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2013年9月30日

【三橋貴明】1%層のための経済学

FROM 三橋貴明

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・武力衝突の可能性は?
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【今週のNewsピックアップ】

●ユーロの邪悪なる天才
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11620463881.html

●デフレという構造問題
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11621214383.html

結局のところ、新古典派経済学に基づくグローバリズム、新自由主義、構造改革の「目的」は何でしょうか。それは、ビジネスの拡大です。厳密には、投資をする余力がある勝者、所得上位層(1%)のビジネスを拡大することが目的なのです。

とはいえ、所得上位だろうが低位だろうが、新たに市場を開拓し、製品・サービスを開発し、チャネルを構築し、プロモーションを行うことでビジネスを拡大するのは大変です。当たり前ですが、新規ビジネスへの投資は、失敗するリスクがあります。(どんなビジネスでも同じですが)

ならば、既存のビジネス、既存の「所得のパイ」に政治的に「割り込み」、自分たちの所得を増やそう。具体的には、

「ムダ遣いばかりする政府による公共サービスの民営化」

と、

「既得権に甘えた農業、医療、教育、ライフラインなどの規制緩和」

のビジネスに自分たちも「噛ませて」もらおう。という話でございます。

公共サービス、農業、医療、教育、ライフラインに「政府の色」が強いのは、これらの産業分野が「安全保障」に関わっているためです。とはいえ、新古典派に脳を侵されたグローバリストたちは、そもそも「国家」「国境」という概念は有りません。世界はグローバル! 世界は一つ! 人類、みな兄弟!

と、思っているのかは知りませんが、三橋は未だに「安全保障を重視するグローバリスト」に会ったことがありません。それもそのはずで、国境という「壁」を低くする(=規制緩和)グローバリズムとは、「国家」という共同体を重視する安全保障とは、相いれない概念であるためです。安全保障とは「国境のこちら側」の安全を保障するという話なので、国境を無視しようとするグローバリウムとは向きが逆なのです。

健全な国民は、安全保障を重視します。何しろ、安全保障とは「自分たちを守る」政策なのでございます。というわけで、安全保障の概念に逆らうグロバーリズム的な政策を実施するためには、それなりのレトリックが必要です。

例えば「財政破綻!」でございます。

「政府は財政破綻する! 増税で財政を健全化しつつ、規制緩和で競争力を強化しなければならない」

と学者、官僚、評論家たちが叫び、世論が迎合してしまうと、政府は安全保障お疎かにしてでも増税や規制緩和といった「デフレ化政策」を取らざるを得ません。

規制緩和は、「1%層」の新たなビジネスチャンスになります。公共サービスの民営化も同じです。政府が「財政問題」を理由に公共サービスの民営化、規制緩和を実施すると、それまでは無関係だった「1%」が投資という形で「所得のパイ」の一部を奪い去ることになります。

とはいえ、上記の事実が知れ渡りますと、当たり前の話として国民は規制緩和、民営化に反対します。南米のウルグアイでは、度重なる外資による「水道の民営化」に国民が怒り心頭に発し、ついには「水道の民営化を禁じる」法律が通ってしまいました。法律で民営化や規制緩和を禁じられると、さすがに「ザイセイハタンガーッ」「ミンカンカツリョクガーッ」などと言ってもどうにもなりません。

とはいえ、この世界には逆に「法律」で規制緩和が強制される地域もあるわけで、それこそがまさに「ユーロ」というわけです。
ユーロ加盟国のある国でバブルが崩壊し、失業率が極端に高まってしまっても、金融政策と財政政策の合わせ技という「ケインズ政策」(あるいはアベノミクス)は使えません。
マーストリヒト条約により、ユーロ加盟国は財政赤字を対GDP比3%以内に抑えるという「ルール」があり、昨今は新財政協定により、各国が財政均衡の憲法化を図っています。
しかも、ギリシャなどEU、IMFから緊急支援を受けた国々は、緊縮財政を強制されています。

さらに、ユーロ加盟国は金融政策の主権をECBに委譲しています。現在のユーロ破綻国には、金融政策と財政政策の主権がないのです。

そうなると、雇用環境が悪化したユーロ加盟国は、規制緩和というデフレ化政策により「競争力を回復」するしかなくなります。しかも、財政赤字縮小を求められた加盟国は、政府の支出削減に乗り出すしかありません。こうして、各種の公共サービスや国有資産が切り売りされていきます。それらのサービス、資産を買い取るのが誰なのか、今さら言うまでもありませんね。

現在の世界は、80年代以降、「小さな政府」を志向する新古典派経済学に支配され、各国の格差が開き、99%の国民が困窮化していっています。ウォール街を中心とする「強欲的な資本主義」に代わる資本主義、すなわち「瑞穂の国の資本主義」を実現できるのは、世界に我が国しかありません。そして、「瑞穂の国の資本主義」を訴えたからこそ、三橋は安倍晋三総理大臣を支持したわけです。果たして、総理はご自身が「新しい国(文芸春秋)」に書かれた「瑞穂の国の資本主義」の理念を覚えていらっしゃるでしょうか。近々、明らかになると思います。

PS
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【三橋貴明】1%層のための経済学への5件のコメント

  1. 名無しの権兵衛 より

    クラウゼヴィッツ曰く、『戦略上の誤りは戦術では補えない』、つまり「国民経済のためのデフレ脱却という目的は、タイミングをはずした消費税増税という戦略上の誤りにより、補正予算や泥縄式対応ごときの戦術では目的を達成する事は出来ない。」ということですね。TVでは駆け込み需要を期待している愚か者共がいますが、では来年四月以降はどうするのかって事です。

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  2. 名無しの権兵衛 より

    今回の消費税増税は、単に政局による決定でしたね。野党がヘタっている今、自民党の敵は自民党内にある、と言うことになりますか。この展開を予測してたのは、自民党議員の西田さんや政権内にいる官僚の中野さんや内閣参与の藤井さん、そして議員や官僚にコネがあるマスコミ等でした。三橋さんは、さすがに自分で言ってただけに政局までは読めませんでしたね。でもこれからは政局という因子が、政策に大きく影響するということを考慮に入れた方がいいのかもしれませんね。これからも応援しますのでがんばって下さい。

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  3. トリクルダウン理論否定他 より

    三橋さんが意外に思うかもしれない内容ですが、高橋洋一さんがダイヤモンドオンラインでこんな内容のことを述べています。(原文コピーではありません)今回の景気対策で掲げている、いわゆる企業が潤えば賃金にも還元されるというトリクルダウン理論は経産省に頼ったのだろうと指摘し、しかしながらその理論は韓国でも格差が拡大したとおり不安だと指摘しています。そして、安倍首相は消費税増税について、2回とも見送るか、最初お3%だけ上げるか、もしくは最後の2015年だけ上げる、の3択から冷静に2番目を選んだのではないかと(期待も込めて)結論づけています。さらに今日、長谷川幸洋さんは、2015年の増税について、来年度景気が冷え込むのは間違いないため、指標が悪化し景気条項をクリアできない、さらに自民党の総裁選がその直前にくるためにあげるのは無理だ、と指摘しました。財政は完全に緊縮路線に転換してしまったので、期待できるのは日銀の追加緩和しかありません。こちらは実際のところ効いているでしょう。円安が進みましたし、現実にマネーサプライは増えていますから。現在の為替レートは、FRBが緩和縮小を開始していないこともあり停滞していますが、ここでもし増税の下支えを日銀がするというメッセージを送ると言う意味で早めに追加緩和がすれば再び火がつく可能性が高いと思います。できれば今月の政策決定会合でやってもらいたいものです。そうすればサプライズ的な円安効果をもたらします。書くまでもないでしょうが、製造業ならば海外需要を捕まえつつ、国内生産回帰+競合海外製品の輸入をブロックするわけですから、結果的に国内のシェアも取り返すでしょう。資産価格が上がり金融機関にも(もしろん一般の兼業投資家にも)恩恵があるわけですからこちらのほうが法人減税よりよっぽど効果あります。遅くとも向こう半年以内には行ってもらいたいと期待しています。

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  4. 航海長 より

    今後20〜30年くらいは、新自由主義の勢いは拡大し続けるでしょう。国家の安全保障は疎かにされ続け、国が荒れ果て国民が苦しみ続ける。そして、最初に限界まで達した国家で、新自由主義を排するために衆愚主義に訴えるヒトラーのような国家社会主義者が出てくる。その国が市場獲得のために戦争政策を採り始め、各国がそれと対峙するために次々と新自由主義を捨てていく。軍事ケインズ主義などにより各国経済が回復し始め、段々と新自由主義が勢力を失っていく。しばらくは、ケインズ主義の黄金時代・・・・。こんな感じで、21世紀は、20世紀の歴史を繰り返すことになるのではないでしょうか。マルクスも言いました。「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」

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  5. はてな より

    国境を無視しようとするグローバリウム安全保障の概念に逆らうグロバーリズムATOKがいいと思います。

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