政治

2017年12月27日

【佐藤健志】新経世済民で2017年を振り返る

From 佐藤健志

2017年も、いよいよ残りわずかとなってきました。
そこで今年がどんな年だったか、ちょっと面白い方法で振り返ってみましょう。

つまり、本紙に寄稿した記事のタイトル。
ずらっと並べてみると、見えてくるものがあると思うわけです。
まずは1月~3月。

最近の紅白がつまらない理由(1/11)
ドナルド・トランプと「柔らかい官能」(1/18)
日本外交は冷静で、つねに用意周到らしい(1/25)
日本は良くも悪くも戦前になど回帰しない(2/1)
左翼・リベラルに同情せずにはいられない話(2/15)
稲田防相のWW(訳分からない)答弁(2/22)
売国と亡国のサンバ、またはリベラルの移民反対論(3/1)
ブーメランをあげつらうというブーメラン(3/8)
震災復興と地政経済学(3/15)
「変」のパワーを活かす方法(3/22)
さらば、愛の行為よ(3/29)

いやあ、まだ平和でしたね。
稲田防相のWW答弁など、スーダンPKOに関するもの。
言い替えれば北朝鮮問題が、まだ前面に出ていなかったのです。

ただし保守と左翼・リベラルの相互依存関係は、すでに目立ち始めていました。

稲田さんは国会で
〈「戦闘」と言うと憲法上の問題が生じるから「衝突」と言った〉
なる旨を口にしてしまったわけですが、
この発想、現実より憲法のほうを優先させる点で、護憲派左翼の論理とまるで同じではありませんか。

にもかかわらず、表面的には対立し、相手を攻撃しあっている。
こうして出てくるのが、「敵への心理的依存と思考停止に関する平松テーゼ」です。
おさらいしておきましょう。

〈自分(たち)よりも明白に劣っている存在〉
ないし
〈自分(たち)と違って、明白に間違っている存在〉
を設定し、

○○だから劣ってる
○○は間違っているに違いない
○○だったら、どんな攻撃をしても許される
○○が褒めるものは間違っている

という形で、自分(たち)の正しさを確認しようとする者は
相手が劣っていること、ないし間違っていることをよりどころにするため、
否定しようとしているはずの当の相手の存在に、いつしか依存しはじめる。

けれども、この点を認めてしまうと自分の立場が破綻する。
そこで、くだんの依存に陥った者は
1)物事を深く考えないように努め
2)おのれの矛盾を指摘されるとキレてごまかす
思考停止の状態に陥る。

思考停止に陥った者が、経世済民で結果を出すことはありえません。
まさに「右の売国、左の亡国」。

『右の売国、左の亡国 2020年、日本は世界の中心で消滅する』(アスペクト)
https://www.amazon.co.jp/dp/475722463X(紙版)
https://www.amazon.co.jp/dp/B06WLQ9JPX(電子版)

そして「右も左も結果を出せない」状況で浮上したのが、北朝鮮危機だったりするわけです。
4月~6月行きましょう。

平松テーゼとジャン=リュック・ゴダール(4/5)
戦後ニッポン三原則とは何か(4/12)
大国民の襟度(きんど)(4/26)
「日本の防衛は万全だ」と閣議決定せよ!(5/3)
今村前復興相をめぐる勘違い(5/10)
風が吹くとき、または実感なき危機意識(5/17)
「私、日本人で良かった」の大笑い(5/24)
炎上とツイン・ピークス(6/7)
炎よ、われと共に歩め!(6/21)
カール全国販売中止と炎上の制御(6/28)

防相に続いて、復興大臣がしょうもない発言をやらかしたのは、考えてみれば象徴的。
国防もそうですが、大災害からの復興にしたって、経世済民の要というか、安全保障の基本のキです。

基本のキを担当するはずの大臣が、不用意な発言をどんどんしてしまう。
こんな体たらくで、経世済民が達成できると思いますか?

いくら〈万全の体制で国民を守り抜く〉などと見得を切ったところで、万全の中身も知れたもの。
弾道ミサイル対策をめぐる政府のQ&Aが、笑えないぐらいに笑えるお粗末な仕上がりだったのも、当然と評さねばなりません。
こうしてわが国は、文字通りの炎上の危機を迎えるにいたったのでした。

『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)
http://amzn.asia/7iF51Hv(紙版)
http://amzn.asia/cOR5QgA(電子版)

では、7月~9月です。

稲田防相は自衛隊を暴走させたいらしい(7/12)
保守の対立概念は「反動」なんだってさ!(7/19)
炎上政治と内閣支持率急落(7/26)
現内閣を支持するのは国民の義務らしい(8/2)
支持率変動と認知的不協和(8/9)
ゾンビ映画の社会批評(8/23)
ワイズ・ファイティングと「不戦勝の誓い」(8/30)
前衛意識と自己絶対化(9/13)
前衛の最大の危機とは(9/20)

閣僚の失言があいついだり、森友・加計学園問題が騒がれたりしたこともあって、内閣支持率は春を過ぎたころから下落を始めました。
それが7月の都議選における自民党の歴史的惨敗を経て、ますます下落。
調査によっては、危険水域(30%以下)へと突入してしまいます。

テンパったせいでしょう、保守派と呼ばれる人々の言動もますます混乱、認知的不協和の領域へと突入。
左翼・リベラルを批判するつもりで、「旧体制の反動」と規定するという、仰天ものの主張が飛び出したのは記憶に新しいところです。
「旧体制の反動」って、極右のことなんですからね。

背水の陣となった安倍内閣は、かなりの議席減を覚悟のうえで9月に衆議院を解散。
ところが狙いすましたかのごとく、小池百合子さんが「希望の党」を旗揚げ!
総理の命運も尽きたかに思われましたが・・・
10月~12月行きましょう。

感情的貨幣論と風水的財政政策(10/11)
天高く総崩れの秋(10/18)
経世済民ができた時代への憧れ(11/1)
若者の「保守化傾向」の正体(11/15)
トランプ来日と横田基地(11/22)
「米国に逆らうと日本のようになるぞ!」(11/29)
「痩せ太り」の経済、デフレ型の幸福(12/6)
慰安婦問題と日馬富士引退(12/13)
平成は十年ごとに悪くなっていった(12/20)

例の「排除いたします」発言によって、希望の党は離陸直後に墜落するかのごとき顛末となる。
この壊滅的オウンゴールのおかげもあり、自民党は解散前の予想をくつがえして大勝。
まことに強運の安倍総理であります。

し・か・し。
強運の根底にあるのが、政権側の力量や徳目にあらず、「敵」(=希望の党)の失態にすぎなかったのは隠しようがなかった。
「敵への心理的依存」どころか「敵への全面的依存による勝利」だったのです。

さらに11月のトランプ来日で、安倍総理はバンカーでひっくり返りつつも、みごとなアメポチぶりを披露。

ここ数年間、
「総理はとりあえずアメリカに迎合しつつ、したたかに自主独立の機会をうかがっているのだ」
という擁護論を繰り広げてきた保守派すら、
「自主独立路線は放棄された」と認めざるをえなくなりました。

すなわち対米従属、構造改革、グローバリズムの3点セットは、今後もしっかり続く。
ならば「安倍一強」にいかなる意義があるのか。
経世済民の達成に寄与していると言えるのか?

だいたい現政権は、今や何かにつけて「革命」を連呼するにいたっています。
エドマンド・バークの名言ではありませんが、物事をとことん変えないことには納得できなくなっているのです。

『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)
http://amzn.to/1jLBOcj (紙版)
http://amzn.to/19bYio8 (電子版)
(※)上記の語句は101ページに出てきます。

いったい、これの何が保守なのでしょう?
選挙の勝利にもかかわらず、2017年、保守派は挫折したのでありました。

戦後脱却の展望が見えないまま、平成が終わることだけが決まり、北朝鮮情勢はいっそう緊迫してゆく。
CIAのマイク・ポンペオ長官は、トランプ大統領にたいして
「北朝鮮のICBM(開発)を阻止できる時間は3ヶ月しか残されていない」
と報告したと言うのですぞ。
(カッコは引用者)

https://news.yahoo.co.jp/byline/pyonjiniru/20171219-00079466/

すなわち2017年は
敵への依存と思考停止に始まり、
認知的不協和を経て、
自主独立をめぐる挫折と危機の深刻化で終わった
ということになります。
さあ、2018年はどうなるか?!

閉塞状況がいっそう深まるだけならまだしも、米朝衝突をきっかけに日本が北朝鮮の攻撃対象となり、
東京などに重大な被害が生じるといった事態も、想定しておく必要があるかも知れません。

来年暮れ、こんなふうに一年を振り返ることは、はたして可能なのか。
そんなことが気になる年の瀬でありました。

なお次週、1月3日と、その次、1月10日はお休みします。
1月17日にまたお会いしましょう。

ではみなさん、良いお年を!

<年末年始・佐藤健志からのお知らせ>
1)12月28日(木)と1月4日(木)、文化放送の番組『おはよう寺ちゃん 活動中』に出演します(6:00~7:00)
http://www.joqr.co.jp/tera/

2)1月4日(木)、日本文化チャンネル桜の新春キャスター討論に出演します(11:00~14:15。生番組)

テーマ「転換期の日本~私達はどう生きる?」(仮)
他の出演者は、富岡幸一郎さん、sayaさん、佐波優子さんなどです。
http://www.ch-sakura.jp

3)1月12日(金)、日本文化チャンネル桜の番組『FRONT JAPAN 桜』でキャスターを務めます。共演は銀谷翠さんです。

http://www.ch-sakura.jp/programs/program-info.html?id=1651(番組詳細)

4)12月20日(水)、『FRONT JAPAN 桜』でキャスターを務めました。共演は浅野久美さんです。

トピックス
・北海道沖「M9」級大地震切迫~その具体策は?
・「すべては祖国のため」と言えるか
・愛国のパラドックス~親米とは浮気である
https://www.youtube.com/watch?v=XgrpQPFskh8

過去の回もどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=OWFlElnkZiY
(12月6日配信、共演・浅野久美)
https://www.youtube.com/watch?v=vsEUk5GMDn8
(11月17日配信、共演・佐波優子)

5)12月23日(土)、日本文化チャンネル桜の番組『闘論! 倒論! 討論!』に出演しました。西部先生や、おなじみ藤井聡さんも一緒です。

テーマ:戦後日本人は変わってしまったのか?
https://www.youtube.com/watch?v=jeULK-D266k

6)『表現者』76号(MXエンターテインメント)に、評論「フリードリッヒ・リストの晩春」が掲載されました。

7)発展と繁栄の昭和から、低迷と衰退の平成へ。時代の区切りにあたって、戦後史を振り返りましょう。

『僕たちは戦後史を知らない 日本の「敗戦」は4回繰り返された』(祥伝社)
http://amzn.to/1lXtYQM

8)敵への依存、思考停止、そして認知的不協和。保守もリベラルもすっかりパラドックスに陥っています。その構造を分析し、脱却の方法をさぐりました。

『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は終わった』(アスペクト)
http://amzn.to/1A9Ezve(紙版)
http://amzn.to/1CbFYXj(電子版)

9)政治の目的は経世済民の達成です。社会を保守するとは、この状態を保ちつづけることなのです。事態が総崩れの様相を呈しているときこそ、原点に立ち返りましょう。

『本格保守宣言』(新潮新書)
http://amzn.to/1n0R2vR

10)「このような事態は前代未聞と言える。まったくはじめてのケースなのだから、何が起きるかも予想がつかない」(225ページ)
くだんの状況から、アメリカは独立を勝ち取りました。さて、日本はどうなることか・・・

『コモン・センス完全版 アメリカを生んだ「過激な聖書」』(PHP研究所)
http://amzn.to/1AF8Bxz(電子版)

11)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
ブログ http://kenjisato1966.com
ツイッター http://twitter.com/kenjisato1966

関連記事

政治

【三橋貴明】地球人類総貧困化

政治

【上島嘉郎】日本語という母国語

政治

【施 光恒】おバカな三代目の経済学

政治

【上島嘉郎】能天気なデラシネ

政治

【藤井聡】日本の再デフレ化を防ぐために、「5%への消費減税」を見据えた大型経済対策を

メルマガ会員登録はこちら

週間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】日本はもはや「完全なバカ」なのか? 〜『消費増税を...

  2. 2

    2

    【三橋貴明】移民受け入れ反対論

  3. 3

    3

    【三橋貴明】逆走の安倍政権

  4. 4

    4

    【藤井聡】もはや「クロちゃん」級におバカなニッポン・・・だか...

  5. 5

    5

    【saya】竹中平蔵氏の最先端都市スーパーシティ~企業が国家...

  6. 6

    6

    【竹村公太郎】地球温暖化の足音

  7. 7

    7

    【三橋貴明】「もはや二度と、国民を飢えさせない」という思い

  8. 8

    8

    【三橋貴明】国家を壊し、人間を壊す移民政策

  9. 9

    9

    【小浜逸郎】先生は「働き方改革」の視野の外

  10. 10

    10

    【三橋貴明】日本国民は猛毒を飲み込む「完全なバカ」なのか

MORE

月間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】「10%消費税」が日本経済を破壊する―――そのメカ...

  2. 2

    2

    【藤井聡】日本はもはや「完全なバカ」なのか? 〜『消費増税を...

  3. 3

    3

    【藤井聡】もはや「クロちゃん」級におバカなニッポン・・・だか...

  4. 4

    4

    【藤井聡】「ネオリベ国家ニッポン」から脱却せよ 〜新自由主義...

  5. 5

    5

    【藤井聡】消費増税は「確定」した話ではありません―――今、始...

MORE

最新記事

  1. 日本経済

    【三橋貴明】日本国民は猛毒を飲み込む「完全なバカ」なの...

  2. 日本経済

    【小浜逸郎】先生は「働き方改革」の視野の外

  3. 日本経済

    【藤井聡】日本はもはや「完全なバカ」なのか? 〜『消費...

  4. 政治

    【三橋貴明】「もはや二度と、国民を飢えさせない」という...

  5. 政治

    【三橋貴明】移民受け入れ反対論

  6. 日本経済

    未分類

    【三橋貴明】逆走の安倍政権

  7. 日本経済

    【竹村公太郎】地球温暖化の足音

  8. 政治

    【三橋貴明】国家を壊し、人間を壊す移民政策

  9. 日本経済

    【saya】竹中平蔵氏の最先端都市スーパーシティ~企業...

  10. 日本経済

    【藤井聡】もはや「クロちゃん」級におバカなニッポン・・...

MORE

タグクラウド