メルマガを2週間に一度、書かせてもらうようになってから一年半近く経ちますが、ときどき思っていたことがあります。「今でも書きたいことはたくさんあるけど、民主党政権のときだったら、もっともっと書きたいことがあったのになあ」ということです。
民主党政権の悪夢の3年半、私は常にイライラ、
ヒヤヒヤしていました。鳩山さんの政権ができて以来、
外国人地方参政権や東アジア共同体構想、小沢さんの訪中、
人権擁護法案、夫婦別姓論議、
法務大臣や国家公安委員長への左翼色の強い政治家の就任などなど
、よくもまあ次から次へと売国法案・政策を思いつくなあ、
と半ば感心すると同時に、
どっかで批判の声をあげねばと常に思っておりました。
しかし当時は、意見を発表させてもらえるところがあまりなく、思い余って2ちゃんに夜な夜な張り付き、「ヴォケが!」「ルーピーは今日も平壌運転(-_-;)トホホ…」などと書き散らす日々ですた…。(さすがにウソですd(*_∀`)b)
民主党政権が終わってホッとしたんですが、悲しいことに、ここ最近、安倍政権にも、「それ違うんじゃないの」と感じることがままあります。
特に、ここひと月ほど、「外国人労働者や移民の受け入れ」、「道州制法案の国会提出」、「法人税の引き下げ」、「配偶者控除の廃止」などの検討を開始するという報道を、ほぼ毎日見聞きし、よくもまあ次から次へと新自由主義路線炸裂の政策を出してくるなあと呆れております。
それに加えて、「国家戦略特区」の話。こちらもうんざりです。
3月中に、対象地域を発表するそうです。
「国家戦略特区、首相が月末に公表 経財相表明」(『日経新聞』2014年3月17日付)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1800B_Y4A310C1EB1000/
私の住む福岡市も「新たな企業と雇用を生み出すグローバル・スタートアップ国家戦略特区」という構想で応募しています。最近の報道によると、これ、決まりそうなんですよね。
国の「産業競争力会議」などで少し前に議論され、国民の反対が強かったため結局取り下げざるをえなかった「解雇規制の緩和」が盛り込まれていることからわかるように、まさに新自由主義路線そのものです。
(『NET IB NEWS』2014年3月5日付)
http://www.data-max.co.jp/2014/03/05/post_16456_dm1749_3.html
一昨日の東田剛さんの替え歌メルマガ(^o^)にもありましたが、労働者の不足やインフレで困っているならともかく、いまは賃金の低下や需要不足で悩んでいるデフレです。
「起業促進の規制緩和」を行っても、人々の購買意欲がないデフレの現状ではほとんど成功しないでしょうし、起業から5年間程度の期間を区切るといっても「解雇規制の緩和」をしたのでは、不安定な仕事が増えるだけでデフレ脱却にはむしろ逆効果でしょう。
だいたい「起業」こそが不況脱出の切り札!みたいな根本的前提が、すでに間違っているように思います。(繰り返しますが、特に今はデフレですし)。
福岡市の提案では、起業を増やすことについて具体的な数値目標が設定されています。
「開業率20%を目指す!」とのことです。
しかしこれ、なんか意味があるのでしょうか。ケンブリッジ大の経済学者ハジュン・チャン氏によると、「経済成長の原動力は起業家精神だ!」「起業家精神の欠如こそ、経済の停滞の原因だ!」というのは、ウソだそうです。(チャン『世界経済を破綻させる23の嘘』徳間書店、2010年)。
控えめにみても、「起業が多ければ多いほど、経済が成長し、好景気になる。国や地域が栄える」ということは、一概に言えそうもありません。
たとえば、起業する率が高いのは、経済の組織化が進んでいない発展途上国であり、先進国の場合はすでに経済の組織化が進んでいるため、むしろ起業する率は低いそうです。(上記のチャン氏の本によれば、「途上国の平均的国民が起業家になる確率は30% …先進国の平均的国民が起業家になる確率は12.8%」だそうです。)
実際、福岡市の「グローバル・スタートアップ構想」の案を作った事実上の市のシンクタンクである福岡都市研究所のHPにある資料を見ても、「起業活動率」が高い国は、上からチリ、タイ、中国、ブラジル、エストニア、スロバキアと、あまり先進国はありません。「起業活動率」が高くなっても、あまりうらやましくありません…
http://www.urc.or.jp/jigyou/jyouhousen/documents/FG07JPver1.0_000.pdf
(PDFが開きます。1.48MB。「起業活動率」のグラフは5頁に)。
福岡市が用いている指標である「開業率」(一定の期間中に新規開業した事業所数を、その期間の初めに存在していた総事業所数で割った比率)の国際比較は探し出せなかったのですが、都道府県別のデータは下記にありました。
上記のサイトの説明によると興味深いのは、「開業率」の高い県は「廃業率」も高く、また「失業率」も高いそうです。
HPの主宰者(本川裕氏)は、「開業率」と「失業率」との相関関係が高い理由として、「失業率が高いということは求職者数に対して職場が少ないということであり、そうした地域では余り収入にならなくとも何もしないよりましなので店屋などを開業する人も多くなる」と述べています。(加えて、大都市でも、「自動車産業を中心に経済が好調で失業率も低い愛知県では開業率はそれほど高くない」と書かれています。)
福岡市は、「開業率20%にして全国ダントツ一位を目指す!」と言っているわけですが、失業率も高くするということなんでしょうかね。まあ、「解雇規制の緩和」を行うわけなので、案外、そうなのかもしれませんが…
「開業率」の高い社会とは、経済活動が「好調」「活発」というよりもむしろ「バタバタと落ち着きがなく不安定」といったほうが正確なようで、一般市民からすれば、特に目指すべきものでもないように思います。
福岡市は、「起業が多く、
開業率が高いとなんとなくアメリカンドリームみたいでかっこええ
」みたいなイメージだけで深く考えず語っている気がします。
そのほかにも、福岡市の「グローバル・スタートアップ国家戦略特区構想」には、望ましさがよくわからない提案がなされています。「外国人の在留資格要件の緩和」「クルーズ船内のカジノ営業の緩和」「外国人医師の診療行為の規制緩和」などを喜ぶ福岡市の一般市民はどの程度いるんでしょうか。少なくとも私は、もっと落ち着いた街にしてほしいと思いますが。
また、「学校教育法第1条規定の学校の国際バカロレア認定要件の緩和」も提案されていますが、これも私はどうかと思います。
福岡市の提案の狙いはよくわかりませんが、国家戦略特区に関するいくつかの本を読んだところ、国家戦略特区では、日本の学習指導要領から外れた外国人の駐在員向けの公立あるいは私学助成の対象としての私立の小中学校や高校(またはコース)を作ろうという提案が一部でなされているみたいですね。外国語が通じる医療機関の設置と同様、主に、外国企業の経営者や従業員の便宜のためのようです。
(もしくは、「英語・中国語・韓国語が通じる公立の外国人小学校、中学校、高校」を作るという提案もあるようです(参照、市川宏雄『山手線に新駅ができる本当の理由』メディアファクトリー新書、2012年)。この本では、東京の国家戦略特区に指定された地域ではそういうのが作れるようになるので、グローバルでいいだろ!と誇らしげに説明されています)。
私は、この国際バカ ロレア認定要件の緩和などの「学校教育のグローバル化」も、福岡の一般市民にとってよいのかどうか疑問に感じます。外国人、あるいは日本人の親が、そういう教育を自分の子に受けさせたいと思うのは自由ですが、その場合、自分たちで経済的、あるいはそのほかの負担をしてほしいと思います。日本の制度にフリーライドするのは止めてほしいですな。
または、
もしそういうのが日本の一般国民にとって必要だというのなら、
その必要性をきちんと説き、正々堂々と議論し、
学習指導要領の改訂をめざしてほしいものです。
相変わらずだらだらと長くなってきました…
端的に結論をいいますと、(1)よく考えず、新自由主義とかグローバル化とかの流行の考えにすぐ乗ってしまう福岡市のカルい姿勢が気に食わん、(2)「解雇規制の緩和」のように、正面から国民の民主的審議にかけられず引っ込めたものを、抜け穴を通じるかのように、一部地域で、それもわが福岡市で実現しようという「特区」という姑息な発想が気に食わん!ということでした。
今回はローカルネタで失礼しますた…。
<m(__)m>
PS
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【施 光恒】もう特区にうんざりへの14件のコメント
2014年3月21日 12:26 PM
[…] チャン氏の本によれば、「途上国の平均的国民が起業家になる確率は30% …先進国の平均的国民が起業家になる確率は12.8%」だそうです。) (http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/03/21/se-35/) […]
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2014年3月22日 11:31 PM
なーんだ安倍総理も「日本は日本人のものだけではない!!」というマインドだったのね、という話かと思います。民主党を叩きまくる国民に、安倍総理を叩きまくる資格はあるのか?苦笑なんせ、選挙においては「政党に関わらず、新自由主義を主張する候補者は落選させる」必要があったのに、2011年、2013年の選挙では「自民党」と書いてあれば誰でも当選しました。先の参院選では、「移民庁」を設置して移民を推進する!と主張する丸川珠代女史が東京都選挙区ではダントツ当選でした。きっと都民の多くは移民に大賛成なのでしょう。
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2014年3月23日 6:51 AM
「国際バカロレア」の、「カ」と「ロ」の間に半角のスペースが入ってるwww
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2014年3月24日 2:00 PM
そもそも選挙で選ばれたわけでもない人間が、なぜ政策に口を挟むのか?しかも、国民の合意を無視して。この手合いが、最近やたらと多い。そのくせ責任を取らない。移民政策は、問題噴出で頭痛の種にしかならないのは、立証済みなのに、こn連中は責任ひとつ取らない。
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2014年3月26日 6:32 AM
民間議員の竹中や三木谷がデカイ面して調子こいた事をほざいてると民主主義のプロセスすっ飛ばしてブチ殺したくなってきますよね。それにヘコヘコ従う安倍さんもどうかしてますしね。中川昭一さんがなぜ殺されたのか分かってるのかな。キャシュディスペンサーにならないと堂々と訴えてたからに他ならない。あの人は日本を護るために犠牲になったんですよ。安倍さんには中川昭一さんのような覚悟や気骨さがないですよね。
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2014年3月27日 5:26 PM
日本は駄目だ。だから他国から人を入れる。なんて言いますが、そんな駄目な日本に優秀な人材がくるとは、到底思えません。また、ただ頭数だけ揃えればそれで満足というのは、あまりにも稚拙な話だとも思います。
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2014年3月28日 4:20 AM
最近次々に発表された「特区」「年間20万人の移民受け入れ」「永住権を3年で与える」「富裕層の税額は2億円が上限」などの政策案・・・。なんだか隣国からの逃避人民と逃避マネーを呼び込むため、のような気がするのは私だけでしょうか・・・。カナダをはじめ今まで積極的に彼らを受け入れてきた国々が最近移民締め出しに転じたようなので、日本がその受け皿になろうとしている・・・、のでなければ良いのですが・・・。
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2014年3月28日 3:10 PM
ここ、最近アベドリルが活発な活動を見せ、国家を考えないかのような、新自由主義的な政策が次々と進められており、不安が募るばかりです。話は変わりますが、先日施さんの著書「リベラリズムの再生」を読みました。慶應義塾大学出版会 | リベラリズムの再生 | 施光恒https://www.keio-up.co.jp/np/detail_contents.do?goods_id=216私は、どちらと言えば保守的な人間であり、過去を参照しがちな部分もありますし、「汎批判的合理主義」の前提となるいくつかの必須事項について、多くの人が獲得するのは容易ならざることのように感じられることなどから、意見が少し違うところもありましたが、内容は大変興味深いもので、刺激を受けました。リベラリズムというと、それだけで胡散臭いもののように感じてしまいがちですが、このエントリなどでも見受けられるように保守政治家と言われている安倍総理がネオ・リベラリズムの政策を次々に乱発していることなどからも分かるように、これまでの「保守(コンサバティブ)」や「リベラル」では単純に分類することができない思想の混乱が起きているように感じます。そうした、思想の混乱を整理し、見つめなおすきっかけとしても良い本だと感じました。私は、東谷さんと施さんの対談動画で東谷さんがこの本を薦めておられて知りましたが、とても良い本なので、ぜひお勧めです。
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2014年3月29日 9:17 AM
明治時代の鹿鳴館外交を連想させます。日本語廃止論や混血による人種改造論までありましたけど。歴史は、繰り返す?
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2014年3月30日 9:44 PM
革命は都市部から始まる・・・。貨幣経済下、民主主義下で中間層が没落していくことがどれだけ恐ろしいか、やはり身を持って体験しなければ理解できんのでしょう。歴史とはこれほど無力なものなのでしょうか。
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2014年4月1日 4:10 PM
何気に施先生の二週間に一度の投稿が一番楽しみだったりする。出してる法案に何か違和感がある、おかしいと思うけど上手く言葉で言えないって事を分かりやすく表現してくれるから、モヤモヤが晴れる。
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2014年4月2日 1:38 PM
青二才丸出しの安倍氏ですが、氏の軽薄で浅はかな演説ばかりを聞いていると、政治家以前の問題のような気がしてきました。前回総理だったときも、そんな印象でしたが、今回はさらに酷くなっているような気がします。自信満々でロクでも無い事を言ってます。新しい顔して極めて古臭い・・、いや腐りかけの政策ばかりを宣う姿は、傍から見ていて、正直イタイです。
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2014年4月2日 5:05 PM
福岡はLevel5だとか、有望なITベンチャーが出てきているし、地政学的にもアジアの中心で環境がよいので、この特区はよいと思いますが。。
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2014年4月3日 5:48 AM
事業仕分けも特区構想も僕は同じだと思います。ミンス時代の事業仕分けで、何で外資系の投資銀行の白人が居るのか?不思議に思っていましたが、日本の政権が自民だろうがミンスだろうが、米国の隷属下にあると考えれば全てが納得いきます。小泉改革〜事業仕分け〜特区構想全て、米国(特に国境を越えて儲ける投資銀行)の国益に沿った形での日本の構造改革だと思います。鳩だろうが安倍だろうが、みんな同じですよ(笑)
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