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2012年10月24日

【東田剛】ドイツ経済は優等生ではない

FROM 東田剛

ユーロ危機の中で、スペインやギリシャの問題がクローズ・アップ
されているのに対し、ドイツ経済は優等生のように思われていますが、
それはまったく違います。

2000年代、ドイツは輸出主導で成長していましたが、ドイツの経常黒字を
可能にしていたのは、他のユーロ加盟国の経常赤字です。そうである以上、
ドイツの輸出主導型の成長は持続可能ではありません。

2000年代のドイツは、輸出競争力を「世界一ィィィ!」にするために、
労働市場を改革し、実質賃金の上昇を抑制するようにしました。

その結果、2000年から09年の間に、企業収益は大きく上昇したのに対し、
実質賃金は1%低下し、所得格差はOECD諸国平均の二倍のペースで
拡大してしまいました。

また、ドイツは稼いだ経常黒字を海外投資にばかり向けたため、
対GDP比でみた実質国内投資額は、史上最低の水準にまで落ち込んで
しまっています。しかも、ドイツがEUの周辺国に流したマネーが
周辺国のバブルを助長し、ギリシャやスペインの危機につながったわけです。

ところが、ドイツは自分の責任を棚に上げて、ギリシャやスペインの救済を
ジャーマンしています。

さらに、ドイツ政府はこの十年間、健全財政路線を掲げ、二○○九年には
憲法を修正して予算均衡を義務付けてしまいました。

そのため、公共投資が不足し、社会資本が劣化しています。また、社会の
高齢化にもかかわらず、教育や育児への投資も怠ってきました。

また、エネルギー政策については、福島第一原発の事故を契機に、
脱原発を決定し、再生可能エネルギーの普及を掲げましたが、
そのために必要なインフラのための公共投資を渋っています。

それに加えて、再生可能エネルギーの電力買い取り制度もあって、
ドイツの電力価格は、アメリカの三倍のレベルにあります。
ユーロ安による輸入インフレも、国内消費をさらに圧迫し、
低中所得者層に対する負担となっていることでしょう。

これでは、内需はますます縮小してしまいます。

輸出主導型・外需依存型の経済構造は、外需が消失すれば、
お仕舞いです。ドイツは、公共投資を増やして内需主導型の
経済構造に転じなければなりません。

ところが、修正憲法で財政の均衡を義務付けてしまっているので、
それもできません。

というわけで、ギリシャやスペインほどではないにせよ、
ドイツも結構やばいのです。とても健全とは言えません。

ところで、この2000年代のドイツの不健全な路線(輸出主導の成長、
資本輸出、外需依存、労働市場の自由化、賃金上昇の抑制、
格差の拡大、均衡財政)って、日本が2000年代にやってきた構造改革と
そっくりではないですか。

その上、TPP、脱原発に、再生可能エネルギーの買い取り、
そして消費税増税でしょう。ドイツとまったく同じへまをやっていますね。

こんな馬鹿なことを連発しているのは、いったい、どこのドイツな野田!

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中野剛志さんと藤井聡さんの共著『日本破滅論』が
とても面白くて役に立つと評判です。
よかったら、ぜひ読んでみてください。
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【東田剛】ドイツ経済は優等生ではないへの2件のコメント

  1. 手塚康夫 より

    新自由主義者による日本改悪は避けられないことは判りましたがこのままで良いのでしょうか なんとかしなければ 日本は大変な状況になってしまうのが判った以上は 「評論」だけでなく 政治家を動かしてなんとか 彼らの行動を阻止すべく対応も 考えて呉れませんか。

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  2. 近藤欣司 より

     成程、「隣の芝生は青い」、「生兵法は大怪我の元」などの諺の通りですか。諸国がひっつき合うヨーロッパ、日本と同じく孤立して見える米国でも諸国民が住んでいて日本とは情報の流入量が全く違う。その点、日本はアジア大陸の外れにあり、かつ情報が伝わらない国家が覆いかぶさっている、かつ言葉の壁も重なって諸外国からの正確な情報が入らず、従ってまた国民がそれを判断する能力にも欠ける。 何時も思うのですが、こういった諸外国の情報を的確に伝える雑誌(週刊誌など)が日本に欲しいですね。因みに私はニューズウイークを長年愛読しております。

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