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2014年1月17日

【古谷経衡】映画『永遠の0』はなぜ素晴らしいのか!?

From 古谷経衡(評論家/著述家 月刊三橋ナビゲーター)

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百田尚樹氏が原作の映画『永遠の0』を観てきました。結論から言いますと、全国民が義務として観なければならない日本映画史に残る大傑作です。見ていない方は、今すぐ映画館に行ったほうがよろしい(笑)。私は既に2回行って来ました。

ネタバレにならない範囲で述べますと、まず映画としての完成度が素晴らしく高い。この一点につきます。私は先入観をできるだけ排する為、原作を読まず劇場に足を運んだのです。しかも、日本映画のこの手の戦争を扱った作品にありがちな「バランス感覚の発露」、つまり「日本も中国戦線で悪いことをした(からバーター)」的な、変なニュアンスが混じるんだろうなぁ、と高を括って参ったのです。

ここ10数年で公開されたこの手の日本の戦争映画・例『僕は君のためにこそ死ににいく』『男たちの大和』『連合艦隊長官 山本五十六』『ムルデカ』『プライド運命の瞬間』などは、その訴える内容は良いのですが、どうしても低予算映画ならではの安っぽさ、前述の要らぬ「バランス感覚」、そして時代考証を無視したような脚本の破綻(ex「男たちの大和」における反町隆史役のコック長)などが散見され、どうしても感情移入ができないものばかりでした。
繰り返しますがこういった従来の日本映画は、訴えるテーマは良いのですが、映画としての完成度が今ひとつだったのです。
多分これは、監督の技量、脚本の練り込み、制作費など複数の要素がからみ合っていることが原因でしょう。

そういったこれまでの経験があるので、実は今回『永遠の0』も、安っぽい空中戦と、冗長な日常会話で、無駄に長回しで凡庸なカメラワークが続くのだろうなぁ、と思って見に行ったのです。
しかし、本作の内容はそれを全く裏切るものでした。
圧倒的で真に迫った空中戦の描写。真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナルなど、史実を忠実に模したCGグラフィックス。そしてなんといっても、スタンリー・キューブリック監督の『現金に体を張れ』(1956年)方式の、ループ構造(説明すると長くなりますが、要するに物語構成に於ける入れ子構造。ドラマ『24』の物語構造だといえば分かりやすいでしょうか)を綺麗に使用したムダのない構成。

そしてこれまでの日本映画でありがちな、間延びした詰まらない広角ショット(引き絵)の連続ではなく、テンポのあるダイナミックなカメラワークで見せる迫真の会話劇と回想シーン。どれをとっても、第一級の日本映画にほかなりません。感動しました。泣きました。これほど素晴らしい日本映画には、向こう数十年で会えないのではないか、と思います。

本作のテーマは、戦争を美化することでも、また、特攻を戦術的に評価することでもありません。戦争と特攻を通じて、「生」の素晴らしさと、「生」を超えた物語の継承が如何に素晴らしく、また重要であるかを高らかに謳い挙げたある種のロードムービとも呼べます。それは、戦後の現在を生きる主人公が、失われた時空と現代を結びつける、時空の接点を発見するという「大いなる旅」の物語でもあるからです。

本作では、先人たちが歩んだ歴史の「物語」を、戦争を生き残った戦後の我々が継承することの重要性を説いています。重要なのは、「事実の継承」ではなく、「物語の継承」と言っているところです。本作の主人公・宮部久蔵は天才的な技術を持ったゼロ戦のパイロットとして描かれますが、実在の人物ではあ有りません。『永遠のゼロ』は、史実を元にしたフィクションに過ぎず、これを指して「史実と違っている」などと揚げ足を取る人も居ますが、大きな間違いです。

本作では何故、「物語の継承」が重要だといっているのか。
それは「物語」にはそもそもフィクションが含まれている、という事実を示しています。
人間は、次の世代に何かの遺志をバトンタッチする時、厳正な事実よりも、わかりやすく脚色した物語として受け継ぎます。
世界の神話や伝説をみてください。誰もが、それを本当の事実だった、とは思わないでしょう。
日本の古事記だってそうです。誰もがヤマタノオロチを実際に存在した大蛇とは思っていません。
しかしそうやって脚色された「物語」が、子や孫に受け継がれ、民族の記憶として現在に残っているのです。

そうしたことを考えた時、本作がいう「物語の継承」とは何か。
無論、先の大戦で亡くなった兵士たちの戦史そのもの、という捉え方もできますが、もっといえばそれこそ、この『永遠の0』という作品そのものなのです。
次世代に伝えるべき物語として、『永遠の0』は存在しているといってよいでしょう。
この「物語」が次代に継承された時、かつて大空を舞ったゼロ戦は、時空を超えて生き続けるのです。
『永遠の0』。その時、ゼロ戦は永遠の命を有し、いつまでも我々の眼前を颯爽と飛び続けるのです。
日本映画が世界に誇る、国民の「物語」となり得べき映画が、ここに誕生しました。

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【古谷経衡】映画『永遠の0』はなぜ素晴らしいのか!?への4件のコメント

  1. かずまき より

    早速、映画を見てきました。一般の娯楽映画とは違って、自分の実生活をおくる上で励みになるよい映画でした。なんども涙しました。正しいことを貫くなら、孤独が避けられないのは、戦時中も今も同じだと思いました。人を悲しませない、苦しめない、その責任が自分にある。だから生きる、だから死ぬこともある。

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  3. かとうしん より

    新聞記者との口論シーンがカットされたと聞き、またサザンが主題歌と聞き、それこそ「バランス感覚あふれるそれ」だろうと身構え、行くのを迷いましたが、小説で泣かされたので、肝試しみたいなつもりで行きました。もういちど映画館に、観に行きたい。それが感想です。還ったのはひとりじゃないようですね。血みどろで救いだし、孫を抱きすくめてしまったのでしょう。また泣きました。

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  4. かずまき より

    昨日たまたま話題になりまして、「右よりとか左よりとかを離れて、圧倒的に感動する映画だった」という方がいました。何十年も映画館へ行ったことがない私でも見なければ、と思いました。最近、世のできごとを理解するのに、「ものがたり」として理解する方法が取り上げられています。映画、演劇、寓話、小説、ドラマ・・・・は作りものです。しかし現実の世界も実は、ある「ものがたり」として動いているというわけです。人間の心理の話です。価値観の話です。ある時代にある地域の人々は、ひとつの「ものがたり」のなかで生きているととらえると整理がつきやすいわけです。確かにその通りなのですが、それこそが人間の愚かなところなのです。ものがたり、シナリオ、ストーリー、・・・・・システム、機械的価値観、型にはまりたがること、自分を何かと同一化しないではいられない・・・・ある「ものがたり」に埋没して、崩壊してすたれて、またべつの「ものがたり」に埋没してその繰り返し、愚かさをよしとする生き方以外にできることがありましょう。

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