From 三橋貴明@ブログ
6月18日のフランス国民議会の議員選挙(日本でいう総選挙)は、投票率が何と44%に落ち込んでしまいました。
これまでの最低投票率を、一気に10%も下回ったのです。
グローバル化疲れに陥ったフランス国民は、マクロン新大統領率いる「共和国前進」の候補に投票することは拒びました。
とはいっても、フランス国内において「反グローバリズム」の政党は、左右に分裂してしまっています(国民戦線と左翼党)。
確固とした反グローバリズムの受け皿が存在しない状況で、フランス国民の多くが「厭政観」に陥ってしまったことが分かります。
もっとも、有権者の半分超が投票を棄権したとしても、マクロン新政権によるグローバリズム路線は容赦なく進みます。
グローバリズムにつきものの「規制緩和」「自由貿易」を推進するためには、必ず「緊縮財政」路線が採用されることになるのです。
三つの政策は、必ず三位一体(トリニティ)です。
同時に、グローバリズムのトリニティは「デフレ化政策(※デフレ対策ではありません)」の政策パッケージでもあります。
我が国で猛威を振るい、デフレ長期化をもたらした緊縮財政が、いよいよフランスでも本格的に始まるようです。
『フランス、公共投資削減で年内に財政赤字目標達成へ=経済相
http://jp.reuters.com/article/france-economy-deficit-idJPKBN19I00R
フランスのルメール経済相は26日、新たに全面的な公共投資の削減を実施することで、
2017年の同国財政赤字は欧州連合(EU)が上限としている対国内総生産(GDP)比3%におさまるとの見方を示した。
事前にはTF1テレビが、監査当局の今年の財政赤字予想は同3.2%になると報じていた。監査当局は29日に見通しを公表する。
ルメール氏は同テレビの夕方のニュース番組で「29日に明らかになる」としたうえで、「唯一言えることは、年末まで何もしなければ、われわれのコミットメントは達成できないということだ」と述べた。
さらに中央・地方に関わらず、政府の社会事業に関する公共投資を削減しなければならないと指摘。「フランスは公共投資によって身動きが取れずにいる。重要な国家主権のために公共投資を削減しなければならない」と言い、「あらゆる公共投資に関し多くの提案を行っていく」とした。』
フランスの長期金利、0.717%。
2016年通年の失業率、10.1%。若年層失業率は25%弱。
直近のインフレ率、0.9%。
どう考えても、現在のフランスは財政出動を「拡大」するべき局面です。
公共投資は、むしろ増やし、雇用を改善しなければならないはずなのですが、削減。
国債金利とインフレ率が共に低いわけですから、普通に、
「国債を発行し、政府の財政出動でインフレ率を押し上げる」
政策を採るべきなのですが、できない。なぜか。二つの鎖が、フランスを厳重に縛っているためです。
一つ目は、もちろん共通通貨ユーロの加盟国であること。フランスには金融主権がないため(ECBに委譲中)、日本のように量的緩和政策で国債金利をコントロールすることは、少なくとも「主体的」にはできません。
そして、二つ目が、欧州連合です。
そもそも、なぜ財政赤字を対GDP比3%に収めなければならないのか。EUを成立させた、マーストリヒト条約で、そう決まっているためです。
フランス中央銀行は、先週、今年のフランスの財政赤字対GDP比が3.1%になるとの予想を発表しました。
それを受け、欧州委員会のモスコビシ委員はマクロン大統領に対し、17年中に財政赤字削減目標を達成するよう要請しました。
モスコビシ委員は、
「フランスの財政赤字は今後、対GDP比で3%を超えてはならない」
と、発言。露骨な内政干渉ですが、欧州連合とは「そういう国際協定」であるため、許されます。
すなわち、フランスはEUに加盟しているため、財政赤字の額を「主権」に基づき、決められない状況にあるのです。
結果的に、国債金利とインフレ率が共に低い状況でありながら、公共投資の削減に走る。
日本同様に、フランスが本格的なデフレーションに突っ込む可能性は濃厚だと考えます。
それにしても、つくづくユーロとEUは、フランス経済にとっては「鎖」です。しかも、鎖を解くカギは見当たらない。
財政赤字を対GDP比3%の枠内に収めなければならないことになっていますが、なぜ「3%」なのか、さっぱり分かりません。
と言いますか、適切な財政赤字の額は、経済環境によって異なるはずです。
それを、国際協定で定めてしまっているのです。EUやマーストリヒト条約の発想は、異様としか表現のしようがないのです。
日本の「プライマリーバランス黒字化目標」は、経済の喉元に刺さった毒矢です。ですが、内閣が動けば抜き取る(PB黒字化目標撤回)ことができます。
それに対し、フランスの「ユーロ」「EU」という二つの鎖は、何しろ国際協定であるため、そう簡単にほどくことはできません。すなわち、鍵が見当たらない。
フランス国民は、マクロン政権の緊縮財政の下で苦しみ、問題を解決する「鍵」に手が届かないまま、ひたすら「グローバル化疲れ」を深刻化させていくことになるでしょう。
【三橋貴明】フランスを縛る二つの鎖への4件のコメント
2017年6月30日 1:37 PM
そもそも経済学(カネ)とはフィクション。
真っ白なキャンパスに時の権力者が自由な物語を書くに過ぎないもの。これを根底に解っていないとマインドコントロールに引っ掛かる。逆に言えば経済学(カネ)は人の力で作るもの。それが国家。
つまり経済に自由を求める事は、国家を失う事を意味し、通貨の消滅を意味するもの。
経済学を作るにあたって必要条件は、地政学、国土の特性、民族性、そして思想、一つでも抜け落ちれば経済学とは言わない。他国の経済学を真似しても意味なし。歪みが出るだけ。数式は後に作ればいい。定数が無い経済に作る前から計算はできない。足し算と引き算さえ解れば良し。しかしながら財務省はそれも出来無いので困った話。
コラ! ボンクラ経済学者ども! お前ら学者として他国の経済論文を評論してるだけで面白いか?他国の猿真似して面白いか?自分の手で自国の経済学作ろうとは思わんのか? そんなもん学者でも何でもあらへん。ただのオタク。気持ち悪。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2017年6月30日 6:25 PM
第四帝国 ♪
これからは
武力ではなく 経済で
ドイツが欧州を その支配下に置く ダス。。。
溶けて無くなれ オフランス ♪
しぶといのは
英国と米国 いつになっても あいつらは
帝国の邪魔をする。。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2017年7月8日 9:28 PM
ボンクラ経済学者は他国の経済論文すら理解できていません。その証拠にpartnership と言う用語を説明できません。米国が経済で一人勝ちしている(次々とベンチャーが育っている)鍵はpartnershipにあると言うのに。ボンクラ経済学者と言うより拓三さんのおっしゃるように単なるオタクですね。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2017年6月30日 8:20 PM
そう。経済で大切なのは地政学・地理経済学(中野『富国と強兵』でマッキンダー)。そして「国民慣習や勤勉の精神といった文化の積み重ね」(柴山・中野共著『グローバリズム・その先の悲劇に備えよ』)。
農業分野、社会保障の「積み重ね」に加え、国語に対する保護政策、都市交通と都市間高速輸送のインフラ整備等、いずれも日本とは比べ物にならない熱意でフランスは辛うじて地域と国内を束ねて来たように見える。
ルメールがこれら結束に費やした公共投資をやめ、EUという流行服のサイズに合わせて自ら手足を斬り落とし肉を削ぐべきだと言うのは、どこか「パンがなければケーキを食べればよい」の口伝に通じた、何とも不気味な前兆を予感させる。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
コメントを残す
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です