From 三橋貴明@ブログ
さて、久しぶりのギリシャの話題。
『ギリシャ、中央政府の17年基礎的財政黒字が目標上回る
https://jp.reuters.com/article/greece-budget-surplus-idJPKBN1F42RH
ギリシャ財務省が15日遅くに発表したデータによると、
同国中央政府の2017年の基礎的財政収支は
19億6000万ユーロの黒字となり、目標の
8億7700万ユーロを大幅に上回った。
歳出の抑制が目標達成につながった。
中央政府の財政黒字は社会保障関連機関や
地方政府の予算が含まれない。
欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)が
ギリシャ向け金融支援プログラムで基準にしている
財政収支と算出方法が異なるが、財政状況の目安になる。
税収は488億ユーロと、目標を
1億1000万ユーロ上回った。
歳出は目標を17億5000万ユーロ
下回る555億ユーロだった。 (後略)』
というわけで、ギリシャの名目GDP(所得の合計)、
インフレ率、プライマリーバランスをグラフ化しました。
【ギリシャの名目GDP・基礎的財政収支(左軸、十億ユーロ)とインフレ率T(右軸、%)】
http://mtdata.jp/data_58.html#Greece
ギリシャのプライマリーバランス
(基礎的財政収支、以下PB)は、
バブル崩壊後の2009年に
360憶ユーロでピークをつけ、
その後は容赦なき緊縮財政により
削減されていきました。
2016年には、ついにPBが黒字転換。
ギリシャ政府がPB赤字削減に懸命になる、
つまりは緊縮財政が継続した結果、
ギリシャ国民の所得の合計は、
2008年の2500憶ドルから、
2016年には1845憶ドルに激減。
GDPが八年間で26%も
減ってしまいました。
ギリシャの経済規模が、
四分の三になってしまったのです。
日本でいえば、GDPが
375兆円に減ってしまうようなものです。
インフレ率の方も、延々とマイナス状況が続き、
2016年にようやく+0.013%となりました。
バブルが崩壊した国、あるいはデフレ化した国が
PB黒字化を目指すと、国民が貧困化する。
ものの見事に、ギリシャが証明してくれたわけです。
何しろ、記事にもありますが、
ギリシャ政府はPB黒字化のために、
「国民からより多くの税金を取り、支出を削った」
わけです。
所得創出のプロセスにおいて、増税や
「政府支出削減」がなされた場合、
「誰か」の所得が減るのは自明の理です。
そして、所得の合計こそがGDPなのです。
無論、ギリシャはユーロ加盟国です。
何しろ、金融主権がないため、
「国債発行+国債買取」により政府が
支出を増やすことはできません。
しかも、ギリシャ政府におカネを貸しているのは
国際機関、ドイツやフランスの銀行などです。
デフォルト(債務不履行)を回避するためには、
ギリシャ政府は「国内」からユーロを搾り取り、
返済するしかないわけです。
というわけで、ギリシャ政府はPB黒字化を強要され、
国民がひたすら貧乏になっていく。
特に、若年層失業率47%のギリシャでは、
緊縮財政とGDP縮小により、現在の所得はもちろん、
将来の成長をも犠牲にしてしまったのです。
現在の若者が社会の中核層をなす頃、
その半分近くが「働いたことがない」
という状況になってしまう。
普通に発展途上国化でしょう。
ギリシャの問題については
「解決策がない(ユーロに加盟している限り)」
状況が続きますが、日本は違います。
日本の場合、PB黒字化目標を破棄し、国債を発行。
日銀が国債を買い入れ、長期金利を
調整しながら支出を拡大すれば、
普通にデフレ脱却や経済成長が実現します。
ギリシャと日本は違うのです。
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