれませんし、株高が続けば資産効果で消費も伸びるでしょう。2014年にその効果が現れるのを期待したいところですが、不確定な部分が残るのも事実です。
中国の金融不安や、他の新興国で起きている経済危機などを考えると、輸出の先行きは不透明です。株価も、日本の株式売買の6割が外国人投資家なので、これまた世界経済の動向に左右されます。そして何より、4月からの消費増税で、消費の落ち込みが懸念されます。
これらの「崖」を乗り越えて、デフレ脱却への道筋を確かなものにするには、今年も引き続き「第二の矢」が重要になるはずです。増税による消費の落ち込みや、世界経済の乱調による輸出への影響を考えると、昨年以上に今年の方が、財政出動の意義は大きいと言ってもいいでしょう。
「タイムラグがあるので金融緩和は効果が現れるのはこれからだ」と言われるかもしれませんが、だったらなおのこと、その間に財政出動して景気を支える必要があるはずです。
ところが、14年度の公共事業関係費は、増額されることが決まったものの、その幅は決して大きいとは言えません。マスコミでは「大幅増」と報じられていますが、当初予算では5.3兆円から6兆円と、0.7兆円しか増えていません。単純計算ですが、これは個人消費が0.2%減るだけで吹き飛んでしまう数字です。
ちなみに、97年の増税の時には、消費は-0.9%とひどく落ち込みました。だから十分、あり得る数字と言わなければなりません。
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je08/08b09010.html
それに、0.7兆円という数字には、実はからくりがあります。このあたりは三橋さんや藤井先生が指摘されていますが、以下のよくまとまったサイトをご覧下さい。
http://gohoo.org/alerts/131229/
ポイントは二つです。まず、0.7兆という数字には、昨年度まで公共事業予算の特別会計枠(0.6兆)の分が繰り込まれているため、その影響を取り除くと純増は0.1兆しかない、ということ。
さらに、13年度よりも補正予算の額が少ないため、本予算に前年度の補正予算を合わせた「15ヶ月予算」で見ると、14年度の公共事業費は13年度に比べて1兆円ほど減額されている(!)ということです。
つまり2014年度は、公共事業を(本予算のレベルで)ほとんど増やさず、また補正予算まで含めると実質減らした状態で、消費税増税という経済の「崖」を迎えようとしているわけです。
住宅投資が落ち着き、消費が減ると予想され、外需も不透明なのに、公共事業を減らす。これ、本当にデフレ脱却するつもりがあるんでしょうか? 本気度を疑われても仕方のないレベルだと思います。
先日、来日したシラー教授は、安部首相との対談後、「首相は『消費税増税が景気回復の腰を折る心配はあるが、楽観している』と話していた。私にはその根拠が理解できなかった。」と語ったそうです。そりゃ、理解できないのが普通です。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201403/2014031000665
なお同記事によると、浜田宏一内閣参与は「金融政策でかなりしのげると思っている。うまくいくのではないかという点では首相の意見と同じだ」と述べたとか。異次元緩和の効果が確実に現れたと誰の目にも明らかになったのなら信憑性もありますが、今のところは、まだ実験の経過を見ている段階でしょう。なので、「かなりしのげる」という発言の根拠が理解できません。
確実に出来ることをせずに、不確実な実験の結果に賭ける。今の日本は、そんな状態で「崖」に突入しようとしているのです。
PS
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【柴山桂太】「第二の矢」は効いているへの2件のコメント
2014年3月21日 8:12 PM
> 本当にデフレ脱却するつもりがあるんでしょうか? 本気度を疑われても仕方のないレベルだと思います。これまでの政権の経緯から「ないのでは?」という見解になるのは理解できます。> 「かなりしのげる」という発言の根拠が理解できません。御意。
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2014年3月22日 4:20 AM
崖から飛び降りたらどうなるかは飛び下りなければ解らないと言う飛び降りるのは国民で、それを見ているのが政府とその手下そりゃあ、観察する側からすれば結果が出るまでは解らないと言い張るだろうさ
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