アーカイブス

2013年2月15日

【柴山桂太】無駄なハコモノ?

————————————————————

●「いいね!」をくれた方には、三橋貴明の音声ファイルを
無料プレゼント。世界を読むための3つの原則とは。

三橋貴明の「新」日本経済新聞 公式Facebookページ
⇒ http://www.facebook.com/mitsuhashipress/app_109770245765922

————————————————————

FROM 柴山桂太@滋賀大学准教授

インフラの老朽化対策に関心が集まっています。崩落事故を起こした笹子トンネルは、建設から40年が経過していました。全国には老朽化したインフラがごまんとあり、対策が急がれます。

老朽化対策や、震災対策には公共事業が必要です。しかし今の日本で、公共事業ほど評判の悪いものはない、と言えるでしょう。日本は「土建国家」で「無駄なハコモノ」ばかりをつくっているという悪いイメージがすっかり定着してしまいました。だから、笹子トンネルのような事故が起き、政府が対策をはじめようとしてもすぐに、「バラマキの復活を許すな」という強い反対の声が上がってしまうのです。

少し切り口を変えてみましょう。インフラの老朽化対策は、何も日本だけが直面している課題ではない、という事実を確認しておきたいのです。

アメリカでは2007年にミネアポリスで落橋事故が起き、死傷者が出ました。昨年もハリケーン「サンディ」が大きな被害をもたらし、インフラの強化が議論されています。

ヨーロッパのように早くから近代化した地域では、インフラ劣化が深刻です。ロンドンでは、水道設備の二割が築150年以上(!)だそうで、度重なる事故による損害が話題となっています。欧州委員会の報告によると、EU加盟国で必要となるインフラ投資は、今後十年で総額1.5兆ユーロから2兆ユーロ。道路関係では5000億ユーロ、エネルギー関係では4000億ユーロが必要とのことです。

http://ec.europa.eu/economy_finance/consultation/pdf/bonds_consultation_en.pdf

ここには、補修・更新だけでなく新設の予算も含まれますが、日本円で180兆から200兆円ですから、相当な額です。

アメリカでは、インフラ投資の減退を国力の低下と結びつける議論も出ています。ブルッキングス研究所のW.A.ガルストンは、インフラ投資が減った結果、中国や韓国、シンガポールといったアジアの新興国に比べて、アメリカの国際競争力が低下していると指摘しています。例えば、道路の補修が進まないために渋滞や物流が滞り、2010年の1年だけで1000億ドル分のムダが発生した、との推計が紹介されています。インフラ劣化が経済を「非効率」にしている、という訳ですね。

http://www.brookings.edu/blogs/up-front/posts/2013/01/23-crumbling-infrastructure-galston

また、アメリカの土木学会が二2009年に出した報告では、今後5年間に必要となるインフラ投資は2.2兆ドルと推計されています。

http://www.asce.org/PPLContent.aspx?id=2147484137

2.2兆ドルと言えば、約200兆円。こうした機関の出す数字は多めに出されるのが常ですが、それにしてもかなりの額になるのは間違いなさそうです。

オバマ政権は今年度の予算でもインフラに力を入れています。また、「国家インフラ銀行」を創設するとも発表しています。これは欧州投資銀行をモデルとして、長期的なプロジェクトに(民間の資金を入れながら)資金供給を行う機関のようです。政策金融の強化、ですね。有効な資金調達の仕組みを考えるのも、欧米日に共通の政策課題です。

もちろん、欧州でもアメリカでも、財政難からインフラ強化に反対する声は、日本同様に大きなものがあります。しかし、政治が率先して、「インフラストラクチャー・ギャップ」(必要とされるインフラと、現実のインフラ投資のギャップ)を埋める動きが出始めているのも、間違いないところです。

安倍政権は、今後10年で100兆円から200兆円のお金を「国土強靱化」に使うと公約しています。これだけみると巨額ですが、欧州やアメリカと比較すると、けっして突飛とは言えません。

インフラ投資による安全強化や国力の回復は、日本だけでなく、先進国の政治が共通して取り組んでいる課題です。「公共事業のバラマキは良くない」と頭ごなしに否定する前に、まずはその現実をしっかり見つめるべきでしょう。

PS
このメルマガの公式Facebookページができました。

http://www.facebook.com/mitsuhashipress

「ようこそ」のページから「いいね!」してくれた人には
三橋貴明さんの特別音声ファイルを無料でプレゼントしています。

メルマガに書ききれない号外記事をアップしていく予定。
「いいね!」を押して、メンバーになりましょう。

PPS
こんな本を書いています。
amazonで星4.5個の評価がついています。

http://amzn.to/V42zOt

世界は「静かなる大恐慌」に突入しています。
日本は、どう生き残るべきか。
それについて述べた本です。

関連記事

アーカイブス

【三橋貴明】三橋貴明の「人手不足解消合宿」

アーカイブス

【施光恒】創造性の土台と閉塞感

アーカイブス

【三橋貴明】三橋TV始動(前編)

アーカイブス

【小浜逸郎】もうすぐ「いざなぎ景気」だとよ!

アーカイブス

【島倉原】「財政健全化」と「緊縮財政」は似て非なるもの(パート2)

【柴山桂太】無駄なハコモノ?への2件のコメント

  1. R.T より

    勉強になりました。個人的に質問をしたいのですがよろしいですか?連絡待っております。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  2. Yuriya Kaito より

    【無駄な箱もの】という【悪印象】は、TPPの前身とも言える【日米構造協議】(1989年)の頃から発生しました。まさに米国からの外圧で、何百兆もの無駄な箱ものを作らされたのでした。日本の生産性を向上させる【有益な投資】以外のものにお金を使わされたのです。もう、半植民地の保護領から抜け出すことを、皆真剣に自覚しないと!

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です

名前

メールアドレス

ウェブサイト

コメント

メルマガ会員登録はこちら

週間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】日本はもはや「完全なバカ」なのか? 〜『消費増税を...

  2. 2

    2

    【三橋貴明】移民受け入れ反対論

  3. 3

    3

    【三橋貴明】逆走の安倍政権

  4. 4

    4

    【竹村公太郎】地球温暖化の足音

  5. 5

    5

    【藤井聡】もはや「クロちゃん」級におバカなニッポン・・・だか...

  6. 6

    6

    【三橋貴明】「もはや二度と、国民を飢えさせない」という思い

  7. 7

    7

    【小浜逸郎】先生は「働き方改革」の視野の外

  8. 8

    8

    【saya】竹中平蔵氏の最先端都市スーパーシティ~企業が国家...

  9. 9

    9

    【三橋貴明】日本国民は猛毒を飲み込む「完全なバカ」なのか

  10. 10

    10

    【三橋貴明】国家を壊し、人間を壊す移民政策

MORE

月間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】「10%消費税」が日本経済を破壊する―――そのメカ...

  2. 2

    2

    【藤井聡】日本はもはや「完全なバカ」なのか? 〜『消費増税を...

  3. 3

    3

    【藤井聡】もはや「クロちゃん」級におバカなニッポン・・・だか...

  4. 4

    4

    【藤井聡】「ネオリベ国家ニッポン」から脱却せよ 〜新自由主義...

  5. 5

    5

    【藤井聡】消費増税は「確定」した話ではありません―――今、始...

MORE

最新記事

  1. アメリカ

    【三橋貴明】「移民キャラバン」と「侵略者」、そして日本...

  2. 日本経済

    【三橋貴明】日本国民は猛毒を飲み込む「完全なバカ」なの...

  3. 日本経済

    【小浜逸郎】先生は「働き方改革」の視野の外

  4. 日本経済

    【藤井聡】日本はもはや「完全なバカ」なのか? 〜『消費...

  5. 政治

    【三橋貴明】「もはや二度と、国民を飢えさせない」という...

  6. 政治

    【三橋貴明】移民受け入れ反対論

  7. 日本経済

    未分類

    【三橋貴明】逆走の安倍政権

  8. 日本経済

    【竹村公太郎】地球温暖化の足音

  9. 政治

    【三橋貴明】国家を壊し、人間を壊す移民政策

  10. 日本経済

    【saya】竹中平蔵氏の最先端都市スーパーシティ~企業...

MORE

タグクラウド