FROM 東田剛
近年、アメリカで、シェールガスという非在来型のガス資源の開発が盛んになっており、天然ガスの価格が劇的に下がっています。
これを「シェールガス革命」と言います。
このおかげで、2017年には、アメリカは世界最大の産油国になるという見方もあります。
日本は、ほとんどの原発の稼働を停止し、天然ガス火力発電に大幅に依存していますが、
このシェールガス革命のために中東の天然ガスが余剰気味になっていたおかげで、ぎりぎり、電力が供給できている感じです。
しかし、アメリカで起きたシェールガス革命は、実は、日本のエネルギー安全保障にとって、深刻な事態を招くものと読まねばなりません。
なぜなら、アメリカは国産のエネルギー資源が大幅に増えたことで、中東の政治的安定に興味を失ったからです。
ただでさえ、経済力が低下し、イラク戦争で手ひどい失敗をした上に、中東情勢を安定化させるコストに見合う利益がなくなったのだから、当然です。
他方で、オバマ政権は、製造業の復活や格差の是正を目指しています。そのためには、エネルギーや原材料の価格を低く維持する必要があります。
したがって、アメリカの天然ガス輸出は、限定的になるでしょう。
それどころか、日本の製造業は、安価なエネルギーにつられて、アメリカに工場を移せば、国内は空洞化が進みます。
アメリカからの天然ガス輸入に期待できない以上、日本は、中東か、ロシアへの依存度を高めるしかありません。
しかし、アメリカは中東の安定化から手を引いているので、中東情勢はイランをはじめとして著しく不安定化しています。
他方、シェールガス革命で天然ガスの価格が下落したことで、一番神経質になっているのはロシアです。
天然資源からの収入に依存するロシアは、資源価格が下落すると、不景気になり、財政赤字になってしまうからです。
こうした中で、日本が原発を停止し、天然ガスの輸入を増やしたことは、ロシアにとっては、まさに干天の慈雨でした。
ロシアは、現在、日本に猛烈なモーションをかけてきています。
さて、ここから、次のような推測を働かせることができます。
日本の原発が再稼働しないことで、死活的利益を手にするのはロシアです。
とすると、ロシアは、日本国内の反原発運動を応援したい気分になっているでしょうねえ。
そういえば、ロシアには、旧ソ連時代から培ってきた日本の左翼とのパイプがあるのかも。
ということは・・・。
おそロシア〜。
これは、あくまで推測です。証拠はありません。
私がロシアの政府官僚だったら、こうするってだけの想像上の話です。
ですが、それくらいの戦略的想像力を働かせなければ、とても、この厳しい世界を生きてはいけないんじゃないでしょうか。
政治家や官僚の方で、どなたか、そういうことまで考えてくれてますかねえ?
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それでは。
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【東田剛】おそロシア〜への5件のコメント
2012年12月13日 11:40 AM
おそロシア〜。 確かに、ロシアや中国の近隣大国は、油断ならぬ国です。ただ、逆に、これはチャンスなのではという面もありそうなので書いてみます。ロシアとアメリカの天然ガスの件は、摩擦が生じるのもありな状態ですが、本格的な衝突は避けたいのが本音だと思います。この時、緩衝材となる第三国があるといいのですが、条件的にも日本が適しているのではと思います。二大国の間にあり、天然ガスの価格のバランスをとる仲介役となります。また、ロシアは日本と同じく原発の魅力に、まだつかれている国であり、日本が、原発を残しつつも原発の信頼を取り戻す事への成功は、原発輸出国のロシアにとっても意義がある事だと思います。現状、ロシアとの利害一致の利の面は多くあると思いますし、これを契機に北方領土問題の解決に進むのは可能だと感じます。ロシアとの和解がなれば、次は、ロシアの後押しをとりつけ、中国との尖閣の問題に目を向けます。中国のエネルギー割合の内、天然ガスの割合は、まだまだない状態ですが、いずれ増えるのが予想されます。その時の中国の協力の役割を、ロシアと日本がはたし支えるのを約束します。パイプライン・配給の役割がロシアならば、日本の役割・切り札となるのが「省エネ技術」ではないでしょうか。かつ、尖閣付近の埋蔵エネルギーをめぐり妥当な条件を示せば、中国との和解もあるかもしれません。中国国民の一部から反発がでるでしょうが、そこはおさえてくれると思います(苦笑い)。そこから、北朝鮮との拉致問題解決に向かい、これらを背景に、最後にアメリカとの対等な関係を手にする交渉をはじめます。・・・と、随分、都合のいい話を書きましたが、「自由と繁栄の弧」とあわせ、両輪の片側に、剛胆さのある相手の懐に勇気をだし立ち向かう外交戦略の車輪も必要ではないでしょうか。
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2012年12月15日 6:19 AM
「原発から撤退するためにやらなければならないことがたくさんあります。」で伝わると思いましたが補足します。完全に廃炉するまで危険を抱えたまま何千年何万年面倒を見る必要があり、人手も技術も金も今まで同様必要です。複数の使用不能となる地域も必要です。そんなことは当然です。次のコメントも違う伝わり方をしてしまったようです。「例えば、壊滅的大地震がきたら、巨大津波がきたら、土地が沈下したり回復不能に汚染されたら、・・・・」の意味は、人があがいてもどうしようもないようなことは起きるのだから、いくら経済的にもったいないことであっても、原発事故はもう何度も起こせないのだから、そのように見切ってあきらめ、原発を電源の選択肢からはずして、次の展開を考えましょうということです。
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2012年12月15日 11:21 PM
田沼意次さんへ「原発から撤退するためにやらなければならないことがたくさんあります。」と書いた意味が伝わらなかったようですね。そして、地震の話は原発と別の話題です。伝わるようにもっと丁寧に書く必要があるのかな?「例えば、壊滅的大地震がきたら、巨大津波がきたら、土地が沈下したり回復不能に汚染されたら、・・・」という話を例示したのは、どうしようもないことがもしふりかかったら、選択の余地なしに次のことを考えるしかないでしょう。といいたかったのです。あきらめがわるいから金の心配が先に来ちゃうのです。
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2012年12月17日 8:26 PM
短絡的ですね、原発がダメでも核燃料とか残るんですよ。その処理まで考えなければ地震だのなんだの言っても結果同じです。勉強してから発言しないとバカにされますよ。ここ見てる人々知的水準たかいのでね
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2012年12月18日 11:48 AM
経済的問題、安全保障上の問題、他国とのかけひき、これらがどうであれ、やってはいけないことがあります。原発はやってはいけない技術です。原発から撤退するためにやらなければならないことがたくさんあります。しかし、やってはいけないことだとわかったら、さっさとあきらめて次の手を打つべきです。例えば、壊滅的大地震がきたら、巨大津波がきたら、土地が沈下したり回復不能に汚染されたら、おきてしまったことは(起こるとわかったことも)あきらめなさいということです。あきらめていない人たちは、経済問題やら安全保障問題に優先順位をもってきちゃうんです。それじゃあだめです。藤井聡さんの言うプラグマティズムの作法でいえば、二つ目の作法です。愛国心から戦争(合法的破壊行為人殺し)をすることはだめです。核兵器という恐怖で均衡関係を維持する生き方はだめです。
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