政治

2018年7月28日

【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第四十七話

From 平松禎史@アニメーター/演出家

◯オープニング

昔のドラマやアニメでは、「このわからず屋!」と主人公の友人や恋人がビンタを食らわすと、「はっ…」と我に返って、「そうか、お前の言う通りだな。」てな具合にスッと物語の停滞が解けてクライマックスに向かう展開がありましたが、最近では流行りません。
さらに、現実では、異論を唱える者は無視される傾向が強まっているようにも思えます

土木学会会長特別対談第5回。
当メルマガにも寄稿しておられる藤井教授の司会で行われた青木泰樹先生と土木学会大石久和会長の対談は、土木にとどまらない社会全体の方向性に多大な示唆を与えてくださいました。
http://ohishi.doboku-ch.jp/aoki.html

2月1日に公開された2つ目の動画、13分06秒から大石会長が示されている「グループシンク」なるものは、もはや個々の小さなグループや個別の分野だけでなく、日本社会全体を覆っているのではないか。
そんな懸念を強く持つ今日この頃です。

第四十七話:「日本を覆う《グループシンク》」

「グループシンク」ということばを思い出したのは、7月6日にオウム真理教の麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚など7人の死刑執行の報を受け、彼らがサティアンという閉じた空間の中でこじらせていった思考を改めて考え、さらには、当時のボクを含め一般庶民がオウム真理教をどう捉えていたかを思い返したことにはじまります。
オウムの教徒たちは最初から組織的に狂気じみていたわけではなかったが、内部での拷問死など、狂気を内包していました。
表向きにはまったく気づかれず、TV番組などでは好意を持たれていた時期がありました。
広報担当だった上祐史浩氏などはアイドル的な人気すらあったのです。
一般庶民も彼らの狂気に部分的に毒されていた面があったと言わざるを得ません。
狂気の膨張によって、
松本サリン事件や地下鉄サリン事件など日本史上稀に見るテロ犯罪に発展しました。

26日には、死刑が確定していた残り6人の刑が執行され、計13人の死刑執行が終了しました。

一連の事件の「区切り」となるのか、わかりませんが、「グループシンク」をめぐる社会的な狂気で考えれば
区切りどころか益々深まっているように感じます。

「グループシンク」とは、1972年にアーヴィング・ジャニスが提示した概念です。
大石会長のことばをお借りすれば「異論を唱えられない組織」となります。
こちらのサイトに解説があります。
赤福の偽装事件を例に、グループシンクの8つの症状が記されています。
http://www.educate.co.jp/glossary/3-education/100-group-think-.html

症状のみを引用しますと以下の通り。
症状1:自分たちは絶対に大丈夫という楽観的な幻想
症状2:外部からの警告を軽視し、自分たちの前提を再考しようとしない
症状3:自分たちが正しいのは当然とし、倫理や道徳を無視する
症状4:外部の集団への偏見・軽視
症状5:異議をとなえることへの圧力
症状6:疑問をとなえることへの自己抑制
症状7:全員一致の幻想
症状8:集団の合意を覆す情報から目をつぶる

この症状は、政治に対する態度にも顕著に現れています。
その状況を、ボクのツイッターフォロワー数の変化という、いささかミクロに過ぎますが、一例として観察してみました。
ご存知かと思いますが、ツイッターとはインターネット上の短文投稿サイトと言われるものです。
「フォローする」とは、個人や企業のアカウントを自分の「フォロー欄」に加えることで、「お気に入り」みたいなものです。
これを外すことを「アンフォロー」と言います。
自分から見て、フォローしてくれる人のことを「フォロワー」、その数を「フォロワー数」と言うわけです。

観察してみようと興味が湧いたのは、3月上旬にさかのぼります。
この頃からツイッターのフォロワー数の傾向に明確な「異常」が表れました。
以下に箇条書きで示しましょう。

1:ツイッターフォロワー数の傾向とその変化
・ボクのツイート傾向は約8割ほどが政治経済のことで、現在まで約5年は一貫している。
・安倍政権の政策批判は現在まで約5年間ほぼ一貫している。

その状況下で
・フォロワー数は「増減しながら逓増する」傾向が今年3月頭まで続いていた。

つまり
・ボクの鬱陶しい政治経済ツイートにもかかわらず、3月頭まで逓増傾向で安定していた。
・その傾向が、3月上旬以降、明確に変化。連続減少が断続的に起きるようになった。

ボクのツイート傾向は3月上旬以前以後で変わっていない。
だとすれば、他に原因があるのではないか?

2:3月上旬に何があったか?
・森友学園問題の再燃。公文書改竄。内閣総辞職の危機。
この問題で報道が埋まっていた4月いっぱいくらいまでの減少が最も大きかった。
・その後は、安倍政権に不利な情報、不利な出来事の度、断続的に連続減少が起きた。
直近は西日本7月豪雨災害の発災時に宴会。その後66時間動かず、の事実。
小野寺防衛大臣の「宴会場から指示を出していた」が嘘だったこと。
この時10以上の減少が見られました。

3:これまで政治経済の動きと相関していなかったフォロワー数が
なぜ相関を見せはじめ、連続減少に転じたか?
・数年前のフォロワー一覧には「日の丸アイコン」が一定割合で明確に存在した。
「日の丸アイコン」とは、日の丸や旭日旗、菊の御紋などを付けた「愛国的」意思表明。
・3月上旬以降現在までに、フォロワー一覧から「日の丸アイコン」が激減した。

4:「日の丸アイコン」の傾向とは?
・「愛国的」意思表明には違いなかろうが、すなわち安倍政権支持者とは断定できない。
・安倍政権支持派の著名人のフォロワーには現在も「日の丸アイコン」が多数存在している。
・「日の丸アイコン」は、安倍政権支持表明とイコールではないが、その可能性が濃厚。

5:以上のことから言えること
・3月上旬からの連続的なフォロワー数減少は、安倍政権支持者のアンフォローの
可能性が濃厚である。

6:なぜアンフォローするのか?
・3月上旬までとそれ以降での明確な変化は、安倍政権の危機的状況の濃厚化。
・5年半の担当期間で、「デフレ脱却」「日本を、取り戻す。」など公約が守られていない。
安倍政権支持派が民主党政権時代から嫌っていた移民政策を実質加速させている。
安倍政権支持派が民主党政権時代に猛批判した公共事業削減を継続している。
・民主党時代に決めた消費税増税や国家戦略特区への流れなど、ほぼ継承している。
・「日米同盟」とは名ばかりの、アメリカ従属(戦後レジーム強化)傾向の推進。

以上の事実から、安倍政権を擁護し続けることへの行き詰まり感が増幅。
・安倍政権は戦後最強、最良である、という自信の危機。
・安倍政権支持を保持することへの継続的な動揺。
・動揺を抑えるため、グループシンクの「症状8:集団の合意を覆す情報から目をつぶる」
が発動して、不都合なアカウントをアンフォローし始めた。

…という流れですが、ご理解いただけますか?

これが、「フォロワー数 連続減少における安倍政権支持派の自己防衛行動仮説」です。
え〜っと、まじめ臭く書いてますけど、このネーミングはかなりギャグですよ・・・。

おそらく、これまでも、安倍政権批判をするボクをアンフォローした人が散発的にいたのでしょう。
しかし、同時多発的な傾向になったのは、安倍政権を支持し続けることへの自信が、支持派グループ内で広範囲に揺らいでいるからだろうと推測します
「安倍打倒」を目的とせず、20数年に及ぶ「政策批判」を中心にしたボクのツイートは、3月上旬までは気にかける必要がなかった。それが政権の危機的状況で無視できなくなり、アンフォローして見えなくする必要に迫られたのではないか。

惜しむらくは、2月下旬にフォロワー一覧を確認しなかったことです。
そうすれば、仮説の確度がもう少し上がっていたでしょうね。
常日頃からフォロワー数を注視しているわけじゃないので、気づくのが遅れました。
減少数は300程度と推測しますが、まだまだ減る可能性があります。
なぜなら
20年継続している政策方針を見直さない限り、デフレは継続して国民の貧困化は止まらず、経済成長率は世界最悪状態が継続し、結果として諸外国からは急速に後退する国と化し発展途上国扱いを受け、日本文化は継承できず、東アジアの海に浮かぶ とるに足らない3等国に落ちぶれていく。
これは予知・予測の類ではなく、これまでの経過から十分想定できることです。

この兆候を直視できない人は、「安倍最高」の自信を揺るがすアカウントをアンフォローして安心するしかないのではないでしょうか。

以上は、自分のツイッターフォロワーという超ミクロな部分からの推測です
観察できたのは積極的な安倍政権支持層に限られるでしょう。
しかし、ネット上の言説や、新聞社説などを見ても、似たような心理状況を観察することが出来ますので、ミクロなサンプルとはいえ侮れない気もしています。

これまで信じてきたことを揺るがす事実から目をそらしても、日本は豊かにならないのです。

「誰が」ではなく「中身で」考えれば、とるべき姿勢はおのづと決まってくるのではないでしょうか?

20年以上続けている緊縮財政。デフレを悪化させる構造改革・規制緩和・グローバル化を止めることです。
結果的に安倍政権批判になって、支持の態度を変えざるを得なかったとしても
自己否定にはなりません。挫折感があるとしても一時的なものです。
ボクも安倍支持を覆した経験者ですが、別に自己否定になどなっていません。
目的は、日本経済の成長と豊かで文化的な生活の継承だからです。
何が大切なのか、問い続けるしんどさを引き受けて
考え方を見直していくことが重要だと思います。

ところが、世間は、そういう方向にはなっていないようです。

7月の新聞テレビの世論調査では、内閣支持率はわずかな上下にとどまって、総合すれば「横ばい」か「回復傾向」を示しています。
各調査の支持する理由では、「他の内閣より良い」が5割を占めダントツ第一位を維持しています。
日本テレビの調査では、前月まで「他に代わる人がいない」だった質問が他社に準ずる形に変わって「他の内閣より良い」になっていますが、結果は同じく支持する理由の第一位を占めています。

「他に代わる人がいない」が特に明確でしたが、「他の内閣より良い」にしても、現状肯定の思考停止状態ではないか、と考えています。
政策に期待している人は一割にも満たず、個別の質問項目は総じて評価が低いにもかかわらず、内閣支持率が高いのは、「次の内閣、先のこと、未来をもっと良くすること…」などを考えられなくなっているからではなかろうか。
個人の今を安定させるためには、民主党政権を「悪」として「他の内閣より良い」のだと信じるしかないのでしょう。
グループシンクの症状の多くが当てはまるのです。

船底に穴のあいた船が、次第に沈みゆくのを薄々感じ、エンジンルームでは機関士たちが悲鳴を上げていて、下層の船室には次々浸水して死者が増えていても、艦橋に並ぶ艦長たちにすがるしかない。穴を塞ごうとしない艦長たちを批判する者は海に捨てる・・・
そんな心理状況になっている、と。

絶望的な中にも希望を見出すことが難しくなってます。
小さな希望は潰されてきましたからね。

政治経済を観察し、先生方の提言を紹介するのが非常にしんどくなっている今日この頃です。

◯エンディング
話は変わりますが
プリンスアイスワールドに、ロシアのフィギュアスケーター、エフゲニー・プルシェンコさんが首のケガのため来日できなくなりました。
ビデオメッセージで、直前のキャンセルに心痛めている様子がひしひしと感じられました
ずっと準備していたことを中止する挫折感は、とても辛かったと思います。
そのメッセージで最も強く印象に残ったのは、このことばでした。

「私は強くなります。」

「私は諦めません。」

◯コマーシャル

TVアニメ『ユーリ!!! on ICE』の完全新作劇場版のタイトルが発表されました。
『ICE ADOLESCENCE ユーリ!!! ON ICE劇場版』
YouTube動画です→ https://youtu.be/-wjrCriMOO8
2019年公開予定!

『平松禎史 アニメーション画集』発売中。
『エヴァンゲリオン』シリーズや『彼氏彼女の事情』などカラーイラストを多数収載。
http://amzn.asia/hetpEPD

画集第二弾『平松禎史 Sketch Book』発売中。
キャラクターデザインのラフや楽描き、国民の祝日の絵「ハタビちゃん」シリーズなど収載。
http://amzn.asia/hUQoCkv

ボクのブログです。
http://ameblo.jp/tadashi-hiramatz/

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【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第四十七話への3件のコメント

  1. ぬこ より

    僕は、左翼からはネトウヨ、安倍保守からはユダヤ陰謀脳と言われます。
    むしろ、本家本元のユダヤ日本が偽ユダヤと裏に居る欧州貴族(バチカンスイス中東とうとう)

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      1. 残念 より

        都合のいいことだけ「ネトウヨ」連呼して喜んでる愚かな人間も同類ですよ。自覚しましょう。

        返信

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  2. たかゆき より

    矢は どこへ 逝った ♪

    鳴り物入りで アベノミソッカスとやから
    鼻垂れた もとい 放たれた
    貧乏神 疫病神 死神 という あの三本の矢

    アベちゃんの 眉間に大当たり とか、、、

    それはさておき 希望
    パンドラの箱から 出てこなかったのは
    希望だけだ と 悪魔から 囁かれたこと あり

    さも ありなん 
    お財布も 感情も 心電図も フラットが
    一番 なのだ(たぶん)

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