政治

2017年8月22日

【藤井聡】「小池知事・AI発言」の謎を解く ~「隠蔽」を「隠蔽」し続ける小池炎上劇場~

From 藤井聡@内閣官房参与(京都大学大学院教授)

(1)小池炎上劇場を作り上げる「小池さんなら正しいハズ」という思い込み
7月の東京都議会選挙で吹き荒れた「小池劇場」は「都民ファーストの会」の空前の圧勝をもたらしました。その勢いは未だ衰えず、小池知事の後ろ盾の下「国民ファーストの会」が設立され、その影響は国政にも及びつつあります。

その様相はまさに「炎上」そのもの。

今の日本の政治はこうした「炎上」で動いている──という状況を描写した佐藤健志さんとの対論本 『「炎上」・日本のメカニズム』 (https://www.amazon.co.jp/dp/4166611283)では、炎上というものを、次のようなものとして定義しました。

『炎上とは、特定の「物語」を皆が共有し、その「物語」が正しいハズ──と信ずることにした大衆が、互いに刺激し合いながら、拡大的・爆発的にその「物語」に沿った言動を繰り返していく現象』

つまりそれは、「イェーーイ!!」と盛り上がる「パーティ・ピープル」達の様なもので、人々は特に何かをよく考えて政治的な発言をしているのではなく、単なる「ノリ」や「空気」で、特定勢力を支持したりディスったりする、と言う次第。

そして、今回の「小池炎上劇場」で共有された「物語」とは、

「小池さんなら正しいハズ」

という至ってシンプルなものでした。

(2)「正しいハズの小池さん」が、決定プロセスを「隠蔽」していた!
しかしそれは単なる「ハズ」のものなので、必ずしも「真実」と一致するとは限りません。結果、どうしてもツジツマが合わなくなることも生じます。

その典型が、次の一件でした。

『小池知事 「私が決めたから」市場移転に関する文書残さず』
https://mainichi.jp/articles/20170811/k00/00m/040/057000c

小池知事は、自ら「凍結」した豊洲市場への移転について、本年6月に「豊洲に移転する」と同時に「築地を再開発する」という方針を決定しました。言うまでもなくこの決定は、何千億円という血税が関わる「非常に重みのある重大行政決定」

一方でこれまで小池知事は、石原都政等でのいわゆる密室行政を激しく批判してきました。つまり「正しいハズの小池知事」は、「不透明な行政の闇」を暴き立てる「正義のヒロイン・ジャンヌダルク」のように振る舞い、世論の期待に大いに応えてきたのです。

(それはまさに「♪過去の記憶を糊塗したところで、見極められないジャンヌダルク♪」(作詞:適菜収『豊洲の女』より)。だったわけですね)
http://amzn.asia/3Xz2IwB

だから、「正しいハズの小池知事」は、今回の重大な行政決定においても、透明性を確保していた「ハズ」なのですが──その決定は全て密室で下され、そのプロセスについて何の文書もないということが(情報公開請求を通して)バレてしまったのです。

これを受けて、毎日新聞では『数千億円規模の巨大プロジェクトの最終判断が「密室」で下され、その資料も存在していないという。知事が改革の「一丁目一番地」とする情報公開も軽視された形だ。』と批判。

何といってもそもそも、小池知事は「豊洲市場の地下に盛り土をしないと決定するまでの議論が文書化されていなかったことは問題」としていたわけで、その認識に基づいて『6月7日閉会の都議会定例会に、重要なことは決めた経過も文書で明らかにすることなどを定めた「公文書管理条例案」を提案。条例案は可決され、方針公表直後の7月1日に施行されている』わけですから、小池知事はどれだけ批判されても致し方ありません。

これまで、他人の「隠蔽」に対して目くじらを立てていた小池知事が、「豊洲移転・築地再開発」という重要な行政決定のプロセスを「隠蔽」したのですから、これぞまさに巨大ブーメラン。世論から総バッシングされても不思議ではない状況に至ったわけです。

(3)「正しいハズの小池さん」が「私=AI」などと、滅茶苦茶な事を言いはじめた
実際、小池知事は記者会見でこの件について追求されます。記者会見で記者が、今回の「情報の隠蔽」の問題について詰め寄ります。

しかし──これに対して小池知事は何とも奇妙な返答をします。この質問に対して彼女は、
何と「それはAIだからです」と、何とも摩訶不思議な回答をしたのです。

その時の彼女の発言を全文掲載しましょう(http://blogos.com/article/240074/)。

『ご質問でございますけれども、情報というか、文書が不存在であると、それはAIだからです。私があちこち、それぞれ外部の顧問から、それからこれまでの市場のあり方戦略本部、専門家会議、いろいろと考え方を聞いてまいりました。いくら金目がかかるかということについては、関係局長が集まった会議で、既にA案、B案、C案、D案と各種の数字が出てきております。よって、試算については既に公表されているものがあります。

最後の決めはどうかというと、人工知能です。人工知能というのは、つまり政策決定者である私が決めたということでございます。回想録に残すことはできるかと思っておりますが、その最後の決定ということについては、文章としては残しておりません。「政策判断」という、一言で言えばそういうことでございます。』

このやりとりを見て、「なるほど、そういうことか!」と納得できる方はほとんどいないでしょう──ですがあえて解釈するとするなら、次のようになります。

そもそもAIは人工的に作り出した知性ですから、そのオリジナルは単なる知性。その点を踏まえると、要するに、『私は優秀な頭脳を持っており(通常AIが模写しようとする知性は優秀なものに決まっています)、その優秀な頭脳が、様々な情報を適切に処理して、合理的な判断を下したのです」と答えたわけです。

これを、「情報公開という知事の方針に逆行するという指摘があるかどうか?」という質問に対して発言したのですから、これはもう「私の判断は適切なのだから、手続き上の透明性がなくてもかまわない」と宣言したと解釈せざるを得ません。

まさに、滅茶苦茶の極み。

重要な行政決定は皆、文書化し、保存し、公開すべしという「公文書管理条例案」を提案していた彼女自身が、優秀な私だけはそんな条例に従う必要がない、と、自分が作った条例をゴミ箱に捨てる様な宣言をしてしまったからです。

「正しいハズの小池知事」が、こんな滅茶苦茶な発言をする「ハズ」がない──のですが、しちゃったのだから仕方ありません。ここまで滅茶苦茶な対応をしたのだから、やっぱり世論からバッシングが始まったとしても致し方ない状況へと、ますます小池知事は追い込まれていったわけですが──。

(4)「隠蔽」の「隠蔽」が横行。小池炎上劇場はまだまだ進行中。
しかし、小池さんはほとんどバッシングされていません。

ネット上で一部批判はされていますが、未だに彼女に対する高評価状況が続いています。

なぜかと言えば──その理由は、「認知的不協和」理論という社会心理学理論で解説することができます。

そもそも、ツジツマが合わない事実が明らかになり、「認知的な不協和」を経験した人は皆、その不協和を低減させるために様々な対応を(必死で!)図る事が知られています。

『「炎上」・日本のメカニズム』https://www.amazon.co.jp/dp/4166611283)で整理しましたが、「不都合な事実」に対する代表的な「ごまかし方」は以下の三つ。

(1)その事実がそもそも「無かった」ことにする(スルー戦略)。
(2)その事実が「ウソ」であるということにする(それはデマだ!作戦)
(3)そんな事実はたいした問題じゃ無いということにする(そんなのカンケーネー!作戦)

さて、今回の「文書無し事件」はどうやっても事実は事実。ですので「それはデマだ!」作戦を採用するのは無理です。

一方、「そんなのカンケーネー!」作戦はもちろん採用可能です。実際、小池知事の「AI発言」は、「私は優秀な頭脳(AI)なんだから、記録を残すかどうかなんてカンケーネー!」という「オッパッピー」発言だったわけですから、彼女自身が「そんなのカンケーネー!」作戦を採用したわけです。

とはいえ、小池知事はこれまで「情報公開すべし!」と主張し、知事としてその条例まで作ってしまってるのですから、この作戦を小池知事が採用するのは筋ワルとしか言いようがありません。

実際、小池知事を支援した人々も含めて、皆が「困惑」してしまいます。
http://www.sankei.com/politics/news/170815/plt1708150045-n1.html

そうなるともう、残された方法は「スルー作戦」しかありません。

だから、小池知事もその支持者も、また、各種メディアも、小池知事についての「他の発言」をことさら取り上げ続け、かの小池知事の「情報隠蔽」も「AI発言」も無かった事にし続けていくわけです。

今、メディア、ネット上で見られる小池知事を巡る情報配信は(直接彼女の隠蔽体質を批判するもの以外は)全て、最もシンプルなゴマカシ作戦である「スルー作戦」の一環だったのです。

これぞ、全体主義の時に横行する「隠蔽」。

今、小池知事本人やその周辺の「隠蔽体質」が、メディアや世論総ぐるみの全体主義的な圧力によって「隠蔽」されようとしているのです。

こんな事を続けていて、まともな行政が進められるはずはありません。このままではオリンピックの主催をはじめとして東京都政はこれから大いなる混乱に見舞われることは不可避でしょう。

心ある読者の皆様は是非、こうした「隠蔽の構造」が「小池炎上劇場」において明確に存在することを冷静に認識頂きたいと思います。

その上で、都政について(そして、大阪や名古屋を含めたあらゆる大都市自治において)適切なご判断を下して頂きたいと思います。

追伸:あらゆる「劇場型政治」の背後にある「炎上」の構造にご関心の方は是非、こちらをご一読ください。https://www.amazon.co.jp/dp/4166611283

関連記事

政治

[三橋実況中継]かつてのアテネのように

【藤井聡】「小池知事・AI発言」の謎を解く ~「隠蔽」を「隠蔽」し続ける小池炎上劇場~への7件のコメント

  1. たかゆき より

    小3 ♪

    小沢が生んで 小泉が育てた 小池 (敬称略)ということは
    どのような方か 推して知るべしかと。。。

    小沢は仮想敵国の 小泉は占領国の 手先

    そして小池のAIは
    Avaricious Intelligence 

    日本は独立国ではないという 事実を
    メディアや世論総ぐるみの全体主義的な圧力によって「隠蔽」されてきた 

    膿みが いま 吹き出していると
    ぼくは念っているのだ ♪

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  2. 神奈川県skatou より

    諸般の事情を鑑み総合的判断を行いました、というところを今風で?カッコよく?優秀性がイメージできる、みんなが深くは知らないけど記号的表現という意味で「それはAIだからです」という表現になったのでしょうか。

    マスコミが応援しているときは、そんな話術でも肯定的に盛り上がってフォローしてくれるという算段でもあるのでしょうか。だとしたら下衆いなぁと。
    そしてエリートであるはずの立場の人がそんな心根をもつのが今の日本だとすると、どうしたものかと。
    (それこそゴジラがひっくり返しちゃえ、とにかく?)

    どちらにしろ、論理的表現で納得させることにギブアップした、たとえ後付でも合理的に見える表現を頑張って創作して提示することもしない、という姿勢ですと、その先は、会話にならないですね。左翼的自己肯定による反民主主義??

    政治は話し合って決めごとを作り、社会が支障なく流れるようにする作業だとすると、政治家というより思想家でしょうか。
    こんなご時世ですので、ファッショの担い手がいくらでも湧いて出る土壌なのでしょうか。

    みんな本気で考えてない、考えようとしない??

    提案より批判であふれる言論空間というのはなぜでしょうか。
    荒唐無稽かもしれませんが、思うところがあります。

    欝からの出口の一つは怒りの発揮です。高ストレス下では怒りの発散を求め、だれもがその口実を探します。それは本当の原因である必要はなく、怒りの発散の出口としてのエスケープゴートで良いのです。

    それに流されず、未来像を作り溜め、上記の世相の頂点かつ曲がり角に至る日へ向けて、建設的活動に移行できる準備をすることが、先の時代のために重要なのかなと思われます。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  3. 赤城 より

    日本人大衆の頭、理性感情の劣化が凄まじいものとなっていることを訓えてくれていると思います。
    日本人総白痴化がここまで進んでしまったのだと。
    これだと情報操作隠蔽して大衆を煽動したり騙したりするのも簡単でしょう。
    丸裸の赤子が総白痴で総奴隷の精神の国。
    もう救いようは無いでしょう。
    人間ってこんなにも愚かで弱いものなんですね。いや日本人か。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  4. robin より

    発言の矛盾しない政治家は見たこと無いし存在するのか分からないが私はAI=人間ではない=人知を超えて正しいなんて言われても戸惑うだろう、都政の隠ぺい体質?(なんてものがあったのか分からないが)を踏襲していないか、議論は公にするけど最終判断は都知事が行う、都合の悪い議論は非難の元になるので削除されるのだろうか、出来レースを見て安心するのが政治ショーの基本なのだろうか。政治家は自身の権力の根拠について不安になる、その結果、AIは人知を超えて正しい、私は最終意思決定権をもつ正しさである、よって私はAIである、なんて意味不明でありがたそうなことを言い始めるのか、人間が判断を下している時点でAIでは無いがもし本気で言っているとしたら恐ろしいところだ。10の事実から判断する人間、100の事実から判断するAIならAIの方が正しいのか、正しさの基準を人の生に置くならマトリックスみたいな世界になりそうだし、見せかけの過剰な生に置くなら公的な基準は不要とか。自己利益の追求が善である市場原理主義社会で人の幸福の基準を模索出来るだろうか。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  5. 田舎の主婦 63歳 より

    そこって爆笑するところですよ!?
    真顔で聞いていただけ?馬鹿らしい!
    間合いずらしのただのオチでしょ?
    都民の皆さま大丈夫ですか?
    人間はAIより勝るところもあるでしょ?
    不快な写真見る前に脳波は反応してるって実験結果あるでしょ?
    AIは見てから反応しての仕事でしょ?
    ストレス多い東京の皆さま直観力回復のリフレッシュ休暇お取りくださいネ!

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  6. Komiyet より

    後だしジャンケンですが・・・

    テレビ新聞と同じ方向を向いて、同じ価値観を共有してしまうと、悪い方悪い方へと進んでしまうんですね。

    石原→猪瀬→舛添→小池

    猪瀬の徳洲会スキャンダルがなければ、今頃・・・

    東京の一人勝ちだから、地方の人たちは、
    「東京の人たちはバカばっかりだね~、マスコミに乗っかるから痛い目見るんだよwww」

    てな感じでしょうか。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  7. コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です

名前

メールアドレス

ウェブサイト

コメント

メルマガ会員登録はこちら

週間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】スラムに消えた情けない男の話

  2. 2

    2

    【三橋貴明】続 財務省が日本を滅ぼす

  3. 3

    3

    【三橋貴明】財務省主権国家

  4. 4

    4

    【島倉原】インドブームに思うこと

  5. 5

    5

    【三橋貴明】共犯者育成プロパガンダ

  6. 6

    6

    【佐藤健志】若者が政治に求めているのは「結果」だ

  7. 7

    7

    【上島嘉郎】〈朝日新聞、死ね〉はただの暴言か

  8. 8

    8

    【藤井聡】「日本が再び、被爆国となる」という、今そこに在る危...

  9. 9

    9

    【浅野久美】君のいない場所

  10. 10

    10

    【三橋貴明】三橋貴明の「人手不足解消合宿」

MORE

累計ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】大阪都構想:知っていてほしい7つの事実

  2. 2

    2

    【藤井聡】「公明党・大阪市議団が日本を破壊する」というリスク...

  3. 3

    3

    【藤井聡】「橋下入閣」は、日本に巨大被害をもたらします。

  4. 4

    4

    【藤井聡】「日本が再び、被爆国となる」という、今そこに在る危...

  5. 5

    5

    【三橋貴明】人間の屑たち

最新記事

  1. 日本経済

    【三橋貴明】人手不足は利益拡大の絶好のチャンスだ!

  2. 日本経済

    【三橋貴明】三橋貴明の「人手不足解消合宿」

  3. コラム

    【浅野久美】君のいない場所

  4. メディア

    【上島嘉郎】〈朝日新聞、死ね〉はただの暴言か

  5. 日本経済

    【島倉原】インドブームに思うこと

  6. 政治

    【佐藤健志】若者が政治に求めているのは「結果」だ

  7. 政治

    【藤井聡】スラムに消えた情けない男の話

  8. 日本経済

    【三橋貴明】共犯者育成プロパガンダ

  9. 日本経済

    【三橋貴明】財務省主権国家

  10. 日本経済

    【青木泰樹】単位労働コストの見方

MORE

タグクラウド