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2013年10月31日

【柴山桂太】まともではありません

FROM 柴山桂太@滋賀大学准教授

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産業競争力会議が提唱した「国家戦略特区」がいよいよ法案化されるようです。11月5日に閣議決定され、年明けから特区の指定が始まるとか。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2904I_Z21C13A0EE8000/

「国家戦略」と言うともっともらしく聞こえますが、中味は新自由主義そのものです。外資導入や規制緩和といった、これまでも「成長戦略」の名の下に行われていた路線の延長線上に出てきたもので、今回はその最新バージョンですね。

重要な点が二つあります。一つは、今回の「国家戦略特区」は、医療、雇用、教育、農業など、安部首相が「岩盤規制」と呼ぶ分野で、規制緩和を進めるねらいがある、ということ。官邸が公開している資料にも、そのことがはっきり示されています。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/dai6/siryou.pdf

目立った項目を列挙すれば、「混合診療の拡充」「雇用(解雇)コストの削減」「公立学校の民間委託」「PFI方式の導入」などです。これらは、これまでも改革派がずっと言い続けてきたものばかりです。

二つ目に、「国家戦略特区」を設置するにあたって、認定をトップダウンで行うとしていることです。首相、官房長官、総務相、経済財政相の四閣僚を中心に、民間議員を入れて諮問会議をつくる。そこに(規制緩和に反対しそうな)厚生労働相や、農水相は入れない、という方針のようです。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS21009_R21C13A0EB2000/

自民党には、こうした規制緩和に反対の議員が大勢いますし、業界団体の反発も強まります。そうした声を遮断して、首相とその取り巻きで一気に方針を決めてしまおう、というわけです。

つまりまとめると、「国家戦略特区」とは、

・医療、雇用、教育、農業など安部首相が「岩盤規制」と呼ぶ分野を中心に

・外資・外国人のさらなる流入を促しつつ

・東京など大都市を先行地域として

・規制緩和をトップダウンで行う

ことを目指した政策、というわけです。

これをやると何が起こるでしょうか。まず東京など大都市への投資の集中が進むでしょう。大都市(特に東京)への富と人口の集中はますます激しくなるはずです。

外資の導入は、一時は盛んになるかもしれませんが、世界経済の不安定な状況を見る限り、長続きはしないでしょう。特に中国経済は大変なことになっていますから、逃避マネーが不動産にわんさか入ってくるんじゃないでしょうか。短期の不安定なマネー流入を促進することが、日本の長期的な「成長戦略」につながるとはとても思えません。

特区によって、医療関係や農業関係の外資が入ってくるでしょうが、混合診療が拡大して公的医療制度が維持できなくなる危険や、巨大アグリビジネス企業が入って来て農業の自立性がますます奪われるリスクも高まります。

そもそも「岩盤規制」と呼ばれるものは、国民の生活の根幹に関わるから分厚い規制で守られているわけです。医療、雇用、農業、すべてそうですね。それを、まるで悪いことのように決めつける風潮は、何かが間違っていると思わざるを得ません。

もっと大きな問題は、トップダウンという手法です。規制というとすぐに悪者扱いされますが、どんな規制も、それなりの政治的手続き(関係団体の調整など)を経て作られてきたものです。

だから規制を改革したいなら、面倒でも同じような手続きを踏まえるのが筋というものでしょう。仮にそれで規制改革が進まないとしても、それが日本の議会制民主主義なんだから仕方がないことです。

新自由主義者は、それでは改革が進まないと反論するでしょう。でも、その理由は、新自由主義者の主張に本当の意味で国民を動かすだけの「説得力」がないからです。それを日本の政治制度のせいにしたり、業界団体の抵抗のせいにしたり、国民の無理解のせいにするのは筋違いというものです。

最近は、政治がトップダウンで決めるのが望ましいとする風潮が生まれています。しかし政治が内閣(それも内閣の一部)の一存で決まるのなら、国会議員も議会も必要ありません。

それでは、スピード感がない、と言われるかもしれません。しかしスピード感だけが欲しいなら、党の上層部がトップダウンで政治を決める中国型の政治システムの方が上です。スピード感ある政治を望むなら、中国型の政治システムへの改革も同時に提案したらどうでしょう。

やりたい改革が進まないからといって必要な手続きをすっとばし、「国家戦略特区」のような裏口を使って改革を既成事実化していくようなやり方は、まともな政治ではありません。「国家戦略特区」は、中味も問題ですが、導入の手法はもっと問題なのです。

PS
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PPS
新自由主義的な構造改革をやりまくった結果、
韓国はとんでもないことに。
もしあなたが世界の流れを的確にウォッチしたいなら、、、
http://keieikagakupub.com/lp/mitsuhashi/38NEWS_video.php

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【柴山桂太】まともではありませんへの14件のコメント

  1. ほししいたけ より

    信仰はしませんが支持する理由は安倍総理のどうしようもない成長戦略よりも魅力的だからですよ。あとあなたの感情的な意見も面白いのでまた書き込んでくださいね(^O^)

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  3. ほししいたけ より

    なにがなんでも安倍総理を支持する人たちは偏った見方をしているいい例ですね。

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  4. 路傍花 より

    先生の、いや、新日本経済新聞全体ですが、新自由主義という括り方が乱暴で、加速している気がしますが?「自分達の思うようなことをしてくれないから新自由主義者」と仰ってるような気がいたします。一度、アルバイトでもしてみることをお薦め致します。まともでないのはこちらに集まってる方々の批判の仕方のような気がいたします。新自由主義的な麻生太郎財務大臣について、批判どうぞ宜しくお願い致します。

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  5. 俺がおかしいのか より

    安倍さんや取り巻きの新自由主義者たちが、日本の一部の過激な反原発派と実体があまり変わらないように見えます。愛国無罪などと身勝手なことを言って日本企業を破壊したどこかの国の人々も想起させます。まあそうですよね。自分を絶対化し、異論を唱えるものは排除するその精神性は幼稚な革命者のもの。やり方が洗練されているかどうかの違いですかね。

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  7. 毒シャア より

    問題を承知で決断するってのが安倍政権の方針だから仕方が無い。成立の公算大なのでしょう。

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  8. ろんどなー より

    >「国家戦略特区」とは、>・医療、雇用、教育、農業など安部首相が「岩盤規制」と呼ぶ分野を中心に>・外資・外国人のさらなる流入を促しつつ>・東京など大都市を先行地域として>・規制緩和をトップダウンで行う>ことを目指した政策、というわけです。これ、英国ですでに実施済みですから、これで国家がどのように変革するかは英国のここ数十年を観察検証すれば、よ〜く分かります。何が起きたかというと、1)バブル景気になり、金融・不動産価格が急上昇。金融・不動産業界とリッチ層が短期間に労せずして儲かり、新たなニューリッチ層もできて格差が広がる。2)国内の会社を外資に売り払った大株主と仲介業者が労せずして儲かる。3)首都に大量のニューリッチ移民(主に中国・ロシア・アラブなどから)と労働移民(世界中、より貧しい国からが多い)が押し寄せ、伝統を愛す英国人が大量に(確か10万人ほど)首都から脱出。移民は同胞で固まり、家族を呼び寄せ出身国そのままの生活習慣を続け、マイノリティー意識が強く、英国社会への帰属意識は薄い。4)1,2,3の結果、首都に高級住宅、高級車、高級レストラン・ブティックが増えて景気好さげに見える。が、一方で犯罪が増え、庶民の違和感・不公平感が蔓延し、時にデモや暴動が起きる。5)医療はプライベート診療が増え、個人の医療費負担額は上がる。サービスも高額診療費が払えるプライベート診療者優先で、そうでない人は後回し。6)教育は地域により分断化。地域格差が大きく、結果的に優良なリソースと生徒は少数の私立校に集中する。7)農業が廃れて農家の自殺が増える。田舎が寂れる一方、観光地周辺では不動産バブルのために地元民が家を買えない。つまり、一部の富裕層(成金移民を含む)だけは快適で、そうでない人々には不安定でコストが高い生活環境となるわけです。当然、大多数の英国民は「こんな風に自国が変わってしまうと分かっていたら反対したのに、政治家もメディアも誰も何も教えてくれなかった」怒りましたが、ことが起こってからでは後の祭り。議論する機会すら与えられずに「我慢しながら慣れる」以外、もうどうにもなりません。>中国経済は大変なことになっていますから、逃避マネーが不動産にわんさか入ってくるんじゃないでしょうか。今の英国は政府主導で多額の「中国からの逃避マネー」を引き入れています。小さな政府が完成し、国家経済が金融中心なので、金融が振るわずに税収が減ると政府にインフラ整備のための十分なお金がない。そこで、空港、通信、電力(原発を含む)にも中国企業が参入し、国家の安全保障について「議論」すらありません。かつての英国は人権問題に厳しかったはずですが、今では中国の人権問題に対して「おおむねスルー」状態です。「国柄の激変」と同時に「国家のプライド」すら捨てた、としか思えません。「ここまで中国化されて、よく放置しているものだ」と呆れますが、日本と英国には決定的な違いがあります。それは、元々英国は優遇された貴族階級がいる「格差社会」であり、階級だけでなく植民地からの大量移民で国民が分断化されているために「国民国家」とはいえないこと。そして英国の富裕層は英国に住み続けることにはこだわらず、カナダやオーストラリアなど海外移住を常に考えている、ということです。海外に逃げ出さない上流階級は王室だけ、かもしれません。日本で今、トップダウンで早急に「国家戦略特区」を進めようとする人たちは、上記1、2に該当するか、3に関係がある人たちで、中国の逃避マネーも早急に取り込みたいのでしょうか。日本の国柄がどうなろうと、自分は海外で優雅な生活を送るつもりかもしれません。しかし、大多数の日本人は海外旅行はしても海外に住みたいなどとは思わないはずですし、日本は幸いまだ「国民国家」ですから、国民を無視して「国の将来設計」を一部の人の利益にかなうように作り変えるなど、決してあってはならないことです。

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  9. ゆう より

    民間議員を重宝して解雇特区とか安倍総理は頭がイカれたかと突っ込みたくなりますよね。新自由主義というのは日本の国体を解体する恐ろしい思想だという事を皆様の記事から実感させられました。 共産主義となんら変わらないですね。

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  10. プー太郎 より

    新自由主義者たちの構造改革は、普通ならちゃんと機能している民主政治では、あまり賛同を得られず進みにくい。だから、彼らは政治権力と結びついて、議会などの民主主義的な手続きをすっ飛ばして改革を進めようとする。いつか中野さんか三橋さんが仰っていたことを思い出しました。まさに今それをやられていますね。自由民主主義を理想とする政治は、多様な意見に寛容であり、じっくり議論した上で決定するものですから、スピード感のある決めれる政治とは本質的に相容れない関係ですね。たとえ、どんなに結果的に良い改革だったとしても、こんな独裁政治みたいなやり方では私はとても評価できません。結果も重要ですが、民主政治では決断に至るプロセスも結果以上に重要だと思います。結果が全てなら、それこそ面倒くさい民主主義なんてやめて、手っ取り早い独裁政治にすればいいわけですし。

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  11. ひろ より

    こういう、少数独裁的特区構想が認められるという前例をつくると、将来、また、「中韓宥和的政権」ができてしまったときに、「反日特区」(当該特区内では国籍無関係に政治参加できる、とか)の制定をゴリ押しされる理由付けにされる、っていう危険性があるとおもいます。

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  14. ハヒフヘーゾー より

    裏切者安倍さんをはじめ、産業競争力会議の連中はおぼっちゃまですから、自らのわがままは通って当たり前だ。 通らないとやだもん などと素で考えているのでしょう。楽天の三木谷会長が「医薬品のネット販売を認めねば民間議員から降りる」と言っていたことにその姿勢が端的に表れています。 規制改革だの、競争だのと彼らははしゃいで口にしますが、社会常識すら持ち合わせていない彼らは、もし権力を握っていなければ「淘汰されて当然」の人間なのでしょうね。

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