From 上島嘉郎@ジャーナリスト(『正論』元編集長)
———————————————
<PR>
「日本が国債破綻しない24の理由 ~国の借金問題という<嘘>はなぜ生まれたか?」
http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag2.php
p.1 日本は「国の借金」でなぜ破綻しないのか?
p.13 ”国民1人当たり817万円の借金”を広める財務省の記者クラブ
p.20 日本国民は債務者ではない、「債権者」である
p.36 かつて、本格的なインフレーションが日本を襲った時代があった
p.42 “日本は公共投資のやり過ぎで国の借金が膨らんだ”は全くの嘘
p.55 グローバリストから財務省まで、消費税増税を訴える人々の思惑
http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag2.php
———————————————
百田尚樹さんの新作『カエルの楽園』(新潮社)を一気に読みました。この作品、寓話のかたちをかりて戦後日本の根本的な歪みを描き切っています。
物語に出てくる「三戒」や「謝りソング」のおぞましさ。
にもかかわらず、それを良きものと信じで疑わない、欺瞞を真実として刷り込まれたカエルたちの運命…。
カエルの楽園は、“平和の毒”が脳にまで回って思考停止した世界です。その毒は、自らの命を奪う者の正体すら気づかせない。
安倍総理をヒトラー呼ばわりし、「放送法遵守を求める視聴者の会」の公開討論会の呼び掛けから逃げ回りながら、自分と異なる意見には「民主主義」や「言論の自由」を騙って危険視し、圧殺しようとする卑怯な人々と瓜二つのカエルたちがこの本には大勢出てきます。
『カエルの楽園』は、実は寓話でなく、登場人物をカエルにした現実描写なのですね。
おっと、百田さんはあくまでも〈この物語はフィクションであり、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。〉といっていますが。
さて、「降伏後における米国の初期対日占領方針」という文章については以前も触れましたが、そこに「究極の目的(Ultimate Objectives)」として「日本国が再び米国の脅威となり、または世界の平和および安全の脅威とならざることを確実にする」とあります。
日本という国が、二度とアメリカに刃向かうことのないように、日本人の精神を改造し、日本という国の徹底した弱体化をはかるというのが占領時の米国の目的でした。
端的にいえば、米国は日本人の強さの源泉を、祖国の歴史に対する誇りと、肉親同胞や郷土に対する深い愛情の二つにあると分析し、日本人を“腑抜け”にするには、その二つを破壊することだと考えたわけです。
前者に関しては、今日「自虐史観」と呼ばれる歴史観の刷り込みを行い、後者に関しては、「民主主義」と「個人の自由」の尊重を名目に「家制度」を排しました(民法改正等)。
故江藤淳先生の占領史研究によって明らかですが、占領軍は、放送、新聞、雑誌、書籍、映画、演劇、紙芝居等々、あらゆるメディアの徹底した検閲を行いました。この検閲によって、日本語の言語空間、情報空間は、占領目的の実施に好都合なように執拗に変形されていきました。
「八紘一宇」や「神国日本」という言葉は一切いけないことになり、「大東亜戦争」は「太平洋戦争」に置き換えられました。大東亜戦争は侵略であったと決めつけられ、米英ソ中などの戦勝国、朝鮮に対する批判も禁じられました、
この言語空間の仕組みは、米国側から見れば、すべてお見通しの素通しのガラス張りになっています。
日本は常に潜在的「脅威」として位置づけられているのですが、日本人の側から見ると、それは「日本国憲法」で裏打ちされた鏡張りの部屋のような構造になっていて、外の世界を律している葛藤の構造も実態も見えず、いつも「平和」と「民主主義」という記号を押しいただいている自分自身の姿しか見えないという仕組みです。
この仕組みを戦後の日本に根づかせるために検閲は決定的な役割を果たしました。
占領軍民間検閲支隊の新聞検閲が制度化されたのは、昭和20年10月8日以後です。昭和23年7月25日まで全国の主要新聞は「事前検閲」に付せられ、それ以後は、「事後検閲」に移行しました。
この事後検閲は、やがて「自己検閲(self-censorship)」になっていきます。事前検閲の場合には、掲載禁止も覚悟で思い切った記事や論説を書くことも可能でしたが、事後検閲になればそのために投下した資金や宣伝計画を無駄にすることはできません。本ができ、配本する段になって「NO!」と言われてしまえば、それまでに出版社と執筆者が努力してきたことは水泡に帰してしまいます。
したがって、そのような事態を避けるために、執筆者は自己検閲を行って占領軍の意向に沿うように原稿用紙のマス目を埋め、出版社、新聞社等は、事後検閲に触れそうな執筆者を最初から忌避するようになっていきました。
このようにして「事後検閲」への移行に伴う「自己検閲」が、あらゆるマスメディアに浸透し、結果的に戦後の日本の言語空間は、ほとんど恒常的に閉鎖された構造となってしまったわけです。
この言語空間を今日まで制度的に維持してきた柱の一つが、現行憲法で、もう一つが教育基本法にもとづく戦後の教育制度です。両者の目的は「日本の弱体化」ですから、現行憲法には、日本人に戦う意志(独立心)を持たせない、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」させ続ける装置としての第九条があるわけです。
これは日本を永遠に「米国の脅威」足らしめないこと、そのため日本には交戦権も戦力の保持も認めないということで、代わりに日本を守ってやろうというのが日米安保条約という図式になります。憲法九条と日米安保はコインの裏表です。
「憲法九条を守れ!」という人々は、「日米安保を維持しろ」と言わなければ論理的にはおかしいのです。おかしいと感じないとすれば、それは憲法に「台風は日本に来るな!」と書けば、日本に台風が襲来することはないと信じ込んでいる、「三戒」を信じるカエルの楽園のカエルたちと同じです。
戦後、マスメディアはこのカエルの楽園を守ることに作用してきました。一旦仕込まれた「自己検閲」が彼らの習い性となって、彼らはそれを疑うことがないまま、日本を貶め、日本人から誇りと強靭さを失わせる報道・言論を続けてきました。
そしてそれが「平和」を守り、「言論の自由」を守ることになると信じてきた。朝日新聞の慰安婦報道の捏造はその典型です。占領軍が企図した日本人の思想改造は、マスメディアに棲むカエルたちにおいて最も成功したといえます。
特定秘密保護法、安保法制関連法、放送法への総務大臣の言及…。“平和の毒”を取り除こうとすればするほど、新聞、テレビはそれを危険だと煽り立てます。
昨年6月、百田尚樹さんが自民党の勉強会で、沖縄の二つの新聞は「潰れたらいいのに」と発言したとメディアから大非難を浴びましたが、百田さんが「偏向報道をするマスコミを、スポンサーに圧力をかけて、懲らしめるのはどうか?」という参加議員の質問には「それはしてはいけない!」「出版社や新聞社に対して、権力や他の力をもって圧力をかけることは、絶対にしてはならないと考えている」と即座に答えたことはほとんど伝えられていません。
百田さんは、中国共産党政府がいうような「南京大虐殺はなかった」と発言する作家です。これ自体は歴史的事実に照らせばそのとおりですが、敗戦国日本の罪科として私たちは「なかった」と発言する自由を「歴史修正主義」のレッテル貼りによって封じられてきました。封じてきたのは、戦勝国史観をまったき是とする国々と、「日本弱体化」を仕込まれた日本のマスメディアです。
昨年秋、甲府市でのある講演会のために、地元紙の山梨日日新聞が、朝日新聞の慰安婦報道についてどう報じたかを調べました。
平成26年8月6日から27年8月15日までの約1年の間で、山梨日日がそれに触れた記事は以下の3本しか見つかりませんでした。
◇きょうの歴史 2015.08.05
◇論説 新聞週間 「報道の原点」 見つめ直す 2014.10.16
◇撤回、謝罪…揺れる朝日新聞 慰安婦報道有識者で検証 「訂正 遅きに失した」2014.09.12)
これに対し平成27年6月27日から9月25日までの約3カ月の間に百田尚樹氏に対する批判記事は4本ありました。
◇BOOK出版 問題の本質投げ掛ける 2015.09.20
◇風林火山「私は君の意見には反対だ 2015.07.07
◇論説 自民の報道批判 権力の異論封じ 許し難い 2015.06.27
◇百田氏 「普天間商売で居住」 地元紙つぶしは「冗談」 2015.06.27
少なくとも山梨日日は、朝日の慰安婦問題の「捏造」はさほど大きな問題ではないが、百田尚樹の「暴言」は許せない、と考えている新聞だといって的外れではないでしょう。他の地方新聞も何紙か同じテーマで記事を調べてみましたが、ほぼ同様の傾向でした。
故山本夏彦翁はこう語りました。
〈新聞はひとたび「言論の自由」がおかされたと聞くとたちまちいきりたつが、私はあれは皆が皆同じことを言う自由だと思っている。「キャンペーン」と言うくらいで、私たちの口は隣人と同じことを言うためにある。したがって私は言論の自由すなわち「パクパク」の自由と言っている。〉(『「豆朝日新聞」始末』あとがき)
この「パクパクの自由」が、人間として本当に大切な自由を蝕み、日本をカエルの楽園に堕するものだと気づきたいものです。
〈上島嘉郎からのお知らせ〉
『韓国には言うべきことをキッチリ言おう!』
(ワニブックスPLUS新書)
http://www.amazon.co.jp/dp/484706092X
『優位戦思考に学ぶ―大東亜戦争「失敗の本質」』
(PHP研究所)
http://www.amazon.co.jp/dp/4569827268
ーーー発行者よりーーー
【PR】
2016年2月、日本銀行は史上初の「マイナス金利」を導入した。
今回、日銀が導入したマイナス金利とは、市中銀行が持っている日銀当座預金の一部の金利をマイナスにするというものだ。これまで年利0.1%の金利がついていた日銀当座預金だったが、逆に年0.1%の金利を支払う(手数料を取られる)ことになる。
当然、銀行の収益を圧迫する要因となるのだが、その狙いはどこにあるのか。また、狙いどおりに事が運ぶのか。
三橋貴明は「家計と銀行の負担が増え、国債の金利が今以上に下がるだけ」と断じる。また、「円高はいっそう進むだろう」と予測する。
その根拠は? 今後への影響は?
そもそも「マイナス金利」政策を正当化する理論自体に問題があり、その奥にはお決まりのいわゆる「国の借金問題」があるという。
マイナス金利の解説からその影響、導入の背景、さらには経済成長の問題、そしてアメリカ大統領選挙にまでつながっていく一連のストーリーを、三橋貴明が詳述する。
『月刊三橋』最新号
「マイナス金利の嘘〜マスコミが報じない緊縮財政という本当の大問題」
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php
コメントを残す
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です