FROM 藤井聡@京都大学
これまで、ロバートスキデルスキー氏が
世界中に害悪を撒き散らかしたと糾弾する
「新古典派経済学イデオロギー」
時に新自由主義イデオロギーや市場原理主義とも言われる
その起源は、そのイデオロギーで益を得る事ができる
「経済大国の政府」
(ならびに、それと深く関わる大資本家達)
であることを指摘しました。
で、現在の経済大国といえば、それは言わずと知れたアメリカであり、
世界有数の大資本家を抱える国家もまた、同様にアメリカです。
ですから、この(英国で生まれた)イデオロギーは、
20世紀から21世紀にかけては主として、
「アメリカ」の地で「培養」されてきたのでした。
そして今や日本は、アメリカと深い関係を取り結んでいるのが実態です。
ですから、好むと好まざるとに関わらず、
アメリカで培養されたイデオロギーが、
日本に影響を与え「ない」とは当然考えられません。
では、どうやって日本にその影響が及んだかと言えば、
この「情報化時代」なんて言われる現代、
実に様々なルートで影響されていくことになるのですが、
そんな中でもとりわけ大きな影響を及ぼしたルートが
「留学」なのです。
「留学」ごとき「ミクロ」なことが、
「マクロ」な国家状況にそんなに莫大な影響を与えるのか…?
とお感じの方もおられるかも知れませんが、
それはもう、文字通り、莫大なマクロ効果を与えるのです。
古くは、最澄・空海も中国で仏教の「教え」を学び、
日本の国民仏教の礎を築きました。
そして、彼等が切り開いた真言宗も天台宗も、
実に1200年の年月を経た平成の御代でもなお、
日本中の国民が信ずる文字通りの国民的仏教となっています。
つまりは、「インテリの留学」は大きな影響を持ち得るのだし、
とりわけ、それは、「教え」に関するものについては、
その影響力たるや、実に実に莫大なものとなり得るのです。
日本人が留学に行くと言えば、やはり一番多いのは、アメリカです。
というより、今の子供達はどうか分かりませんが、
我々が子供の頃、「外人」と言えば、それはなんだか、
青い目をしたアメリカ人を想像したものでしたし(笑)、
「外国」と言えば、それはもう、アメリカだったのです。
だから、勉強しに行くとなれば、アメリカに行こう、
というノリが確実に存在していたわけです。
例えばどこをどう切り取っても生粋の日本人にしか見えない、
かの赤塚不二雄の天才バカボンだって、
アニメの最終回は、ロックフェラーにみそめられた「はじめちゃん」が
アメリカに「留学」のために旅立つシーンで終わっていますし、
昔はアメリカに連れて行ってやるということだけがエサ…失敬、ご褒美の
超絶に難関なクイズ番組(アメリカ横断ウルトラクイズ)が成立していたのです。
つまり、アメリカは多くの日本人にとって、
三蔵法師の天竺の様な「あこがれの国」だったのです。
(#植民地根性、負け犬根性もここまでくると、異様としか言えませんが、
そのあたりの話は、また別途機会があればお話したいと思います)
で、そんなノリは、小生(現在43歳であります)よりも年上の方々においては、
筆者なんかよりも、もっともっと濃厚にあったわけであります。
ですから、日本のとびきり優秀な頭脳は、イチローの様に
兎に角アメリカに留学したがったのです。
そして彼等の中でも経済学に関わる人々は、
先週ご紹介した「新古典派経済学サティアン」に入信します。
で、朝から晩まで、その「教え」を必至になって身につけます。
で、アメリカは本当の本当に弱肉強食の社会で、
「サティアン」の中で認められなければ、
簡単にオチこぼれ、何もかもを失うこととなっていくのです。
(そのあたりは、同じ西洋でも、当方が留学した欧州とは全く違います)
特に英語がえてして苦手な日本人は、人一倍、人十倍苦労をします。
….でそうやって苦労に苦労を重ねて、
さながら「サイチョー」や「クーカイ」の様な気分になって
日本に帰ってくるのです。
無論、彼等は、日本的なるものに塗れた日本という社会を、
心底「軽蔑」するようになります。
で、
「都会に出てメッチャクチャに苦労して成り上がった田舎もんが、
異様な執着心でもって田舎を、憎しみまくる」
ような心境を彼等は持つに至ります。
でも、そいつはホントは田舎もんなので、
田舎のことが好きだったりするわけです。
(#ちなみに、これは、
「彼等が思っている事」を分かり易く表現するために
「日本は田舎、アメリカは都会」
と比喩表現しているだけでありますので、その点ご了解下さい!)
でもでも、田舎でのほほんと幸せに暮らしてる奴らをみると、
心の底では
「幸せそうだなぁ、オレもああなりたいな」
なんてちらりと思ったり
「オレも、ホントは都会にでなけりゃ、ああやって幸せに暮らせたのに」
なんてことも、ぼんやりと感じたりする事も無いわけでは無いのですが、
直ぐさま
「いやいや、あいつ等はあんな事やってるから、
田舎は田舎のままなんだ。
オレがあのあめりかでベンキョーしてきた
新しい正しい事を教えてやんなきゃだめだ!」
なんて風に思い直したりする訳です。 (← 思い直すなっつーのっっ!)
だから彼等は、田舎的な幸福な社会を「破壊」し「傷付け」ながら、
彼等が、あこがれの国の「サティアン」で学んできた「教え」に基づいて、
田舎そのものをメチャメチャに造りかえてやろう、
なんて心境になっちゃうのです。
(こりゃもう全く、ありがた迷惑なんてレベルじゃない
超絶なありがた迷惑であります)。
まぁ、素直でまっすぐな精神をお持ちの方々には、
何を書いてるのかさっぱり分からない事だろうと思いますが(笑)、
兎に角、田舎に対して歪みに歪みまくった「愛憎」を抱くのです。
(お前は何でそんな事しってんだ?と思われるかもしれませんが、
大学生活の長い筆者は、幸か不幸か、
そういう実サンプルを何例もみてきたのであります 苦笑)
そして、そんな「愛憎」をもった大学人達は、
国民の皆様の税金で作られた大学という空間に、
「サティアン」を作るのです。
そして、日本中から集められた優秀な頭脳に、
天台宗や真言宗の様に、彼等があこがれの国アメリカの
サティアンで学んで出来た(そして、彼等なりの少々のアレンジを加えた)
新古典派経済学イデオロギーという「教え」を
徹底的に教え込む事となります。
無論、その教えは、日本国内の特定の人々
(財界、特定のイデオロギーを持つ政治家・官僚の方々、
さらには日本的なるものを憎むという心情を持った
特定メディアや大衆世論等々…)
にとって、「都合が良いもの」でもあります。
ですから、そのサティアンは、それら諸勢力に保護、育成されると同時に、
彼等に「権威」と「優秀な卒業生」を供給し続けます。
そして、サティアンは、そんな国内勢力と共に「進化」
(進化心理学ではこういう進化は「共進化」と言われます)
していくことになります。
このあたりは、米国内で起こった現象の構造と全く同じだと言えるでしょう。
・・・というのが、米国発の新古典派経済学イデオロギーが、
日本内でも広まっていった構造であります。
ちなみに・・・とって付けたような言い訳で恐縮ですが(笑)、
全ての経済学者やアメリカ留学組が
オーム真理教の様な方々だって言いたいわけでなくて、
あくまでも、オーム心理教的な経済学イデオロギーが国内で広まったのは、
そういう「オーム真理教的な経済学者やアメリカ留学組が存在していた」
ことが原因です、ということが言いたいだけですので、
そうではない経済学者やアメリカ留学組の方は、
それこそたくさんおられる事も申し添えたいと思います。
#ですから、「おれは違うよ」という方は、
当然おられるものと思います。
が、そんな方でも、一度くらいは
「ひょっとしておれって…」なんて
ちょびっとだけでも自己チェックをかけてみるのも、
(当方も適宜、自己チェックかけたいと思いますので 笑)
よろしいかも。。。しれません。。。。
京都大学 藤井聡
http://www.facebook.com/Prof.
PS
「えっ、構造改革って、学者の愛憎とか怨念の産物なの?
がっかり」と思われた方も多いと思いますが、
こうした現実を直視することから真に豊かな未来が生まれるのです。
理念でもなく、イデオロギーでもなく、怨念でもなく、愛憎でもなく、
ニュートラルな視線で世の中を見る目を持ちたい、
その都度、最適なソリューションを見つけていきたいとお考えのあなたには、
この本が参考になるかもしれません。
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【藤井聡】「構造改革」学者が生まれるカラクリへの1件のコメント
2012年8月22日 3:19 PM
いつもながら目から鱗です。
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