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2013年5月20日

【三橋貴明】増税キャンペーンが始まる

From 三橋貴明

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第二次安倍政権は「デフレ脱却」を掲げて選挙に勝利をおさめ、政権の座につきました。また、安倍総理や麻生財務大臣は、以前から「デフレ脱却前の消費税増税はしません」と繰り返し発言しています。

今年の10月頃に、附則十八条に基づき、来年4月からの増税について時の政権(90%以上の確率で安倍政権でしょうが)が今年第二四半期の経済状況を見て「執行の停止」を含めて判断することになります。(そう、法律に書かれています)

それでは、今年の秋に「時の政権」は今四半期の「何」を見て、来年の増税の実施(もしくは停止)を判断することになるのでしょうか。
「デフレ脱却!」「デフレ脱却前の消費税増税はしません」と繰り返していた以上、厳密にはGDPデフレータでなければならないはずです。GDPデフレータとは、名目GDPから実質GDPを産出する際の物価指数です。有料メルマガ「週刊三橋貴明 Vol208 GDPデフレータ http://www.mag2.com/m/P0007991.html」でも書きましたが、我が国のGDPデフレータは06年以来、一度も100を超えたことがありません。すなわち、連鎖方式で直近の物価と比較すると「マイナス」が続いているということになります。

しかも、我が国のGDPデフレータは最新データ(13年第一四半期)でさえ、対前年比でマイナスになっています。すなわち、

「直近と比べて物価が下がっている上に、一年前と比べて物価の下落幅が大きい」

ということになります。今年の第一四半期のGDPデフレータは、対前年比でマイナス1.2%でした。我が国は紛うことなきデフレーションにあります。

注意しなければならないのは、デフレーションと「実質GDPの成長」は両立しうるという話です。と言いますか、現在の日本がまさにそうなっています。

実質GDPとは、実際の生産の「量」の統計ですから、物価が下落していようとも拡大する可能性があります。さらに、実質GDPの成長は「生産性の向上」でも成し遂げられるため、

「失業者が増え続けているにも関わらず、生産性向上の効果で実質GDPが成長する」

というケースも普通にあり得るわけです。もちろん、失業者が増えていけば、やがては需要不足が生産の足を引っ張ることになるため、長続きはしないのでしょうが。

いずれにせよ、現在の日本で問題になっているのは「名目の所得」不足であり、生産性の不足ではありません。もちろん、いかなる時期の国であっても、実質GDPの成長は重要です。とはいえ、実質GDPの成長が国内の失業率を高め、国民の所得縮小をもたらすのでは意味がないのです。

現在の我が国に必要なのは、生産云々ではなく「所得の金額」を増やすことです。すなわち、名目GDPの成長です。名目GDPが成長していけば、日本国民が受け取る「所得の額面」が上がります。もちろん、個人差はありますが、全体のパイ(名目GDP)が増えている以上、国家全体では所得の金額が増えています。

さらに、税収とは名目GDPから徴収されます。実質GDPがどれだけ成長しても、名目GDPが全く成長していなければ、税収は増えません。そして、実質GDPが成長している時期であっても、名目GDPが成長しないのがデフレ期という話でございます。

我が国は、少なくともGDPデフレータが安定的にプラスで推移するようになるまでは、決して増税をしてはならないのです。財務省は悲願の増税を達成するべく、国内マスコミと組み、これから秋にかけて猛烈な増税キャンペーンを仕掛けてくるでしょう。その中には、必ず、

「実質GDPが堅調に成長するようになった。もう増税をしても大丈夫。消費税増税だ」

というミスリードが含まれてくるはずです。というわけで、日本国民は「デフレ」「GDPデフレータ」といった難しい概念について正しい知識を身に着け、「デフレ下の増税」を煽るマスコミ、財務省と対峙していかなければならないわけです。なかなか面倒な話ですが、「豊かな日本」を取り戻すためには、やるしかありません。

PS
月刊三橋5月号は、国土強靭化と公共事業に関する大問題がテーマ。
日本の根深いねじれ方がよくわかります。5/23より新規会員募集予定。

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【三橋貴明】増税キャンペーンが始まるへの2件のコメント

  1. 異端児 より

     与謝野氏のニュースに驚き、思わず議員さんの頁にコメントしましたが、目に届くものかわからない。‥‥そんな近頃、物思いに耽っていたら、'95年の時は3年後に増税したんだっけ?‥‥今年は'11年。の3年後‥‥と言うと!!!え゛!!!!まさか!!!!!ねぇ!!!!とは言うものの何でも菅でも管理システム化の極致に近づいてきた現代!!!恐ろしくなってきた、網の目を潜り抜け、どんな計略が仕掛けられていくのかわからないかもしれない?。とんでもない大どんでん返しを狙って着々と、秘かに円卓を囲んでる奴らが居るのかもしれない。ガクガクブルブル。 筆者は異端、社会不適合者です。のコメントではありますが、侮れない気がします。どういう風に煽動されるのかわかりませんが、なんとなく土壇場まで恐怖が拭えません。(m(_ _)m???。3年後じゃ、なかったっけ?)

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  2. 牧村恵美子 より

    何時も楽しみにしています。最新記事一覧の所で、今日の記事が昨日の記事の前にあり、URLの日付も同じです。出来るだけ早い訂正をお願いします。宜しくお願いします。

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