FROM 東田剛
国会の原発事故調査委員会報告書の「はじめに」の中で、委員長の黒川清氏は、原発事故の根本的な原因として、次のように述べています。
「そこには、ほぼ50年にわたる一党支配と、新卒一括採用、
年功序列、終身雇用といった官と財の際だった組織構造と、それを当然と考える日本人の「思いこみ(マインドセット)」があった。経済成長に伴い、「自信」は次第に「おごり、慢心」に変わり始めた。入社や入省年次で上り詰める「単線路線のエリート」たちにとって、前例を踏襲すること、組織の利益を守ることは、重要な使命となった。この使命は、国民の命を守ることよりも優先され、世界の安全に対する動向を知りながらも、それらに目を向けずに安全対策は先送りされた。」
本委員会は「専門家による冷静、客観的かつ科学的な、独立した徹底検証をすること」を旨としたとしています。
しかし、この黒川氏の言う「根本的な原因」についての客観的かつ科学的な検証は、報告書のどこにもないのです。どうも、これは黒川氏個人の見解のようです。でも、この黒川説は、どう考えても客観的かつ科学的な検証に耐えられません。
例えば、経済成長に伴い、「自信」が「おごり、慢心」になったと言いますが、一体、いつの話をしているのでしょう?
自民党一党支配も、一九九三年には終わっています。しかも、報告書が批判する原発事故に対する政府の対応は、政権交代後の民主党政権によるものです。
何で、ここで日本的経営の話が出てくるのかも意味不明です。
では、アメリカの組織では、事故や不祥事、隠蔽はないのですか?
スリーマイル事故は?イラク戦争は?エンロンは?リーマンは?
「単線路線のエリート」たちは、国民の命よりも組織の利益を守ることを優先するようになったと言いますが、その証拠はあるのですか? ないなら、重大な名誉毀損です。
仮に、役所や電力会社が組織の利益を守るのを重要使命としていたとしても、原発事故が起きたら組織はふっとぶわけですから、だからこそ、安全対策を万全にするという可能性もあるでしょう。
女川原発については、IAEAが8月10日の会見で「驚くほど損傷が少ない」と驚嘆していますが、これを黒川説ではどう説明するのですか?
黒川氏は、
「・・・、社会構造や日本人の「思いこみ(マインドセット)」を抜本的に改革し、
この国の信頼を立て直す機会は今しかない」
と、何の検証も証拠もなく断言していますが、
それこそ、黒川氏の「思いこみ(マインドセット)」でしょう。
国会事故調の委員長という立場を利用して、個人的な「思いこみ」の持論を展開し、改革の機会とするというショック・ドクトリンまがいの行為は、職権濫用と言わざるを得ません。
PS
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【東田剛】原発事故の原因?への3件のコメント
2012年8月22日 9:23 PM
終戦時 アメリカが 日本国家の再生を 永久に阻止するために 官僚政治を制度として 導入したが 今や その制度の 弊害が アメリカの思惑通りに 機能してしまっている状況です。官僚制度を 根絶やしにするには 政治家に 官僚の任免権を付与することが 絶対に必要なのです。これなくしては 日本の真の独立は 実現しません。三橋先生 評論も 大変結構ですが 今度は 何とか 現在の官僚制度を廃絶にする広範囲な運動を起こして頂けないものでしょうか。宜しくお願いします。
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2012年8月24日 6:05 AM
なんだか原発問題と現在の経済状況(デフレ)の問題は似てるなぁと思います。原発事故の原因は津波により電源喪失の為に、核分裂が制御出来なかったという事が、当時の記録メモにより明らかになっており、むしろ地震発生時には正常に安全装置が機能したので、日本の原発設備の堅固さを証明しました。だから電源喪失問題を中心に対策を講じるべきだと思いますが、世論はなんだか明後日の方に行ってるし、解決したくないんじゃないかという気さえします。デフレ対策も、ある程度具体策まではっきりしてるのに、実行権限のある人達は真逆の事ばかりしている所を見ると、日本の問題の根本って、『非国民』を社会の表舞台から降ろせない事なんじゃないでしょうか?
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2012年8月25日 3:41 AM
新卒一括採用、年功序列、終身雇用があるからこそ人々の安定から安全が守られるのですよね。キッタハッタの実力主義になればなおさら自分利益至上主義になる。このような思考回路の人が委員長とは恐ろしい世の中です。しかも科学的根拠もないんですよね?
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