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2013年6月18日

【藤井聡】強靭化の思想

From 藤井聡

「国土強靱化なんて,公共事業をやりたがっている人達がでっち上げた虚構の理屈」
と言う意見を未だに目にすることがあります.

ですが,そうした雰囲気も依然と比べますと随分と変わってきたようで,例えば,朝日新聞(!)さんが行った世論調査では,

「防災などの公共事業を全国で大幅に増やす国土強靱化」

に賛成を示す割合が64%となりました.
これは,反対19%の実に三倍以上の方々が,

「公共事業を全国で大幅に増やす」

国土強靱化に賛成しているということですから,
ホントに時代の空気は変わってきたのだなぁ....と感じます.

ただ,やはりこのアンケート調査の項目からも明らかな通り,国土強靱化といえば公共事業,あるいは,防災,というイメージが強いようです.

ですから,それを推進することが,

デフレ脱却
産業競争力の増進
成長戦略
財政再建
イノベーションの促進

といった「経済政策」に直結するというイメージをお持ちの方は,未だ少ないように思います.

ホントにそれは残念なことなのですが,さらには,「強靭化」の前提に

適切な統治機構(いわゆる,道州制問題....ですね....)
適切な貿易政策(こちらはいわゆる,TPP問題....という奴ですね....)

が存在しているということをご理解しておられる方も,(一般世論の中では....)さらに限られているように思います.

なぜなら,「不適切」な統治機構が採用されるようになれば,リスク対応のための様々な事前事業も,リスクが生じた際の迅速かつ効果的な救援・復旧活動も,全く不可能になってしまうからです.

しかも,「不適切」な貿易政策が採用されるようになれば,日本国民が生み出した富や資産や技術が海外に流出したり,強靭化するアクティビティそのものが,当該貿易政策によって邪魔されてしまい,日本の国そのものが脆弱化し続けていくこととなってしまうからです.

ただし,以上に指摘した諸点以外にも,世間一般に見過ごされているこれら以上に重要な,「最も」重要だと言っても過言ではない,論点が,もう一つ残されています.

それは,

「戦後レジームからの脱却問題」

であります.

日本の国を真の意味で強靭なものにするということは,結局は,戦後レジームと呼ばれたものから脱却することそのものを意味しています.

なぜなら,今,日本の強靭化が求められているのは,日本が「戦後」において「脆弱化」したからであり,かつ,その脆弱化をもたらしたものが「戦後の体制=レジーム」に他ならないわけですから,日本を強靭化し、強い国を目指すのなら,「戦後レジームからの脱却」を果たす事が是が非でも求められるわけです.

そうである以上,日本という国家を強靭化せんとするのなら,
「戦後レジームとは一体何なのか?」
を徹底的な思想的,実践的次元で考え続け,如何なる意味において我が国は脆弱化せられてきたのかを深く深く理解することが何よりも必要となります.

そしてその思想と実践は必ずや,我が国の「独立自尊」の問題に行き当たることとな
るでしょう.

「強靭化」を志す者は,まずはこの地平に一旦は降り立ち,そこで考えあぐねた「独立自尊」を軸に据えた思想でもって,それぞれの現場の脆弱性と戦い,強靭化を果たす国民運動を全面的に展開せねばならぬのではないか....と思います.

是非とも皆様も一度,そうした「強靭化の思想」に思いを馳せつつ,それぞれの現場
での実践を,一つ一つお重ねいただければ,大変有り難く存じます.当方もこれから
も是非ともその様な態度で,強靭化の思想と実践に身を委ねて参りたいと思います.

では,また来週!

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【藤井聡】強靭化の思想への3件のコメント

  1. 梅雨 より

    なんで公共事業、特に建設事業はこんなにマスメディアに嫌われているのですか?いわゆる談合問題のためかな。だとしたら、大手SIerも叩かれていいはず。国土強靭化を阻むもっとも大きな問題は、国民の意識だと思います。「大手ゼネコンが、公務員と癒着していい思いするのではないか?」、「大手ゼネコンが現場の労働者の賃金をピンはねするんじゃないか?」、「土建業は知的じゃない。古い産業だ。」などなど。マスコミがさんざんやった印象操作で、国民の公共投資、特に建設事業に対する視線はとても冷たいと思います。国土強靭化もきっとそう見られているはず。この意識をどう変えていくか。国土強靭化を推進するためには、そういった国民の意識変革を意図的に行う戦略が必要だと考えます。

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  2. nanashi より

    日本強靭化と戦後レジーム。さすがに藤井さんの慧眼。日本の独立自尊とはなにかを考えあぐねる。いい言葉ですね。防人や鎌倉武士、そして幕末明治の志士等心ある日本人が考えあぐねたことではないかと思います。特に明治以降は近代の超克で考えあぐねる。安倍さんはこのへんのところをちゃんと考えあぐねているのだろうか。財政出動(第二の矢)はどうしてしょぼいのだろうか。尖閣問題協議のドアは開いている。どういうつもりなんだろうか。水島、倉山、上念、三橋さんらは安倍政権を擁護しきれるか。

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  3. Yuriya Kaito より

    戦後レジーム..ヤルタ・ポツダム体制..東京裁判史観..日本国憲法..日米安保条約..日米構造協議..年次改革要望書..TPP..こんなところでしょうか。

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