FROM 藤井聡@京都大学大学院教授、内閣官房参与
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安部総理は昨年9月、新アベノミクスにて「600兆円経済の実現!」を宣言されました。
これは、理論的には「NGDPターゲット」政策を宣言した事を意味します。
NGDPターゲット、とは、名目GDPターゲットと言うもので、まさに、名目GDPの数値目標を立てる政策。これは名目所得ターゲット、とも言われますから、平たく言えば、単なる「物価ターゲット」ではなく、
「所得」ターゲット
を宣言した、ということになります。なぜなら、名目GDPは、国民の様々な所得の合計値でもあるからです。
ちなみに現在のGDPはおおよそ500兆円。これを2020年頃(今から4年後)に600兆円にするということはつまり、「1.2倍」にするということです。
そして、現在の国民所得は一人当たりおおよそ400万円程度ですから、これを1.2倍にするということはつまり、年80万円の所得の増加を意味しています。
つまり安部総理は、今から4年後に国民所得を約80万円増やすと宣言したという次第です。
そんな事は可能なのか――? と疑問に思う国民も少なくないのもしれませんが、政府は今、それは間違い無く「可能」だと考えています。
下記グラフは、政府がその様に考えている根拠です。これは、内閣府の将来予測シミュレーション結果です。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=790414624392816&set=a.236228089811475.38834.100002728571669&type=3&theater
このグラフに示したように、特に大きく景気対策しない「ベースケース」のまま推移すれば600兆円経済は実現しないのですが、順調に経済成長した「経済再生ケース」というでは、2020年頃にちょうど600兆円に到達することが、試算されているのです!
後は、どうすればベースケースではなく、経済再生ケースで、成長出来るのか……なのですが、その答えは明白です。
「財政政策」、しかありません。
そもそも、物価ターゲットは日銀の目標で、その手段は
「日銀の金融政策」
でした。ですが所得ターゲットは、(日銀の金融政策のサポートを受けながら掲げる)
「政府の目標」
なのです。そして、その手段はもちろん
「政府による財政政策」
なのです。
それは例えば、サマーズが今年の3月のフォーリンアフェアーズに掲載した、これからの経済政策を考える上で決定的に重要な下記論考での議論からも明白です。
「長期停滞にどう向き合うか―― 金融政策の限界と財政政策の役割」
原文:https://www.foreignaffairs.com/articles/united-states/2016-02-15/age-secular-stagnation
日本語(導入部のみ):https://www.foreignaffairsj.co.jp/essay/201603/Summers.htm
彼は、(中央銀行による)「物価目標」(インフレターゲット)よりも、「NGDPターゲット」(所得ターゲット)が今、求められていると指摘した上で、上記サブタイトルにも明記されている通り、
「金融政策だけでは限界。だから財政政策が必要だ」
と論じているのです。つまり、
「理論的」
に考えるなら、NGDPターゲットを掲げた安倍内閣には今、「財政政策をしない」というオプションは存在していない、と言わざるを得ないのです。
事実、安部総理は、このGW中のEUへの外遊を通して、各国に積極財政についての国際協調の調整を図らんと、大きく努力した様子が報道されています。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2765890.html
この総理の努力の背景には、「NGDPターゲット論」があったからだと解釈することができるでしょう。
その意味において、安部総理のお考えはこの点について完全に正当であると筆者は考えます。
いずれにせよ、総理が600兆円経済実現を宣言された今やもうアベノミクスは、「物価」ターゲットを掲げた日銀の金融政策を中心とした「アベノミクス1.0」から、
日銀と協力しながら、「所得」ターゲットを掲げた政府による財政政策を中心とした「アベノミクス2.0」へと、大きく転換しているのです。
後は、海外の緊縮派の急先鋒たるドイツをはじめとした、国内外の様々な(文字通りの)、
「抵抗勢力」
による様々な抵抗を乗り越え、600兆円経済を実現するための「財政政策」が、今、果たして本当に実施できるのか否か――日本の命運は、この一点にかかっていると言っても過言では無いと、筆者は考えます。
その方向へとわが国が歩みを進められるか否か――それは、5月下旬の伊勢志摩サミットやその後のわが国政府の政策展開、ならびに、その後の国政選挙で与党を中心とした各党が一体いかなる経済政策を主張するのか――そういったもの一つ一つを見定める事によって、少しずつ明らかになっていくでしょう。
日本経済を再生させんとする安倍総理に、そしてわが国日本に幸運が訪れますよう――心から祈念申し上げたいと思います。
ーーー発行者よりーーー
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【藤井聡】「所得」ターゲットへと転換した「アベノミクス2.0」への9件のコメント
2016年5月11日 9:32 AM
NGDPターゲット論になり、移民政策を実施し、人を増やして、実現しようとする未来が見えます。このタイミングでヘイトスピーチ法案も通しており、移民政策による弊害の事実を表現できないようにしていると思われます。ここまで来たら経済どころではありませんね。さようなら、日本。
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2016年5月11日 12:53 PM
藤井先生には申し訳ございませんんが、今回の熊本・大分大震災にあたっての補正予算の額、7,780億とのことで、専門家ではありませんので額の多寡はわかりかねるのですが、財源はマイナス金利政策で利払い費が減った分を当てるとの報道です。気象庁も予測不可能な震度7以上2回、震度5弱以上18回の未曾有の震災を前にして尚財政規律にこだわる安倍政権を当方は信用しておりません。今や先進国サロンと化したサミットも中止するのが当然で、サミット関連の投資をされた業者にはその保証をし、全力で震災復興にあたり、来る東南海地震・首都直下型地震に新たな知見も加え、備えるべきではなかったのでしょうか。先生のお立場はわかりますが、重ねて安倍政権は今すぐ粉砕されるべき存在だと認識しております。
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2016年5月13日 7:04 AM
これまで出来なかったという実証事実に対してこれからできるんだという推定を提示する事はかなり一般社会的には出鱈目な行為であると考えます。欲しいのは可能な限りの事実の積み上げで有って推定の積み上げではありません。もっともそれが今の政治であり学問の世界であるというならそんなに空想ファンタジーが好きなら、職業間違えてないでライトノベルでも書いてろと言うだけです。
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2016年5月13日 4:52 PM
>「所得」ターゲットを宣言した、ということになります。 読んでて(昔労組で事務的参加をしてた私の)頭に浮かんだことは、(サヨク思想に傾いてきた安倍政権は遂に政府レベルでの労働組合的な)賃上げ闘争を掲げてくれた意味になるのでしょうか。と浮かんでしまいました。慢性延長デフレーションの時代では企業家に言葉でお願いなんかするよりは、労組全盛期のストライキや賃上げ闘争のように底上げをするべきとも思います。と公職の所得削減方向も・・・・。そう言えば’88年の頃は消費税の前身の売上税の反対を労組は掲げてましたから、今こそ消費税にも反対を掲げるべきとも思うのですけど・・・・今の民進党では・・・。 今回のエントリーに対し、心理学にまで専門家である方が、批判の声が出るだろうことは予想外だなんてことは到底考えているとは思えないのです。なんかまとまりのないコメントで失礼しました。
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2016年5月14日 1:07 PM
これはすごい。ほとんど褒め殺しにしか読めません。きょうのエントリーはいろいろな意味で決定的ですね。
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2016年5月16日 11:39 AM
ん〜ん、なんか情けないな〜。日本って……。ほんまに財政政策の重要性わかってるんか〜。米国が言うから仕方なく動いているだけちゃうの……。ほんまの意味で理解してないから短期で終わるんちゃうの。どうせ広く薄くでGDP上げるんちゃうの。移民で。ほんまの意味で財政政策解ったら政府は加害者になる事を理解すると言う事になるんやで。その覚悟あるんか? グローバルゆうんは、独自の判断が出来づらいと思とる奴多いけど、ちゃうで! 大国主導になると言う事やで。大国の言いなりになると言う事。まっ、外圧とは言え、短期的には少し良くなるやろな。っと最近荒んだ考えになる今日この頃です。
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2016年5月18日 11:07 AM
藤井さん。 内閣参与の立場上、安倍晋三を擁護しているのでしょうが、選挙向けのポーズ アリバイ作りにしか見えませんが。今夏の参院選での自民党の大敗と安倍晋三退陣を心から祈っています。
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2016年5月20日 1:50 AM
認知科学の世界では「建設的相互作用」という概念があります。目的を同一とする複数名が会話をすると、発話する作業を通じて自分の考えを相手に伝達可能な構造的情報に再構成することで見直し(具体化・単純化・整理)の効果があり、また相手の解を「自分より少し広い視野」から見直すこと(適用範囲の調整)によって、各自が自分の考えを作り直す。その作業の繰り返しによりより抽象度の高い理解、それは汎用性の高いインテリジェンスだと思われますが、を双方にそれぞれ生み出すことになる、という考え方です。ここで大事なポイントは、「目的を同一とする」ということだと思います。つまりこの前提さえ基になっていれば、議論(「誰が正しいか」決める討論でなく、「何が正しいか」決める議論)は答に向かって進む、つまり建設的な方向になる、ということだと思います。(自分は共創、ハッカソン、アイディアソンのほうが好きですが。)もしも内閣の掲げたゴールが、たとえゴールのみ正しいとしても、それは最も大事なものが定まった、と分かるわけで、藤井先生の心にともった灯りが分かるような気がいたします。応援しております。
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2016年5月21日 10:06 AM
安倍内閣発足してからこれまで、量的緩和と増税でデフレ脱却と宣言していたのが、財政均衡派や財政出動否定派を排除する為の政治的駆け引きだったのだとしたら、恐ろしい政治家なのだと思います。そうでないなら、今後財政出動が適正に行われるという期待は、残念ながら裏切られるのではと思いますが、如何でしょう
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